11歳でスクリーンデビューしてから、第一線で活躍を続けるエマ・ワトソン。その存在感は俳優としてだけでなく、国連親善大使としてジェンダー平等を訴える活動「HeForShe」を主導し、Shift Cのレーティングを提供する「Good On You」のサポートを行い、ケリング社の取締役としてサステナビリティ委員会の会長を務めるなど多岐に渡る。
その信念はファッションにも表れていて、レッドカーペットでは再生素材のドレスを、プライベートの私服ではエシカルブランドやヴィンテージを巧みに取り入れ、自身の理念を発信。Good On Youに賛同し、Good On You/Shift Cのレーティングを参考に、撮影衣装やプライベートでのファッションを選んでいるという。今回は、そんなエマのファッション変遷をたどりながら、彼女が伝えるサステナブルなメッセージを覗いてみよう。
Contents
再生ナイロン素材を使用した「プラダ」のバッグを手に
2024年2月、ミラノで開催された「プラダ2024年秋冬コレクション」に出席したエマ。
ショー前にキャッチされたこの日は、ストライプシャツと明るいデニムパンツを合わせ、コートの上からニットを巻いた洗練スタイルで登場。バッグは再生ナイロン素材を使用した「 Prada Re-Edition 2005 Re-Nylon bag」。
プラダは、2019年に「Re-Nylon(リナイロン)」プロジェクトを始動。ブランドの象徴であるナイロンアイテムを、漁網や使い古したカーペットなどの廃棄物を100%原料にした再生ナイロン糸「エコニール(ECONYL®)」に変更した。
また、持続可能性と海洋保護に対する意識向上を目指し、ユネスコの政府間海洋学委員会(IOC)とともに「SEA BEYOND」プロジェクトを実施。若年世代を対象とした一連の研修イニシアチブを通じて、グローバルな海洋教育の発展に寄与している。
弟とともに環境に配慮したリカーブランドを創設
2023年、弟のアレックスとともに、環境に配慮したリカーブランド「Renais」を創設し、実業家として新たな一歩を踏み出した「Renais」では、ワイン製造時に廃棄されていたブドウの皮をアップサイクルし、独自のジンを製造・販売している。この取り組みは、持続可能性と創造性を融合させた新しい価値を提案している。
エマが着用している重力に逆らうようなドレスは、「ロエベ2023年春夏コレクション」のもの。
「ラルフ ローレン」のバッグでシックに演出
2023年9月の全米オープンテニス2023では、ホワイトのダブルジャケットとタック入りパンツを着用し、黒でまとめたインナーと小物でシックに。バッグは「ラルフ ローレン」、フラットサンダルは「ザ・ロウ」。
ラルフ ローレンは、サステナビリティへの取り組みを進める中で、具体的な目標とサービスを導入している。たとえば、サプライチェーン全体での温室効果ガスの排出量を削減するため、科学的根拠に基づく目標を設定し、その進捗状況を公開している。また、消費者向けに衣料品リサイクルサービスを提供し、循環型ファッション(サーキュラーファッション)の推進にも力を入れている。
さらに、労働環境の改善にも注力しており、ダイバーシティ&インクルージョンを支援する基本方針を採用。特にパンデミック中には、サプライチェーン労働者の健康と安全を守るための具体的な方針を策定した。
美しさが引き立つ白ドレスは「アレキサンダー・マックイーン」
2022年9月に開催された「KERING CARING FOR WOMEN」ディナーでは、ケリンググループのブランドである「アレキサンダー・マックイーン」の総レースドレスを着用。アクセサリーには、同ブランドのミニバッグと「ポメラート」のジュエリーを選んだ。
両ブランドのShift Cの評価は「良い」となっている。
アレキサンダー・マックイーンは、温室効果ガス削減目標や生物多様性保護に取り組み、動物福祉にも配慮した取り組みを行っている。また、イギリス全国のファッションを学ぶ学生たちに向けて、製造サイクルが終わった後や保管されていた余剰生地を寄付する取り組みも行っている。
