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ライフスタイル|2026.05.08

“いいもの”の先に”いい世界”を。5月のフェアトレード月間に「ミリオンアクションキャンペーン」を開催中

5月は「フェアトレード月間」。フェアトレード認証の商品を購入したりイベントに参加することで、1アクション=1円が途上国の生産者へ寄付される「ミリオンアクションキャンペーン」が開催されている。この先もおいしいコーヒーやチョコレートが食べられる世界が続くように――生産者に思いを馳せ、日々の選択を少し変えてみよう。

原稿:髙岡英里子

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いい消費って、なんだろう?

毎朝コーヒーを淹れながら、ふと思うことがある。

このコーヒー豆は、どこで、誰が、どんな環境で育てたのだろう、と。

スーパーの棚に並ぶとき、それらはすでに「商品」として無数の選択肢のひとつになっている。産地も、つくり手の顔も、収穫の背景も、きれいにパッケージの中に封じ込められて。私たちは日々、ほとんど何も知らないまま、選んで、払って、飲んで、忘れる。でも、その「選ぶ」という行為には、思っている以上の力が宿っているのかもしれない。

パブリシスト(PR)として長年ファッション産業と向き合う中で、消費と社会の関係について考えることが増えた。トレンドの移り変わりを追いながら、その裏側でどれだけの人が、どんな環境で働いているか。サステナビリティという言葉がファッション界のキーワードになって久しいが、日常の食卓においても、同じ問いはずっとそこにある。

5月は、フェアトレード月間。今年も全国規模のキャンペーンが始まる。

今年のテーマは「”いいもの”の先に、”いい世界”を。」――この言葉が、じわりと刺さった。

Finda Kouadio Théodore et son épouse Konan Amalan Cécile sont assis devant un tas de cabosse de cacao avec des cabosses en mains.

気候変動と、消えゆく「味」の話

2050年、コーヒーが飲めなくなるかもしれない——そんな話を聞いたことがあるだろうか。

気候変動による気温上昇と降雨パターンの変化は、コーヒーやカカオ、バナナ、アボカドといった私たちにとって馴染み深い農産物の栽培適地を急速に狭めつつある。これは遠い未来の話ではなく、すでに生産現場では現実として起きていることだ。

特にカカオの価格高騰は記憶に新しい。2023年後半から続くいわゆる「カカオショック」により、ロンドン先物市場でカカオ豆の価格は歴史的な高値を記録した。西アフリカの主要産地での不作が引き金となったが、その背後には長期的な気候変動の影響がある。チョコレートの値上がりとして私たちの食卓にも波紋が広がり、「チョコが高くて買えない」という声がニュースにも上がるほどだった。

コーヒーも同様だ。主要生産地での天候不順と為替変動が重なり、価格は高止まりが続く。私たちが毎朝何気なく飲む一杯のコーヒーが、いつの間にかその価値を再認識させられる存在になっている。

ここで重要なのは、気候変動の影響を最も深刻に受けているのは、排出量が比較的少ないとされる農家や小規模生産者だという現実だ。

温室効果ガスの排出量が多い先進国の消費行動が、遠い産地の農家の生活を脅かす――この非対称な構造こそが、フェアトレードが問い直し続けてきた問題の根本にある。

通常の国際取引では、市場価格の情報や販売先の選択肢が限られる末端の生産者は、適正な価格での取引ができず、安く買い叩かれることが今も続いている。その結果、生産者は生活水準を下げ、コスト削減のために農薬を過剰に使い、子どもを労働力として使わざるを得なくなるケースもある。

フェアトレードはこの構造に対して、適正価格の保証と「プレミアム」と呼ばれる上乗せ支払いによって、生産者の持続可能な生活を支える仕組みだ。

約2万人の農家が被災した、2025年末の災害

2025年11月末から12月初旬にかけて、インドネシアのスマトラ島とスリランカでサイクロンに起因する豪雨と洪水、土砂崩れが相次いで発生した。日本でも親しまれているコーヒーの主要産地のひとつであるスマトラ島では、アラビカコーヒーの一大生産地、アチェ州で道路や橋、水供給システムが損傷し、多くの村が孤立状態に。農場や市場へのアクセスが絶たれ、収穫した豆の集荷も、品質管理も、販売も、すべてが滞った。2026年3月時点の報告では、推定1,623ヘクタールものコーヒー農地が被害を受け、生豆換算で1,623トン分の損失に相当。被害総額は少なくとも約23億円以上に達すると推計されている。

