
ベイカー恵利沙
1989年生まれ、オレゴン州と千葉県育ち。早稲田大学在学中にフェアトレードを日本で広める団体に所属し、ファッション業界と持続可能な未来をテーマにイベントを企画。卒業後はモデル、ファッションスタイリスト、ライターとして活動し、2017年ニューヨークに拠点を移す。現地の情報などを執筆しながら、ファッションブランドとのコラボレーションも多数手掛ける。自身のInstagramではサステナブルなライフスタイルやフェミニズム、社会問題に対してNYで日々感じることを発信。2023年に気候変動報道を中心にメディアの連携をサポートする団体「Media is Hope」に海外担当ディレクターとして参加。ファッションとサステナビリティを2軸に、あらゆる方面で活躍中。
Contents
はじめまして、ニューヨーク在住のベイカー恵利沙です
みなさまはじめまして。Shift Cで記事を書かせていただくことになりました、ベイカー恵利沙です。
ニューヨーク州の北部、自然豊かな小さな街で暮らしています。
2017年に日本からニューヨークへ移住しました。3年間はブルックリンに住んでいて、マンハッタンで仕事をし、ニューヨークと聞いたときにおそらく多くの方がイメージするであろう、いわゆる大都市の暮らしをしていました。
2020年。コロナをきっかけに、自分ではどうしようもできないことと、その中でも自分で決断できることが重なって、導かれるように、この小さな街での暮らしがはじまりました。
ニューヨーク州は実は北海道と九州を合わせた面積と同じくらい大きく、カナダとの国境まで続いています。州内の最長距離の移動は、車で9時間ほどかかります。
マンハッタンから約2時間北上したエリアから、アップステートニューヨークと呼ばれています。実はあの大都市はほんの一部分で、ニューヨークとはとても思えないほどの豊かな自然が、アップステートには溢れています。

私が暮らすのは、アップステートの中でも都市に近いエリア、マンハッタンから約2時間ほどの、Ulster地区の中の街。ハドソンリバーとキャッツキル山脈に囲まれています。

自分と社会問題の関わり方が、音を立てるように変わった2020年
大学4年間、フェアトレードを広める団体に所属し活動をしていました。さまざまな社会貢献を行う団体の説明会に参加し、一番惹かれたのがフェアトレードでした。消費という日々の活動を通して社会と繋がれること、フェアトレードの商品は消費者にとってもメリットの高い魅力的な商品が多く、消費者/生産者/地球環境、関わるひとと地球みんなにとって良い循環であること、そして当時から好きだったファッションとも関わりが強いことが、魅力に感じた理由でした。卒業してからしばらくは社会活動から離れていたけれど、今行っている活動のエネルギーは、大学在学中から脈々とあったんだと思います。
ニューヨークに移住してからは、身近になった社会問題により関心が強まり、特に2019年のオーストラリアの森林火災をきっかけに、気候変動を学びはじめました。
2020年のコロナ、そしてブラックライブズマターの運動を期に、自分と社会問題との関わり方が、ガラッと音を立てて変わるような体験をしました。それまでも様々な社会の問題に関心はあったけど、そして自分なりに向き合っているつもりではあったけど、”問題のある社会で生きている私”について考えたとき、一見直接的には関係のなさそうな問題も、私はその問題と直に繋がっているのだ、ということにとても自覚的になりました。そして日常の中で出来ることを超えて、社会を変革する個人として積極的に問題解決に参加したい、という意識の変化が起きました。
その年の秋に、今の自然豊かな小さな暮らしがはじまります。

