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山の杉で木桶を作り、清らかな水で酒を醸す。山に抱かれた酒造り
都内で行われた発表会に登場したのは、福島で300年以上続く酒蔵「仁井田本家」の18代目、仁井田穏彦さん。リジェネラティブ・オーガニック(RO)認証は、パタゴニアとタッグを組み5年がかりで取得したという。
「私の父が1965年、地元の農家と協力して無農薬米の栽培を始めました。父が残してくれたこの豊かな無農薬の田んぼを次の世代にどう繋いでいくか、常に考えています。RO認証の取得のプロセスは、知らなかったことを知る喜びでもありました」(仁井田さん)
RO認証は「土壌の健康」に加えて、「動物福祉」「社会的公平性」という3軸でさまざまなチェックポイントがある。農薬・化学肥料を使わないだけでなく、田んぼ周辺のランドスケープ、水源と水質、生物多様性、働く人たちの幸せなど、トータルで生き物と社会、ひいては “地球にポジティブかどうか” が問われる。
「日本酒を仕込む木桶は、祖父が80年前に山に植えてくれた杉の木を切り出して作り、そこにまた新たな杉の苗を植えています。こうやって森を守ることが、田んぼの水源を守り、酒を醸すための清らかな水を守ることに繋がります。
海外では、田んぼが温室効果の高いメタンの発生源であり“環境を悪化させるもの”と捉えられていると知ってショックでした。しかし最終的には田んぼのまわりにある山が炭素を吸収し、里山の自然を守っていることが評価されたというのは嬉しいです」(仁井田さん)
海外でスタートしたRO認証は畑作を前提として作られており、水田稲作についてのガイドラインはほぼなかった。しかし今回の仁井田本家との取り組みによって、田んぼがもつエコシステムや、ネイチャーポジティブのインパクトが指標に取り入れられたという。

良い人が集まる「良い会社」でありたい
認証のために酒づくりで大きく変えたことはなかったというが
「稲藁や籾がらを堆肥にして田んぼに戻すとメタンが減る、など新しい知識が増えるのは楽しいですね。蔵人たちも嬉々として挑戦しています。
また『社会的公平性』のガイドラインで最低賃金と生活賃金(リビングウェイジ)の違いを知ったのですが、蔵人の声を聞いてみんなが働きやすいようにしていくことで、良い人が集まる、良い会社にしていきたい。良い会社とは、ゴミが落ちていたら拾う、困っている人がいたら助けるというような当たり前のことができている場。蔵人たちも働き方が良くなるのは『サイコーです!』と言ってくれています」(仁井田さん)
「良いと思えることに挑戦して、たとえその結果が自分の生きている間に出なかったとしても、子や孫の代に繋がると思うと楽しみ」と語る仁井田さん。
「やまもり」という名前は、「山を守って、水を守る」という仁井田本家の酒造りの風景に加え、「生き物が山盛り」「楽しみも山盛り」という意味も込められているという。たくさんの喜びが時代を超えて受け継がれ、自然のなかでゆっくりと醸され「やまもり」の味わいを作りあげている。
日本初のRO認証取得を記念して、12月半ばから2026年1月まで料理やトークを楽しむさまざまなイベントも開催される。「やまもり」の多彩な魅力を味わえる貴重な機会、詳しくはこちらのサイトから。
https://info.patagonia.jp/category-events/regenerative-organic/
パタゴニア プロビジョンズ
https://www.patagonia.jp/provisions/

