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ファッション|2026.01.08

「発がん性物質」から「香害」まで。ファッションと化学物質について知っておきたい10のこと

「衣類の有害物質は、洗濯すれば落ちるの?」―Shift Cに多く寄せられるこの疑問。結論から言うと、シーインやテムなどで指摘されている有害物質は、洗濯を重ねても衣類に残留する可能性がある。実はあまり知られてこなかった、今だからこそ知っておきたい安心・安全な服選びのための10のポイントをまとめた。

原稿:白石 綾 監修:一般財団法人カケンテストセンター(01-05)

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昨今、ウルトラファストファッションブランドのシーイン(Shift C評価:他の選択を)やテム(Shift C評価:他の選択を)の商品から有害物質が検出されたというニュースが相次いでいる。

「プチプラ」「高見え」「高機能」という言葉につられて、つい購入したアイテム。実はその裏側に、自分自身の健康に悪影響を及ぼす可能性が潜んでいるかもしれない。

「私が買った服は大丈夫…?」と不安を感じている方もいるのではないだろうか。

でも、不安になる前にまずは正しい情報を知ることが大切!知ることは、自分の健康を守り、日々の選択をより良くするための第一歩になる。早速、今日からの安心・安全なクローゼット作りの参考にしてみてほしい。

01 有害物質は洗濯で落ちないものも多くある

表面に付着している薬剤やにおいは洗濯で落ちても、PFAS、ホルムアルデヒド、重金属などは洗濯で落ちないものがある。
防シワ・撥水といった仕上げ加工は効果が持続するよう設計されているため、性能や風合いが落ちていないということは裏を返せば、その薬品はずっと生地の中に一定の数値で残っているということになる(*1)。

また、東京都生活文化局消費生活部が行った平成21年の子供用の繊維製品等に含まれるホルムアルデヒドの洗濯による除去効果の調査によると、商品によっては洗濯による除去効果が低い場合があるという調査結果も出ている。

02 なぜ有害物質が検出されるのか

世界のアパレル業界では8,000種類以上の化学物質が使用されていると言われている。
中には、製造過程で使われた化学物質が、そのまま衣類に残るケースも。

代表的なものはこちら:

  • PFAS:撥水・防汚加工に使用。発がん性やホルモン系を撹乱する可能性がある。最近では、日本人起業家が代表を務めるイギリス発スタートアップAmphicoなどPFASを使用せずに撥水機能を持たせる生地の開発が進んでいる。
  • ホルムアルデヒド:プリントや染色、防シワ加工など様々な用途に使用される。急性毒性が高く、肌に触れるとすぐ皮膚障害を起こす可能性がある。
  • フタル酸エステル:プラスチックを柔らかくする薬剤。安価なため、コストを削減しがちなウルトラファストファッションで使用される。

特にシーイン、テム、アリエクスプレスといったウルトラファストファッションでは、韓国やEUの調査機関からその国の基準値に対して何百倍もの有害物質が検出されたと報告されている。
ウルトラファストファッションの服に残留が多い理由には以下のようなことが考えられる。

  • 安価な薬品には有害物質が含まれるケースが多く、コストを優先して安価な薬品を使うと残留が多くなる
  • 短期間で大量生産するため、残留分を除去する工程が省かれてしまうことがある
  • 加工の上に更に加工を重ねると下側の加工に有害物質が含まれていた場合、除去する事が難しくなる

03 どんな風に体内に吸収され、影響が出てくるのか

レギンスや下着のように皮膚へ密着するほどリスクは高まる。繊維に使用されている化学物質は、汗や着用による摩擦・体温(熱)などの作用によって、繊維から皮膚へ吸収されやすくなるためだ(*1)。

こうした有害物質が体に及ぼす影響や、その現れ方のスピードは、物質の種類によって大きく異なる。
例えば、ホルムアルデヒドは急性毒性が高く、肌に触れると比較的短時間で皮膚障害を引き起こす可能性がある。
一方で、フタル酸エステルは、発がん性や生殖毒性が指摘されている物質だが、数十年後、あるいは次の世代に影響が及ぶ可能性を示唆する研究報告もある。

04 日本は衣類の有害物質法規制に慎重

日本の繊維関連の規制には、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律がある。この法律の中で規制されている繊維関連の化学物質は10物質群(*2)(2025年12月時点)。最近では、世界的にどんどん規制がかかった「特定芳香族アミンを容易に生成するアゾ染料」が有害物質群の1つに追加された。

また、先述のPFASは有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律には指定されていないが、PFOAなど一部のPFASについては化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の第1種特定化学物質に指定され、原則使用が禁止されている。

しかし、日本の繊維製品における有害物質規制の多くは昭和に制定されたものであり、現在では海外で規制対象とされている物質が、日本では規制対象になっていない場合がある。そのため、ほとんどの国内ブランドは、この流れに取り残されているのが現状だ。

05 ウルトラファストファッションは、生活者が有害物質のリスクを負いやすい

日本では、厚生労働省や自治体が、市場に流通する製品を対象に抜き取り調査を実施している。オンライン販売商品も調査対象となり得るが、海外工場から消費者へ直接配送され、かつ極めて短いサイクルで大量の商品が入れ替わるウルトラファストファッションでは、調査が追いつかないのが実情だ。
一つひとつの製品が事前に検査されているわけではないため、有害物質を含む衣類が消費者の手元に届くリスクを防ぐことは、ますます難しくなっている。

