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ストーリー|2024.04.19

オーガニックコットンと再生ナイロン、よりよい選択はどっち? エシカルなファッショニスタのための究極の素材ガイド【前編】

世界6000以上のブランドのエシカル度をレーティングしているGood On Youが、ファッション業界の専門家からの最新情報を参考にしながら、現在考えられる「最もエシカルな」素材ガイドを作成した。ショッピングの際の参考にして。

翻訳:スパロウ真奈  写真:Shtterstock

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※この記事はGood on youの「What Are You Wearing? The Ultimate Clothing Material Guide」を日本市場向けに翻訳し公開しています。

私たちの服はどれくらいサステナブルなの?

洋服がサステナブルかどうかは、それがどのような素材でできているかにかかっている。服の素材、つまりテキスタイル製造は、人類の文明において最も古い技術のひとつだろう。私たちは植物や動物など膨大な資源を使って、身につける服や靴をつくっている。

生地には、石油、土地、水、農薬、化学薬品、染料など数え切れないほどの資源が使われている。考えてみてほしい、ふわふわした綿、ごつごつとした木、べとべとした石油が、滑らかで柔らかく、肌に心地よい色鮮やかな布地へとどうやって変化するのか? 自分の服や靴、アクセサリーが何から作られているのか? そしてその影響について知ることは、今後の服選びのよいヒントになる。

 とはいえ、常に新しい素材が生まれ、お馴染みの生地も変化している今、どの素材がエシカルで買う価値があるのか見極めるのは簡単なことではない。

自分の価値基準で選んでみる

ファッションにおける生地や繊維の問題はとても複雑だ。「サステナブルな素材」の定義はまだ確立されておらず、ライフサイクル分析など比較可能なデータも少ない。明確なのは、現在市場に出回っているあらゆる素材が何らかの犠牲や 地球への影響を伴っており、より良い選択肢を私たちは探していかなければいけないということ。そのため、ここで紹介する素材のリストは絶対ではなく、研究結果や新しいデータによって常に進化する。

さらに覚えておいてほしいのは、素材選びの最終決定者はあなた自身だということ。あなたにとって何が最も重要なのかを考え、その結論に辿り着くまでの道のりをサポートするための情報源として、この「素材ガイド」を活用してみてほしい。

「低インパクト素材」一覧表

「天然」繊維に関して注意したいこと

表にある素材を詳しく見ていく前に、よくある誤解を解いておこう。「天然繊維」は多くの場合、ナチュラルでもなければ持続可能性が高いわけでもない。素材のメリット、デメリットの両方を理解し、「人・地球・動物」に配慮した生産過程を経ているかを知れば、ブランドのグリーンウォッシュに惑わされることもないはずだ。

植物由来繊維について

生育速度の速い竹は、明らかに低負荷な選択肢として脚光を浴びている。栽培も容易で、水も農薬もほとんど必要としないが、それをテキスタイルに変えるための工程には注意が必要。
市場に出回っている竹布のほとんどは、中国で栽培され、ヴィスコース製法(強力な溶剤で溶かしてから紡糸口金に通し冷却して糸にする)で加工されている。竹が責任ある方法で栽培され、溶剤に使用される有害物質を水や空気中へ放出していないか、保証が求められる。
ここ数年、中国政府の取り締まりによって生産工程が改善されているが、竹がよりサステナブルな方法で栽培され、加工プロセスの安全性を保証するシステムが依然としてないことは懸念すべきことだ。 例外はリヨセル製法で作られた竹繊維のモノセルだが、現段階では入手が非常に困難とみられている。竹繊維業界は現在、化学薬品の使用や適切な廃棄物処理のルール作りを進めている。それはつまり、竹繊維は従来の綿やポリエステルよりも安全な素材である可能性が高いと言えるだろう。

MEMO

竹繊維はより良い選択肢として多くの可能性を秘めている。栽培と加工についてトレーサビリティが確保されている限り、優れた選択肢となり得る素材。そうでない場合は、99%クローズドループシステムで作られたテンセルリヨセルの使用を検討したい。

