Contents
Shift Cの評価について
各ブランドの下に表示されている評価は、サステナビリティ評価機関「Good On You」と連携した基準によるもの。「地球」「人間」「動物」の3つの軸から最大1,000項目のチェックポイントを用いて、ブランドの公開情報をもとに評価している。総合評価は5段階で、「素晴らしい」はすべての軸で業界をリードするブランド、「良い」は複数の領域で先進的な取り組みを行うブランド、「ここから」は少なくとも1つの観点で優れた取り組みが認められたブランドを指す。これらの3つの軸からは、「環境負荷が低い」「働く人の人権が尊重されている」「動物福祉への配慮がある、ヴィーガン対応している」など、ブランドのフィロソフィーを読み解くことができる。
クリエイティビティと社会への責任を併せ持つ、海外ラグジュアリーブランド11選
では、実際にShift Cで「ここから」以上の評価を獲得したブランドを見ていこう。今回紹介するのは、クリエイションの頂点に立ちながら、素材・環境・労働への責任にも向き合うメゾンたち。ラグジュアリーの定義そのものが、いま更新されつつある。
Shift Cでブランドを検索してみる
循環型の製造基盤で、メイド・イン・イタリーを再設計する「グッチ(GUCCI)」
Shift C評価:良い

1921年にフィレンツェで創業したグッチ。レザーグッズの工房から始まったその歩みは、メイド・イン・イタリーのクラフツマンシップとともに発展してきた。受け継がれてきた技術を大切にしながら、ものづくりのあり方そのものを更新し続けている。
環境面でも、業界を先行する取り組みを進める。科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標を設定し、目標達成に向けて予定通りに取り組みを進めている。革なめしでは化学物質を多用するクロム工程を避け、布地の廃棄ロスを抑える裁断技術も導入している。2023年には親会社ケリングの支援のもと、トスカーナに循環型製造拠点「サーキュラーハブ」を創設。素材調達からデザイン、製造、物流までを循環型に捉え直し、イタリアのファッション産業全体の転換を促している。
こうした積み重ねが、Shift Cの「地球」部門で最高評価「素晴らしい(5/5)」を獲得した理由だ。「人間」部門でも、サプライチェーンのほぼ全体を追跡していることや、サプライヤーの内訳を公開していることが評価され、「良い」を獲得。伝統を守るだけでなく、ラグジュアリーの製造モデルを次の時代へ導こうとする姿勢が表れている。
モードの最前線に、生物多様性と労働の仕組みを実装する「バレンシアガ(BALENCIAGA)」
Shift C評価:良い

クリストバル・バレンシアガが1917年に創業。「クチュールの建築家」と称された革新的な造形は、ファッション史に大きな影響を与えてきた。現在もモードとストリートカルチャーを接続し、時代の空気を映すクリエイションを発信している。
その先進性は、デザインだけでなくブランドを支える仕組みにも表れている。中古品の再販サービスを提供するほか、科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標を設定。サプライチェーン全体に及ぶ生物多様性保護方針や、水使用削減にも取り組んでいる。製品の最終生産工程の大部分を、労働リスクが低いとされる国または認証を受けた施設で行っている。国際労働機関(以下、ILO)の4つの基本的自由の原則を網羅した行動規範を定め、匿名で通報できる苦情処理システムも採用している。
こうした環境と労働の両面における取り組みが、Shift Cの「地球」「人間」でともに4/5を獲得した理由だ。ファッションの最前線を走りながら、その裏側にも責任を持つ。その積み重ねが、総合評価「良い」につながっている。
レザーやファーに頼らず、素材革新を切り拓く「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」
Shift C評価:良い

ステラ・マッカートニーが2001年に設立した英国のメゾン。創業以来、レザー、ファー、フェザー、エキゾチックスキンを一切使用しない姿勢を貫いてきた。美しさと動物への配慮を両立させ、サステナブルラグジュアリーという新たな価値観を切り拓いてきた存在だ。
その姿勢を支えているのが、継続的な素材革新だ。プラスチックフリーの植物由来レザー代替素材「MIRUM®」や、菌糸体由来素材「マイロ(Mylo™)」を採用。2026年サマーコレクションでは、世界初のヴィーガンフェザー代替素材「FEVVERS」を発表した。大気汚染物質を吸収・中和する「PURE TECH」もランウェイで披露している。同コレクションは98%が環境配慮素材で構成された。リサイクルカシミヤの活用や、古代林を守るビスコース調達にも取り組む。
四半世紀にわたり信念を貫いてきた一貫性が、Shift Cの「動物」部門で「良い」を獲得した理由だ。ウールなど、ほとんどの動物由来素材を初期生産段階まで追跡している点も評価された。「エシカルだから」ではなく、「美しいから」選ばれる服を作る——その実践が、業界全体の素材選択にも変化を促してきた。
ブランドの象徴を、海を守る素材へ転換する「プラダ(PRADA)」
Shift C評価:ここから
1913年にミラノで創業したプラダ。1980年代に工業用ナイロンのバッグを発表し、ラグジュアリーの常識を覆した。以来、ナイロンはブランドのDNAを象徴する素材となっている。
その象徴を環境配慮へと結びつけたのが、2019年に始動した「Prada Re-Nylon」だ。海洋プラスチック廃棄物や漁網を再生したECONYL®糸を採用し、現在では製造するすべてのバージンナイロンを再生ナイロンへ移行している。さらに、ユネスコ政府間海洋学委員会と海洋教育プログラム「SEA BEYOND」を運営。「Prada Re-Nylon for SEA BEYOND Collection」の販売収益の1%を寄付し、世界中の35,000人以上の学生に海洋リテラシー教育を届けてきた。
ブランドを象徴する素材を手放すのではなく、その背景をより良いものへ変えていく。アイコンの継承と海洋環境への責任を一つのプロジェクトで両立する姿勢に、プラダらしい革新性が表れている。
伝統の編み技法に、菌糸体の可能性を重ねる「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」
Shift C評価:ここから

