※この記事はMushrooms, Cactus, Cork, and More: 10 Leather Alternatives to Watchを日本語訳にしたものです。
古代から狩猟の副産物として衣類や道具に活用されてきたレザーは、今や定番アイテムとして多くのファッショニスタに愛用されている。しかし現代のファッション産業では、食肉の副産物を活用するだけではなく、ファッションアイテムにするためだけに動物を畜産するケースも多くみられている。エシカルにファッションを楽しむには他の選択肢が欲しいものだ。
Contents
プラスチックの”エシカルレザー”?!
現状、多くの代替レザーは耐久性のためにプラスチックや化石燃料由来の原料を使っている。接着剤などで強化した素材には、コーティングで耐水性やメタリック仕上げを施すことが多い。こうしたアイテムは、従来のPVCレザーのような環境負荷の高いものではないとしても、マイクロプラスチックが環境中に放出されることは間違いなく、生分解性も持ち合わせていない。
一部の代替レザーにはバイオベースのプラスチックが使われているが、その生物資源もプラスチックを使って加工されているため、生分解性の保証はないのだ。製造工程の透明性が高ければ、どのプロセスでプラスチックが使用されているか判断することができ、使用後のリサイクルに大きく役立つが、現実はそうもいかない。
素材選びのヒント
ブランドが取り組むべき課題は素材そのものだけではない。例えば、動物素材を使っていなくてもサプライチェーンでCO2排出や廃棄物、有害な化学物質使用に対する取り組みがなされていなければ本末転倒だ。
動物由来でなく環境への負荷もかかりにくいレザー選びのポイントは何だろう。そんな疑問にはShift Cの素材ガイドをぜひ活用してほしい。自分のワードローブを作るのは自分だからこそ、こうしたガイドを見ながらポイントを見極めることが大切だ。新素材がレザーに匹敵するほど丈夫で長持ちするものとして活用されるには、いまだ多くの課題があるが、世界のイノベーティブ企業が代替素材を探す旅路を明るくしようとしている。
ピニャテックス
ピニャテックスは、パイナップルの葉の繊維から取れる天然素材で、従来はパイナップルの収穫の際に廃棄されてしまっていたものだ。繊維を天日乾燥させ、トウモロコシを原料とするポリ乳酸を加えてピニャフェルトというベース素材を作り、加工を施すことでパイナップルレザーが完成する。植物由来という特徴はもちろん、農家は廃棄物として捨てられていたものから副収入を得られるため、コミュニティ支援にもつながる。
製造会社のアナナス・アナム社によるとピニャテックスのコーティングには認証を受けた水性ポリウレタンを使っているものの、素材自体は100%生分解性ではないという。今後の成長にも期待したい。
ミラム
天然ゴム、植物油脂、天然色素、鉱物から作られたミラムは、色や質感はもちろんのこと、厚みもカスタマイズ可能な適応性の高い素材として開発されたレザー代替品だ。ミラムを開発したナチュラルファイバーウェルディング社は「当社が特許を取得した植物由来の硬化剤を使用して作られたもので、プラスチック由来のシステムに変わるバイオニュートラルなもの」とアピールしている。ミラムを積極的に取り入れているブランドとして、パンガイア(良い)やステラ・マッカートニー(良い)、オールバーズ(ここから)が挙げられる。さらに2023年9月には、テクノロジー企業IPCOと提携してミラムの生産規模を拡大することに合意。待望の生分解可能なプラントベースレザーが市場に流通する日もそう遠くはないかもしれない。
バイオテックス
バイオテックスは糖や酵母を独自の技術で発酵するバイオ合成技術を活用した素材で、ソフトで高級感のある質感が特徴だ。開発元のモダンメドウ社によると、バイオテックスの生産で発生する温室効果ガス排出量は、従来のクロムなめし革に比べて91%削減可能とのこと。エバーレーン(ここから)の商品にも使われている。
デセルト
アドリアーノ・ディ・マルティ社が開発したサボテンレザー、デセルトも期待の星となる代替素材だ。メキシコを中心に多く生息するウチワサボテンから作られるデセルトは、栽培に必要な水分量が少ない。メキシコのサカテカス州にある同社の農場では、栽培に雨水を利用しており、有害な化学物質も不使用とのこと。スニーカーやウォッチストラップそして財布と汎用性が高いのも特徴で、バレンシアガ(ここから)などのブランドが素材として採用している。