コットン

柔らかく、軽く、通気性に優れたコットンは、ジーンズやTシャツなどワードローブの定番に頻繁に使われる。合成繊維との混紡でない場合は、完全に生分解性であるという利点もある。しかし、従来の綿花(コンベンショナルコットン)は、殺虫剤の売上高シェアが最も高く、また児童奴隷や強制労働と関連づけられることも多い。綿花を柔らかく鮮やかな布にするプロセスには、処理、染色、プリント、仕上げのための膨大な化学的な工程が必要だ。
オーガニックコットンは、従来のコットンが抱える多くの問題に対処する素材だ。
農薬を使用しないことは、栽培農家の健康を守るだけでなくさまざまな環境効果がある。例えば従来型に比べて水の使用量を91%、エネルギーを62%、温室効果ガス排出量を42%抑えるという試算もある。オーガニックコットンは、地球にとっても、あなたを含む「人」にとっても、通常のコットンよりも総合的に優れている。

MEMO

従来型栽培のコットンは避け、代わりにリサイクルコットンやオーガニックコットン、特にグローバルオーガニックテキスタイルスタンダード(GOTS)認証のあるものを選びたい。GOTSの認証システムは、素材がオーガニックであるだけでなく、ブランドのサプライチェーン全体を認証している。 染色を含む生産過程を追跡調査し、生産プロセス全体を通じて高いエシカル基準が維持されていることを保証し、労働者の権利に関するさまざまな問題にも取り組んでいる。
ここで覚えておきたいのは『ニューヨーク・タイムズ』紙の取材によって明らかになった「インド産のオーガニックコットンとして販売されているものの半数から5分の4は本物ではない」という問題。信頼おける認証システムはこんな時にあなたの選択の役に立つ。

デニム

デニムはどうだろう? 綿花は世界の耕作地のわずか2.4%なのに、世界の農薬の6%、殺虫剤の16%を使用している。農薬は綿花農家を危険にさらし、また「サンドブラスト」製法によってダメージ加工をされたデニムは、微細な粉塵が肺に蓄積する可能性があるため作業員に健康被害をもたらしてしている。

MEMO

デニムは「地球」にも「人」にも悪影響をもたらす場合があるが、朗報なのは、人と地球を大切にする大小さまざまなサステナブルなデニムブランドが増えていること。 デニムを購入する際にまず注目したいのは、認証されたオーガニックコットンで作られているかどうか。また、古着を選ぶことで、環境への負担をさらに減らすことができる。

ヘンプ

大麻からとれるヘンプは、植物の茎から採取される繊維。基本的に大麻は最もサステナブルな作物のひとつで、水も農薬もほとんど必要としないが、それでも化学薬品が使用されていないことを保証できるのはオーガニックヘンプのみ。冬は暖かく、夏は涼しく、紫外線からも体を守ってくれ、純粋な大麻から作られる繊維はリネンに似た風合いを持っている。

MEMO

ヘンプは従来型コットンに比べるとはるかに優れた選択肢で、特にオーガニックヘンプは素晴らしい。サステナビリティを保証するために、GOTS認証のものを探してみて。

リネン

リネンはファッション史上、最も生分解性に優れたスタイリッシュな生地のひとつ。丈夫で防虫性があり、亜麻植物の繊維から作られているため、未処理(染色していない状態)であれば完全な生分解が実現できる。

MEMO

 リネンは高温にも耐え、菌を寄せ付けずに水分を吸収する。実際に乾いた状態よりも濡れた状態の方が丈夫で、洗えば洗うほど柔らかくしなやかになる。リネンは、私たちが今選び得る最も優れた選択肢のひとつ。ただ、真っ白なリネンは集中的な漂白工程を経なければいけないことを忘れずに、自然な色合いであるアイボリーやベージュ、グレーを検討して。生産時に有害な化学物質が使用されていないオーガニックリネンがおすすめ。

テンセルリヨセル

「テンセル」とは、オーストリアのレンチング社のブランド名。テンセルリヨセルはセルロース繊維で、通常はユーカリ、オーク、シラカバなどの木材パルプを溶解して作られる。化学処理の後、繊維は糸に紡がれ、スポーツウェアに適した通気性のある生地になる。同社は、責任を持って管理された森林や農園から木材とパルプを調達することで、テンセルの評判を高めてきた。 テンセルは、生産工程で発生した廃棄物を、新たな資源として同じ目的のために再利用するクローズドループシステムを採用している。つまり、化学溶剤を何度もリサイクルして新しい繊維を生産し、有害な廃棄物を最小限に抑えている。レンチング社によると、同社のリヨセル繊維の溶剤回収率は99%とのこと。最近では70%が木材パルプ、30%が製造時か着用後の廃棄コットン(綿くず)という再生素材を含むテンセルリヨセルを作ることにも成功している。