06 海外の基準は、国によって様々

化学物質の規制は国ごとに大きく異なる。
欧州連合(EU)では「予防原則」を重視したREACH規則により企業側に1,300種類以上が禁止または制限されている。一方、米国はリスクベースの考え方にもとづく制度設計を採用している。
そのため、連邦法であるTSCA(Toxic Substances Control Act)では、企業に求められる化学物質の情報提出や事前評価の義務が、EUと比べて限定的だ(*3)。
こうした状況を補う形で、米国では州単位でより厳格な規制を導入する動きが広がっている。
また、国や州の法規制を満たすだけでなく、ブランド自らが独自の基準を設定する、第三者認証の取得するなどして、より安全なサプライチェーンの構築に取り組む例も増えている。

07 香害問題だけじゃない?!洗剤や柔軟剤の選び方にも注意

近年、話題になっている「香害」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
香害とは、合成香料(化学物質)によって、頭痛、吐き気、めまい、倦怠感などの不快感や健康被害が影響が生じることを指す。実は、こうした化学物質は香水だけでなく、私たちが日常的に使用している洗剤や柔軟剤にも多く含まれている。
そのため、あなたも知らず知らずのうちに、洗濯を通して自分自身の健康や肌の安全性を脅かしている可能性があるのだ。

発症メカニズムは未だ完全には解明されていないとも言われているが、例えば、洗剤成分(界面活性剤、香料、防腐剤など)が皮膚に触れたり、匂いを吸い込んだりすることで化学物質過敏症のような体調不良を引き起こすきっかけになることがあると言われている。

また、香りを長持ちさせるために使用される「マイクロカプセル」という技術にも注意が必要だ。 このカプセルの被膜を作る原料として使われる「イソシアネート」などの化学物質が残留していた場合、アレルギー反応等の原因となる可能性が一部の専門家や研究で指摘されている。

その他、衣類を柔らかく仕上げるために使用される柔軟剤は、主に「陽イオン界面活性剤」によって繊維をコーティングする仕組みになっている。この成分は、人によっては肌への刺激となり、かゆみや湿疹などの原因になることがある。

こうしたリスクを避けるためにも、香料・抗菌剤・シリコンなどを含まない、無添加の洗剤や柔軟剤を選ぶことをオススメする。

08グリーンウォッシュにご注意を

「エコ」「ナチュラル」「リサイクル」と書かれていると、それだけで安心してしまっていないだろうか。
けれど、原料の性質と、製造過程で使われる化学物質は別の話だ。
言葉のイメージに安心しきることではなく、情報を見極めながら服を選びたい。

例えば、以下のような場合が考えられる。

  • 「リサイクル」ポリエステルでも、染色、機能加工などの工程で化学物質が使用される
  • 「ナチュラル(天然繊維)」を原料としていても、シワ防止や形態安定のために化学物質による後加工が施される

09 私たち生活者は、このリスクを恐れているとブランドに伝える必要がある

「自分の購入する服さえ安全なら、どこで買ってもいいのでは?」
そう感じる人もいるかもしれない。
しかし、私たちの「買う」という行為は、そのブランドがどんな未来を描くのかに影響を与える。
価格やデザインだけでなく、そのブランドのものづくりの姿勢そのものを支持する意思表示でもあるからだ。
Shift Cでは、あなたの声をブランドに伝える仕組みがある。気になるブランドを検索し、評価ページのボタンをワンプッシュするだけで、あなたの想いを届けることができる。
もしブランドの取り組みに疑問や不安を感じたら、「もっとサステナブルな服作りをしてほしい」という声を届けてみてほしい。

ブランド検索をする

10 最も確実なのは、はじめから“クリーンな”衣類を選ぶこと

最後に、私たちが衣類を選ぶときに意識したいのは、次の3つのポイントだ。

① 小さなブランドの“透明性”に目を向ける
サプライチェーンを自ら追い、作り手の顔が見える関係でものづくりを行いながら、化学物質の管理や情報公開に取り組んでいるブランドを選ぶ。

② エコテックス認証(OEKO-TEX)などの第三者認証を確認
有害物質に関する第三者認証が付いている製品は、基準が明確で安心材料になる。各商品のタグやウェブサイトの商品説明をチェックしてみてほしい。

③有害物質の規制に関する団体に加盟しているブランドから選ぶ
以下の業界団体に加盟しているブランドは、有害物質削減に体系的に取り組んでいると言えるだろう。

<監修>
項目01~05:一般財団法人カケンテストセンター

<参考文献>
※1 The Health Impact of Fast Fashion: Exploring Toxic Chemicals in Clothing and Textiles
※2 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律施行規則
※3 Chemical risk governance: Exploring stakeholder participation in Canada, the USA, and the EU

<補足資料>
家庭用品の安全対策に係る行政の概要

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Stories behind 代表/鎌倉サステナビリティ研究所 スタッフ
白石 綾
アパレルブランドで販売や商品企画に携わる中で業界の課題を実感。イタリア在住をきっかけに、特に環境問題との関係に強い関心を抱く。2020年にMilano Fashion Instituteでサステナブルファッションを学んで以来、強い当事者意識を持ち、業界の問題解決に向けた活動を続けている。

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