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“責任ある時代”のファッションブランドとは?
私がディレクター/デザイナー等々として勤めているファミリーファッションブランドARCH&LINEの展示会のため、6年振りにパリに行って来ました。
6年前、コロナ禍に気候変動の危機的状況やファッションブランドによる環境汚染の問題を知りました。それから、2030年までに環境負荷の低い素材100%に移行することを目指し、選ぶ素材を変えたり、工場選定、トレーサビリティの確認など自分たちに出来ることに取り組んでいます。2024年には国際認証B Corpも取得しました。
この6年、日本でものづくりをしていると、生地屋さんなどから”欧米市場ではオーガニックやリサイクル繊維を使う事が当たり前。日本では求められないけど…。”という話を度々耳にして来ました。今回は、ARCH&LINE代表の小池とともに、2022年施行の衣服廃棄禁止法*1や2023年施行の修理ボーナス*2が記憶に新しい”エシカル先進国フランス”を作り手の視点で巡って来ました。
*1フランスの「循環経済等への付加価値税法(AGEC法)」に基づき、売れ残った新品の衣類や靴、化粧品などの廃棄(焼却・埋め立て)を世界で初めて禁止した法律。 *2製品を長く使うことを推奨するため、衣類や靴の修理費用の一部を国が補助する制度。修理とリサイクルに特化したショップ「VEJA GENERAL STORE」


ヴェジャ(VEJA)は2005年にフランスで誕生した「世界で最も透明性が高い」と評されるスニーカーブランド。Shift C評価では「良い」を獲得しており、ブラジルのオーガニックコットン(シューレースも!)やアマゾンの天然ゴムを使用。生産者に正当な対価を支払うフェアトレードを貫いています。
VEJA GENERAL STOREは、修理とリサイクルに特化したショップ。日本ではあまり出会えない、クリエイティブを感じるお直し工房といった趣。カウンターの壁一面に並ぶのは、修理を待っている靴たち。VEJAだけでなく他ブランドのものも受け付けています。冒頭に書いた修理ボーナス(フランス政府の補助金)が適用される公認店でもあります。私たちが滞在中も現地の方と思われるお客さんが修理品を持って入れ替わり立ち替わり来店。
スタッフの方からは、リサイクルされたパーツなどを使ったコラボ商品をとても熱心に丁寧に説明していただきました。商品のこだわりを説明するのもされるのも大好きな私ですが、それが考え抜かれ生み出されたアップサイクル品であることに感激しっぱなしでした(アップサイクルすることの難しさを体感中)。
日本では修理=物の最終地点というイメージが先行してしまいますが、VEJA GENERAL STOREからは、”あなたがしたいように、何でも可能!”という力強いメッセージを感じました。
こちらのお店の周辺にあるVEJA監修のセレクトショップ(キッズ、カジュアル、アウトドア)とまとめて行くのがおすすめです。
https://project.veja-store.com/ja
トレーサビリティのとれたパリスタイル「NOYOCO(ノヨコ)」
パリで最も勢いのあるミニマルブランド。
コットン、リネン、リサイクルウールなど、天然素材100%へのこだわりを徹底しています。
メゾンのデッドストック生地を使ったアイテムも。
店頭で商品を手に取ると、洗濯ネームにはデジタルプロダクトパスポートのQRコードが(商品の製造過程を確認することが出来ます)。*
*デジタルプロダクトパスポート サステナビリティやサプライチェーンの透明性向上を目的に、製品ごとの詳細情報をデジタルで 一元管理・可視化する仕組み。
王道のパリのカジュアルスタイルでありつつ、トレーサビリティ、環境への配慮が徹底された姿勢に、現地で高く評価されている理由が分かりました。
私たちが来訪した際、偶然ブランドの営業と思われる方がいらっしゃり、ブランドについてとても親切に説明してくださいました。性別によるデザイン分けをしていないのも個人的にすごく共感&推せるポイント。
オンラインショップの丁寧な解説も相まって、循環型経済のお手本となりそうなブランドです。
13 Rue Commines
https://noyoco.com/