一方スリランカでは、日本で飲まれる紅茶の約6割を産する産地が直撃を受けた。道路の分断、停電、通信障害が紅茶産地全域に広がり、農地や住宅、集荷センターや工場が被災。生産と収入が一時的に止まり、安全でない避難生活を余儀なくされた農家も多い。インドネシアとスリランカ合わせて、被害を受けた農家は約2万人にのぼる。

この2つの国の災害が改めて照らし出したのは、気候変動と農業の脆弱性の深いつながりだ。アジアの大型サイクロンは、海水温の上昇によって勢力を強めやすくなっている。世界中で排出される温室効果ガスが背景にあるとすれば、排出大国のひとつでもある日本の私たちも、無関係ではいられない。遠い国の話、ではないのだ。毎朝手にする一杯のコーヒーの向こう側に、その現実がある。

左からキャンペーンアンバサダー望月理恵氏、認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン 事務局長 潮崎真惟子氏、ジャーナリスト・映画監督 堀潤氏、エシカルコーディネーター エバンス亜莉沙氏

1アクションで1円が寄付される「ミリオンアクションキャンペーン」

「フェアトレード ミリオンアクションキャンペーン」を知っているだろうか? 毎年5月のフェアトレード月間に合わせて実施される参加型の啓発キャンペーンで、2021年にスタートし、今年で6回目を迎える。

仕組みはシンプルで力強い。「フェアトレード商品を買う」「#フェアトレード2026 のハッシュタグをつけてSNSに投稿する」「関連イベントに参加する」「フェアトレード・ラベル・ジャパンに寄付をする」これらのアクションひとつひとつが1アクションとしてカウントされ、フェアトレード・ラベル・ジャパンから1アクション=1円が開発途上国の生産者へ寄付される。

昨年2025年は1ヶ月間で約280万アクションを達成した。今年2026年は過去最大の300万アクション、つまり300万円の寄付を目指す。全国の小売店・飲食店・食品メーカー・自治体・教育機関・市民団体など約200社が参加し、環境省、農林水産省、消費者庁、JICAが後援する国内最大規模の気候変動×フェアトレードキャンペーンだ。

今年の寄付先は、フェアトレード アジア太平洋(NAPP)が運営する「NAPP気候災害救援・レジリエンス基金」。前述のインドネシア・スリランカで被災したフェアトレード生産者の復旧と復興を後押しするために使われる予定だ。

今年のキャッチコピーは、「”いいもの”の先に、”いい世界”を。」

「いいもの」とは何か。おいしいこと、品質が高いこと——それだけではない。

生産の背景がフェアであること、つくり手の暮らしと尊厳が守られていること。

選ぶ人だけでなく、生産者にとっても「よい」ものであること。そういう「いいもの」を選ぶことが、単なる消費を超えて、持続可能な世界をつくる意思表示になる、というビジョンがこのキャンペーンの根底にある。

参加の仕方は「すぐできる」ことから!

このキャンペーンへの参加方法は、決して難しくない。

・最もシンプルなのは、フェアトレード認証商品を購入すること。

パッケージに「国際フェアトレード認証ラベル」(青・緑・黒の人のマーク)がついている商品を選ぶだけで、1アクションが生まれる。
コーヒー、チョコレート、紅茶、バナナ、コットン製品など、対象商品は思っている以上に幅広い。

・次にSNS投稿。

キャンペーンに参加した体験や、フェアトレードについて思うことを「#フェアトレード2026」のハッシュタグをつけて投稿するだけでいい。拡散することで、新しい誰かの「知るきっかけ」をつくることにもなる。

・全国各地で開催されるフェアトレード関連イベントへの参加も1アクション。

セミナーや体験型イベント、店頭のフェアトレードフェアなど、この1ヶ月は全国で様々な場が開かれる。

・フェアトレード・ラベル・ジャパンへの直接寄付

アクションの積み重ねが、やがて被災地の農家の手元に届く。
難しいことは何もない。ただ、いつもの選択に少し「意識」を加えるだけだ。

いつもの店やブランドで始める“フェアな”一歩

今年のキャンペーンでは、多くの企業が独自の取り組みを展開している。いくつかを紹介したい。

8種の特別メニューを揃える「ディーン&デルーカ」

ディーン&デルーカは、フェアトレード素材を使った8種のスペシャルメニューを展開する。白ゴマ、ターメリック、ジンジャー、紅茶、ココアなど多彩なフェアトレード食材を使ったドリンク、ケーキ、デリが揃い、「食べることが生産地支援につながる」という思想を、食体験そのものに落とし込んでいる。来年2027年に創業50周年を迎えるDEAN & DELUCAがゴールドパートナーとして参画することは、食の選択と未来のビジョンを結びつけるブランドとしての姿勢表明でもある。

