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アフリカ諸国に送り込まれるゴミ問題
映画の舞台はアフリカのケニア。サバンナや野生動物、隣国タンザニアのキリマンジャロを臨む国立公園など、自然豊かなイメージがある国だが、近年はゴミ問題が深刻な状況となっている。首都ナイロビに住むンザンビ・マテエがこの映画の主人公。彼女は廃プラスチックから舗装材を作る技術を開発した。

アフリカの国には先進国から多くのものが送り込まれている。古着回収・寄付と銘打って集められた衣服がアフリカに届けられ、山積みされているのはShift Cの記事でも紹介している通りだ。
さらには廃プラスチックの多くも送り込まれているというのだ。先進国ではプラスチックごみはリサイクすると謳っているが、数が多すぎて自国では賄いきれず国外に輸出している。ケニアでは2017年に使い捨てプラスチップ袋の使用、製造、輸入を禁止したが、密輸も指摘されている。

愛するケニアの自然を守りたいというシンプルな願い
もともと石油・ガス産業のエンジニアとして働いていたンザンビは、休暇で訪れたケニアの港で、ペットボトルやビニール袋が海一面に浮かんでいる様子に愕然とし、状況を変えるために行動を起こすことにした。
ケニアで以前から問題になっていた、舗装の劣化も同時に解決させたいと思ったンザンビは、廃プラスチックと砂を混ぜて舗装材を作る技術を開発したのだ。プラスチックが繊維質であることに着目したこの技術により、コンクリートよりも強度がありながら重量は約半分の舗装レンガが量産できるようになった。これにより、ンザンビは国連環境問題(UNEP)から2019年にヤング・チャンピオン・オブ・ジ・アース賞を受賞し、多くのメディアに紹介されることとなる。
と、ここまでは順風満帆だったが、その後は資金集めという大きな壁にぶち当たってしまうーーー。

作品ではケニアのゴミの山や貧困層が住むエリアの劣悪な環境などを映していて、観ていると時々胸を締め付けられる。しかしンザンビの明るいキャラクターにより、全編をとおしてポジティブなエネルギーを感じるのだ。さらに彼女は舗装材だけでなく、建築材を作ることを計画する。
ンザンビはゴミの山から換金できる素材を集めることを仕事にしている男性に、プラスチックの収集を依頼するのだが、これがあなたの家の素材になるかも知れないよと伝える。トタンでできた小屋ではなく、レンガでできた家に住む。彼女が起こしたアクションが、彼らの仕事に意味と夢を与えるのだ。

小さいアクションが大きなムーブメントを作る
この映画を制作したのは日本の一般社団法人ハミングバード(=ハチドリ)。この名前は『ハチドリのひとしずく』という物語に由来する。2004年にノーベル平和賞を受賞したケニアの環境活動家ワンガリ・マータイも、授賞式でこの物語を引用しているのだが、「ほんの小さいことでも、自分ができることをやろう、それが何かを動かすきっかけになるかも知れないから」というメッセージが込められている。作品内の「Act for nature!」というンザンビの言葉に、筆者も救われた気持ちになった。
ちなみにこの作品の総指揮を務めたのは俳優のオーランド・ブルーム。なぜ彼が? と思う人も多いだろう。実はこの作品の監督とパパ友だというのだ。子供を持つ人として、今の環境問題、ゴミ問題を看過できないと思い、オーランドも参加したのだという。
この作品は東京と大阪で公開されるが、全国の学校にアナウンスをして環境に関する問題、課題を啓発するプログラムとしては展開をしていく予定だという。既にエコロジー関係のイベントや、大使館、大学、企業から打診がきているとのことだ。
映画『EARTHBOUND(アースバウンド)』
東京:2025年3月14日〜20日@下北沢トリウッド
大阪:2025年3月15日〜21 日@第七藝術劇場
https://hummingbirds.or.jp/earthbound/