ファッションブランドのエシカル度レーティングサイト、ShiftCを見ていて感じたことがあります。よくサステナブルのお手本として名前が上がるようなブランドや、サステナブルなんて言葉がなかった頃から(昔はエシカルファッションという言葉が主流でしたね)トップを走っていたスターブランドもレーティングされていますが、意外と評価が5段階中のまんなか、「ここから」。え、スパルタ?けっこう厳しめ!!
これらの多くは、それぞれが考える正しさや美しさをうまく表現しているブランドだと、少なくとも筆者は思っています。それにしても「ここから」というのは、良い評価なのでしょうか?悪い評価なのでしょうか?わたしたち生活者は、買おうと思っていたり好きなブランドがこの評価だった場合、ほっとする、購入を思いとどまる……どんな反応をするべきなのでしょうか。
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全体での位置付けと評価の限界
まず、日本のブランドに限った分布を見てみると、「ここから」以上のレーティングがされているブランドは評価されているブランド全体の16%のようです。ですので、全体で見れば、上位16%に入っている優等生とも言えるかもしれません。ちなみに「良い」「素晴らしい」は6%です。世界のブランドで見ても、「ここから」が15%。その上の「良い」「素晴らしい」は1%です。
また、数千のブランドをなるべくフェアに、わかりやすく5段階評価していく過程では、個別の事情が抜け落ちてしまったり、矛盾が生じることもあるかもしれません。
例えば、細かい点にはなりますが、日本で販売するブランドが消費地に近い国内生産をしていることはプラスの評価につながりますが、労働違反が中リスクある日本で生産をしているはマイナス評価(これは、日本の繊維産業で外国人実習生の人権侵害が相次いでいることに起因しているのかと推測します)となります。では日本で作るべきなのか?違うのか?このパラドックスだけでも、サプライチェーン組み立てとその評価の奥深さが沁みますね。
このように完璧ではありませんが、できるだけ、ポジティブなインパクトを実際に生み出しているブランドの評価が上がるよう数百〜数千の指標を駆使して出た結果が「ここから」だったのです。
評価は“スタート”にすぎない
さて、その「ここから」評価、元の英語版では「It’s a start」ですが、評価は、本当にスタートにすぎないのです。
もしあなたが評価されたブランドだったとしたら、大切なことは、評価に一喜一憂するのではなく、評価項目をチェックリストとして活用することです。マイナスポイントになっているところは、普段考えもしなかった視点かもしれません。そこに価値があるのです。
受験の模試でたとえばD判定を受けたとしても、大切なのはどこがダメだったのか?どこを改善すれば前に進めるのか?を考えることですよね。判定を下す側だって、良い、悪いと判定すること自体が目的ではありません。評価は出発点に過ぎないのです。
エシカル度レーティングは、生活者がより評価の高いブランドから購入することを可能にする取り組みですが、それと同じくらい大切な側面として、ファッションのサステナビリティのために「気にするべきポイント」のレベル感や解像度を、みんなでレベルアップしていくためのツールでもあるのです。
さて、結局「ここから」評価が良いのか悪いのかはわかりません。とはいえ、ShiftCで気になるブランドをチェックした一歩のおかげで、ブランドの良い点、まだ取り組みがなされていないエリアを把握することができましたね。
生活者としては、ここから「基本大好き!でも言うことは言うよ!」という、ブランドにとっての「クリティカルフレンド」(少々暑苦しい友人関係のようですが、好きだからこそ正直に改善点を提案する仲間)として、推しブランドをさらに上の「良い」「素晴らしい」評価へとSNSやメール、店頭のおしゃべりの中で応援していくのはいかがでしょうか?
本記事は日本のユーザーの方のために、「多様で、健康的なファッション産業をつくる」ことをミッションに活動する一般社団法人unistepsが執筆しています。