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そもそも「土地利用」とは?
そもそも「土地利用」とは,人が土地を農地、放牧地、森林利用地、工場用地などとして利用・管理することを指します。私たちが着ている衣服もまた、綿花畑、羊の放牧地、木材由来繊維の森林資源、さらには工場や物流拠点など、多くの土地に支えられています。こうした土地の使われ方は、実は気候変動とも深く結びついています。今回は、服の背景にある土地利用とCO₂排出について考えてみましょう。
キーワード
土地利用 気候変動 CO₂ サステナブル素材
日本女子大学 専任講師 勝又淳司
日本女子大学・家政学部被服学科専任講師。修士(政策学)。国内スポーツメーカーでの企画や営業、文化服装学院の教員を経て現職。繊維産業のサステナビリティについて、消費者や環境政策の観点から研究しています。研究を通してファッション業界がより良い業界になればと考えています。社会人大学院生として博士論文執筆中。
20年で倍増した繊維生産:2030年までに南アフリカ一国分の土地が必要に
私たちが毎日身につけている服は,遠く離れた土地と気候変動、水の利用に深くつながっています。綿生産において世界的に高い生産量を誇る新疆ウイグル自治区や、縫製業が盛んなバングラデシュも同じアジアに属してはいますが、距離も遠くこれらの国がどのように土地を活用しながら衣類の製造を行っているか、想いを馳せることはなかなか難しいですね。
United Nations Convention to Combat Desertification が発行した「Fashion and land」によれば、世界の繊維生産量は、2000年の5,800万トンから2023年には1億2,400万トンへと2倍以上に増加しました。この傾向が続けば、2030年には1億6,000万トンに達すると予測されています。一方で,生産される繊維の約60%は衣料用途に使われるにもかかわらず、新たな衣服へ再資源化される割合は1%未満にとどまります。
問題は、こうした服の増加が土地利用の変化・拡大と結びついている点です。

近年は環境に配慮したセルロース繊維も多く登場しつつ、市場での存在感を増しています。
2030年までにファッション産業が必要とする農地、森林、草地は35%増加し、総計で約1億1,500万ヘクタールに達すると推計されています。これはほぼ南アフリカ共和国一国分の面積に相当すると「Fashion and land」では報告されます(図2左)¹。
土地利用により森林が減ると、地球の「温室効果ガス吸収力」が弱まる
ここで重要になるのが「土地利用変化」です。これは、森林や草地が農地や放牧地など別の用途へ転換されることを意味します。土地利用変化が進むと、本来CO₂を吸収していた森林や土壌の機能が弱まり,気候変動にも影響します(図2右)。
さらに、衣服の気候への負荷は土地利用だけではありません。前回までのコラムでお伝えした通り、原料の栽培や石油採掘、糸や生地への加工、縫製、輸送などの各工程でもエネルギーが使われ、温室効果ガスが排出されます。たとえば前回フォーカスしたポリエステルは石油由来であり、原料段階からCO₂排出を伴います。一方でコットンなど天然繊維は、広い農地や灌漑用水を必要とするため、土地利用との関係が深い素材です。
つまり、服の炭素排出量の問題は工場や輸送時の排出だけではありません。どのような土地の上で原料が育てられたのかという視点を持つことも、ファッションと気候変動を考えるうえで重要です。

近年、さまざまな環境配慮素材が発表されています。環境配慮素材や製法を採用した衣服を選ぶことは重要です。しかし、土地利用という視点に立つと、何を買うかと同じくらい、衣類の生産量について、どの程度の適正な量かを考える必要があります。作られる服が増えれば、その背後にある農地や放牧地、森林利用もまた拡大していきます。
なお、土地利用は生物多様性や土壌劣化など、CO₂排出以外の環境問題とも深く関係していますが、それについては別の機会に触れたいと思います。しかし、アシックスとCFCLが共同で行った、製造時の炭素排出量で世界最小のシューズ開発では、工場の屋上に太陽光パネルを設置する工夫が行われました²。また、ロンハーマンなどの企業が参画するソーラーシェアリングなど、太陽光パネルを設置しながら、その下で植物の栽培が行われるなど、クリーンなエネルギーを調達しながら土地利用に対する工夫も行われています³。筆者はこのソーラーシェアリングの施設を見学しましたが、とても広大な土地でこのような取り組みが行われ、素晴らしい取り組みだと感じました!

その際のことを、ここで少し振り返りたいと思います。Webでこの取組みを見て素晴らしいと感じ、住所非公開のため、千葉の海岸線を少しドライブしたのち、自力で探してみました。しかしソーラーシェアリングの施設を発見することができず、近所の金融機関に飛び込みで入って「この近所でソーラーシェアリングが広大に広がっている場所があるはずだが、どこか知りませんか」と聞いてみたものの、どなたも知りませんでした。それでも親切に対応いただいた金融機関の方、ありがとうございました。

その後、15分ほど道に迷いながら車を走らせていると、視界いっぱいに広大なソーラーシェアリングの施設が広がりました。市民エネルギーちばによる「ソーラーシェアリングの郷」の広大さは息を飲むほどでした。ロンハーマンの店舗サインは「3F PEACE/ 2F SOLAR POWER/ 1F ORGANIC FARMING/ B1 SUSTAINABLE EARTH」。地元の方にもあまり知られていない中で、ひっそりとこのような取組みが行われていました(図3・図4)。ロンハーマンに加え、パタゴニアなどのブランドサインも掲げられていました。そして図5は筆者が通勤途中で出会った、JR池袋駅での屋外広告です。ここでもこっそりとソーラーシェアリングの写真がありました。

第4回目のテーマ「土地利用」は壮大で、億単位のヘクタールと言われても少し想像しづらいかも知れません。生活者としてこうした取組みを知り、私たちにも実践できる解決策があることに気づくことが重要です。
¹ United Nations Convention to Combat Desertification(2024)Fashion & Land: Unravelling the Environmental Impact of Fibres,UNCCD,Bonn.
²(株)UPDATER社 「みんなSX for Biz:『世界最小CO2排出量スニーカーの開発から考えるパートナーシップの重要性』」 2024年7月23日開催より。
³Ron Herman 「Ron Herman SOSA」https://ronherman.jp/journal/45より。