大学を卒業してからは、主にファッションにまつわる様々な仕事をしています。モデルからはじまり、ファッションスタイリスト、ライターなどをし、ニューヨークに移住してからはニューヨークブランドで働いていました。社会問題への関心が自分の中でより大きくなっていったタイミングと、コロナで現地の仕事を失ったタイミングと、引っ越しをして働き方を変えなければいけなかったタイミングが重なったとき、日本で気候変動報道を強化するためにメディアを連携しサポートする団体「Media is Hope」と出会い、今はその団体で海外コミュニケーション担当として、海外メディアや団体と日本をつなぐ仕事をしています。これは私にとって、”個人でできることの枠を超えて、社会の変革に関わること”の形の一つでもあります。
それ以外にもフリーランスで行っているライターや、ブランドとのコラボレーションなどを通して、ファッションの仕事も続けています。
気候変動解決を心から望むこと、そしてファッションが好きなこと、二つの間にある葛藤
気候変動解決に向けた仕事と、ファッションの仕事をどちらも行うことは、矛盾や葛藤を感じることも多くあります。たとえば、ファッション業界がもたらす環境汚染について知れば知るほど、毎シーズン新しいコレクションを発表するファッションショーに行ってレポートを行うことに大きな葛藤を感じていました。その一方で、ショーに行くたびに、そこでしか感じられない心の高揚を与えてくれること、ファッションやエンターテイメントや新しいクリエイションやアートが、苦しく感じる日々をも生き抜くエナジーやパワーになることも、心から実感するのです。そんなこと言っていられないくらい地球が危機的な状況であることも知ったうえで、それでもファッションがもたらす明るいエネルギーに救われる自分も存在すること。それは矛盾していて、だけどどちらも同時に存在しているのだということを認めるのに、ずいぶん時間がかかりました。
気候変動問題に本気で取り組みはじめたとき、ファッションが好きな自分を許してあげられないような部分があったんだと思います。でも何かを真っ向から否定することは心がチクチクするし、思考停止になってしまうこともあるのかもしれないと今は思っています。6年ほど気候変動と向き合う中で、色々なフェーズと心の変化を経て、たった今は、この矛盾する二つの気持ちが少しずつ寄り添いあって解決の糸口を探せるよう、学び行動し続けることと、自分の人生を楽しむ気持ちも忘れずに、とにかく考えることをやめないこと、を真面目にやっていきたいと思っています。
そんな葛藤も交えながら、東京とニューヨークシティという、大きな都市でしか暮らしたことのなかった私だから感じる今の暮らしのこと、アメリカ、そしてニューヨークのサステナビリティに関して発信していきたいと思っています。
みんなで服をぐるぐるまわす、クロージングスワップ
さて皆さんは、服を手放したくなったとき、どうしていますか。
私はこれまで、家族や友だちにあげたり、寄付したり、フリーマーケットに参加したり、古着屋さんに持って行ったりしていました。 そんなやり方に加えて、この1〜2年、ニューヨークで再び注目を浴びているのが、クロージングスワップです。クロージングスワップはその名の通り、”服を交換”することです。先日地域で行われたクロージングスワップに参加してきました。

細かいやり方はイベントや場所によって異なる部分もありますが、大まかには、
1. 不要になった服をみんなが持ち寄る
2. 会場のラックとハンガーにその服をかけていく
3. その中から必要なものだけを各自自由に持っていく
というようなスタイルです。
ほとんどの場合は参加無料で、今回参加したスワップのルールは、
「不要な服を会場に持ってこなくても参加して良い / 会場から持っていける服の量はIKEAのバッグくらいの大きさを1人1袋まで」
というものでした。
自分のクローゼットはすっきりと整理され、持ち帰ってきた服で、お金をかけずにクローゼットを一新できる。参加のハードルが低く、必要な方への経済的な助けにもなり(子供服も多く見かけます)、環境に負担をかけないということだけでなく、参加するみんながハッピーになる方法です。
今すでに私たちが持っている服を、ぐるぐるみんなの中で回していく感じ。


今回参加したスワップは、地域のヴィンテージショップが開催してくれました。イベントスペースを借りてズラッとラックが並び、一度は誰かのお気に入りだったお洋服たちが並びます。私も今回、着なくなった一袋分のお洋服を持っていきました。
誰にも持ち帰られずに余ったお洋服たちは、イベント後に主催者が地域の寄付に持って行ってくれます。
スワップで見つけた、オーバーサイズのスエードのシャツ
袋いっぱいにたくさんのお気に入りを見つけている参加者の方も多く見かけましたが、私は今回は1枚だけ、スエードのオーバーサイズのシャツを持ち帰ってきました。

合わせたスカートは日本帰国中に、中目黒のお気に入りのヴィンテージショップUncinqで購入したもので、スペインのブランドHereuのバッグは、セカンドハンドのブランド品を販売するThe Real Realで見つけました。The Real Realはニューヨークのおしゃれな人たち御用達。アプリが見やすくておすすめです。昔は好きじゃないと思っていたパープルですが、バッグもスマホケースも気付けばパープル。最近はなんだか無意識に手に取っていて、どうやら大好きなよう。ベージュとパープルは相性が良いので、このシャツとバッグの組み合わせは今後多く登場しそう!
季節問わずに着られるオーバーサイズのシャツ、これからスタイリングに取り入れるのが楽しみです。
今回は地域の比較的大きなクロージングスワップに参加しましたが、少人数の友だちグループなどや職場のグループなどで洋服の交換会を行ってもきっと楽しいはず。是非機会があれば参加してみてください。