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ファッション|2026.06.24

知ってるつもりを解消する 「Shift C サステナ・ゼミナール」Vol.2 服の原料と温室効果ガス

サステナブルファッションにまつわる“基本のキ”を知る「サスゼミ」がスタート。気候変動、生物多様性、人権…などテーマごとに知っておくべき基礎知識を、専門家がわかりやすく解説する。第二回は、服の原料と温室効果ガスの関係について。

原稿:勝又淳司

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前回のVol.1では、そもそも「温室効果ガス」とは何か、そしてファッション産業がいかに多くのCO₂を排出しているか、を学びました。 では、今着ている服は、どの段階で一番多くのCO₂を出しているのでしょう?「工場で服を縫っている時?」「ゴミとして燃やされる時?」……実は、もっと前の段階に大きな要因が潜んでいるのです。

知っているつもりでよく知らないファッションと環境のハナシ。Vol.2では、すべての服のスタート地点である「原料」に注目し、服の素材と温室効果ガスの意外な関係について解説します。

キーワード
温室効果ガス CO  ファッション産業 綿 ポリエステル

日本女子大学 専任講師  勝又淳司

日本女子大学・家政学部被服学科専任講師。修士(政策学)。国内スポーツメーカーでの企画や営業、文化服装学院の教員を経て現職。繊維産業のサステナビリティについて、消費者や環境政策の観点から研究しています。研究を通してファッション業界がより良い業界になればと考えています。社会人大学院生として博士論文執筆中。

服は「原料をつくる」瞬間からCO₂を出している

私たちが毎日着ている服。その環境負荷は、実は「原料づくり」の段階から始まっています。とくに重要なのが、ファッション産業が排出する 二酸化炭素(CO₂)。今回は、綿やポリエステルなどの原料が作られる時点で、どのようにCO₂が生まれるのかを分かりやすく解説したいと思います。

服づくりは、布を織ったり染めたりする以前に、まず原料を準備する工程があります。

原料には大きく分けて

・植物・動物由来(天然繊維)例:綿、麻、ウール など

・石油由来(化学繊維): 例:ポリエステル、ナイロン、アクリル など

があります。

このほか、木材パルプを化学的に加工して作られるレーヨンやリヨセルなどの再生繊維も広く利用されています。

特に綿やポリエステルは生活に欠かせない素材ですね。この原料づくりこそが、ファッションのCO₂排出の“最初の山”です。

綿(コットン)は「育てる時」に大量のエネルギーを使う

綿は天然素材なので一見環境にやさしいと思われがちです。筆者の最近の研究でも、「綿なら環境に優しい」「オーガニックコットンはすべて肌に優しい」など様々な誤解を生んでいることが明らかになっています。綿は生産には多くの資源が必要です。

中国でテキスタイル分野を研究するChenさんの研究などをもとに整理して、綿がCO₂を排出する理由を挙げると[i]

工程・要素 CO₂排出・環境負荷の主な要因
農地整備 トラクターなどで農地を耕すための燃料消費
育成・水やり 潅漑(かんがい)ポンプを稼働させるための電力
肥料・農薬 製造工程におけるCO₂排出(※強力な温室効果ガスN₂Oの発生など)
収穫・輸送 収穫機や運搬用トラックなどに使う燃料
土地利用 綿花を育てるための広大な土地の確保・維持

特に化学肥料の製造では、温室効果の強い一酸化二窒素(N₂O)が発生し、それが間接的にCO₂換算で大きな負荷になります。綿は「自然素材だから環境負荷が小さい」とは言い切れず、生産国の農業技術や電力源によってCO₂排出量が大きく変わります。

現在、農薬を使用しないオーガニックコットンなど様々な取組がされています。生活者として、これらの情報を知って、選択することが重要です。そして、その後も、染める際やプリントなど様々な加工をする際にも、CO₂を排出します(図1)。

図1 綿生産におけるCO₂排出

ポリエステルは「作りはじめの瞬間」からCO₂が出る

ポリエステルは世界で最も使われる繊維で、衣服の約半分以上を占めます。

しかし、ポリエステルは石油を原料とするため、

工程・ライフサイクル CO₂排出・環境負荷の主な要因
原油の採掘 プラントなどの稼働に伴うエネルギー消費
精製(ナフサをつくる工程) 原油を高温で処理するためのエネルギー消費
高温での重合反応 原料を溶かし、糸(繊維)を作るための電力と熱
糸→テキスタイル→縫製 工場で生地を織り、服に仕上げるまでのエネルギー消費
物流→消費→廃棄 輸送時の燃料、洗濯などの電力、廃棄時のCO₂排出

これら一つひとつが、大量のエネルギーと燃料を必要とし、結果として多くのCO₂を排出します(図2)。

図2 ポリエステル生産におけるCO₂排出

石油化学の製造プロセスは産業部門の中でもCO₂排出が大きい領域のひとつとされています。

どちらの原料にも共通するポイント:エネルギー源がCO₂を左右する

天然繊維・化学繊維のどちらも、根本には「どんな電力で生産されるか」が関わります。

化石燃料火力の比率が高い国 → CO₂排出が増えやすい

再エネ比率が高い国 → 同じ商品でも排出が低くなる

つまり、同じ1枚のTシャツでも、生産国が変わるだけでCO₂量が大きく違います。

これは、消費者からは見えにくい「サプライチェーンのカーテンの裏側」ですが、ファッション産業のCO₂排出構造を理解するうえで欠かせない視点です。

では、どうすればCO₂を減らせるのか?

近年、多くのブランドが次のような方法で原料段階のCO₂を減らす取り組みを始めています。

再生ポリエステルの利用(石油使用量の削減)

有機栽培コットン(オーガニックコットン)の導入

生産国の再エネ利用を増やす投資

原料からの排出量を見える化し、基準値を設ける

一人の消費者として、着用している衣服の品質表示を見てどんな素材が使われているか見てみる、企業が製造時のCO₂削減のためにどのようなことをしているか調べてみるなどの取り組みが必要ではないでしょうか。


[i]  Chen S・Zhu L・Sun L・Huang Q・Zhang Y・Li X・Ye X・Li Y・Wang L(2023)A systematic review of the life cycle environmental performance of cotton textile products. Science of The Total Environment,883,163659.

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日本女子大学 専任講師
勝又 淳司
日本女子大学・家政学部被服学科専任講師。修士(政策学)。国内スポーツメーカーでの企画や営業、文化服装学院の教員を経て現職。繊維産業のサステナビリティについて、消費者や環境政策の観点から研究しています。研究を通してファッション業界がより良い業界になればと考えています。社会人大学院生として博士論文執筆中。

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