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ソーラーシェアリングを軸にして、未来をより良くするための取り組みを共有

8月7日、都内にあるカナダグース銀座店にて「カナダグース ソーラーシェアリングサロン2026」が開かれた。去年に続いて、2回目となるイベントだ。
これは、千葉県匝瑳市を拠点に展開しているソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)を軸に、ファッションや音楽、再生エネルギーに関わる識者たちが集まり、今後のライフスタイルをより良くするための取り組みやアイディアを共有することを目的としている。
パネラーとして集まったのは、市民エネルギーちば株式会社などで代表取締役を務めるソーラーシェアリング プロデューサー東光弘さん、ヘアサロン ツイギー(TWIGGY. )主宰の松浦美穂さん、シンガーソングライターのYaeさん、ロンハーマン ウィメンズディレクターの根岸由香里さんの4名。

「今年の夏も気候変動の影響を受けて、とても厳しい状況です。私たちカナダグースは、『地球を冷たく、住む人々を暖かくする』というミッションのもと、いくつかの活動をしてきました。ご縁があって東さんが取り組むソーラーシェアリングに出会い、2022年に千葉県匝瑳市にカナダグース ソーラーパワープラントを創設しました。
このソーラーシェアリングは太陽光発電と農業を組み合わせたものでとても素晴らしいものなのに、あまり知られていません。世の中にはメガソーラーが環境に悪いといったネガティブな情報が拡散されていますが、それとは全く違うものです。
ソーラーシェアリングの良さをもっと伝えたいと思ってこの場を開いています。サロンと呼んでいるのは、リラックスしてワイワイしながら話したいと思っているからです。ビールなどを片手に、楽しんでいってください」(カナダグースジャパン 代表取締役社長・平井洋司さん)

ソーラーシェアリングの技術の共有は全国47都道府県から海外へと広がっている

まず最初に紹介されたのは東 光弘さん。「市民エネルギーちば」を立ち上げ、匝瑳で23haの営農型発電の畑をもち、カナダグース、ロンハーマン、ツイギーの店舗で使われる太陽エネルギーを作っている。そして、千葉のソーラーシェアリングで作られた電力を各店舗に送る役割は、Shift Cを運営するUPDATERが担っているのだ。
「僕は普段、全国と海外の農場と田んぼを回っています。以前はガイア(GAIA)という会社でオーガニックの野菜の流通・販売をやっていました。当時、オーガニック野菜は身体にいいからという理由で流行っていたけど、僕は自然だし地球にいいよねという理由で始めました。
あと電気もオーガニックがいいよねと思って、36年前からジャガイモや玉ねぎと一緒にソーラーパネルも売っていました。海外ではソーラーパネルは、インディペンデントに生きていくための道具だったんですよね。でも、日本では山を切り崩して設置するなど、太陽光発電を勘違いしているケースが多いです。
再生可能エネルギーはどういうスピリッツから生まれてきたかということも、お伝えしたいと思っています」(市民エネルギーちば/TERRA/ソーラーシェアリング総合研究所・代表取締役 東 光弘さん)
この前日にバングラディシュから帰国したという東さんは、日本全国だけでなく海外でも活動を広げている。


「僕たちのソーラーパネルは、細長くてパネル1枚に対して2倍の空間を作るように設置していて、その下で農作物を育ててコンバインも通れるようになっています。
農業では年々気温が上がっているのが問題ですが、この建て方だとパネルによる日影も生み出しています。
釧路などでは野建てのパネルを置いて問題になっているけど、それとは正反対のものです。微生物や虫や鳥といった生態系も大切にしていて、農家さんにとってプラスになることを証明して広げていこうと取り組んでいます。
今では北海道から沖縄まで、全国47都道府県で9つの大学や19の自治体と研究・開発をしています。僕たちの知識や技術を押し付けるのではなく、その土地の特産物をどう育てるかや、その地域のお困りごとを一緒に考えています。
海外ではエチオピアとバングラディッシュと提携していて、それぞれの大学や省庁と繋がっています。お困りごとを聞いて、生態系を大事にしながらどう解決するかを共に見つけています。これは援助ではなく、分かち合いですね。
日本の農地の17%にソーラーシェアリングを設置すれば、去年日本全国で一年間に使用された全電力が賄えて、世界だと農地の2%に設置すれば同じように足りると計算されています」(東さん)
ツイギーが目指す美しさのベースと、ソーラーシェアリングが作る世界の共通点

