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木村舞子
北海道出身。バンタンデザイン研究所を卒業後、スタイリスト百々千晴氏に師事。ファッションモード誌、カタログ等で活躍中。雑誌GINZAのウェブサイトでは、「スタイリスト・木村舞子さんと一緒に、サステイナブルライフへの道!」を連載中。
過去の連載記事はこちら
第1回目:エドウイン
第2回目:ユニオン ランチ
第3回目:ウメダ
第4回目:マルチョウ
第5回目:オーメ
第6回目:フィルメランジェ
第7回目:スハー
第8回目:森銀
第9回目:TALK NONSENSE
第10回目:エンダースキーマ
たくさん作ってたくさん売るというのが自分には合ってないと感じた
ーートライトを始めたきっかけは?
トライトデザイナー青山明生さん(以下、青山) 以前からトライトとしてはやっていたのですが、展示会をしてオーダーいただいた分を作ってという一般的な洋服のブランドだったので、手描きではなく刺繍やプリントを用いて量産できる服作りをしていました。
それがコロナ禍で外出する機会が減って世の中が服をたくさん買うムードでなくなった時に、お家時間を大切にする人が増えたこともあり、お花屋さんとコラボで空いたワインボトルを花瓶として使うためペイントをしたことが始まりでした。


青山 その頃のことが色々と考えるきっかけとなり、たくさん作ってセールをして売り切るというやり方が一人でやっているので体力的にも資金的にも厳しいし、そして世の中的にもあまり合っていないのかなと感じ始めました。
でもじゃあどうしようかと考えた時、量産しているブランドではできないことをやってみようということで手描きを始めました。
ーーアイテムのラインナップはどういったものですか?
青山 今は夏なので半袖のものがあったりしますが、基本的にシーズンは関係なく、去年も今年も同じようなアイテムがあります。
ヴィンテージのピローカバーやテーブルクロスを解体して生地にし、そこからパターンをとってシャツやパンツ、スカートなどにしています。
そういったヴィンテージのものはレースが可愛かったりするのですが、古いものなのでシミがあったり、破れているところがあったりします。それを補修したり、シミの上にペイントを施すことで使えるようにしています。
ユニセックスでワンサイズのみなので、特に長袖の白シャツなんかは男性も購入してくださっていて。性別も年齢も問わず着れるので、シルエットはベーシックな形にしていてレースの違いやペイントの違いで1点ものとしています。
シーズンレスな分セールも必要なく、いつ着ていても古くなることがない。そういったものづくりの方が自分に合っているなと感じました。


ーー製作のプロセスは?ほとんどをご自身でやっていると伺いました。
青山 自分で国内にある古着の卸倉庫に足を運んで、生地として使えそうなものを探してきています。
そこから私とアシスタントと二人でそれを洗って、分解して生地にして、裁断して。裁断もレースに合わせて取り方を決めないと全然違うものになってしまうので裁断所にはお願いできず、このアトリエで一つ一つ生地を見ながら自分たちで裁断しています。
縫製だけはいつも京都の縫製工場にお願いしているのですが、職人の高齢化が進んでいて、職人の減少に伴って工場の数がどんどん減っている問題があるんですよね。特に小さい規模の工場では時々予定していた注文がキャンセルになって急に仕事がなくなって困るということがあるみたいで、うちの服はシーズンの垣根がないぶんいつ縫ってもらってもいいので、(私たちの裁断さえ間に合えば)そういった連絡をいただいた時に縫ってもらったりもしています。なるべく満遍なくというか、工場さんが困ることがないようやってもらえた方が私としても助かるので。
他にもSNSに載せる写真の一部は、撮影から投稿するまで自分でやっていたりするので、とにかくやることがたくさんあって常に時間に追われています(笑)。なので作れる数には限りがあるんですけど。


ーーペイントしてあっても洗える?
青山 はい。アクリル絵の具でペイントしているのですが、布地に使っても固着率が高いので取れにくく、さらに商品には布用のメディウムというのを混ぜて使っているのでしっかり定着して洗濯もできるようになっています。
倉庫に眠っている素材を1点もののスペシャルなピースへ

青山 いわゆるサステナブルな素材で作っているわけではないのですが、倉庫に眠っている素材を活かして、さらにそこにペイントを施すことでスペシャルな一着になるというのがトライトの強みかなと思っています。
ーー私も展示会にお伺いした時に洋服を拝見して、1点ものは洋服は買う側も心境が変わるのかなと思いました。たくさん作られた洋服の一つを持つよりも、一つ一つハンドペイントされて手間がかかっているということがやっぱりものを大切にしたいという気持ちに繋がるのかなと。
青山 そうですね。特にオーダーで受ける時はメニュー表の中から好きな場所にペイントを入れられるので「この位置にこの花で」というようなこだわりや自分だけのものという思い入れがあって、普通に買う洋服とは熱量が違うなと感じます。
ーー展示会にお伺いした時に可愛いパジャマも拝見しました。
青山 パジャマはヴィンテージではなく、新しい生地を使って一から作っているのですが、パジャマって流行り廃りがある物ではなく、普遍的なデザインなのでそれも永く着れるかなと思って作りました。パジャマではあるのですが、外で着れるおしゃれなパジャマです。