1966年にイタリア・ヴェネト州で創業したボッテガ・ヴェネタ。「自分のイニシャルだけで十分」という哲学を掲げ、ロゴに頼らないものづくりを続けてきた。なかでも、レザーを編み込む「イントレチャート」は、メゾンのクラフツマンシップを象徴する技法だ。
2026年5月には、そのイントレチャートに菌糸体由来の新素材「ウーブン マイセリウム」を採用した。菌類の根のように枝状に広がる菌糸体を原料に、環境負荷を抑えたバイオ製造プロセスで生み出される素材だ。しなやかで軽やかな質感を生かし、ウォレットやカードケースなどを制作。ボッテガ・ヴェネタの公式サイトおよび東京を含む一部の店舗限定で展開している。伝統技法を守りながら、その素材を新たな選択肢へと置き換える試みだ。
こうした独自の素材開発に加え、環境や労働環境に関する基盤も整えている。科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標を掲げ、端材の再利用や生物多様性の保護にも取り組む。ILOの原則を網羅した行動規範も設けており、Shift Cでは「地球」「人間」ともに4/5を獲得した。60年にわたり受け継いできた手仕事に、素材と製造の新たな可能性を重ねる姿勢が評価につながっている。
「長く着る」を、循環サービスとして仕組み化する「バーバリー(BURBERRY)」
Shift C評価:ここから

1856年に創業し、トレンチコートを生み出したバーバリー。雨風から身体を守るギャバジン生地の発明以来、一世紀半にわたり、機能性と耐久性を備えた服づくりを続けてきた。「長く着る」という価値観は、ブランドの歴史そのものに根づいている。
現在は、その思想を循環型サービス「ReBurberry」として仕組み化している。補修、リフレッシュ、リメイクからレンタル、リセールまでを網羅し、世界32の国と地域、385店舗で展開。2025/26年度には41,000点以上の製品を修理・リフレッシュし、前年度比で9%増加した。素材や製造環境の見直しも進めている。ヘリテージトレンチコートは、100%オーガニックコットンのギャバジンへ移行。再生可能エネルギー由来の電力を100%使用する英国の自社工場で製造されている。顧客向け包装のプラスチックフリー化も、すでに達成済みだ。
一着を作って終わりにするのではなく、手入れを重ねながら長く使い続ける。さらに、その先の再利用まで支える体制を世界規模で整えている。「長く着る」という創業以来の思想を、現代の循環型サービスへ発展させている点が、バーバリーならではの強みだ。
イタリア20州の手仕事を、現代のラグジュアリーへつなぐ「フェンディ(FENDI)」
Shift C評価:ここから
1925年にローマのハンドバッグショップとして始まり、2025年に100周年を迎えたフェンディ。その歴史は、イタリア各地で受け継がれてきた職人技とともに築かれてきた。卓越した手仕事を現代的なデザインへ昇華する姿勢は、現在のクリエイションにも息づいている。
その原点を見つめ直す取り組みが、2020年に始動した「Hand in Hand」だ。イタリア全20州の職人工房と協業し、各地の伝統技法を用いてアイコンバッグ「バゲット」を限定制作している。ルネサンス期から続く柳細工や、ユネスコ無形文化遺産に登録されたシチリアのドロンワークなど、継承の危機にある手仕事を現代のラグジュアリーとして再生。2023年には東京・表参道で展覧会を開催し、日本の職人とのコラボレーションも実現した。
Shift Cの「地球」部門では、オーガニックコットンを含む環境配慮素材や、端材の再利用が評価され「良い」を獲得。科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標、FSC認証梱包材、サプライチェーン全体の生物多様性保護方針も評価の根拠だ。
反骨の美学を、科学的な環境目標が支える「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」
Shift C評価:ここから

