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ブログ|2025.01.31

【Shift Changer】前本美結が、サステナ担当に会ってきた!【Vol.2 オンワードホールディングス】

Shift Cの公式アンバサダー「Shift Changer」として活動する前本美結が、企業のサステナビリティ担当者を訪ねる本連載。第二回目にフィーチャーするのは老舗アパレルメーカー・オンワード。2009年からスタートさせているという、「オンワード・グリーン・キャンペーン」について話を聞いた。

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前本美結 高校3年間を東南アジアで過ごした際に、社会問題に興味を持ち、SNSで社会問題解説・日常生活で個人ができるアクションなど、エシカル・サステナブル・セルフラブを軸にしたライフスタイルを発信中。モデル・講演・イベントプロデュース・フリーランスモデルなどの他、六本木のコミュニティカフェ 「um」(アム) にてコミュニティマネージャーを勤めている。

2009年から行う、「オンワード・グリーン・キャンペーン」とは?

こんにちは。Shift C公式アンバサダーShift Changerの前本美結です。
前回の記事では、ユナイテッド・アローズにお邪魔して、サステナブルな取り組みであるSARROWSについてお話を伺ってきました。
第二回目の今回は、オンワード。サステナブル経営グループの山本卓司さんにお話を聞きに、吉祥寺の「オンワード・リユースパーク」にお邪魔してきました。ここはオンワードが運営するリユース専門の直営店で、ハイクオリティなリユース製品がたくさん取り扱われています。2009年から「オンワード・グリーン・キャンペーン」を開始し、サステナブルな取り組みを進めるオンワード。回収事業や毛布・軍手へのリサイクル事業などについて、お話を伺います。

前本美結(以下、美結) 「オンワード・グリーン・キャンペーン」を2009年に始められたきっかけをお伺いできますか?

2009年は、サステナビリティという言葉もまだ全く浸透していなくて、エコという言葉が使われていたくらいの時期で、実はきっかけは環境活動というよりもリーマンショックによる日本経済の低迷でした。
当時、私は広報・環境部として仕事をしていたのですが、お客様に店頭に足を運んでいただく施策を作ろうとしたのがきっかけです。オンワードの製品を長く愛用してくださっている顧客様がお持ちの衣料品を店頭に持ってきていただいてクーポンを発行して、少しお得に新しい製品を購入していただけるように、店頭でのオンワード製品の回収を始めました。
この取り組みをスタートするにあたり、お客様から回収した衣料品をどうすべきか議論しました。そこで、大切に使っていただいたものだからこそ捨てることなく何かに活用したいと考え、リサイクル・リユースという形で衣料品の循環をしていこうということになり、この「オンワード・グリーン・キャンペーン」を始めました。(オンワード樫山 サステナブル経営Div. 課長 山本卓司氏、以下同)

オンワード・リユースパークの店内にある「オンワード・グリーン・キャンペーン」に関する展示
「オンワード・グリーン・キャンペーン」の流れを伝える店内の展示

リユース品のみを取り扱う「オンワード・リユースパーク」in 吉祥寺


美結 リユースオンリーの店舗をメーカーが運営するというのはなかなか画期的な取り組みだなと思ったのですが、こちらの店舗はいつオープンされたのですか?

ここは2014年の3月にオープンしました。「オンワード・グリーン・キャンペーン」で回収した衣料品はサーマルリサイクルという形で固形燃料にしたり、毛布や軍手を作って日本赤十字社の協力のもと、特にアジアの貧困地域の方々に寄贈するという活動を行っています。
毛布は現地に赴き自分たちの手で寄贈しますし、軍手も必要な人に自分たちで届けるので、出口はしっかり見えています。私たちがお預かりしているのは、お客様に長く愛用していただいた衣料品なので、責任を持って循環させていくというのが活動のポリシーです。
服のバトンを次の人に自分たちの手で繋いでいこうと思い、リユースの直営店を始めることにしました。「オンワード・グリーン・キャンペーン」で回収した衣料品の出口は必ず「見える化」しています。

美結 なるほど。出口の見える化、本当に大切ですよね。正直、グレーにやっているなぁという印象を受ける企業さんもあり、モヤモヤすることもあります…

国内のリサイクル業者さんにお願いして、渡して終わりというケースが多いと聞きます。我々としては最後まで見届けたいという思いが強くあるので、自社で内製化を進めています。

「オンワード・リユースパーク」店内のマネキン。再生紙を利用している。
店内のマネキンのボディには再生紙が使われている

直営店だからこそこだわる「品質」と「責任」

美結 先ほど店舗を見させていただいて、リユース品のクオリティがすごく高いことに驚いたのですが、どのような基準を設けてリユースを行ってらっしゃるのでしょうか?

