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ファッション|2026.01.27

スタイリスト・木村舞子がジャパンブランドと、サステナブルアクションを考える。【Vol. 8 森銀】

スタイリスト・木村舞子が、サステナブルな取り組みをしているブランドを訪ねる本連載。第8回目は貴金属材料メーカー「森銀」。貴金属のリサイクルから、材料製造、廃棄物の無害化処理まで、国内で唯一、自社一貫でこれらを手がける資源循環型企業だ。その多角的な取り組みや、作業の様子を取材した。

編集:横山佐知 写真:五十嵐一晴

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木村舞子
北海道出身。バンタンデザイン研究所を卒業後、スタイリスト百々千晴氏に師事。ファッションモード誌、カタログ等で活躍中。雑誌GINZAのウェブサイトでは、「スタイリスト・木村舞子さんと一緒に、サステイナブルライフへの道!」を連載中。

過去の連載記事はこちら
第1回目:エドウイン
第2回目:ユニオン ランチ
第3回目:ウメダ
第4回目:マルチョウ
第5回目:オーメ
第6回目:フィルメランジェ
第7回目:スハー

森銀が取り組んでいるリサイクルメタルとは

前回紹介したsu Ha(スハー)は、2023年からオリジナルパーツにリサイクルメタルを使用していると聞きました。
巷では、ジュエリーや金貨の買取りが注目されていますが、その先の行方については意外と知られていません。リサイクルメタルとの接点はあるのでしょうか。
今回は、スハーがリサイクルメタルを使った材料の製造を依頼している、山梨県甲府の「森銀」を取材しました。

スハーのデザイナー、伊藤陽子さんが森銀に出会ったのは2019年のこと。オリジナルパーツの製作をお願いしている、甲府の職人さんの紹介だったそうです。
(編注:甲府は昔から水晶が産出され、それに伴い研磨や貴金属の加工技術が向上し、ジュエリーの産地として今に至る)

今回は、伊藤さんが依頼した材料が作られる様子を、特別に見学させてもらいました。

木村舞子(以下、木村) リサイクルメタルとはどういうものなのでしょうか?

「使わなくなったジュエリーや電子基盤から金属を取り出して、純粋な貴金属に再生したものです。
弊社では約60年前から、工業系の廃棄物を回収して貴金属を精錬・精製する事業を始めていました。今の日本は鉱物資源がほとんど採れなくなっていて、輸入に頼っているのが現状です。多くの金属はリサイクルされて、見えない形でぐるぐると循環しています。リサイクルは特別なことではなく、自然の循環や人の営みのなかで古くから続いてきたものです。特に日本には『もったいない』という素晴らしい価値観があります。

弊社は『1gも無駄にせず未来につなげる』ことを目指しています。リサイクルメタル=不用品から作るということではなく、資源を循環させるポジティブなものだと知ってもらいたいという思いがあります。」(森銀 代表取締役・森 善宣さん)

森銀 代表取締役・森 善宣さんと、森銀が発行しているリサイクルメタル証明書

木村 リサイクルメタルの認証を2022年から始められたと聞きました。

「弊社は約30年前から構想を始めて、リサイクルされる貴金属がどこから来てどう使われたかが分かるようにデータを取っています。貴金属はもともと国内のリサイクル率が高いのですが、由来が不明確なまま取引されているのが現状です。そうした状態は非常にもったいないと思い、トレーサビリティを明確にした証明書を発行することを考えました。
社内の業務は増えましたが、資源を循環させることの重要性を全社で共有するきっかけにもなりました。

証明書を添付したリサイクルメタルの販売は、2021年にスタートしました。翌2022年には商標登録をして、当社認定マークの発行も開始しています。
現在では、賛同するジュエリーメーカーさんが少しずつ増え、口コミを通じて広がりつつあります。
証明書は弊社が独自に発行しているもので、リサイクルメタルに含まれる貴金属について、どのような回収資源に由来するかを個別にたどることができます。一方で、回収元の詳細は証明書には記載せず、個人や企業を特定する情報については社内で厳重に管理しています。

弊社のリサイクルメタルには、自社で精錬・精製した貴金属以外は使用していません。金、銀、プラチナ、パラジウム、銅、亜鉛といったジュエリーに必要とされる金属を、全て自社で精錬・精製しているからこそできるんですね。100%トレーサビリティの明確なリサイクルメタルは、様々な回収資源を無駄なくリサイクルしている、弊社ならではの取り組みです」

精錬・精製した純金に、他の金属を加えて18金にする

上:パラジウム、プラチナ、金を、それぞれ溶解液で取り出して粉末にする。下:純金の粉末。「溶解液から取り出したものは金色ではないんです。赤土みたいなので知らない人が見たら間違えてそこら辺に撒いてしまいそうですよね(笑)」(森さん)

