鈴木 里奈
2001年生まれ、東京都出身。青山学院大学在学中、フェアトレードゼミで環境や社会課題に関連する商品の開発に取り組み、サステナビリティを広めるためミス青山として活動。その後、学生キャスターとしてラジオやテレビ東京の経済番組に出演し、ESG経営インタビューを通じて持続可能な社会のための発信に注力。大学卒業後はインパクト/ESG投資のVCファンドでサステナビリティコンサルティングを行う傍ら、一般社団法人IMPACT SHIFTの理事やSNS発信を通じたサステナブルライフスタイルやウェルビーイングにも取り組む。
Contents
1. VEJA(ヴェジャ)とは?
こんにちは。公式アンバサダーShift Changerの鈴木里奈です。前回の記事では、EUの法規制が変える服作りの未来ということで、サステナブルファッションに関わる重要な法律についてご紹介しました。今回の記事では、より具体的な海外事例として、フランス発のサステナブルスニーカーブランド「VEJA(ヴェジャ)」の魅力についてご紹介します。
街中で「V」の印象的なデザインが施されたスニーカーを見かけたことはありませんか?または、Shift Cの読者の皆さんの中には、すでに愛用している方もいらっしゃるかもしれません。
私がヴェジャを知ったきっかけは、街でおしゃれな人が履いていたスニーカーを見たことでした。そのデザインに惹かれ、調べてみたところ、エシカルな製法にこだわるブランドだと知り、さらに心を掴まれました。シンプルでミニマルなデザインなのに、地球や社会に配慮した製品づくりをしているなんて、まさに「目から鱗」でした。もっと早く出会いたかった!というのが正直な感想です。
そんなヴェジャは2005年にフランスで誕生したサステナブルスニーカーブランドです。もともとデザイナーではなかった創業メンバーが自らデザインを手掛け、「10年間履き続けられることが誇らしいと思えるようなスニーカーを作る」という理念のもと、デザイン性と社会的責任の両立を目指しました。ブランドの理念の中心には「サステナビリティ」が据えられ、環境や社会に配慮した製造プロセスが採用されています。現在では、有名ブランドとのコラボレーションや新作コレクションの発表が続き、世界中に店舗を展開中。さらに、社会や環境への取り組みが評価され、公益性の高い企業に与えられる世界的認証「B Corp」も取得しています。
では、ヴェジャが具体的にどのようにサステナブルな取り組みを行っているのか、私が考えるヴェジャの魅力とあわせてご紹介していきます!
2. ヴェジャの魅力(1) 環境と人に優しい生産
アパレル生産で使われるコットンは、たくさんの水を必要とし、汚染物質を排出するため、環境に大きな負担をかけると言われています。そこでヴェジャは、ブラジルとペルーで生産されたオーガニックコットンを使用。これをシューズのキャンバスや靴紐に活用しています。
注目したいのは、ヴェジャがこのオーガニックコットンを、生産者から直接仕入れていること。さらに、市場価格よりも高い価格で購入することで、生産者の生活をサポートし、持続可能な農業を応援しているのです。こうした取り組みは、環境への負担を減らすだけでなく、コットンを育てる農家の方の収入を安定させ、地域の暮らしを支えることにもつながっています。
さらに、ヴェジャ のソールには、20~40%のアマゾンの天然ゴムが使用されていたり、ペットボトルをリサイクルした素材やトウモロコシ由来のヴィーガンレザーも採用されています。このように、厳選された素材で高品質なアイテムを生み出しているところがヴェジャの魅力です。
3. ヴェジャの魅力(2) 透明性の高さ
ヴェジャのもうひとつの大きな魅力は、透明性の高さです。公式ウェブページを見てみると、「いつ、どこで、誰が、何を」生産しているのか、思わず「ここまでわかるの!?」と驚くほどの情報が公開されています。
