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エシカル消費とは?
「エシカル」とは、英語で「倫理的な」を意味し、「エシカル消費」とは、価格やデザインだけでなく、社会や環境、動物への影響に配慮した消費行動を指している。
エシカル消費が必要となった背景には、世界規模で大量消費が加速していることにある。もし世界中の人が日本人と同じような生活を送るとしたら、地球が2.9個分必要になるといわれている。また、このままのペースでプラスチックを消費し続けた場合、2050年には海のプラスチック量が魚を上回ると言われている。他にも、チョコレートのカカオや洗剤や食品に幅広く使われるパーム油といった資源、そしてスマホやジュエリーに使われる鉱物でさえも児童労働や環境破壊などに結び付いている可能性がある。つまり普段の消費活動がこうした問題と密接に繋がっている。これらの問題解決に向けて、私たちが生活の中で実践できるエシカル消費には、以下のようなものがある。
「地球」
・エネルギー負荷の少ない選択
再生可能エネルギーを活用/省エネできる商品やサービス
・オーガニック製品
土壌汚染につながる化学農薬や合成肥料を使わない農産物・オーガニック素材の衣類
・森林保全につながる商品
不当に伐採されていない、適切に管理された森林資源を使っている製品
「社会」
・作り手への安全な労働環境
児童労働の禁止、サプライチェーンの監査
・フェアトレード製品
作り手への公正な支払を保証する食品や衣料品
・地域と誰かのために
地元産の食品や工芸品、被災地支援につながる商品
ユニバーサルデザインや障がい者雇用を支援する製品
「動物」
・クルエルティフリー
動物実験を行わないコスメ・日用品
・ヴィーガンファッション
レザーやファーといった動物由来の素材を使わない衣類・バッグ
・動物福祉に配慮された製品
鶏がケージに入れられず、自由に動き回れる環境で産まれた「平飼い卵」
羊に苦痛を与えない方法で生産された「ミュールジングフリーウール」
エシカル消費を実践する意味
自分一人が消費行動に気をつけたところで、世界全体が大きく変わるとは思えない。実際、そう感じることは誰にでもあるだろう。
しかし、実はすでに多くの人がエシカルな選択をしており、その積み重ねが大きな市場を生み出している。
2022年、イギリスで25年以上続く「エシカル消費の市場規模調査」を参考に、日本でも同様の調査が行われた。その結果、日本のエシカル消費市場は8兆円を超える規模に達していることがわかった。
この調査で「エシカル消費」とされたのは、特別な努力を必要とせず、誰もが日常的に実践できる行動だ。中でも最も大きな市場規模だったものは「連帯消費(地産地消、地元商店での買い物、特定の生産者や地域を応援する消費等)」で、全体の4分の1以上を占めていた。さらに、「エシカルなエネルギー(高エネルギー効率の家電商品、ヒートポンプ設備等)」「エシカルな家庭・個人用品(エシカルファッションや紙製品等)」といった分野も続いている。
つまり、エシカル消費はすでに確かな市場として成り立っており、企業もそれを無視できなくなっている。そして、個人の選択が集まることで、この市場は年々拡大しているのだ。
では、実際にエシカル消費に対する認知はどのくらい広がっているのか?そして、まだ実践が難しいと感じる人が多いのはなぜなのか?
日本人の「エシカル消費」の認知度は?
2024年10月に行われた消費庁による調査では、エシカル消費という言葉の認知度は30%にとどまる。(15歳以上の男女5,000人に対して)中でも、「言葉と内容の両方を知っている」と答えた人は7.5%と日本での「エシカル消費」の認知度はまだ高いとはいえない状況だ。
一方でエシカル消費を「よく実践している」「時々実践している」と答えた人の割合は前年比で30%の増加をみせた。実践理由は「同じようなものを購入するなら環境や社会に貢献できるものを選びたい(53.3%)」と回答した人の割合が最も高く、次いで「節約につながる(50.4%)」となった。

出典:消費者庁「令和6年度第3回消費生活意識調査結果について」(令和6年11月7日)より作成。([https://www.caa.go.jp/notice/entry/039947/])
エシカル消費が実践されにくい理由は「エシカル消費につながる商品やサービスがわからない」
改めて、「エシカル消費を実践していない」と答えた6割の人に理由を考えたところ、最も多かったのは「エシカル消費につながる商品やサービスがわからない」(23%)だった。これは「経済的に余裕がない」(20%)という結果を上回った。

