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ファッション|2026.08.14

日本の伝統技術を、モダンなデザインに昇華する。今こそ着こなしたいジャパン・メイドのブランド6選

格式高い工芸品でも、特別な日のための一着でもない。今注目すべきは、日本の伝統技術を、デザイナー感性を通して日々の暮らしに心地よく溶け込ませる、そんな“メイド・イン・ジャパン”の存在だ。この記事では、伝統を現代のライフスタイルへとアップデートする、6ブランドを紹介する。

原稿:白石 綾

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日本の伝統技術と聞くと、格式高い工芸品や、特別な日にまとう一着をまず思い浮かべるかもしれない。

実際、伝統工芸品の多くは、ものづくりを極めた贅沢品から、庶民に愛される身近な品まで、日本の四季に寄り添い、年中行事や祭礼と結びつきながら、その土地ならではの技術と美意識のもとで育まれてきた。

生活が都市化・西洋化していく中で、そうした行事や生活様式は少しずつ変わり、伝統技術が日々の暮らしに登場する機会も自然と減っていった。

けれど、技術そのものが失われたわけではない。むしろ今、行事や決まりごとから解き放たれて、私たちが自由に選び、日常の中で楽しめる存在になってきているとも言える。

ここでは、そんな日本の伝統技術を現代のライフスタイルに心地よく落とし込んでいるブランドを6つ紹介したい。美しい日本の技術を、まずは一枚、気軽に身にまとうことから始めてみよう。

1. トップメゾンも認めた日本の伝統技術 有松絞り スズサン(suzusan)

「有松鳴海絞り」は、名古屋市有松・鳴海地域に400年以上伝わる絞り染め技法だ。この技術を現代に受け継ぐスズサンは、有松に工房を構える株式会社スズサンのオリジナルブランドとして、5代目の村瀬弘行が2008年、ドイツ留学中に立ち上げた。

2014年には、ディオールが同ブランドの生地を用いた春夏オートクチュールコレクションを発表。世界最高峰のテキスタイル展示会で、エルメスやロエベといったトップメゾンのデザイナーも同社のブースを訪れるなど、世界の一流メゾンから認められる技術として評価されている。

世界の潮流を見渡せるドイツでコレクションを組み立て、ものづくりの現場は絞りの産地・有松に置くという二拠点体制が、このブランドの土台になっている。数百年受け継がれてきた卓越した伝統技術をそのままに、カシミアニットからTシャツまで、国も暮らし方も異なる人々の日々に馴染むかたちへと落とし込んでいる。現在では世界29か国、ファッションシーンの最先端を牽引する120店舗以上の店舗で販売されている。

スズサンのウェブサイト

2.重要無形文化財を、日常着に。BEAMSディレクターの挑戦 カスリ(CATHRI)

「久留米絣」は、約200年前に福岡県筑後地方で生まれた綿織物で、1957年に木綿として初めて重要無形文化財に指定された歴史を持つ。「括り」という技法で糸をあらかじめ染め分け、それを織り込むことで、輪郭がふわりとにじむ独特の「かすれ模様」が浮かび上がる。

カスリは、日本各地、そして世界に存在する“後世に残すべきものづくり”と向き合い、ファッションというフィルターを通して新たな価値を未来へつなぐBEAMSのプロジェクトCallingのディレクター佐藤幸子氏が立ち上げたリラクシングウエアブランドだ。

久留米絣との出会いを「一目惚れだった」と語る佐藤氏。この重要無形文化財を、日本だけでなく世界中の人に知ってもらいたい——その思いが、カスリ立ち上げの原点になっているという。久留米絣と現代のファッションという異なるベクトルを掛け合わせたデザインが特長だ。かつての着物がそうであったように、10代の女の子から90代のおばあちゃんまで、どんな人にも似合うタイムレスな商品が展開されている。

カスリのウェブサイト

3.播州織を再解釈する、西脇発の「一点もの」ブランド タマキ ニイメ(tamaki niime)

「播州織(ばんしゅうおり)」は、兵庫県のほぼ真ん中、北播磨地域に約200年伝わる先染め綿織物。糸を先に染めてから織ることで、たて糸とよこ糸の組み合わせから奥行きのある繊細な色柄が浮かび上がる技法だ。しかし、多くの産地がそうであるように、播州織もまた、これまでと同じやり方を続けるだけでは立ち行かない状況に直面してきた。