2023年2月のガーディアン誌の記事によると、2021年にFILKフライベルク研究所が行った調査で、デセルトにポリエステルが含まれている可能性を示唆されたという。これに関してアドリアーノ・ディ・マルティ社は他の商品の製造過程で意図しない混入が発生した(クロスコンタミネーション)が原因と回答している。
ココナッツ素材
マライ社の「ココナッツレザー」は、南インドのココナッツ農家からでた廃棄物をアップサイクルした商品だ。しかしその質感はアニマルレザーとは一線を画していることから、同社は「動物皮革に似せた商品とは思わないでほしい」と伝えている。
通常であれば投棄されて汚染源となってしまうココナッツウォーターをバクテリア培養のえさとして活用し、12日〜14日後にシート状の素材が出来上がる。ここに植物由来のゴムや繊維をブレンドして素材が出来上がる。染色のプロセスを含めて自然由来なので使い終わったら土に返すことができるのだ。
湿気に弱い点は課題とのことで「元々丈夫に作っているが、環境や使用頻度によってほころびが生まれることもある。まめに手入れすることで4〜8年程度愛用できる」とブランドは語る。日本にも浸透しつつある素材なので、ぜひチェックしてみよう。
アップルスキン
見た目は本物のレザーさながら、紙のような質感のアップルスキンはりんごの収穫過程で廃棄され得る皮や芯を活用している。手ざわりはコーティング次第で簡単にバリエーションを加えることができるそう。水性ポリエステルが使われており、生分解性には言及がない。ヴェーラ(良い)がこの素材を使って靴を販売している。
開発元のヴェガテックス社は飲料産業の副産物を活用したレモンスキンや、バドワイザー社の醸造過程で生まれた穀物のかすをアップサイクルしたバーレイスキンも商品化している。
マッシュルーム由来の「マイロ」
マイロは菌糸体から作られるレザーで、100%再生可能エネルギーで稼働させた設備で製造される。長期的に愛用できるように少量のリヨセルや水性ポリウレタンを仕上げに使っているとのこと。2021年にはステラ・マッカートニー(良い)がVOGUE誌の撮影用にマイロでビスチェとパンツを製作したのを皮切りに、その後もバッグに使用した。またGANNI(ここから)もアクセサリーにマイロを活用している。
次なる低負荷素材の大本命として脚光を浴びたマイロだったが、残念ながら投資不足を理由に2023年に生産停止を余儀なくされている。
ワックスアイテム
ジャケットやバッグに使われてきたワックス素材が、さまざまなアイテムにも広がりを見せている。レザーよりもアニマルフレンドリーで、再びワックスがけをすることで新品同様になる点は画期的だ。ワックス加工されたアイテムはリペアも簡単なので、ヴィンテージアイテムとしても理想的。キャンバス地やコットンが主な素材となっているため、アイテムをお探しならぜひオーガニックコットンから見てみては?
コルク
軽くて、丈夫で、ケアも簡単。そんなアイテムをお探しならコルクレザーがおすすめ。コルク樫の木から取れる植物繊維で、樹皮を使うのが特徴だ。木の寿命はおよそ300年と言われ、およそ10年周期で樹皮を剥いでいく。伐採せずに剥皮を行うだけで、木そのものは生き続けるのでサステナブル。収穫された樹皮は半年ほどかけて乾燥させ、煮沸を経て生地になる。水性ポリウレタンで裏打ちされている場合が多いので、家庭でコンポストすることは難しい。
リサイクルゴム
リサイクルゴムは生分解性には優れていないものの、サステナブルでアニマルフリーなレザーとしてチェックしたい素材だ。現在市販されているゴムの多くは合成で、植物由来ではない。使えなくなったタイヤや消防ホースなどのゴム製品に新たな命を吹き込み、ファッションアイテムとしてアップサイクルされたものを愛用するアイデアはいかがだろう?
Shift Cが日本語版を提供するオーストラリア発のエシカルファッション評価機関Good On Youは、ファッションブランドが人間や地球、動物に与える影響について、世界で最も包括的な評価を公表しています。ブランドの評価を検索するには、Shift Cをぜひ活用してみてください。