故リー・アレキサンダー・マックイーンが1992年に設立。反骨精神に満ちたドラマティックな表現から、「ファッション界の異端児」と呼ばれた。既成概念を揺さぶる劇場的なランウェイは、今もファッション史に強烈な記憶を残している。
大胆なクリエイションを追求する一方、その製造背景では地道な環境施策を重ねている。直接事業とサプライチェーンの温室効果ガス排出量に対し、科学的根拠に基づく削減目標を設定し、目標達成に向けて計画どおりに取り組みを進めている。端材の再利用やFSC認証梱包材の使用に加え、サプライチェーンにおける水使用削減にも取り組んでいる。
こうした実践が、Shift Cの「地球」部門で4/5の「良い」を獲得した理由だ。「人間」部門では、ILOの原則を網羅した行動規範も評価された。さらに、サプライチェーンで働く女性の昇進や賃上げを促すリーダーシップ・プログラムも提供している。強い表現を生み出す舞台裏で、環境と労働の基盤を着実に整えている。
美しさだけでなく、企業の構造から公平さを追求する「クロエ(CHLOÉ)」
Shift C評価:ここから
1952年にパリで創業したクロエ。柔らかくフェミニンな世界観を築き、自由で軽やかな女性像を表現してきた。その美しさを、環境や社会にとってより公平な仕組みから生み出そうとしている点も、現在のクロエを特徴づけている。
2021年には、ラグジュアリーメゾンとして世界で初めてB Corp認証を取得。製品単体ではなく、メゾンの構造そのものが評価されたことを意味する。「Women Forward. For a Fairer Future(より公平な未来のための、女性の前進)」を掲げ、フェアトレード認定の社会的企業との連携や、環境低負荷素材への移行も進めてきた。
Shift Cでは、最終生産段階の一部で働く労働者への生活賃金の保証が評価された。匿名で通報できる苦情処理システムや、リサイクルダウンの使用もポジティブな根拠となっている。美しい服を作ることと、公平な未来を目指すことを切り離さない。その姿勢を認証という形で示し、ラグジュアリー業界に新たな基準を提示した存在だ。
デッドストックを再構築し、素材の価値を引き出す「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」
Shift C評価:ここから

1996年、ジョニー・ヨハンソンらがストックホルムで設立したアクネ ストゥディオズ。友人や家族のために作った100本のジーンズが注目を集め、ファッションラインへと発展した。北欧らしいミニマルな美学に、アーティスティックな遊び心を重ねたデザインで支持を集めている。
その自由な発想は、余剰素材の活用にも向けられている。2020年に始動した「Repurposed(リパーパスド)」では、デッドストックの生地や素材を再構築。廃棄されるはずだったものを、新たなコレクションの起点へと変えている。生産背景では、サプライチェーンの大部分がフェアウェア財団の認証を受けており、一部では賃金改善プロジェクトも実施している。
Shift Cでは、オーガニックコットンの使用や端材のリサイクルが評価された。ミュールジングされていない羊から調達したウールや、RDS認証ダウンの使用も根拠となっている。さらに、ほとんどの動物由来素材を初期生産段階まで追跡。素材を新たな視点で捉える創造性と、その背景に責任を持つ姿勢が共存している。
色彩豊かなクリエイションを、透明性あるものづくりで支える「バウム ウンド ヘルガーデン(BAUM UND PFERDGARTEN)」
Shift C評価:ここから
1999年、リッケ・バウムガーテンとヘレ・ヘストヘーヴェンがコペンハーゲンで設立したバウム ウンド ヘルガーデン。プレイフルな色彩やプリント、意外性のあるコントラストを効かせたスタイリングで、北欧ファッションシーンの中心に存在し続けている。
華やかなクリエイションを支えるのは、素材と生産背景に対する堅実な姿勢だ。オーガニックコットンを含む環境負荷の低い素材を採用し、トレンドに左右されず長く愛用できる服づくりを重視している。ILOの原則を網羅した行動規範を整え、ほぼ全サプライチェーンを追跡。革やウールなどの動物由来素材にも明確な方針を設け、アンゴラ、エキゾチックスキン、毛皮は使用していない。
Shift Cでは「地球」「人間」「動物」の3軸すべてで3/5を獲得。素材選びだけでなく、労働環境や動物福祉を含めて幅広く取り組んでいる点が評価につながっている。自由でカラフルな表現の裏側に、透明性のあるものづくりを築く。そのバランスが、バウム ウンド ヘルガーデンらしい魅力だ。
■まとめ
菌糸体由来の新素材や、海洋廃棄物から再生されたナイロン。製品を長く使い続けるための循環型サービスや、企業全体の姿勢を問うB Corp認証。今回紹介した11ブランドは、それぞれ異なる方法で、ラグジュアリーのあり方を見つめ直している。素材や環境だけでなく、労働環境や職人技の継承まで、取り組みの領域も幅広い。
デザインや憧れを入り口にしながら、その服がどのような素材で作られ、誰の手を経て届くのかを知ることも、ブランドを選ぶ楽しみの一つだ。Shift CのブランドDBでは、海外ブランドのエシカル度も検索できる。気になる一着を見つけたときは、その背景にも目を向けてみてほしい。