エシカルな商品を見分けるために最も役に立つのものの1つは、認証マークの有無だ。エシカルな商品であることを示す国際規格には、以下のような認証がある。
- 国際フェアトレード認証:生産者に適正な賃金を保証し、公正な取引を支援する
- FSC認証:持続可能な森林管理を保証する木材・紙製品に付与される
- MSC認証:海洋資源を守りながら適正に管理された水産物に与えられる
- リーピングバニー認証:動物実験を行っていない(クルーエルティフリー)のコスメや日用品に付与される
このような認証を知ることで、よりスムーズにエシカルな選択ができるようになる。
ファッションにおけるエシカル消費の味方「Shift C」
ファッションにエシカル消費が必要な理由
世界中で、毎年大量の衣服が廃棄されている。こういった資源の浪費に加え、生産過程で発生する水質汚染やCO2の排出により、環境への負荷が深刻化している。さらに、素材の収穫や縫製の過程で、低賃金や限界的な労働環境など労働者の権利が侵されることも多いため、エシカル消費の重要性が一層重視されている。
こだわりのエシカルポイントでブランドを検索できる
エシカルファッションの総合サイト「Shift C」は、世界最大級のエシカル評価機関「Good On You」の評価を基に、ファッションブランドの取り組みを「人間」「地球」「動物」の3つの分野で5段階でわかりやすく提示している。それぞれの分野の評価基準となるのは、以下のようなポイントである。
「人間」
・強制労働の排除:児童労働の禁止、サプライチェーンの監査
・働きがいのある環境:安全衛生、差別禁止、結社の自由
・公平な待遇:生活賃金、労働時間、福利厚生
「地球」
・環境負荷の低い素材:オーガニックコットン、リサイクル素材など
・製品寿命:長く愛用できるデザイン、修理・リサイクルの容易さ
・温室効果ガス排出量:削減目標と達成度
「動物」
・動物福祉基準の設定:飼育環境、倫理的な扱い
・動物実験の廃止:動物を利用した商品テストの廃止
・トレーサビリティ:動物由来素材の生産過程を追跡
Shift Cは、従来の価格やデザインだけを重視したファッション選びから、エシカル度も考慮した選択をできるよう、現在約6000ものブランドのエシカル度評価を公開している。
Shift Cの特徴として、自身の消費が「地球」「人間」「動物」の各分野にどのように貢献しているかを点数で可視化できる点が挙げられる。これにより、消費者は自分がどの社会課題の解決に貢献しているかを明確に把握できる。
さらに、フィルター検索機能を活用することで、日本のブランド、ヴィーガンアイテム、価格帯など、自身の価値観に合致した商品を効率的に探すことが可能だ。
そんなShift Cを使いこなし、普段の買い物に生かしているユーザー約100名に対して、エシカル消費の実践状況や課題を聞いてみた。
Shift Cユーザーの9割がエシカルな商品の購入経験があり、その範囲はファッションに限らない
ーーーQ1.エシカルな商品を購入したことがありますか?

ーーーQ2. どんな商品を購入したことがありますか?

Shift Cユーザーは、ファッションに限らず、衣食住の全体的にエシカル消費に取り組んでいるようだ。服に関しては、購入時にサステナブルかどうかを意識する人は「いつも」「たまに」と答えた人が8割を占めた。(他の調査結果は別記事で紹介するのでお楽しみに!)
エシカル消費をさらに深める
企業の取り組みを知る
企業がどのような社会貢献活動や環境保護活動を行っているかを知ることも、エシカル消費を深める上で重要だ。企業のウェブサイトやレポートをチェックし、企業の姿勢を理解しよう。
企業のウェブサイトやCSRレポートをチェックすることで、企業の倫理的な取り組みを知ることができる。企業がどのような社会貢献活動や環境保護活動を行っているか、労働者の権利をどのように保護しているかなどを確認しよう。企業の取り組みを知ることで、より責任ある企業をサポートすることができる。
しかし、実際に企業が環境に良いことをしているように見せかけるために行うマーケティング手法である「グリーンウォッシュ」に注意することも必要だ。グリーンウォッシュには以下のような例がある。
・ロゴを緑色に変更する
・「エコ」「ナチュラル」「グリーン」といった曖昧な表現を用いる
・寄付や植林といった活動を行うものの、製品の生産段階における根本的な環境負荷削減への取り組みがない
2025年3月現在、日本国内でグリーンウォッシュへの措置はないが、これまでに消費者庁は、根拠のない「生分解性」をうたう製品に対し、行政処分の対象とするなど、グリーンウォッシュへの監視を強化している。
イベントやセミナーに参加する
エシカル消費に関するイベントやセミナーに参加することは、新たな発見や気づきを与えてくれるだろう。専門家から話を聞くことができるので、エシカル消費に関する知識を深め、自分の消費行動を見直すきっかけを得ることができる。また、同じようにエシカル消費に関心のある人と交流できるのも魅力だ。
講座への参加が難しい場合は、ドキュメンタリー映画を鑑賞するのもおすすめ。ユナイテッドピープルが配給している社会問題をテーマにした映画は、私たちが何ができるのかを考えるきっかけを与えてくれる。中にはYoutubeや各種配信サービスで取り扱いのあるものも。
情報発信をする
エシカル消費について、最も影響力のあることの1つは、情報発信をすることだ。エシカルな製品を使うのが難しい場合でも、エシカルなブランドや商品をSNSで紹介するだけでも、多くの人にエシカル消費を知ってもらうきっかけになる。自分の経験や考えを共有することで、誰かの行動が変わることもあるかもしれない。エシカル消費に関するニュースや記事をシェアすることも有効だ。
Shift Cでは、エシカル消費に関する海外のニュースや、取り組むブランドの紹介、そして衣類のケア方法などを発信している。
1人で発信するのが心細いときは、多くの人が投稿するタイミングに合わせるのもおすすめ。たとえば、世界食糧デーに合わせて開催される「#OnigiriAction」では、おにぎりの写真を投稿すると、アジア・アフリカの子どもたちに給食5食分に相当する100円が寄付される。また、3月11日に「3.11」と検索すると、1人につき10円が被災地支援団体に寄付される「3.11 検索は、チカラになる。」もそのひとつ。
他にも、環境保護のための法律改正を求めるオンライン署名に参加したり、災害支援のクラウドファンディングをシェアして広めたり、気軽にできるアクションがたくさんある。
まとめ:エシカル消費で未来を拓く
エシカル消費の実践と継続
エシカル消費を、難しく考える必要はない。例えば、買い物をする際に、商品のラベルをよく見て、環境に配慮した製品を選ぶ、フェアトレード製品を選ぶ、地元の製品を選ぶなど、ちょっとした工夫でエシカル消費を実践することができる。大切なのは、日々の生活の中で意識することなのだ。
エシカル消費を継続することで、自分の価値観を反映した消費行動を習慣化することができる。今日からできることから始め、持続可能な未来を共に築いていこう。