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ストーリー|2024.03.29

世界では1秒にトラック1台分の服が捨てられている。あなたが服を手放した後に起こる不都合な真実。

ジャーナリストのソフィー・ベンソンは、新著『持続可能なワードローブ』の中で、私たちと衣服との関係を冷静に分析している。不都合な真実のひとつは、あなたが善意で寄付した衣類が埋め立て地にたどりついているということ。ベンソンは、私たちが服を手放した後、何が起こるのかを教えてくれる。

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※Sophie Benson 著、White Lion Publishing 発行の『The Sustainable Wardrobe』から抜粋。この記事はGood on youの「Every Second, a Truckload of Clothes Is Destroyed—How Did We Get Here? 」を日本市場向けに翻訳して公開しています。

あなたの捨てた服はどうなっているのか?

現実に目を向けよう。毎秒トラック1台分の衣類が燃やされたり、ゴミ埋め立て地に捨てられている。想像を絶する量の服が廃棄されることになるが、これらの衣類はすべて人間の技術と貴重な天然資源の結晶だ。
トラック1台分の中身はというと、3割がメーカーやブランドから出される廃棄物や残布、なかには販売されなかった服もある。しかしほとんどは直接的または間接的に、私たち消費者が手放したものだ。

2018年アメリカで捨てられた繊維製品は1700万トンで、これは都市ゴミの5.8%にあたり、多くは廃棄された衣類だった。それに比べ1960年に廃棄された繊維製品はわずか170 万トン、10分の1の量だ。もちろんこれはアメリカに限ったことではない。ヨーロッパでは1人が1年におよそ11kg の衣類、靴、布製品を捨てていると言われており、シンガポールでは5 分おきに 1トンの繊維ゴミが捨てられている。

ゴミの真実に恐ろしさを感じて、着なくなった服を地元のチャリティーショップに寄付したいと思う人も多いだろう。しかし実際は、あなたの努力に関わらず、寄付はゴミになっている可能性が非常に高いのだ。
私が手放した服の多くが、世界中のゴミ埋め立て地に眠っていることは間違いない。もちろん、若い私が何も知らずにゴミ箱に捨ててしまったものもあるけれど、きれいに洗って、分類し、寄付した服も、おそらくその隣にあるはずだ。この数十年でファッションの大量消費は急速に拡大し、私たちは年に何十億着と作られる服に、正しく対応する術をもっていないのだ。

チャリティーショップでは大量の服を処理できない

クローゼットの断捨離をして、それをすべてチャリティーショップに持っていくとしよう。自分の服が古着としてもう一度だれかの手に渡る様子を思い浮かべたはず。けれど実際のところ、私たちが寄付したい量をチャリティーショップではさばききれず、寄付の 90% は輸出されてしまう。新型コロナによるロックダウン後に、この事実が明らかになった。
ロックダウンの間、家で時間を持て余した多くの人々は自宅の片づけをし、かつては喜びをもたらした服がもういらなく思えて手放そうとした。けれどみんなが同じ行動に走ったためチャリティーショップは寄付を断らざるをえず、それでも服は届き、再販できない大量の服は回収業者に売られたのだ。

寄付された衣類がアフリカに捨てられる

衣類が回収業者の手に渡ると、通常は品質ごとに分けられる。一部は埋め立てまたは焼却され、一部はマットレスの詰め物や断熱材などにダウンサイクルされ、残りはプラスチックに包まれて輸出される。
衣類は世界中に送られるが、グローバル・サウスは特にその中心で、世界中で寄付された衣類の 70% 以上がアフリカにたどり着く。ガーナのアクラにあるカンタマント市場には週に1500万点の商品が届くが、そのうち40% は品質が悪かったり、傷んでいたり、ガーナの気候や暮らしに合っていないため、ほぼ即座に埋め立て地に送られてしまう。輸出のごく初期には、ヨーロッパの衣類が喜ばれることもあったけれど、寄付はすぐに持続不可能なレベルにまで増え、地元のアパレル産業を弱体化させ、地元の人々はビニールに包まれた衣類の山に囲まれることになったのだ。

「とこか遠く」なんて場所は存在しない

環境活動家でグリーンピースのアニー・レオナルドが言うように「どこか遠くに捨てると言っても、『遠く』などという場所は存在しないのです。私たちは最終的なその場所まで責任をもって行かなければいけません」。ガーナのカンタマント市場は、その一例にすぎない。ケニア、ルワンダ、ザンビア、そしてハイチやチリにもある。チリのアタカマ砂漠には、毎年輸入される6万トンの衣類の半分が捨てられている。

かつては寄付をしたら、その後に何が起こっているかはよくわからなかった。しかし今ではカンタマント市場で活動する「オル財団」のような団体のおかげで、衣類の輸出が現地に及ぼす影響を知ることができる。重さ55kgを超える服の塊を頭の上に乗せて運ぶポーターの怪我や死亡について知ることができるし、ガーナの海岸に散らばった売れない服の山の写真が世界中にシェアされている。もちろん、すべての衣類が廃棄物になるというわけではない。オル財団によれば、カンタマントでは毎月2500 万着の衣類を再循環させることができており、これはグローバル・ノースのファッションブランドが夢見る循環性と持続可能性のレベルだろう。