渋谷区神宮前にあるヘアサロン・ツイギーでは今年の4月から、サロンが入っているビルの全館でソーラーシェアリングによって発電された電気を使用している。
「ツイギーを始めて35年になります。美容においては、ルッキズムとしての美しさだけでなく、健康な身体と健全な心を持って学ぶことから生まれるインナービューティーがもっとも大切だと考えています。また、美容業界は人がきれいになることを目的としていますが、それってある意味では人間のエゴなのでは?と思い始めました。そのエゴな部分を少しでも減らすことができないかと思って、『私たちがきれいになるのは地球のおかげ、私たちのおかげで地球もきれいになる』という交換条件を作れたらいいんじゃないかと考えるようになりました。
自分たちがきれいになるためには、地球の根本である土や草木、花、動物すべてと共存できる関係ができているといいんじゃないかと思ったんです。
数年前、ラジオ番組でお会いしたのをきっかけに東さんからソーラーシェアリングの話を聞いて、きれいな植物を生み出すためにはいい土が必要であることと、いい頭皮から美しい髪がつくられることがリンクしたんです。 私はこれまで畑やお米作りをやってきたけど、ソーラーシェアリングを知ったことで、美しいカットラインをつくるためには、まずはお客様の髪を健康にしなければならないと、もう一度自分の仕事に立ち返ることができました」(ヘアサロン・ツイギー主宰/ユメドリーミン クリエイティブディレクター・松浦美穂さん)
このほかにも松浦さんからは、カット後の髪の毛を活用したヘアマットの取り組みが紹介された。ヘアマットを畑の畝に活用するなど、ツイギーが考える人と自然とエネルギーの「循環」の活動の一例だ。

ロンハーマンでは2030年までに事業におけるCO2排出量を実質ゼロにすることを目標に、再エネへの転換も進めている

ロンハーマンは、千葉県匝瑳にソーラーシェアリングによる発電施設を5機設置している。
「ロンハーマンではLove For Tomorrowというスローガンのもと、ソーラーシェアリングを含めた本質的なサステナビリティに取り組んでいます。
私自身は2019年に、あるトークセッションに参加して、そこで初めてファッションが地球負荷ワースト2の産業だということを知りました。
ロンハーマンが掲げる『ファッションは愛にあふれて、刺激的で楽しく、自由であるべきだ』というコンセプトのもと、誰かを幸せにしたい、笑顔にしたいと思ってそれまでやってきていたので、ショックでした。
それから環境問題について学んでいるなかで東さんに出会って、エネルギーのあり方を考えるようになりました。匝瑳に設置したソーラーシェアリングのプラントを『ロンハーマン匝瑳店』と名付けて看板を立てて、1Fはオーガニックファーム、2Fはソーラーパワー、地下はサステナブルアースというように表記しています。
現在、匝瑳のプラントではロンハーマンの店舗の約5店舗分の電力量を発電しています。また、7店舗では再生可能エネルギー由来の電力の導入に切り替えることができています」(リトルリーグ 取締役/ロンハーマン事業本部 本部長/ロンハーマン ウィメンズディレクター・根岸由香里さん)
「その看板を見て『ロンハーマンどこにあるんですか?』と聞きに来る人が時々います(笑)」(東さん)

またロンハーマンでは2023年にジップエアとコラボレーションして、ワイキキ=成田間のフライトにカーボンニュートラルフライトを就航させるという世界初の試みも行った。え、そんなことができるの?というワクワク感と、やってみようと!というエネルギーが実現させたプロジェクトだったという。

千葉県鴨川市で初めてのソーラーシェアリング施設の設置を目指す

シンガーソングライターのYaeさんが、千葉県鴨川市で農業を始めたのは20年前になる。父親の代から経営している鴨川自然農園の農地に、ソーラーシェアリングを設置できるように行政に働きかけをしているところだ。
「周辺では耕作放棄地が増えていて、動物によって荒らされています。私は狩猟免許をとっていて、有害動物駆除の役割を担っています。でも実際に山に入って動物の足跡を追ってみると、猪は水が滞っていたりメタンガスが発生しているところを掘っていて、空気を入れて山を再生してることがわかったんです。
動物は山を守っているんだ、里山が荒廃してるって思っているのは人間だけで、実は再生しているんだと知りました。
匝瑳のソーラーシェアリングは平地に設置していますが、日本に7割あると言われている山間地域に設置して、人間と動物が共生できる場にできるかも知れないと思ったら、可能性を感じました。鴨川ではまだ設置されたことがないので時間がかかりそうですが、行政の担当者の人に『一緒に未来を作りましょう!』と伝えています」(半農半歌手/シンガーソングライター Yaeさん)
周辺の古民家をリノベして宿を作っているというYaeさんは、昔ながらの茅葺の屋根にしようと試みているのだという。
耕作放棄地を利用する、屋根に設置するというケースが多いソーラーシェアリングだが、美しい里山の風景を残しながら、そこに馴染ませながら人と動物が共生する空間。そんな場所を、Yaeさんは実現してくれそうな人なのだ。


省エネなくして再エネなし。何かに反対するのではなく、より良い違いを作るために
今回、パネラーの方たちの話を聞いて印象に残ったのは、気候変動待ったなし!といった状況下で、自分たちが何をできるのかを冷静に考えていることだった。
そして、「〜ねばならない」「〇〇反対!」というスタンスではなく、新しい取り組みに対して楽しみながら関わっている様子を感じた。
「今の時代、スマートフォンがないと生活できないですし、どうしても電気は必要ですが、何よりも大事なのは省エネです。クリーンなエネルギーを作っても、使いすぎてはダメなので。
『省エネなくして再エネなし』。僕は前からこれを標語にしていきたいと思っているんですけど、なかなか広まらない(笑)。
例えば、掃除機のパワーを、今日はあまり汚れていないから強や中でなく弱にする。それだけでもだいぶ電気の消費量は違います。小さな違いを作っていくことが大切です」(東さん)