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ストーリー|2024.04.22

アンゴラって何の毛? エシカルなファッショニスタのための究極の素材ガイド【後編】

世界6000以上のブランドのエシカル度をレーティングしているGood On Youが、ファッション業界の専門家からの最新情報を参考にしながら、現在考えられる「最もエシカルな」素材ガイドを作成した。植物性の繊維について紹介した【前編】に続き、動物性繊維と合成繊維等を分析する【後編】をお届け。

 

翻訳:スパロウ真奈  写真:Shutterstock

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デザインのバリエーションを生み出す動物由来の素材

アンゴラ

アンゴラとは、アンゴラウサギの4品種のうちの1種から採れる長く絹のような繊維のこと。毛皮はその柔らかさ、暖かさ、丈夫さで珍重されてきた。セーターやスカーフなどに柔らかさを加えるため、他のウールとブレンドされることも多い。ちなみにアンゴラヤギからとれる毛で作られるのは「モヘア」。
PETAが中国にある工場のいくつかでアンゴラウサギが劣悪な環境で飼育されているという情報を発表して以来、アンゴラの生産は非難を浴びるようになり、大手ファッションブランドの多くがアンゴラの使用を取りやめた。

MEMO

 アンゴラの毛を採取する際、ウサギに苦痛を与えないような福祉基準は認められていないのが現状。

カシミヤ

カシミヤは世界で最も希少で贅沢な繊維のひとつ。シルクのようになめらかなこの素材は、ウールの3倍暖かく、長持ちすることで知られている。しかし、カシミヤは一般的に思われているほど、サステナブルな素材ではない。
最初の問題は、カシミヤの需要が高まったことで群れの規模が拡大し、モンゴルの草原の砂漠化が進んでいること。これに気候変動が重なり、砂漠化の問題はいっそう深刻だ。また、カシミヤヤギには脂肪がほとんどなく真冬に早く毛を刈りすぎると凍死してしまうため、安価なカシミヤ生産で真っ先に犠牲になるのはヤギなのかもしれない。また、カシミヤヤギを飼う人々の労働環境に対しても疑問が高まっている。

MEMO

どうしてもカシミヤが必要なら、リサイクルカシミヤや古着のカシミヤの購入を検討しよう。

毛皮

古代より人は寒さから身を守るために毛皮を使ってきた。何世紀もの間、動物は食用として狩猟され、その毛皮を外気から守る実用的で耐久性のある素材として活用してきた。20世紀、ハリウッドスターがエキゾチックな毛皮をまとって登場し、毛皮は高級ファッションの頂点に君臨することになる。それ以来、富と魅力を体現するアイテムとして、毛皮産業は大きなビジネスに成長した。
PETAなどの動物保護団体は、毛皮の生産現場における非人道的なやり方を長い間取り上げてきた。毛皮産業が抱える環境問題や労働問題については言うまでもなく、その多くはレザー製品と似た状況を抱えている。
このような理由から数多くのブランドや国が毛皮製品の取り扱いや流通を禁止し始めている。一方で重要なのは、先住民族のなかには、動物の皮や毛皮が生活に欠かせない道具であり、唯一の収入源となり、地域社会への貢献になる場合もあるということ。グローバルノースの牧畜業を無視する一方で、先住民族の文化や収入源を批判の対象にすることは、一貫性に欠ける短絡的な考え方と言えるかもしれない。

MEMO

 ここでも大切なのは個人の価値基準。動物福祉を第一に考えるのであれば、毛皮を使用した製品を避けるはず。

レザー

パンクからエレガントまで、さまざまなスタイルにマッチするレザー。革製の洋服や靴、バッグは、その寿命の長さや汎用性は高いものの、エシカルなアイテムとは言いづらいのが現実。動物愛護に関する問題以外にも、環境や労働者に対する影響も忘れてはならない。他のどの素材よりも多くの水と土地を必要とし、なめし工程では六価クロムのような有害な化学物質が使用され、排水だけでなく人体にも影響する。
 植物タンニンなめしは、長い間 「持続可能ななめしの選択肢 」とされてきたが、その正確さが再精査されている。
パイナップルレザー、コルク、アップサイクルラバーなどはどうだろう? これらの新素材が環境に与える影響についてはまだ十分に評価されていないけれど、PVC製の 「フェイクレザー 」や、より一般的なポリウレタン製の 「ヴィーガンレザー 」よりも好ましいことは間違いない。 ポリウレタンは環境に大きな影響を与えるものの、ポリ塩化ビニールのような他の合成繊維よりは良い選択肢で、動物性皮革よりも影響は少なく済む。

