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ファッション|2025.12.31

スタイリスト・木村舞子がジャパンブランドと、サステナブルアクションを考える。【Vol. 7 su Ha(スハー)】

スタイリスト・木村舞子が、サステナブルな取り組みをしているブランドを訪ねる本連載。第7回目で取り上げるのはジュエリーブランド su Ha(スハー)。日本の自然由来の素材を日本の職人さんに加工してもらっていて、2023年からはパーツにリサイクルメタルを使っている。その背景を聞いた。

編集:横山佐知 写真:五十嵐一晴

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木村舞子
北海道出身。バンタンデザイン研究所を卒業後、スタイリスト百々千晴氏に師事。ファッションモード誌、カタログ等で活躍中。雑誌GINZAのウェブサイトでは、「スタイリスト・木村舞子さんと一緒に、サステイナブルライフへの道!」を連載中。

過去の連載記事はこちら
第1回目:エドウイン
第2回目:ユニオン ランチ
第3回目:ウメダ
第4回目:マルチョウ
第5回目:オーメ
第6回目:フィルメランジェ

日本の真摯なものづくりの背景にある、実はサステナブルに通ずる考え方や取り組みがあることを知ってほしい

su Ha(スハー)のコンセプトは『呼吸するジュエリー』。命あるものから生まれた素材を使ったジュエリーブランドで、デザイナーの伊藤陽子さんが全国各地に足を運んで自身で天然木や貝、動物の角などの素材を選んでいます。現在、14種の自然素材を使ったアイテムを作っているそうですが、その出会い方がとてもユニーク。そして2023年から、パーツにはリサイクルメタルを使っているとのこと。ブランドの背景にあるストーリーを聞きました。

伊藤陽子(左)>>神奈川県横浜市出身。筑波大学卒業後、乃村工藝社、特注家具職人、家具デザイナーを経て、ジュエリーデザイナーへ。2017年よりsu Ha(スハー)をスタートさせる。

木村舞子(以下、木村) 自然素材を選ぶことにしたきっかけはなんだったのですか?

もともと自然素材を使ったアクセサリーが好きで身につけていたんです。旅先や雑貨店で見つけた気軽なものが多かったのですが、歳を重ねていくうちにだんだんそれらが似合わなくなってきて。自分が欲しいものを作り始めたのがきっかけです。
私は20年近く、家具やインテリアの仕事をしていて、自然素材は手に馴染みがあったので、それらを小さくして物作りをしている感覚です。
機能性や寸法の制約が多い家具に対して、アクセサリーは自由度が高い。原寸大で納得いくまで試作ができる。カバンに詰めてどこにでも行ける。小さいキュッとしたものに、こだわりを詰め込めることを始めたって感じです。(su Haデザイナー・伊藤陽子さん、以下同) 

天然木、鹿の角、鮑の殻。人を介して広がる素材

上:鮑の殻。下:平らに削って磨かれた鮑の殻のピアス

木村 最初に使った素材は木だったんですよね?

扱い方もわかっていたし自分で試作もできるので木から始めました。そこから人に紹介されて扱う素材が広がっていったんです。始めた頃は自分が鮑を使うなんて思ってもいなかったんですけどね(笑)。

家具の仕事でテーブルの脚を作る鉄工所に行ったら、鹿の角があるよって分けてくれたんです。鹿の猟に行くとたまに山で見つけるという肥松も見せてくれました。
肥松というのは松に脂が溜まって琥珀状になっているもので、すごく綺麗で探し始めたところ、島根の隠岐の島にあると聞いて訪ねて行ったんですね。
東京に戻ってから、その時にお世話になった人から鮑が送られてきたんです、食べてくださいって。貝殻を見たらとても綺麗で少し削ると独特の艶が現れたので、そのまますぐに試作を始めました。

木村 素材が繋がっていて面白いですね(笑)。

そうなんです。先日も、ピアスの修理を依頼してくださった方が、ご家族が飼育している牛の角を同封してきてくれて。課題をいただいたような感じですね。削ってみたら綺麗な透明感があるので、次は牛を訪ねてみたいです。

無垢材から、職人さんの手仕事で一つひとつ削り出す

木のブレスレットやリングは、無垢材から職人さんの手仕事で削り出していくんです。特別な治具や型を使わないので、少ない数でサイズや木の種類を展開できます。使うのは主に桜や楓などの広葉樹です。広葉樹は硬くて木目が綺麗なので家具にもよく使われてます。
木で作ったものは、素地感を生かした仕上げにこだわっています。塗料でコーティングすれば、汚れにくく傷もつきにくくなるのですが、肌に触れるものなので、素材の手触りを大切にしています。

真珠は漂白加工をせずに、歪な形を活かす

真珠にはずっと興味があって、いくつかの産地をリサーチしていました。現在のあこや真珠の養殖では、人工的に交配した母貝を使うのが一般的なのですが、長崎の五島に自生しているあこや貝を母貝にしている養殖場があると知って、すぐに手紙を書いて島を訪ねました。2020年のことです。

その養殖場は海も貝もとても健康で、全国的にもめずらしい11ミリ超の大きなあこや真珠が育ちます。
元気に育った真珠の色を生かして漂白をしていません。歪な形をしたバロック真珠も人気です。ひとつひとつ形が違うので、オンラインストアには一粒ずつ撮影した写真を載せています。

その他にも赤珊瑚、黒柿、琥珀など様々な自然素材があり、それぞれのストーリーがある。su Haのホームページにはそのストーリーを知ることができるページもあるので是非覗いてみて

木村 金属パーツはK18でリサイクルメタルを使っていると聞きました

2023年からリサイクルメタルへの切り替えを始めて、現在は角線材を加工したオリジナルパーツすべてにリサイクルメタルを使っています。
ブランドを始めた当初から取引のあった、山梨の貴金属メーカーの森銀が、原料の由来やリサイクルの過程の証明を始めたと聞いて、真っ先に切り替えました。

最後に

全国各地に赴いて、納得のいくまで素材を突き詰める伊藤さん。見た目の美しさだけではなく、その背景や人との繋がり、自然から生み出される貴重な素材を丁寧に選んでいて、一つひとつのジュエリーにまさに命が宿っています。
細部に至るまで伊藤さんの真摯な想いとこだわりが詰まっていると感じました。

次回は伊藤さんと一緒に、リサイクルメタルに取り組んでいる山梨県の株式会社森銀にお邪魔して、工場を見学させてもらう予定です。

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