MEMO

テンセルリヨセルは、シャツから下着にいたるまで、コットンやシルクに代わる素晴らしい素材。通気性も兼ね備え、水分を吸収し、何より肌に優しい。 また、厳密には生分解性もあり、リサイクルも可能。一般的なスポーツウェアよりも少々値段は張るけれど、 持続可能性を考えるならレーヨンよりもテンセルを率先して選びたい。

モダール

モダールとは、木材パルプ(通常はブナの木)由来の人工セルロース繊維(MMCF)の一種。通気性があり、絹のように滑らかな肌触りのモダールは、単位体積あたりの吸水性が綿よりも約50%高い特徴がある。 テンセル、リヨセルやビスコースといった他のセルロース繊維と同様の特性を持ち、温水で洗濯しても色落ちしにくいため、下着やスポーツウェアによく使わる。テキスタイルエクスチェンジによると、生分解性も持ち合わせリサイクルも可能だという。

最も有名なモダールのメーカーのひとつはオーストリアのレンチング社で、同社は現在、テンセルモダール(旧レンチングモダール)という名称でモダールを販売している。テンセルモダールは世界中で登録されているグローバル認証システムによって保護されており、よりサステナブルな生産工程を作っているが、既製服用の生地はまだ生産していない。レンチング社は、糸を織物工場などに販売しているが、工場で他の糸と混ざる可能性もある。

MEMO

最も倫理的な選択をするために、透明性のある生産工程を持ったブランドを選んで。生地が100%テンセルモダールから作られていることを保証できるブランドなら安心。

レーヨン/ビスコース

ビスコースは、ユーカリ、ブナ、マツなどのいずれも成長が早く再生可能な樹木や、時には竹、大豆、サトウキビなどの植物から得られる「セルロース」または木材パルプが原料。このセルロース素材を化学溶液に溶かしてパルプ状の粘性物質を作り、それを紡いで繊維にする。植物由来の繊維であるにもかかわらず、ビスコースには2つの大きな問題がある。

第一に、ファストファッションのブームによって、ビスコース製造に使用される木材パルプの量は紙の製造に使用される量に匹敵するようになったため、インドネシア、カナダ、アマゾンなどの森林破壊の原因のひとつとなっていること。第二に、ビスコースはポリエステル、コットンに次ぐ、3番目に需要のある衣料素材であること。さらに、ビスコース生産の過程で未処理の廃棄物を湖や水路に投棄することがあり、生態系や人々の生活に影響を及ぼしている。

しかし、ビスコースの中には、より持続可能な森林製品から作られたものも存在している。FSC認証の森林資源のみを使用しているブランドや、NGOのキャノピーと協力しているブランドに注目して。 世界の森林管理の状況を見ても、生産には依然として大量の有害化学物質が使用されているのが現実だ。ECOVEROもビスコースの一種で、適切に管理された供給源からの木材を使用している。ビスコースの代替品として、テンセルリヨセル(化学物質のクローズドループ活用)がある。

MEMO

ビスコースを使っているブランドで環境への配慮を明記していない場合は避けるのが賢明。

キュプラ

キュプラは綿くずから作られる「再生セルロース」生地のこと。「リンター」と呼ばれる綿実からはみ出した、紡績するには短すぎる極小の綿繊維を使用している。リンターは銅とアンモニウムの混合物であるキュプラニウム溶液に溶かされ、苛性ソーダに落とされ紡績されて繊維になる。テンセルやモダールと同様、人工的に作られたセルロース系繊維の一種。

MEMO

キュプラの長所は、廃棄物から作られる点、繊維の製造に再生可能エネルギーが使用される点、化学物質の回収にクローズドループシステムが採用される点。 その一方で、繊維の製造に伴う水の消費量は不確かで、低環境負荷素材に分類するかどうかの結論を出すには、ライフサイクルアセスメント(LCA)を実施する必要がある。 キュプラを低負荷素材と分類するにはまだ精査が必要だけれど、技術革新によって近い将来その分類が変わる可能性もある。


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