MEMO

 個人の価値観によって、古着のレザーを選ぶかリサイクルレザーを選ぶか、あるいは完全に避けるか、あなたの判断を。

シルク

絹は蚕のまゆの内側にある長い糸から紡がれる。この繊維は実は唾液で、蚕が身を守るために分泌される。生糸が巻き取られていくなか、蚕は絹を取り出す過程で死んでしまう。 また、インドではシルク生産で児童労働が横行しており、子どもたちが虐待されているという報告もあり、情報源を確認することが大切。
シルクの製造工程に、より致死率の低い代替手段を見つけることは可能だ。アヒムサシルクは別名 「ピースシルク 」とも呼ばれ、繭を煮る前に蚕を外に出すことができる。アヒムサシルクの仲間として、「エリシルク」や「タッサーシルク」などがあるが、ピースシルクは必ずしも環境に良いとは言えない。
動物性シルクを避けたい消費者にとって注目すべきヴィーガンシルクが、ヴィーガンスパイダーシルクだ。「マイクロシルク」はカリフォルニアに本社を置くボルトスレッズ社が製造する実験室で作られたクモの糸の商標名で、合成繊維でありながら土地も化学薬品も必要とせず、水、酵母、砂糖、DNAを少々加えるだけで製造ができる。

 MEMO

 シルクやその代替品を購入する際は、搾取や環境破壊に加担しないよう調達元を確認したい。現在、マイクロシルクは限られた範囲でしか商品化されていないが、ステラ・マッカートニーのような有名ブランドでは使用されている。

ウール

ウールは、再生可能な資源で、汚れにくく、場合によっては生分解性などの利点も備えているが、ウール生産が地球と動物に与える影響は大きい。例えば羊のミュールシングには賛否両論があり、購入するならミュールジングをしていないことを保証するアイテムを選びたい。工業的畜産は土地の荒廃や劣化を助長させる可能性も秘めている。家畜放牧のためのより包括的な農地管理の方法には注目が集まっているものの、まだ広く実践されているわけではない。「スーパーウォッシュ」と呼ばれるプラスチックを注入したウールや、合成繊維と混紡されたウールは生分解性を失っている。ウール素材は長持ちするので、長く愛用するためにも、古着のウールアイテムを探してみて。

MEMO

リサイクルウールや古着、ヴィンテージ品から作られた服を探してみよう。Responsible Wool Standard(レスポンシブルウールスタンダード)、ZQメリノスタンダード、Soil Association Organic Standards(ソイルアソシエーションオーガニック基準)の認証を受けたウールも選択肢として注目したい。

ダウン

ダウン産業も、毛皮や皮革と同様に考えたい。アヒルやガチョウの羽を取り、中には生きたまま羽をむしりとられることもある。その羽毛は売られ、また新しい羽毛が生えてきたら、また引き抜かれるの繰り返しだ。
ダウンの生産はアヒルやガチョウに苦痛を与えるだけでなく、地球にも影響を与えている。羽自体は生分解可能であっても、それはコートの内側に詰められていて、大抵の場合はコートの生地自体は生分解可能な素材から作られていない。例えリサイクルポリエステルを使用して多少サステナブルになったとしても、効果的に生分解されることはない。

MEMO

ダウンはすべて、屠殺されたり生きたまま羽をむしられたアヒルやガチョウの羽。残念ながら鳥の羽を使う限りこの道を回避する方法はなく、レスポンシブルダウン規格のような認証を考慮しても、鳥は自然寿命よりはるかに短く、屠殺されるまで工業型農場で飼育される。
古着のダウンコートを選ぶか、PrimaLoft P.U.R.E (プリマロフト)、PrimaLoft Bio(プリマロフトバイオ)Thermore(サーモア)、カポックなど植物由来のダウンなど、よりエシカルな代替品を探してみよう。

