• トップ
  • Learning
  • 業界の垣根を超えてリユース社会を作る。エコミットの「REUSE SHIFT」というチャレンジ

ストーリー|2024.10.07

業界の垣根を超えてリユース社会を作る。エコミットの「REUSE SHIFT」というチャレンジ

体型が変わる。トレンドが変わる。好みが変わる。私たちの生活の中でまだ着られる服との「別れどき」はどうしても訪れる。けれどファッションを愛する者だからこそ、別れた後の責任の取り方も考えたい。そのアンサーのひとつを提示している「ECOMMIT(エコミット)」が始めた新しい取り組みについて聞いた。

写真:山下陽子  原稿:吉野ユリ子 

Share :
  • URLをコピーしました

「捨てない社会をかなえる」ことを目指す循環商社「ECOMMIT(エコミット)」は、そのインフラ作りに努めてきたと共に、一般消費者に向けたアクション「PASSTO(パスト)」では、回収から選別、再流通の場を運営している。郵便局やショッピングセンター、レジデンスなど全国3000箇所以上にボックスなどの回収拠点を設置し、まだ着られる大切な衣類を回収、熟練したプロにより10カテゴリ123品目に選別、これを最も価値の生きる形で、本当に必要な人の元へ届くよう、さらに80通りに分類し、100を超える国内外の再流通先に届けている。細部に渡る長年の努力の結果、再流通率98%以上、リユース85%という高いマッチングが実現しているのだ。リユースが叶わない一部のものも、リサイクルパートナーと共にできる限り環境負荷の低いリサイクルを選択しているという。エコミットの取締役CBO(チーフブランディングオフィサー)を務める山川咲さんに話を聞いた。

スマホでショッピングするように、手軽な循環の仕組みを作りたい

「今の世の中は入り口である“買う”プロセスにおいては、スマホでポチッと押すだけで簡単に手元に欲しいものが届く仕組みが完成しています。一方、出口としての“手放す”プロセスは、ごみとしての処分方法しか身近な選択肢がなく、循環させる仕組みが行き届いていません。そんな中、私たちが目指しているのは、スマホでのショッピングのように、誰もが簡単に利用できる循環のインフラ作りです」

エコミットでは多くのジャンルのものの再流通に携わっているものの、年間約2万トンのうち、6000トンほどは衣類が占めていて、これは国内廃棄衣類の約1%に当たる。「衣類に力を入れている理由のひとつは、多くの人が循環に取り組みやすいアイテムだからです。購入頻度が高く、消費サイクルが短く、また近年では環境汚染の課題として注目されている分野でもあります。だからこそ“衣類の循環”からアクションを始めれば、さまざまなものに対しても価値観を見直すきっかけにつながるのではないかと思います」

ブルーボトルコーヒー 代官山店に置かれたREUSE SHIFTの循環ボックス。「SHIRO」の使用済みガラス容器に加え、ブルーボトルコーヒーのトートバッグ(コットン素材)も回収する。隣に置かれた「PASSTO」のボックスでは通常の衣服の回収も行う。

コスメティックブランドの「SHIRO」とタッグを組み、まずはユニークケースを1つ作る

このエコミットが今年8月、新コンセプト「REUSE SHIFT(リユースシフト)」を立ち上げた。リユースを進めたいと考えている企業のアクションを支援する取り組みとして、1社では難しい資源循環を支える試みだ。

「どの業界も、循環型システムへの転換をしなくてはいけない、したいとは考えているものの、いざアイデアを出しアクションを起こせば、エビデンスや信憑性が求められ、前に進まないことがほとんど。このままではイノベーションは起きません。そのためにまず“できる”ことを示す事例を作ることにしたのです。これまでの常識の外にユニークケースを1つ作れば、必ず追随する企業が出てくるのです」

山川さんはウェディング業界で絶対に無理だとされたフルオーダーメイドウェディングの会社「CRAZY WEDDING」創業者であり、また教育分野でも極めてイノベーティブな高専「神山まるごと高専」のクリエイティブディレクターとして立ち上げに携わった。そんな彼女の新たなユニークケースへの挑戦がこの「REUSE SHIFT」なのだ。

チャレンジャーとして手を挙げてくれた企業を軸に、チャレンジャーの企業とつなぎ合わせ、またエコミットのもつ知見やインフラも提供しながら、事例づくりの伴走をする。その第一弾に手を挙げたのがコスメティックブランドの「SHIRO」。大規模な容器回収と、リユースを前提としたものづくりに取り組んでいる。実証試験期間とする10月31日までは全国のSHIRO店舗で使用済みガラス容器を回収、リユースした容器で製品を提供するとともに、衣類の廃棄問題にも取り組み、SHIROの一部店舗と、チャレンジャーであるブルーボトルコーヒーの対象カフェ、そしてPASSTO拠点の一部でも回収を行う。「チャレンジャー企業は業種業態も問わないし、どういう形で循環の仕組みを作るか、そこにはルールも正解もありません」

スタート後に立ち上がった新たな動きもある。9月14日より、SHIRO 表参道本店にて隔週土曜の朝にスタートした「REUSE SHIFT Morning」だ。開店前の9時〜10時半の間、回収品を持ってきてくれた人にブルーボトルのコーヒーを提供する。参加者はさまざまな人との出会いとともに気持ち良い1日のスタートを切ることができる。「先日このプレイベントを開いたのですが、大盛況で、“初めてPASSTOした”という人もいました。この参加者から賛同してくれるパワーのある方々が共同ホストとなって、10月末まで隔週でイベントを開催していきます。こうした活動はとてもアナログで小さなことではあるかもしれませんが、確実に変化につながる意味があると思います」

「REUSE SHIFT Morning」プレイベントの様子。参加者はSHIROの店舗に“パスト”したい衣類やボトルを持ち寄り、コーヒーを片手に朝のひとときを過ごす。今後も回を重ね、リユースの輪を広げていくという。

消費の流れが変われば、ブランドロイヤリティも高まる

SHIROに続き、第2弾以降のチャレンジャーとして、ブルーボトルコーヒー、LINEヤフー、三井不動産レジデンシャルが運営するすまいとくらしから循環型社会の実現を目指すプロジェクト「くらしのサス活 Circular Action」が挑戦を表明、着々と具体案が進みつつあるという。「リユースの価値観が広まることで、ものとの関わり方に変化が起きればと思います。今の日本の主流は、パッと新品を買って、要らなくなったら捨てるか家の中で眠らせるか。これを脱して、必要なものがあればまずはリサイクルやリユースをチェックする、新品でも本当に気に入ったものだけを買って、長く大切に愛用する、そして使わなくなったら次の人にPASSTOする。その考え方が定着すれば、ものをもっと愛するようになり、ブランドのロイヤリティももっと高まるのではないかと思います」

個人だけではできないこと、1企業だけではできないことも、仲間を得れば叶う。その「ユニークケース」が、ここから次々と登場する。

山川 咲さん Saki Yamakawa
エコミット取締役CBO(Chief Branding Officer)
CRAZY WEDDING創設者。2012年に業界で不可能と言われた完全オーダーメイドのウェディングブランド「CRAZY WEDDING」 を立ち上げ、数年で「情熱大陸」に出演。2020年に独立後、ホテル&レジデンスブランド「SANU」のCreative Board、翌年には4人の起業家が作る学校、神山まるごと高専の創業メンバーとして、理事/クリエイティブディレクターに就任。著書に「幸せをつくるシゴト」(講談社)

Share :
  • URLをコピーしました

Learning他の記事を読む

絞り込み検索