長く愛され、ヴィンテージとして残る服作り「Patine(パティーヌ)」
2017年設立。2022年国際認証B Corpを取得。
ブランド名の「Patine」はフランス語で「経年変化による味わい(錆や艶)」を意味し、「長く愛され、ヴィンテージとして残る服作り」を哲学としています。
何度洗濯しても型崩れしない耐久性を追求されていて、公式サイトの「長く使うためのケアガイド」もとても分かりやすく充実しています。
環境負荷を抑えるために「少量生産・プレオーダー制」を採用されているのだそう。
ショップは外観も内観も写真の通り真っ赤で、テンションが上がります。手に取るとすぐに分かる丈夫な生地、頑丈な縫製。デニム、パーカーなどスタンダードなアイテム群ではあるけれど、パリのエスプリを感じる品が隠し味という印象。B Corp認証ということも、本気の証と思える推したくなる情報のひとつです。
11 Rue Debelleyme
https://www.patine.fr/

セールや過剰な広告をしない「LOOM(ルーム)」

LOOM(Shift C評価:良い)は、フランスのサステナブルファッション界をリードする象徴的なブランド。丈夫で長持ちするもの作りで「服の消費量を減らす(脱成長)」というアプローチをとっています。セール、SNSでの過度な広告など消費者の購買意欲を煽る方法を一切使わないという方針も。
公式サイトの「私たちがまだ苦労しているところ」「オーガニックコットンだけを使っている理由」などのブログもとても興味深い内容ばかりでおすすめです。
常連さんと思われる方が、パンツの棚へ一直線で向かっていたのが印象的。ブランドの方針である、「必要な時に必要なものが買えるように用意しておく。まだ要らない時に前もって買う必要はない。」という考えがお客さんにも浸透しているのだなと考えさせられる光景でした。
4 Rue Barbette
https://www.loom.fr

遊び心のあるエシカルブランド「BALZAC Paris(バルザック)」

2011年設立。2022年B Corp認証を取得したフランス発のブランド。「常に、より責任ある行動を」というスローガンを掲げ、オーガニックコットンデニムなど、B Corp認証企業らしい商品群が並んでいます。
エシカルかつ長く使うということを考えるとどうしてもベーシックなデザインに寄ってしまいがちですが、こちらのブランドはレオパード柄や独特のカラーリングなど随所にパリらしい遊び心を感じるアイテムがそこかしこに。洋服の好みは人それぞれ。だからこそ、こうして様々なテイストのブランドが少しずつでもエシカルな選択肢を取り入れ、消費者の「選ぶ楽しみ」を作ることができたらエシカルという考えが加速するのではと考えます。
そしてこちらも洗濯ネームにデジタルプロダクトパスポート(DPP)のQRコードが導入されていました。私たちも2026年から自ブランドARCH&LINEでDPPをスタート予定のため、企業の作り手の視点、イチ消費者の視点、その両面から見ても非常に情報が整理されており納得感の高い構成でした。

ストレートな言葉で危機感を突きつけてくれるパリのブランドたち
パリ市内のエシカルファッションブランドを巡り、ショップやHPに触れて強く感じたことがあります。それは、「企業が消費者に対して環境汚染や気候危機の問題を伝えることを躊躇していない」という攻めの姿勢です。ファッション産業は世界で二番目に環境汚染している産業と言われています。その不都合な事実を共有することは、売上を考えると二の足を踏んでしまうのが普通かもしれません。私たちARCH&LINEも、ビジネスの継続と環境の危機的状況との狭間でどうブランド運営を継続していくべきか、日々試行錯誤を続けています。
日本でエシカルな発信をしている方々と話すと、よくこんな意見を耳にします。「日本では強過ぎる言葉は逆効果。拒否反応を起こしてしまうから」と。
でも、私は少し違います。 意志の弱い自分に対して、「一刻も早く自分事にして行動しよう」とはっぱをかけてほしいタイプ。だからこそ、ストレートな言葉で危機感を突きつけてくれるパリのブランドたちの発信は、とても潔く、心地よく感じました。
それは、企業としても消費者としても自分を成長させてくれる、またとない刺激となりました。
責任のある時代を生きるファッションブランドとして、私たちにできることはまだまだたくさんありそうです。