最も使われる「ポリエステル」はじめ便利な合成繊維

フェイクファー

毛皮産業が及ぼす倫理的・環境的影響の大きさから、ファーフリーへと業界がシフトしている。しかし、まるで毛皮を使用しているかのようなデザインは依然として人気を博し、残念ながら毛皮の代わりに大量生産されたフェイクファーはサステナブルとはほど遠い。フェイクファーは基本的にプラスチック由来の素材が多いため、おのずと環境への悪影響に繋がってしまう。

MEMO

環境への悪影響をよく考えて選びたい。どうしても欲しい場合は古着あるいはヴィンテージから選択してみては。

グリッター

化粧品や雑貨、衣料品に使われるグリッターの多くは、ポリエチレンテレフタレートのような薄いプラスチックのシートをアルミニウムのような光沢のある物質でコーティングし、何百万もの小さな破片に切断して作られている。 つまり、私たちがキラキラの服をすすぎ、キラキラの髪や顔を洗い、キラキラのアクセサリーを身につけて、洗うたびに、私たちは海のマイクロプラスチック汚染に加担している可能性がある。とはいえキラキラにときめく私たちに朗報です。生分解性素材から作られた、より配慮あるグリッターも発売されている。

MEMO

プラスチック由来のグリッターは避けて、生分解性のあるものを選んで。

コンベンショナル(=従来型)ナイロン

ナイロンは、第二次世界大戦中に生まれた最初の完全合成繊維。石炭や原油由来のプラスチックから作られ、その後、強力な化学加工を経て、布地として使い勝手のいい強靭で伸縮性のある繊維が作られる。ナイロンの製造は、世界でも汚染に加担しているといわれる石油産業を支えているだけでなく、直接的にも環境に悪影響を及ぼしている。
ECONYLは、再生プラスチックを原料にクローズドループシステムで作られた革新的なナイロンの代替品。コンベンショナルナイロン製もECONYL製も、どちらもマイクロプラスチックファイバーが抜けやすい点は注意して。
イタリアのアクアフィル社が開発したECONYLは、工業用プラスチック、繊維廃棄物、捨てられた漁網から、バージンナイロンとまったく同じ品質の新しいナイロン糸を作っている。6段階のクローズドループシステムによって再生されるECONYLはコンベンショナルナイロンよりも、廃棄物と水使用を削減できる。廃棄物が回収され洗浄・細断されたあとに化学処理でナイロンが抽出され、糸となり、再び商品化される。

MEMO

 マイクロファイバーの流出には気をつけつつ、従来型のナイロンでなく、ECONYLで製造されたナイロンを購入するよう心がけたい。ECONYLは海洋廃棄物を回収して作られる分、海とその生態系を守る革新的な素材であるのは確か。しかしあくまで元の素材はプラスチックであり、最も大きな水質汚染源であるマイクロプラスチックの流出を避けることはできない。もちろん洗濯だけがマイクロプラスチック流出の元凶ではないけれど、購入するアイテムはECONYL素材のものに注目した上で、洗濯するときは、洗濯ネットや洗濯機のフィルターの使用を心がけて。 現在多くの会社が、マイクロファイバーが抜け落ちづらいECONYLを開発している。

コンベンショナル(=従来型)ポリエステル

ポリエステルは石油由来の一般的なプラスチックで、その用途はファッション業界にとどまらない。 世界で最も使用されている繊維で、ポリエチレンテレフタレート(PET)は衣料品に最も多く使用されているポリエステルだ。ポリエステルの大半は生分解性がなく、ポリエステルのシャツは、条件によって、良くて20年、悪ければ200年は分解されない。
最近は、サステナブルファッションの分野で再生ポリエステルが注目されている。再生ポリエステルは通常ペットボトルをリサイクルして作らており、 再生ポリエステルの服を購入するということは、廃棄物の削減に貢献する。とはいえマイクロプラスチック汚染の問題を忘れないで。