一部の店舗を除く全国のオンワードが運営する店舗で衣料品を回収しています。2023年からはオンラインでの回収も始めました。この回収されたものは全て、(神奈川県)厚木市にある自社の倉庫に集約され、そこで仕分け作業を行っています。 一定の基準をクリアしたものはリユース、それ以外のものはリサイクルに回す、といった形で仕分けをしています。リユースに回すものは、4〜5回の検品を繰り返してから店舗での販売になります。この基準は自社で決めていまして、かなり厳しく設定しています。点のシミやほんの少しのほつれであっても基本的にははじいています。検品を繰り返すことで非常に状態の良いものだけを選りすぐり、クリーニングに出した後に「オンワード・リユースパーク」の吉祥寺店とECサイトで販売しています。この店舗が始まってからの統計なのですが、約13%がリユース、87%がリサイクルされています。この数字からもお分かりかと思うのですが、かなり厳しい基準を設けています。

検品は業者に任せず、自社で内製化し徹底して行う

厚木倉庫での仕分けの様子。4〜5回にわたる選別を経て「オンワード・リユースパーク」に送られる。
厚木倉庫でのリユース商品の選別作業

美結 少しのシミ・ほつれもはじく、というのはかなり徹底していらっしゃいますね。

検品の厳しさも良い点・悪い点があるとは思うのですが、この吉祥寺の店舗が始まった2014年は、まだ古着に抵抗感を持っている方も多くいらっしゃいました。でもお客様がここに来た時に、「そんなに新品と変わらないし、これでもいい、これがいいな」と思ってもらえるものが並んでいる状態を保つようにしてきました。何度も足を運んでくださるリピーターのお客様も多いです。また、オフィス・セレモニーシーンのものなども探しに来てくださる方も多く、安心して購入していただけることにつながっています。

美結 すごいですね…4回から5回って本当に大変ですよね?

そうですね、これも30名ほどの社員・スタッフでやっているので、なかなか大変です。昨年度で約96万点を回収していて、それを私の部署の担当者が一つずつ手にとって検品しています。2018年の9月からはオンラインでの販売も始めました。オンラインで出品している製品は手に取って状態を確認することができないので、吉祥寺で販売しているものよりもクオリティを担保するために、1回多く検品していて、より安心してお買い求めいただけるように努めています。

店内の階段壁にある、これまで毛布を贈呈した国の人々の写真

長年の取り組みから感じる社会の「古着」への抵抗感の変化

美結 2023年からオンラインでの回収を始められたとのことですが、こちらの利用は増えていますか?

増えています。初年度の2023年度は12万6千点、今年度(2024年度)は22万点ほどの回収を見込んでいます。全国のお客様が「オンワード・グリーン・キャンペーン」にどこからでも気軽に参加できるようにと思い実装したのですが、実はオンラインでの回収は法律的な問題もあり、始めるのが大変でした。ですが、手で持っていくのは大変だからまとめて送ってしまおう、というリピーターの方も多くいらっしゃり、始めて良かったです。

美結 長年リユースの販売に取り組まれる中で、「サステナブル」な意識が社会的に浸透するようになってきてから、お客様の反応に変化はありましたか?

そうですね、当初始めた頃はオンワードの中心顧客層である40~50代の女性の中では古着を買うことへの心理的ハードルが高かったように感じます。ですが、そういったものは今ではほとんど感じられません。この活動を知っていただいて、サステナブルな取り組みだからこそ、買い求めていただけることも多くなったように思います。吉祥寺店への来店者数も毎年増えてきていて、肌感覚ではありますが、古着への抵抗も薄れてきたように思います。

美結 私自身、古着に対して自分とは違うスタイルのファッションを好む方が着るものだ、という認識を5〜6年前まではしていたので、同じようにリユースへの抵抗感が少なからずあったのですが、古着=サステナブル、だと知ってからイメージが変わったので、わかるような気がします。

リサイクルした毛布を直接貧困地域に手渡すことから感じる本質

毛布を受け取ったタジキスタンの子供たち

美結 「オンワード・グリーン・キャンペーン」では、回収した衣服から毛布や軍手を作り、寄贈する取り組みも行われているんですよね。最近はどちらの国に寄贈されたんですか?