そんな中、創業者である玉木新雌(たまき にいめ)は、この産地に移り住み、自ら力織機を操ることを選んだ。播州織といえば、一般的にはシャツなどに使われる薄手の綿織物の産地として知られるが、玉木は頭の中にあるイメージを、織機を動かしながら試し、かたちにしていった。そうして産地の強みを独自の視点で読み替えてきたことで、タマキ ニイメにしかつくれないものづくりを確立した。多くのスタッフが集うようになった現在もショール、シャツ、ニット、靴下、日傘など、手がける作品は幅広く、そのほぼすべてが一点ものだ。

また、拠点を置く兵庫県西脇市には、製造の現場「ラボ」・「ショップ」が一体となった「tamaki niime shop&lab」があり、作品の購入出来るだけではなく、ものづくりの様子を見学することもできる。敷地内ではアルパカやひつじなどの動物たちも暮らす。豊かな自然に囲まれた場所で、ものづくりの世界観そのものを体験することが可能だ。

タマキ ニイメのウェブサイト

4. ジーンズの聖地で“消費されない”ものづくりランド ダウン アンダー (land down under)

今でこそジーンズの産地として世界に知られる児島だが、その歴史はジーンズ文化の流入だけでは語れない。児島を含む岡山・広島の「三備地区」一帯はもともと綿花栽培や藍染めが盛んな土地で、日本三大絣のひとつ・備後絣の技法がこの地域で育まれてきた。今では生産の多くが姿を消したが、この岡山の伝統的な藍染めの技術やノウハウと学生服づくりで培った縫製技術と結びつき、児島は国産ジーンズの聖地へと発展していった。


ランド ダウン アンダーは、ジーンズの聖地 児島を拠点としてブランドを展開。工場で規格外として廃棄される生地をアップサイクルし、縫い糸や品質表示にまでコットン素材を選ぶなど、リサイクルしやすい設計を追求してきた。オーダーメイドの製品は、この産地に魅了され東京から移住を決意したデザイナーの池上氏自身が裁断から縫製までを手がけており、まさに職人技が極まる一着だ。目指すのは、修理をしてでも永く使いたくなる、消費されないものづくりである。

ランド ダウン アンダーのウェブサイト

5.東洋の優雅な文化と美学に敬意を現す シャランポワ(sharanpoi)

日本各地の伝統工芸とインドのカット技法やエナメル装飾といった技術を掛け合わせるのがファインジュエリーブランド・シャランポワの特徴だ。日本の漆工芸、象嵌といった伝統とインドの技術がひとつのジュエリーの上で静かに重なり合う。

最新コレクションでフォーカスされた日本の伝統技術は「九谷焼」だ。九谷焼は、石川県南部の加賀地方で江戸時代前期から350年以上続く色絵磁器で、赤・黄・緑・紫・紺青の「九谷五彩」と呼ばれる鮮やかな色使いを特徴とする。

その中でも、デザイナーの安部氏が美しさを見出したのは、なんと2024年の能登半島地震をきっかけに器としての本来の役目を果たせなくなった器たちだ。「地上に既にある資源を活用する」という彼女の哲学のもと、砕けた陶片は、息をのむほど美しいジュエリーへと昇華している。

シャランポワのウェブサイト

6.現代に調和する工芸をテーマに刺繍で植物を表現 ユキ オニヅカ(yuki onizuka)

「横振り刺繍」は、大正時代末期に群馬県桐生市で、打掛や振袖など和装品の刺繍のために生まれた伝統的な技法。専用ミシンには、足元のペダルに加えて膝元に特殊なレバーがあり、このレバーで針の左右の振り幅を調節する。ペダルを踏みながら膝でレバーを操作し、同時に両手で生地を動かして模様を縫い上げる。手元・膝元・足元の3点をフリーハンドで同時に操作するという、かなり高度な技術が求められる技法だ。職人の高齢化と後継者不足により、現在は継承の危機に瀕している技術のひとつでもある。

ユキ オニヅカは、約70年前に製造されたJUKI製の横振り刺繍ミシンを使い、いけばなで培った感性を生かして植物モチーフのジュエリーを制作。オーガンジーに刺繍を重ねることで、“刺繍” の既成概念に縛られない構造と立体感のある軽やかな付け心地のジュエリーへと落とし込む。コンピューター制御の自動刺繍にはない、柔らかく温かみのある風合いを感じられるアイテムだ。

ユキ オニヅカのウェブサイトを見る

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Stories behind 代表/鎌倉サステナビリティ研究所 スタッフ
白石 綾
アパレルブランドで販売や商品企画に携わる中で業界の課題を実感。イタリア在住をきっかけに、特に環境問題との関係に強い関心を抱く。2020年にMilano Fashion Instituteでサステナブルファッションを学んで以来、強い当事者意識を持ち、業界の問題解決に向けた活動を続けている。

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