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新しい衣類に生まれ変わるのは繊維廃棄物の1%未満

このような事実を知って、もう二度と衣類を寄付したくないと思うかもしれない。では衣類のリサイクルは? 最近では多くのブランドが、店で回収した衣類のリサイクルや、再生素材からできた新商品について語っている。しかし現在、繊維廃棄物が新しい衣類用の繊維にリサイクルされる割合は 1%にも満たないのだ。

これにはいくつかの理由があり、まず繰り返しになるが、私たちはテクノロジーが問題を解決するにはあまりにも大量の服を、あまりにも短時間に作りすぎている。第二には、異なる素材が使われた混紡生地は、リサイクルが難しいという問題がある。
クローゼットにある服のラベルを見てみてほしい。私たちの衣類のほとんどが混合素材で作られていることに気づくだろう。多くの場合綿とポリエステルの混紡だけれど、もっと多い場合もある。最近私が広告を見たあるデザイナーのキャミソールは、アセテート、ビスコース、綿、ポリエステル、ポリアミドでできていた。糸、ジッパー、ボタン、スナップ、肩ひものストッパー、その他多くの仕上げを入れると、一着に使われている素材は相当な数になる。

ポリエステルの服を再生するより、ペットボトルが好まれる理由

ここで、家庭から出るゴミについて少し考えてみよう。紙とプラスチック、缶と段ボールを分けることは、私たちの生活の一部になっている。しかし、綿とポリエステル、ビスコースを分けることは不可能なので、私たちの衣服はひとつの大きな“混合物”としてリサイクルへと向かうことになる。

寄付と同じように、回収ボックスに入れられた服のほとんどは、ぼろ布、中綿、断熱材にダウンサイクルされる。もちろん1% 未満とはいえ、繊維へ生まれ変わる服もある。綿、ウール、リネンなどの天然繊維は通常、機械的にリサイクルされ、機械で細断されて新しい糸に紡がれる。ただしこのプロセスにより繊維が短く弱くなるので、耐久性を確保するためには新しい繊維を加える必要がある。
ポリエステルやナイロンなどの合成素材は、溶かされケミカルリサイクルされ、新しい繊維に再紡績される。技術的には古いレインコートはリサイクルできるけれど、ファッションブランドやスポーツウェアブランドは、古いポリエステル製の衣類をリサイクルするよりもペットボトルの再生繊維を好む傾向がある。ペットボトルのリサイクルは固定剤などで「汚染」されていないため、より扱いやすくコストも抑えられるからだ。

イノベーションがすべてを解決するわけではない

衣類のリサイクルシステムはまだまだ確立されていないけれど、技術革新に熱心に取り組んでいる人々の存在は希望の光だ。
いくつかの企業はリサイクルを推進するため画期的な新技術を開発し、世界的なブランドが試験的に導入している。例えば、コットンの廃棄物は溶かされてパルプになり、真新しい生地に生まれ変わる。ロボットの力を借りて服を再生糸にする試みもある。さらにポリエステルと綿を分離して原料に戻すことも可能だ。古い布地は「分子レベルでの再生」を経て新しい素材になり、一定の温度で溶ける糸を使った服なら熱分解でリサイクルすることもより簡単になる。これらの新技術が地球規模で運用できれば、服のゴミが埋め立て地に送られることはなくなるだろう。
しかし、化学薬品や水、エネルギーの使用など、それぞれに環境面でのデメリットがある。究極の解決策はやはり、衣類や生地を新しい繊維にリサイクルすることなく、できるだけ長く着続けることなのだ。

衣服は自然の恵みと文化が合わさった貴重な資源

現在の捨てられ方を見るとそう思えないかもしれないけれど、衣類は貴重な資源だ。農作物、水、石油などさまざまな自然の恵みを使い、栽培、紡績、縫製に多くの熟練の技が注がれている。かつて生地や衣服が高価だった時代は簡単に捨てられることはなく、子供服などに再利用され、それでも着られなくなったものは、はたきや雑巾になった。衣料品は当たり前のように長く多様な寿命をもっており、そして今多くのクリエイターがその事実に注目している。

ハイエンドのデザイナーから趣味のケースまで、人々は古着を裁断し、つなぎ合わせ、ユニークなアップサイクルデザインを生み出している。パッチワークのコートや、半分スカーフ、半分ヴィンテージブランケットのようなジャケットは、古着に新たな命を吹き込み、クローゼットに楽しさをもたらしている。ここにあるのは、ルールではなく、無限のアイディアだけだ。

グローバル・ノースからの服のゴミを受け入れた国々では、意志あるデザイナーたちが使い古された T シャツ、パーカー、セーターを駆使してユニークピースに変え、世界中の顧客に販売している。「古着を再デザインし、グローバル・ノースに再分配する」と語るウガンダ発のブジガヒルのようなブランドは、世界にこの問題を知らせ、後続ブランドのお手本となる存在だろう。

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今のところ、私たちが手放した衣類のほとんどが行きつく先は埋め立て地だ。しかし、有意義でポジティブな解決策を広めることができれば、大量消費に歯止めをかけ、「買って、着て、捨てる」流れを断ち切ることができるだろう。

Shift Cが日本語版を提供するオーストラリア発のエシカルファッション評価機関Good On Youは、ファッションブランドが人間や地球、動物に与える影響について、世界で最も包括的な評価を公表しています。ブランドの評価を検索するには、ShiftCをぜひ活用してみてください。Photo:Shutterstock

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