青山 他にも古着のテーラードジャケットやレザージャケットにそのままペイントする時もあります。倉庫でシワだらけで眠っていたりするのですが、昔のものは生地がいいのでアイロンするとある程度復活してくれますし、ダメージがあるところにはペイントを施すなどしてスペシャルな1着として蘇らせています。そういったものにパジャマを合わせるというのがおすすめです。

洋服だけにとらわれず、広い視野を持っていきたい
ーーもともと絵をやっていたのですか?
青山 小さい時から絵を描くのは好きだったのですが、中学生くらいの時にファッション雑誌やファッションショーを見て、ファッションデザイナーになりたいと思うようになりました。
そこから文化服装学院で服作りを基礎を学んで、その後ファッションブランドのミュベールで働くようになりました。
ブランドで働いていた時は柄のデザインや刺繍の図案を担当したりもしてました。
トライトでも最近は他のブランドとのコラボレーションしてデザイン提供などもしているのですが、そういった時は量産のアイテムで、シーズン性もあるものです。ただ今までファッションの畑でやってきたので、もちろんそういった仕事に完全に否定的な訳ではないんです。そうしないと成り立たない部分もあるので。
それでも、もともとファッションの世界に憧れて入ってきたけどあまりにもファッションのサイクルが早すぎて、買う人の消費も早いから、作る側も疲弊してきているのを見ていて。ファッションブランドを作るのってすごく大変なのに、どんどん次のシーズンがきて、売れたと思ってもすぐ飽きられてしまう。そのようなサイクルが自分のブランドにとっては持続可能じゃないなと感じました。
なのでファッションは好きだし続けていきたいのですが、洋服だけにとらわれずにもっと広い視野を持って、色んな業界と関われるようにした方が永く続けていけるのかなと思っています。私はおばあちゃんになってもものづくりを続けたいと思っているので(笑)。
ーー洋服以外のものにペイントされることもありますか?
青山 家具のブランドとコラボしたこともありますし、壁紙のデザインを手がけたこともあります。以前伊勢丹で行ったイベント時には少し傷がある古い家具にペイントする取り組みもやりました。手書きのいいところは少しの傷や汚れをカバーすることで、B(品)だったものをA+にできることだと思います。
他にもジャーナルスタンダードの京都店のイベントで招き猫にペイントしたものを販売するということもやりました。洋服以外のプロダクトにも色んなものに自由にペイントができるので、可能性は無限大です。


青山 あとはトライトのビジュアルとして撮った写真を印刷して、そこにペイントするということもやっています。これは昔撮影にお金がかけられなかった頃に友達に着てもらって顔の部分を絵で描いたり、撮影場所も自宅だったので背景部分をペイントで映えさせたりしたことが元になっているのですが 笑。高価なスタジオやセットを用意しなくても、写真にペイントを加えることで、従来の手法とは一味違う印象的なビジュアルが作れます。コスト面はもちろん、表現の自由度を広げるアプローチとしても、そういった表現もお仕事として広げていけたらいいなと思っています。

青山 私は幼い頃からそれぞれのファッションブランドの持つ世界観に憧れてここまでやってきたので、「こういう服が好きで、こういう家具が好きで、こういう文化が好きで」というような全体を通した人物像を持っているということがブランドなのかなと。それが私が子供の頃に「絵を描きたい」とか「服を作りたい」と思っていたことに繋がっている気がします。服を職人的に作り続けたいとか絵を職人的に描き続けたいというよりは、世界感や人物像を作っていくためにジャンルの垣根を超えて自由にコラボできるということが自分にとってもブランドにとっても、お客様にとっても持続可能なかたちなのかなと思っています。
取材を終えて
青山さんはご自身でほとんどをやっているからこそ限界を知り、無理なく自身の持続可能な形を目指していることが結果環境や人への配慮にもなっていると感じました。簡単にたくさんの洋服が手に入る今こそ、一つ一つ手で作られた洋服を実際に手にとってみて選ぶということが、服を大切に着続ける上でも大事なのかもしれません。機会があれば是非トライトのアイテムを見にいってみてください!
トライト イベントのお知らせ
2026年9月25日〜10月12日
虎ノ門ヒルズステーションタワー2階 SELECT BY BAYCREW’SにてPOPUPE EVENTを開催。
また10月初旬から子供服と大人でリンクして着ることのできるウェアをリリース予定。
詳細は随時Instagramで発信するのでチェックを。