https://www.deandeluca.co.jp/release/seasonal/detail/fairtrade

20以上ある「イオン」のトップバリュ・フェアトレード商品

イオンは、2004年にフェアトレード認証コーヒーを国内で発売してから20年以上、

一貫してフェアトレードへの取り組みを続けてきた先駆者のひとつだ。現在はチョコレート、紅茶、花など20品目以上のトップバリュ・フェアトレード商品を展開し、2026年4月には「キャラメリゼアーモンド」と「カカオ72%」というダークチョコレートの新作も加わった。キャンペーン期間中は「イオン」「イオンスタイル」などの全国各店舗でキャンペーンの告知と参加呼びかけが行われる。日常の買い物の場でフェアトレードに出会える設計は、裾野を広げる上でとても重要な役割を果たしている。

https://www.topvalu.net/sustainable/fairtrade


京都で行われる「小川珈琲」の体験イベント

小川珈琲 は、この5月に体験型の場を届ける。5月1日から31日の期間限定で、国際フェアトレード認証のアールグレイを使ったフルーツティー「フェアトレードアールグレイの桃香るフルーツティー」を京都の複数店舗で販売。さらに5月9日から12日には京都駅コトチカ広場で体験型イベントを開催。

来場者が「自分の思ういいもの」を書いて大型パネルに貼るというアクション参加型の展示も用意されており、抽象的になりがちなフェアトレードの概念を五感で体験できる工夫が凝らされている。プレゼントのドリップコーヒーをもらいながらフェアトレードについて考える時間、それ自体がひとつのカルチャーとして成立している。

https://www.oc-ogawa.co.jp/

老舗果物店「千疋屋総本店」が届けるエクアドル産バナナ

千疋屋総本店は、1834年創業、日本最古の果物専門店として初の試みに踏み出した。5月1日から31日の1ヶ月間、日本橋本店限定でエクアドル産のフェアトレード認証バナナ「スイートバレリー」を販売する。”バナナの聖地”とも呼ばれるエル・オロ州マチャラ地区で、昼夜の温度差が生む濃厚な甘みを誇るこのバナナは、同店フルーツパーラーでは「パフェ・モカバナナ」としても楽しめる。老舗の矜持と、生産者の暮らしへの敬意が重なる、この一本のバナナの存在感は小さくない。

「KOKUBUグループ」で南アフリカ産のワインに出合う

KOKUBU(国分グループ) が今年のキャンペーンで取り上げるのは、南アフリカ産のフェアトレード認証ワインだ。「KWV カフェ・カルチャー 赤」は、特殊製法によって引き出されたコーヒーの豊かな香りと味わいが特長で、南アフリカ固有品種ピノタージュ由来のブラックベリーやカシスのアロマに、モカやカカオの芳しい香りが重なる。新宿高島屋(5月9〜10日)とROJI日本橋(5月1〜31日)での販売のほか、社員向けのフェアトレード商品フォトコンテストも実施予定。フェアトレードを「特別なもの」ではなく、ワインや食の文化として社内外に伝えていこうとする姿勢が見える。

https://www.kokubu.co.jp/news/2026/detail/0428110000.html

有機コーヒーを割引販売する「トーホー」

業務用コーヒーの老舗 toho coffee(トーホーコーヒー) は全国約95店舗でフェアトレード有機コーヒーをキャンペーン期間中に割引販売。2003年からフェアトレードコーヒーを扱い続け、2025年には国内上場企業として初めてフェアトレード・ラベル・ジャパンと戦略的パートナーシップを締結。2035年には認証コーヒーの調達量を1.5倍に拡大する目標も掲げており、企業としてのコミットメントの深さが伝わってくる。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000043471.html

施設まるごとフェアトレードで彩られる「グリーン スプリングス」

JR立川駅北口に広がる複合施設 グリーンスプリングスでは、5月1日から31日の1ヶ月間「GREEN SPRINGS Sustainability Month」を開催する。

施設のコンセプトである「ウェルビーイング」—心身ともに健康で心地よい状態—を体現するべく、場内の多彩な飲食店やショップがフェアトレード食材を使ったメニューや商品を一斉に展開する趣向だ。

アジアンビストロ「Dai」ではフェアトレードのスパイスをふんだんに使ったプーパッポンカリー、「Rojiura Curry SAMURAI.」ではフェアトレードワインの自家製サングリア、「ricca GALETTE BISTRO」ではフェアトレードチョコレートブランド「KAOKA」のガトーショコラなど、各店それぞれのスタイルでフェアトレード食材を料理に落とし込んでいる。