タジキスタンです。贈呈式には私も参加しました。当時から社員が直接現地に赴いて手渡しするということを徹底しています。やはり、現地に行かないと困難な生活を送っている方々の現状を理解することが出来ません。現地では奥地に行くことも多く、今回も、崖っぷちの凸凹道を何時間もかけて行って、そこで生活している現地の方の現状を直接見て聞いてきました。そういったことをしないと、ただ単純に「寄贈しています、いいことしてるでしょ」で終わってしまって、本当のことを伝えられないと思っています。社員が直接行くということは大切なことなので、できるだけ多くの社員に体験してもらいたいですね。

式典で毛布を渡す、オンワード社員、山本氏
毛布配布の様子。一番左が山本さん

美結 本当に「本質的に取り組む」ことを大切にされているんですね。実際にタジキスタンに行かれてみて、いかがでしたか?

タジキスタンは中央アジア最貧国と言われていて、多くの子供たちは着るものにも苦労していているんです。今回行ったエリアには、服も毎日同じものを着て、冬はマイナス10〜15℃になるようなところで、隙間風の入る家で雨水などが滴り落ちるなか暮らしている方がたくさんいました。そんな様子を見ると、毛布4000枚の寄贈が少しでも役に立てることがあると実感し、この活動を継続していきたいと改めて思いました。毛布の贈呈は、実際に受益者の方にお越しいただくことが多いのですが、ご家族の代表の方やお子さま、ひとりひとりに手渡しをさせていただきました。

美結 毛布を寄贈する際のパートナーに赤十字社を選ばれたきっかけもお伺いできますか?

赤十字社は、世界191の国と地域に広がるネットワークを生かして活動している人道支援団体であるということ、またその信頼度の高さが大きな決め手となりました。我々だけの力では毛布を必要としている場所を調べることは難しく、貧困地域へのアクセスなどのノウハウも持っていませんでした。そこで国際的に信頼度の高く、色々な情報を持っている赤十字社とご一緒したいとこちらからお声がけをしました。

美結 なるほど。本当に困っているところの適切な選定とアクセスができるから、ということなんですね。軍手はどのように寄贈先を決めてらっしゃるのでしょうか?

軍手は災害時にボランティアの人向けに届けたり、グリーンセーバーと呼ばれる森林に関わる仕事をしている方に寄贈することが多いです。東日本大震災の際にも寄贈しました。軍手に関しては、ニーズがあるかどうかを寄贈先の団体・自治体などに確認してから寄贈しています。

2030年までに回収量を倍増させる目標と、ファッション業界への課題感

美結 いままでたくさんお話を伺ってきた「オンワード・グリーン・キャンペーン」について、今抱えてらっしゃる課題感をお聞かせいただけますか?

1つは、回収量です。昨年は約96万点の衣料品を回収したのですが、これは年間の生産点数に対して9.3%しかないんです。私たちは「2030年度に自社衣料品循環比率 20%」という目標を立てています。この回収量を倍にするために、どのようにお客様からオンワードの製品を回収して循環させていくか、ということを課題として取り組みを進めています。
もう1つは、「出口」です。リサイクルに回る約87%の衣料品の活用もさまざまな方法を考えなければならないと思っています。実は昨年、アップサイクルも取り組み始めました。点数としてはそれほど大きなものではないですが、自社の持つクリエイション力を活かした活動で、社内外からも好評をいただきました。今後は、特に我々はメーカーなので、今行っている毛布・軍手・化石燃料以外にも、繊維 to繊維へのリサイクルを実現させていきたいです。

美結 繊維 to 繊維のリサイクルは、メーカーさんとしての肌感覚として、どれくらい進んでいるのでしょうか?

まだまだですね。たとえばコットンやポリエステルなど、単一繊維ならばリサイクルが可能です。ですが複合繊維の場合はハードルが高いですし、単一繊維でもボタンやファスナーなどの付属品を仕分ける必要もあります。繊維 to 繊維のリサイクルはアパレル全体の大きな課題でもあると思っています。

取材を終えて
今回のオンワードさんの取材の中で特に「本質的であるか」という部分を大切にされているなと感じました。実際に社員さんが手渡しで毛布を届けに行くというアクションや「出口」までしっかりと追っていく姿勢から、ブランドの誠実でありたいという意識がとても伝わってきました。私ももうそろそろ友人の結婚式があるので、リユースパークにまたお邪魔して、お買い物をしてみようと思っています。皆さんもぜひ、オンラインショップも含め、見てみてくださいね。

オンワード・リユースパーク
東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目4番14号ミヤケビル1~3F
電話 0422-23-0900
営業時間 11:00〜19:00 不定休

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