「リサイクルメタルというと、貴金属をそのまま熔かして別の製品にするイメージがありますが、必ずしもそうではありません。成分が明確で状態に問題がない場合は、そのまま熔かすこともありますが、これは回収資源をそのまま活かす“リユース”で、工程が少ないぶん環境負荷も比較的低くなります。
純金に他の金属を加えた18金などの合金は、熔かして加工を繰り返すうちに金属の並びが乱れたり、成分が偏ったりすることがあります。こうした変化で脆くなった合金は、まず精錬・精製して純粋な金属に戻します。純金は化学的に安定した原子構造をもっているため、何度リサイクルしても劣化することはありません。そこから、目的に合わせた合金に加工し直すことで、成分や品質を正確に管理できるんです。

18金は、純金に銀や銅などを25%の割合で加えた合金です。純金は柔らかいので、他の金属を加えることで、ジュエリーとして安心して使える強度にするんです。その25%にどんなものを加えるかには定番の配合もありますが、独自の配合を希望するお客様もいます。弊社には18金だけで300種類以上も取り扱いがあるんですよ」

木村 18金をただ熔かして、別の18金のものを作るんだと思っていました。まず純金にするんですね。リサイクルではなく、採掘してきた金は純金なんですか?

「鉱山から採掘された金にも何らかの不純物が含まれているので、リサイクルメタルと同じように精錬・精製して、純度を99.99%まで高めていきます。
『999.9』や『99.99』と刻印されているのをご覧になったことがあると思いますが、これは材料メーカーが純金であることを証明している表示です。もし再検査で純度が99.98%だったら、約束した品質にはなりません。そのため、成分を細かく測定し、厳密に品質を管理しています」

スハーが依頼した角線材が作られる様子

上:左から2番目が純金。これに銀と銅が加えられる。下:スハーが前回依頼した際に出た端材も加えて熔解へ
型に入れて冷ました棒状の18金

できました。
棒状にした18金は、少しずつ引き伸ばして角線材に加工します。温度や圧力を細かく調整しながら進める作業のため、すぐに加工することはできません。そこで、形の似た銀線で工程を見せてもらいました。

専用のローラーに何度も通しながら、少しずつ細長い線材へと加工していきます。ローラーには幅の異なる凹型の溝が刻まれていて、太い溝から細い溝へと順に通すことで、徐々に引き伸ばされて、依頼された形状の線材が仕上がります
今回作業を見せてくれた職人さんは「ものづくりが好きだから入社しました」と話してくれました

金や銀は圧力をかけて細くしていくと固くなり、割れることもあるため、ある程度加工したら再度加熱して軟らかくするんだそう。何度で何分と、細かく決まっているデリケートな作業です。
同じ18金でも、その後どんな加工をするかによって、硬さの調整をして納品するとのこと。
奥深いです。

リサイクルメタルに共感するジュエリーメーカーも増えている

森銀のリサイクルメタルを使用したスハーのオリジナルパーツ

「鉱物資源は限りある地球の財産です。私たちは過去から受け継ぎ、未来へつなぐ責任があります。資源をめぐる争いが起きている現状もありますが、リサイクルによって資源を循環させることで、新たな採掘への依存を減らし、資源を持続的に活かせる社会につながると考えています。

弊社は、リサイクルメタルの比率を60%まで高めることを目指しています。現在の比率はまだ10~15%くらいですが、できることからやっていこうと思っています」

スハー デザイナー・伊藤陽子さん その比率は上がってきているんですか?

「そうですね、上がっています」

木村 他のブランドの動きはどうですか?

「実は先日も商談がありました。ジュエリーメーカーさんの中には、合金に含まれる全ての金属をリサイクル由来で揃えることが難しいという理由から、リサイクルメタルの導入を諦めてしまう方も少なくありません。ジュエリーに必要とされる金属の一部では、リサイクル材として安定的に供給したり、由来を明確に証明したりするための技術や仕組みが、まだ十分に整っていないのが現状です。私たちが最も力を入れているのは、こうした課題を一つひとつ解決していくことです。
作り手であるデザイナーさんやブランドさんをどう支援できるか、応援できるかが私たち材料メーカーの仕事です。私たちが作る材料が皆さんのお役に立てるように、積極的に関わっていきたいですね。

弊社は、メッキ液や銅線など、他社で敬遠されるものも回収して精錬・精製しています。廃棄されるはずの資源からも貴金属をリサイクルして、ジュエリーメーカーさんに使っていただければ、理想的な循環が生まれると考えています。

取材を終えて

自社一貫で資源循環に取り組んでいる森銀は、リサイクルに伴う廃液などの産業廃棄物の無害化処理まで自社で手がけています。山梨県は多くの水源を抱えるので、厳しい排水基準が定められていますが、無害化処理に取り組みはじめた当時は「ゴミにお金を出すなんて」という考え方があり、受け入れられるまでには苦難の道が続いたそうです。
こうした真摯なものづくりをするメーカーさんが、日本のブランドを支えているんだなと思いました。

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ライター/エディター
横山佐知
出版社勤務を経て2022年にフリーランスに転身。趣味は旅とランニングと登山とお笑い鑑賞。

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