ポメラートは、100%サステナブルなエシカルゴールドやリサイクルシルバーの採用を実現するなど、持続可能で透明性のある資源調達を推進しながら、環境損益計算書(EP&L)を活用して環境負荷を可視化・削減している。また、金細工の伝統を守り、次世代に継承するための教育プログラムを提供。卓越したクラフツマンシップを育むとともに、女性の社会進出や困難に直面する女性の支援に取り組むことで、より豊かで持続可能な未来を目指している。
G7のジェンダー平等担当大臣の会合にて
2019年5月、国連大使としてジェンダー格差の撲滅のために活動してきたエマは、パリで開催されたG7ジェンダー平等担当大臣会合の意見交換会で「ティータム・ジョーンズ」のセットアップを着用。
このブランドは、エマが買い物の基準として使用している、ファッションのエシカル度を測るアプリ「Good On You」でも紹介されており、その評価の日本語版であるShift Cでも、同ブランドは総合的に「良い」とレーティングされている。リサイクル素材や環境負荷の少ない素材を中程度に使用し、製造を自国近辺で行うことで気候変動への影響を減らしているほか、リサイクル革やZQメリノ認証ウールを使用していることがこの評価につながっている。
メッセージTシャツも、生産背景が考慮されたものを
2019年、エマがInstagramに投稿した写真で着用していたTシャツには「TIME’S UP」の文字が。TIME’S UPは、被害者支援や法的措置を通じてセクハラや暴行の根絶を目指す運動。女性の社会進出を促進するこの活動に賛同するエマは、メッセージTシャツを通じて自らの信念を表現し続けている。
この投稿で合わせていたスカートは「リフォメーション」のもの。
環境負荷の少ない素材の使用や、化学物質と水の使用量削減、廃棄物の再利用に取り組むブランドだ。労働者の権利保護の面でも進展が見られ、生活賃金の一部支払いを保証。一方、動物福祉にも力を入れており、トレーサビリティが確保されている。これらの取り組みにより、Shift Cの評価は「良い」とされている。
「ステラ マッカートニー」のエシカルレザージャケット
エマが日常で愛用するブランドのひとつが「ステラ マッカートニー」。空港で目撃されたこの日は、同ブランドの非動物性レザーのライダースジャケットを主役に、白いTシャツとチェック柄のミニスカートをコーディネート。足元は「ドクターマーチン」のブーツで引き締めている。
2001年の創業以来、動物愛護と環境保全を第一に掲げるステラ マッカートニーは、レザーや毛皮などの動物由来の素材を一切使用せず、サステナブル徹底。サプライチェーンの追跡やエシカルな取り組みで、動物福祉の分野でもトレーサビリティが確保されており、高い評価を得ている。その結果、Shift Cでの評価は「良い」とされている。
「地球や人々に害を与えていない服」を知るために、Good On Youを支持
2020年、エマは「Good On You」のサポーターに就任し、「私がGood On Youを支持するのは、自分の服が私たちの貴重な地球や人々に害を与えないことを確認する必要があるから」と語っている。彼女は2017年のディズニー映画「美女と野獣」で、持続可能な方法で調達された衣装を採用し、メットガラ舞踏会ではリサイクル素材を使ったカルバン・クラインのドレスを着用するなど、持続可能なファッションの普及に尽力してきた。
ケリング社の取締役に就任した際には、「私にとってのサステナビリティとは、今の行動が私たちみんなの未来に影響を与えるということ。取締役として将来の世代、わたしたちが彼らに残す地球にインパクトを与えるような意思決定に影響を及ぼしたい」と語っていた。
知性と美しさを兼ね備え、環境問題や女性支援に力を注ぐ現在のエマ・ワトソン。彼女の挑戦とファッションスタイルから、今後も目が離せない。