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世界最大級のファッションチャリティーイベント「メットガラ」
米国ニューヨーク州ニューヨーク市にあるメトロポリタン美術館(Metropolitan Museum of Art 略:Met)のコスチュームインスティチュートが年に一度開催するチャリティイベント。5月に始まる特別展示会のオープニングを祝したパーティーにはファッション関係者はもちろん、俳優やモデル、歌手やスポーツ選手など様々な業界の注目スターが招待される。会場内は撮影禁止になっているため、美術館入口の大きな階段がレッドカーペットとなり、次々に到着するセレブたちが何百ものプレスのカメラやレポーターに囲まれる。毎年どのセレブがどのデザイナーブランドの服を着ているのか、誰が一番豪華なルックで登場するのかなど、ファッション好きが盛り上がるトピックだ。
2026年メットガラのテーマは「Fashion is art (ファッションはアート)」。今年のイベント会長を務めたのは歌手ビヨンセ、俳優ニコール・キッドマン、そしてプロテニス選手のビーナス・ウィリアムズだった。
今年の開催において、最も大きな議論を呼んだ変化がある。それは、アマゾンがメットガラのメインスポンサーとなり、創業者のジェフ・ベゾスが妻・ローレン・サンチェズと共に名誉会長に任命されたことだった。
祝祭を支える「見えない労働者たち」。アマゾンの抱える人権問題
メットガラに先立ち、美術館の外部ではもう一つのファッションショーが開催されていた。リトル・ウェスト12番街に集結したのは、アマゾンの現役・元従業員、労働組合、そして支援者らで構成される団体「Labor is Art」だ。
彼らが独自に企画したこのショーの名は、「“Ball Without Billionaires”(億万長者のいない舞踏会)」。
アマゾンの倉庫従業員らが独立系ブランドの衣装を纏ってモデルを務め、「労働はアートであり、文化の基盤である」という理念を体現した。労働者こそが文化を定義し称賛されるべき存在であることを高らかに示した。
抗議の熱は街全体に広がった。メットガラが開催された5月4日の夜、 ベゾスの1億2,000万米ドル(約185億円)のペントハウスがあるビルや、NYCクライスラービルに「Boycott the Bezos Met Gala(ベゾスのメットガラをボイコット)」「If you can buy the Met Gala you can pay more tax(メットガラを買収できるなら税金ももっと払えるはず)」などの抗議のメッセージが映写された。
アクティビストグループEveryone Hates Elonは液体が入ったボトルを何百本も美術館の中に隠す行為を行った。これは、アマゾンの従業員はトイレ休憩ももらえずに働いているためペットボトルなどで排尿せざるを得ないという実態を皮肉ったものであった。
ボイコットの流れが加速する中、常連たちの欠席もまた大きな波紋を呼んだ
今回のメットガラに関しては、欠席した著名人らにも注目が集まった。
毎年参加していたスーパーモデルのベラ・ハディッドはその1人。彼女のインスタグラムでは、あるリール動画に「いいね!」を押しているのが見られた。
その動画は、セレブリティが業界イベントに「ICE OUT」(アメリカ合衆国移民・関税執行局への反対)のバッジを付けて参加するという、昨今の現象に触れたものだ。動画の投稿主は、「ICE OUT」のバッジを着用したとしても、トランプ大統領を支持しているジェフ・ベゾスが支援しているイベントに参加することは結果としてそのシステムを肯定することになり、間違っていると主張していた。
俳優のタラジ・P・ヘンソンはインスタグラムのストーリーにて、「みんながどうして参加するのかわからない」と訴えた。また、ベゾスとアマゾン社員たちの所得格差についての投稿をストーリーでシェアしていた。
他にも欠席者の中には、それぞれ今話題の映画に出演している女優のゼンデイヤやメリル・ストリープも含まれていた。
直近の選挙で特に多くのZ世代から支持を受けた新ニューヨーク市長ゾーラン・マムダニもイベントを欠席した。マムダニ市長は、ニューヨーク市を労働者階級の人々により暮らしやすい街にしようとキャンペーンを続けてきた。
今年のメットガラでの一般入場チケットの価格は去年の75,000米ドル(約1千万円)を大幅に上回る100,000米ドル(約1千500万円)へと急上昇し、参加がより困難になっていた。
サステナブルなルックを披露したセレブたち
一方で、メットガラに参加したセレブたちの中にも、ヴィンテージを基調としたサステナブルなルックが見られた。
ヴィンテージラグジュアリーで自然愛を纏ったシザ

人気歌手シザ(SZA)が着たドレスは、デザイナーのエミリー・アダムスが手がけるラグジュアリーブランドBODEのもの。様々なテクスチャーの黄色い布とビーズや花の装飾は全てセカンドハンドショッピングアプリeBayから集めたヴィンテージ品を使用している。18世紀ウィーンのアートとデザイン集団「Wiener Werkstätte」の、職人技や自然を取り入れたデザインからインスピレーションを受けたそう。シザの自発的で自然を愛する性格にもピッタリなデザインとなっている。
ヴィンテージドレス30着を1着に。自身もクリエイションに携わったパロマ・エルセッサー
モデルのパロマ・エルセッサーのドレスも、eBayで調達された約30着のドレスを縫い合わせたもの。パロマの友人で、元Marniのディレクターのフランチェスコ・リッソ氏の新プロジェクト、Bureau of Imaginationのイベントデビューを飾った。世界各地から集められた1920年代〜1940年代のヴィンテージドレスがミラノへ運ばれ、リッソ氏の手により装飾と色付けが施された。エルセッサーは単にモデルを務めるだけでなく、リッソ氏と協力してアイデアを出し合った。イベントテーマの「ファッションはアート」に沿って、アナ・メンディエタやサイ・トゥオンブリー等世界各地の芸術家の作品へのオマージュを含め作り上げた1着になった。
ヴィンテージと未来の融合。ウィズダム・ケイの時代を考察するカスタムルック
TikTokやインスタグラムでファッションコンテンツを発信しているインフルエンサー兼モデルウィズダム・ケイのルックはNYC発祥ブランドPublic Schoolのカスタムスーツだった。こちらもeBayから調達したヴィンテージの衣服やアクセサリーなどを使用し、リスポンシブルデザイン(責任を持った服づくり)のアプローチをとった。クラシックなスーツのシルエットを再構築し、同時に未来的な仕立てと融合されたデザインは、様々な時代を通じて人体がどのように捉えられてきたかについての考察だ。 Public Schoolのデザイナー2人は「eBayを使うと一つの場所に全ての選択肢がまとめられているため、便利かつインスピレーションを受ける良い機会だった」と語っている。
参考
https://www.theguardian.com/fashion/2026/may/04/jeff-bezos-amazon-met-gala-protest-fashion-show
https://www.forbes.com/sites/conormurray/2026/05/04/met-galas-big-name-critics-heres-whos-skipping-or-speaking-out-about-bezos-backed-event
https://www.bbc.com/news/articles/cdrm7gp5er3o
https://www.whowhatwear.com/beauty/makeup/paloma-elsesser-makeup-met-gala-red-carpet-2026-photos
https://hypebeast.com/2026/5/fit-check-wisdom-kaye-public-school-2026-met-gala
https://www.vogue.com/article/sza-s-met-gala-gown-is-made-from-100-yards-of-fabric-sourced-on-ebay