MEMO

バージンポリエステルを積極的に購入するのではなく、靴のように頻繁に洗濯する必要のないアイテムを再生ポリエステルを使った製品の中から探してみよう。

フリース

フリースもポリエステルの一種で、石油化学製品やその他の合成繊維から作られる合成断熱素材。軽量で蒸れにくいため着心地がよく、アウトドアウェアやスポーツウェアに最適だ。 残念なことに、フリースは再生不可能な資源から作られていて、さらに防風性や耐水性を高めるために余分な化学コーティングが施されている。ペットボトルなどの廃棄物を原料とする再生ポリエステルから作られたフリースはベターな選択肢と言えるだろう。
 合成繊維は、再生素材であろうとなかろうと、生分解性がない。 また農薬など廃水に含まれる有害な化学分子と結合する特性がある。 フリースジャケットは自然に流出するマイクロプラスチックの原因のひとつなので、部分洗いをするなどケア方法をマスターして。   

MEMO

 フリースは可能な限り避けたほうが賢明。

PVC(ポリ塩化ビニル)

PVCは製造工程の最初から最後まで、多くの加工を必要とする石油化学製品だ。形がつくりやすく、PVCから派生した繊維のビニヨンは、その耐久性の高さからコートやジャケット、さらにはスキー用品、人工皮革など、広く活用されている。PVC/ビニヨンのベースは石油であり、化学物質を反応させるために多くのエネルギーを必要とするため、化石燃料に大きく依存している。さらに、フタル酸エステル類が健康に及ぼす潜在的なリスクや、プラスチック廃棄物が海に与える負荷も加わり、最も持続不可能な素材のひとつとなっている。

MEMO

 よりサステナブルなワードローブを目指すならPVCは避けるのが◎。

ベルベット

「ベルベット」とは実は素材ではなく、生地の構造を指す言葉。毛足が短く、糸の束が表面を覆っており、どんな種類の糸でも織ることができる。かつては伝統的にシルクで織られていたが、今ではコットン、リネン、ウール、合成繊維など、より安価な素材を使うのが一般的。ファッションブランド、特にファストファッションは、シルクやその他の植物由来の素材の代わりに安価なポリエステルを使っていることが多い。

MEMO

ワードローブにどうしてもベルベットのアイテムが欲しいのなら、新品のプラスチックやシルクの使用量を増やさないためにも、ヴィンテージを探してみて。 あるいは、よりサステナブルな方法で伐採されたブナの木や、より優れた加工方法で作られたモダールレーヨンで作られたベルベットを探してみるのもおすすめ。

ゴム

ゴムノキの樹液ラテックスを使って作られる天然ゴム。しかし、天然ゴムの生産が間に合わず、化学薬品を使った合成ゴムも作られており、合成ゴムとして最もよく知られているのは、ネオプレン(ほとんどのウェットスーツに使われている素材)と、タイヤに使われるエマルジョンスチレンブタジエンゴム(E-SBR)。

MEMO

 総合的に見ると、ゴムは合成であっても天然であっても、サステナブルでエシカルな素材とは言い難い。ゴムを含む商品を購入する場合は、その素材がどこから来ているのか、公正かつ責任ある方法で調達されているのかを確認して。再生ゴムは、より持続可能な優れた選択肢といえるので、アイテムの寿命が尽きたら、近くの回収スポットでリサイクルのために引き取ってもらえるかどうかを確認しよう。

アセテート

アセテートは、セルロースから派生した半合成素材。シルクのような性質を持つため、ウエディングドレスやイブニングドレス、裏地、カーテンなどに使用される。 また、アセテートは熱を加えると柔らかくなり、冷やすと硬化状態に戻るため、ジュエリー、メガネ、サングラスなどのアクセサリーにも使用できる。アセテートは近年、プラスチックに代わるより配慮のあるアイウェアとして人気を博している。

MEMO

アセテートはサステナブルな素材とはいいがたい。Shift Cが準拠するオーストラリアの評価機関Good On Youのヘッドオブレーティング、クリスティアン・ハーディマン氏によると「バージンプラスチックよりはましだが、どちらかといえば、2つの好ましくない選択肢のどちらかを選ぶようなもの」。もしアセテートを選ぶなら、「バイオアセテート」や「バイオプラスチック」という言葉に注目して。また、アセテートを着るうえで最善のことは、できるだけ長く使い続けることなので、高品質で長持ちし、タイムレスな製品を見極めよう。最後に、木材パルプがFSCやPEFCの認証を受けた植林地などから責任を持って供給された素材で、整備の行き届いた環境で生産されたものであることもチェックしたい。


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