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服を手放す前に感じる、少しのためらい
最近、街中で衣類回収ボックスを見かけることが増えてきた。
私が働くUPDATER社にも設置されていて、着なくなった服を“捨てる”以外の選択肢が、ぐっと身近になったと感じる。
でも、どれだけ循環の仕組みが整っていても、「本当にここに入れてしまっていいのかな?」と迷う気持ちがゼロなわけじゃない。
服が必ずしもごみにならないとは限らないし、これで本当に服への責任を果たせているんだろうか。他人ごとのように手放してしまっていないだろうか——そんな思いが、頭をよぎることもある。
そんな中、回収ボックスの「その先」を見られる機会をいただき、行ってきたのが「ECOMMIT(エコミット) 東京サーキュラーセンター」だった。
東京の山奥に誕生した、服の過去と未来を考える場所「ECOMMIT東京サーキュラーセンター」
私が降り立ったのは、多摩エリアにある羽村駅。東京都内とはいえ、都心から電車で1時間以上。小旅行のような距離感だ。駅からはバスが用意されており、それに揺られながらさらに山のほうへ。目的地は、服のリユースとリサイクルの最前線、「ECOMMIT 東京サーキュラーセンター」。
この場所は、全国約4,000カ所に設置された回収ボックス「PASSTO」などから集まった衣類や雑貨が、一度に約5トンずつ運ばれてくる選別拠点。到着したアイテムは、プロの選別人 “プロピッカー” によって一つひとつ仕分けされ、再販売や資源化といった次の行き先が決められていく。
選別の達人「プロピッカー」が見ている世界
このセンターでは、回収された衣類が一袋約20kg単位で届く。
その袋を開け、服を「国内向け」「海外向け」「リサイクル」などに仕分けていくのが、プロピッカーたちの仕事だ。
彼らは、ただの作業員ではない。むしろ「洋服好き」が高じてこの道に進んだ人が多く、ヴィンテージアイテムの発掘、さらには繊維構造にまで詳しい。
あるプロピッカーは「ポリエステル100%は手で触ればすぐわかる」と言っていた。 一袋分をわずか7〜10分で仕分けるというスピードと正確さは、機械では代替できない。

服の行き先は、3つのルートに分かれる
このセンターでは、服の状態によって大きく3つのルートに分けられる。
- 国内リユース:人気ブランドやヴィンテージなど、国内需要のある服
- 海外リユース:約6割がタイへ。現地のニーズを聞き、現地の流行も反映
- リサイクル:
- ポリエステル100%など単一素材の服は再生繊維として再利用
- 反毛(はんもう):上記にあてはまらないものは繊維レベルに戻して再資源化 など
- ポリエステル100%など単一素材の服は再生繊維として再利用
手放された服に、手放されない服作りのヒントがある
この施設では、回収された服がどこへ行くのかを、実際にたどることができる。
エコミットでは、衣類を入れた袋にQRコードをつけて、行き先を追いかけられる仕組みになっている。
選別の過程はiPadで記録されていて、「どこで集められたか」「どんな基準で仕分けされたか」といった情報がデータとして残っていく。
このデータを、ゆくゆくは服作りのプロセスの見直しに活かすのが目標だという。
服を回収して終わりではなく、その過程で得た気づきを、また次のものづくりに返していく姿勢は、まさに循環そのもの。
どんなデータが出てくるのか、今から楽しみだ。
「どうすればごみをなくせるのか」。
そんな問いを長年投げかけてきた、日本のゼロウェイスト運動の牽引者でありエコミットCSO坂野さんの考えが、仕組みとしてこの場所にしっかり根づいているように感じた。
海外リユースに、責任を持つということ
そしてもう一ついいなと思ったのが、「選別はすべて国内で行う」という方針だ。
古着の輸出先としてよく知られる東南アジア。現地で選別する際、リサイクル先が開拓されていなければ、状態の悪い古着など10〜20%が現地で廃棄されてしまうという。
それを避けるため、エコミットでは日本国内でリユースとリサイクルのための選別を徹底的に行う。海外リユースには、状態の良いものだけを厳選。さらに、10年以上関係を築いてきた現地業者から「いま何が必要か」をしっかりヒアリングした上で、送り出しているそう。

最後に
本来は、本当に気に入ったものをできるだけ長く使うことが、廃棄や行き場のない服を減らすために、いちばん大切なんだと思う。
でも、「一生ものの覚悟で買って、ずっと手放さない」というのは、まだまだ簡単にできることじゃない。だからこそ、循環という仕組みが必要なんだと、改めて実感した一日だった。
服を循環させるために消費者としてできることの1つは、服をきちんとケアすることだろうと思った。そうしていれば、手放した後の行き先が広がるから。これからは、「次の誰かに渡す」という意識で今ある服を丁寧に扱いたい。