例えば、「○○年に○○で生産された素材が○○を経由して○○に調達された」という情報や、「○○工場では○○人が働き、○○時間の休憩が取られ、平均○○の給与が支給されている」といった内容まで詳細に確認できるのです。ここまで情報を公開しているブランドは、なかなか見つからないのではないでしょうか。実は私も、スニーカーを選ぶつもりでウェブページを訪れたのですが、ヴェジャのストーリーや取り組みの深さに引き込まれ、ついお買い物を中断してしまいました(笑)。
では、そもそもなぜ「透明性」がそんなに大事なのでしょうか?それは、透明性が高いブランドには“嘘がない”からです。もし、魅力(1)でお伝えした「環境や人に優しい生産」が見せかけや嘘だったらどうでしょう?そんな行為を「グリーンウォッシュ」と呼びます。これは、「環境に優しい」と見せかけて実際にはそうではない行動のことを指します。
残念ながら、グリーンウォッシュを行う企業は少なくありません。そんな中で、ヴェジャのように透明性を徹底し、すべてのプロセスを公開することは、「私たちは本当にやっていますよ」という証明でもあり、消費者や投資家からの信頼を得るための大きな武器になっています。だからこそ、「どこで、誰が、どう作ったか」をしっかり知りたい人や、エシカル消費に関心を持つ人にとって、ヴェジャは間違いなく支持されるブランドなのです。
ちなみに、VEJAの名前の由来もポルトガル語の「見る」という言葉からきており、スニーカーを通じてその背景まで見ることの大切さが込められているようです!
4. ヴェジャの魅力(3)ユニークな取り組み
3つ目の魅力は、「ほとんど広告を出さない」ことです。これはとてもユニークな取り組みですよね。一般的に、多くのファッションブランドは予算の大部分を広告費に費やし、できるだけ多くの人に知ってもらうためにマーケティングに力を入れています。街中を歩けば、駅やビルの広告が週替わりで変わるのを見かけますし、SNSではAIのアルゴリズムによって自分好みのアイテムの広告が流れてくるのが当たり前になっています。
ところが、ヴェジャでは広告にほとんどお金をかけません。その代わり、その分の予算を労働者の労働条件の向上やスニーカーの生産、素材の品質向上にあてています。これにより、環境や人に優しい素材の使用や、透明性の確保といった取り組みが可能になっているのです。このアプローチは、価格を抑えながらも持続可能な価値を提供するヴェジャの哲学を体現しています。
さらに面白いのが、ヴェジャの「ブラックフライデー」に対する姿勢です。多くのブランドがこの時期に大規模なセールを実施する中、ヴェジャは「REPAIR FRIDAY」と題してスニーカーの修理サービスを無料で提供しています。「今持っているものを大切にしよう」というメッセージを発信し、消費を煽るのではなく、持続可能な消費を促しているのです。
この取り組みは、他のブランドとの差別化だけでなく、ヴェジャのアイデンティティを強め、熱心なファンを生み出すきっかけにもなっています。
5. ヴェジャを選ぶ意味
今回は、私の視点からヴェジャの魅力をご紹介しました。サステナブルな商品は、ファストファッションとは異なり、生産過程で環境や人への配慮が行き届いているからこそ、それが価格に反映されています。「お手頃」とは言いにくいかもしれません。
しかし、ヴェジャのコンセプトにもあるように、「10年間履き続けられる」ことを目指して作られているスニーカーは、ただの靴ではありません。それは、サステナブルな未来への投資と考えることもできますよね。実際に履いてみると、どんなコーディネートにも合わせやすく、長時間歩いても足が疲れにくいので、とても重宝しています。デザイン性だけでなく機能性も抜群なので、「買ってよかった!」と心から思える一足です!
さらに、Shift Cの評価でも「良い☻」を獲得しています!特に「人間」の項目は5点満点。これは、ヴェジャがフェアトレードや労働環境の透明性に力を入れていることの証だといえます。
もしこの記事をきっかけに、少しでもヴェジャに興味を持っていただけたら嬉しいです。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!