SORANO HOTELの館内コーヒーはすべて小川珈琲のフェアトレード認証コーヒーを使用し、ホテル内全客室にはホットマン社の日本製フェアトレードコットンタオルが採用されている。5月16・17日にはGREEN SPRINGS 2F ATRIUMでHotmanのポップアップストアも開催予定だ。

ひとつの施設がまるごとフェアトレードで彩られる1ヶ月。

食べて、飲んで、買い物して。その体験を通じて自然にフェアトレードと向き合える場が、都市の中に生まれる。「特別なこと」ではなく「当たり前の日常」として、フェアトレードが溶け込んでいく理想的なかたちがここにある。
https://greensprings.jp/event/10516/

日本のフェアトレード市場:190億円の意味

2025年の国内フェアトレード認証製品の推計市場規模は、約190億円。前年の215億円から約88%の水準となった。

カカオショックやコーヒー価格の高騰、インフレによる家計圧迫が重なった一年で、確かに逆風はあった。それでも190億円という数字は、安定した需要基盤の存在を示している。1人あたりの年間購入額は、10年前の2015年に79円だったのが2024年には174円へと倍増以上。少しずつだが、確実に「フェアトレードを意識した消費」は日常に入り込んでいる。

世界と比べると、まだ大きな開きがある。ドイツのフェアトレード市場は日本の約22倍。一人当たりの年間購入額でいえば、スイスは19,260円で日本の111倍。この数字をどう読むかは人によって違うが、少なくとも「まだ余地がある」ことは確かだ。

一方で世界では、フェアトレード認証への信頼が高まっている。2025年に実施された国際調査(GlobeScan×Fairtrade International、13カ国・12,500人以上対象)では、

国際フェアトレード認証は調査対象のエシカルラベルの中で最も高い信頼度という結果が報告された。

また、EUでは2026年9月から「グリーンウォッシング禁止指令」が適用され、根拠のない環境表示や企業による自己認証ラベルの使用が制限されるようになる。第三者による厳格な審査に基づく国際フェアトレード認証は、その信頼性においてますます際立っていくだろう。

日本でも、地域ぐるみで推進する「フェアトレードタウン」の輪が広がっている。2025年に鎌倉市、2026年に大府市が新たに認定を受け、全国30以上の都市で認定や推進活動が動いている。学校の教科書にフェアトレードが登場し、こども家庭庁の調査では小中高校生の認知度でもフェアトレードがトップ。大学ではフェアトレードサークルや研究ゼミが増え、若い世代がこの問いに向き合い始めている。

数字の上昇以上に大切なのは、フェアトレードが特別なものから「当たり前の選択肢」になっていくプロセスかもしれない。

“いいもの”を、もう一度定義する

思い返してみると、ファッション業界もここ数年で「いいもの」の定義が大きく変わった。

素材の産地、工場の労働環境、輸送のカーボンフットプリント、リサイクルの可否——かつては「デザインが良い」「ブランドが格好いい」が評価軸の大半を占めていたのが、今は「背景が透明で、つくり手を大切にしているか」が問われるようになった。消費者の意識が変わったのか、それとも企業が発信を変えたのか。おそらく、その両方だ。

食の世界でも同じ変化が起きている。「おいしい」だけでなく、「誰が、どこで、どのようにつくったか」を知りたい人が増えている。フェアトレードはそのニーズに応える、現在最も実績と信頼を持つ仕組みのひとつだ。

5月の1ヶ月間、コーヒーを買うとき、チョコレートを選ぶとき、少しだけそのパッケージに目を向けてみてほしい。

フェアトレードのマークが見つかったら、それを手に取る。

ただそれだけで、インドネシアやスリランカの農家の復興支援につながり、気候変動への意識の輪が広がり、次の季節も「あの一杯」が飲めるかもしれない世界に近づく。

消費は、意思表示だ。

「”いいもの”の先に、”いい世界”を。」――そのキャッチコピーが、これほど腑に落ちる時代はないかもしれない。

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パブリシスト/コラムニスト
髙岡英里子
幼少期をフランス・パリで過ごす。社会人を経て再び渡仏し、現地PR会社にてパリファッションウィークに携わる。帰国後、国内外のファッションブランドPRとして活動。2016年に独立し、ファッションに加えライフスタイル、ビューティー、音楽、アート、食と分野を広げ、パブリシスト/コラムニストとして活動中。

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