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ブログ|2025.04.24

回収ボックス「PASSTO(パスト)」に入れられた服の行先とは?選別の拠点「ECOMMIT 東京サーキュラーセンター」へ行ってきた。

不要になった服の新たな選択肢として身近な存在になってきた回収ボックス。一方で、本当にここに入れてしまっていいのか、少し不安になることもある。そんなモヤモヤを抱えながら、「その先」に足を運んでみた。

原稿:上杉沙樹

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服を手放す前に感じる、少しのためらい

最近、街中で衣類回収ボックスを見かけることが増えてきた。
私が働くUPDATER社にも設置されていて、着なくなった服を“捨てる”以外の選択肢が、ぐっと身近になったと感じる。

でも、どれだけ循環の仕組みが整っていても、「本当にここに入れてしまっていいのかな?」と迷う気持ちがゼロなわけじゃない。
服が必ずしもごみにならないとは限らないし、これで本当に服への責任を果たせているんだろうか。他人ごとのように手放してしまっていないだろうか——そんな思いが、頭をよぎることもある。

そんな中、回収ボックスの「その先」を見られる機会をいただき、行ってきたのが「ECOMMIT(エコミット) 東京サーキュラーセンター」だった。

東京の山奥に誕生した、服の過去と未来を考える場所「ECOMMIT東京サーキュラーセンター」

私が降り立ったのは、多摩エリアにある羽村駅。東京都内とはいえ、都心から電車で1時間以上。小旅行のような距離感だ。駅からはバスが用意されており、それに揺られながらさらに山のほうへ。目的地は、服のリユースとリサイクルの最前線、「ECOMMIT 東京サーキュラーセンター」。

この場所は、全国約4,000カ所に設置された回収ボックス「PASSTO」などから集まった衣類や雑貨が、一度に約5トンずつ運ばれてくる選別拠点。到着したアイテムは、プロの選別人 “プロピッカー” によって一つひとつ仕分けされ、再販売や資源化といった次の行き先が決められていく。

選別の達人「プロピッカー」が見ている世界

このセンターでは、回収された衣類が一袋約20kg単位で届く。
その袋を開け、服を「国内向け」「海外向け」「リサイクル」などに仕分けていくのが、プロピッカーたちの仕事だ。

彼らは、ただの作業員ではない。むしろ「洋服好き」が高じてこの道に進んだ人が多く、ヴィンテージアイテムの発掘、さらには繊維構造にまで詳しい。
あるプロピッカーは「ポリエステル100%は手で触ればすぐわかる」と言っていた。 一袋分をわずか7〜10分で仕分けるというスピードと正確さは、機械では代替できない。

プロピッカーたちが服を仕分ける様子。選別は、服の状態、素材、ブランド、トレンドなどを総合的に判断して行われる。

服の行き先は、3つのルートに分かれる

このセンターでは、服の状態によって大きく3つのルートに分けられる。

  1. 国内リユース:人気ブランドやヴィンテージなど、国内需要のある服
  2. 海外リユース:約6割がタイへ。現地のニーズを聞き、現地の流行も反映
  3. リサイクル
    • ポリエステル100%など単一素材の服は再生繊維として再利用
    • 反毛(はんもう):上記にあてはまらないものは繊維レベルに戻して再資源化 など

手放された服に、手放されない服作りのヒントがある

この施設では、回収された服がどこへ行くのかを、実際にたどることができる。
エコミットでは、衣類を入れた袋にQRコードをつけて、行き先を追いかけられる仕組みになっている。
選別の過程はiPadで記録されていて、「どこで集められたか」「どんな基準で仕分けされたか」といった情報がデータとして残っていく。

このデータを、ゆくゆくは服作りのプロセスの見直しに活かすのが目標だという。
服を回収して終わりではなく、その過程で得た気づきを、また次のものづくりに返していく姿勢は、まさに循環そのもの。
どんなデータが出てくるのか、今から楽しみだ。

「どうすればごみをなくせるのか」。
そんな問いを長年投げかけてきた、日本のゼロウェイスト運動の牽引者でありエコミットCSO坂野さんの考えが、仕組みとしてこの場所にしっかり根づいているように感じた。

海外リユースに、責任を持つということ

そしてもう一ついいなと思ったのが、「選別はすべて国内で行う」という方針だ。

古着の輸出先としてよく知られる東南アジア。現地で選別する際、リサイクル先が開拓されていなければ、状態の悪い古着など10〜20%が現地で廃棄されてしまうという。
それを避けるため、エコミットでは日本国内でリユースとリサイクルのための選別を徹底的に行う。海外リユースには、状態の良いものだけを厳選。さらに、10年以上関係を築いてきた現地業者から「いま何が必要か」をしっかりヒアリングした上で、送り出しているそう。

海外のリユースアイテムは最終的に、プレスされてひもで束ねられた「ベール」と呼ばれる単位で出荷される。

最後に

本来は、本当に気に入ったものをできるだけ長く使うことが、廃棄や行き場のない服を減らすために、いちばん大切なんだと思う。
でも、「一生ものの覚悟で買って、ずっと手放さない」というのは、まだまだ簡単にできることじゃない。だからこそ、循環という仕組みが必要なんだと、改めて実感した一日だった。

服を循環させるために消費者としてできることの1つは、服をきちんとケアすることだろうと思った。そうしていれば、手放した後の行き先が広がるから。これからは、「次の誰かに渡す」という意識で今ある服を丁寧に扱いたい。

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