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ストーリー|2025.01.09

オーガニック製品の世界認証。サステナブルファッションの基準「GOTS」を解説

サステナブルなファッションを判断する基準として、知っておきたいのが「GOTS(オーガニックテキスタイル世界基準)」という認証。関心の高い人なら目にしたことがあると思うが、日本ではまだまだ認知度が低いのも実態。ここでGOTS認証とはなにか、マークの意味や基準について、GOTSジャパン・リプレゼンタティブの松本フィオナさんに話を聞いた。

原稿:吉野ユリ子 撮影:目黒智子

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松本フィオナ 東京、ドイツで育ち、オランダのファッション大学でインターナショナル・ファッション・マネージメントを専攻。ファッション産業について学ぶ中で業界の抱える問題に直面する。GOTSジャパン・リプレゼンタティブのアシスタントを経て、現職に。

オーガニックテキスタイルの「世界基準」GOTS認証の歴史

GOTSとはオーガニックテキスタイルの世界基準で、正式名称を「Global Organic Textile Standard」といい、有機栽培(飼育)のコットン、ウール、麻、絹などを原料とする製品が、環境的、社会的に配慮した方法で作られていることを保証するものだ。

「2002年ごろまで、オーガニックテキスタイルについては各国でさまざまな基準がありましたが、繊維製品の生産過程で国境を超えてビジネスを行う際、世界の共通認証があれば業界内でも消費者の方々に対しても信頼を得られ、結果的にオーガニックテキスタイルが世界で流通することに貢献するのではないか、との考えから誕生しました」
「日本オーガニックコットン協会」(日本)、「IVN」(ドイツ)、「Soil Association」(イギリス)、「Organic Trade Association」(アメリカ)の4団体が設立メンバーとなってルールを策定、2005年に発表し、2006年から認証が開始。2008年にGOTSのロゴマークが導入された。
2023年末の調査で89カ国14,676件の施設が認証を受け(うち日本は40社94施設)、その後も増え続けている。2023年時点で25の認証機関がGOTSの認証業務を行っている。

GOTSで認証された素材のサンプル。コットン、麻、ウール、カポックなどさまざまな種類がある。

GOTSマークの意味と基準のポイント、対象製品は?

GOTSとは「オーガニックコットン」の認証と誤解されがちだが、GOTSは原材料の認証は行っていない。そもそもオーガニック繊維の栽培(飼育)は、 有機農業規格の範囲内にあり、その多くは各国政府によって規定されているからだ。GOTSではオーガニック繊維の生産に対して、該当する生産範囲においてIFOAM Familiy of Standards認証を求めている。有機農業規格をもつ原材料を前提に、紡績・編み・織り・染色・縫製その他加工から最終製品までがGOTSの範疇となり、製造の全てのプロセスで厳しい基準をクリアしたものといえる。
「認証基準には、下記の通りさまざまな項目があります。混入リスクを避けるため、製造に使用する機械もGOTS認証該当製品と非該当製品で共用する場合、その都度洗浄するなどの条件もあります」。認証事業者には少なくとも年に一度、監査委員が現場を訪れ、排水処理のチェックや労働者へのインタビューなども行い、労働者の人権が守られているかなどを審査するという。

【認証基準】

  • 原料:認証製品は70%以上がオーガニック繊維を使用
  • 一貫した認証:原料から最終製品まで、全ての工程をカバー
  • トレーサビリティー:製品の追跡可能性が確保されている
  • 有機製品精度:オーガニック以外の製品との混同、汚染されない管理
  • 残留物:最終製品に残留物がないかチェック
  • 環境配慮:排水・エネルギーの使用や温室効果ガス(GHG)の排出管理、廃棄物に関しての環境目標を設置
  • 薬剤使用制限:廃水処理方法や生分解性の基準に基づき、毒性の強い薬剤を使用しない
  • 遺伝子組み換え(GM)禁止:原料や助剤等に遺伝子組換技術は使わない
  • 雇用倫理:強制労働・児童労働の禁止
  • 労働環境:衛生的で安全な労働環境と搾取のない労働条件である
  • 差別禁止:差別禁止が実践されている

(JOCAホームページより引用)

【認証方法】

GOTSウェブサイトにリストがある承認された認証機関へ申し込むことで申請が可能。申請後は全ての認証事業者を対象に、最低年に一度、独立した第三者の認証機関による審査が行われ、書類による審査と現地調査が実施される(一部例外あり、その場合も3年ごとに現場検査実施)。

【費用】

第三者の認証機関に支払われる認証費用は認証機関が設定する。事業範囲、規模、立地などによって費用が異なるため、事前に見積もりを。 GOTSを管理する非営利団体Global Standardへの年会費は180ユーロ(約30,000円)。

消費者の手にわたる製品は最終製品として認証を受け、認証ラベルがつけられる。松本さんがドイツで購入したジーンズのタグにもGOTSのラベルが。

ここまで厳しい基準を設けているのは、生産者と消費者の保護のため、と松本さん。「毒性の強い化学物質の使用は、生産者と消費者の方々の健康を害します。オーガニックに生産された素材を使用すれば、農場の労働者と環境が守られ、危険な化学物質を使用せずに製造されれば、工場の労働者と環境が守られます。これがGOTS製品を選択することをすすめる大きな理由です」

オーガニック転換中の農家を支える「オーガニック・イン・コンバージョン」とは?

左は製品の95~100%がオーガニック繊維であることを示す認証ラベル。右は有機栽培に転換する農家を支援するために作られた「オーガニック・イン・コンバージョン」の認証ラベル。

GOTSのラベルグレードには2種あり、「Organic」と書かれたものは製品の95〜100%オーガニック繊維、「Made with Organic」とあるものは70〜95%が認証されたオーガニック繊維を使用していることを示す。「正式な表記には、ロゴに加えてライセンス番号や認証機関名も記載されています。タグを見つけたらチェックしてみてください」

さらに「Organic ◯% in conversion materials」という表示が添えられているものもある。インコンバージョンとは“転換中”という意味。「農家が有機農業への転換を決めても、移行には転換期間が必要で通常は2〜3年間かかります。この期間中に、化学残留物が分解され、土壌が生き返るのです。また、この期間に農家は有機認証要件に適合する方法を学び、土壌再生や化学的手段ではなく生態学的手段による害虫管理など、有機農業方法に移行します。けれどこの移行期間が農家にとってかなりの負担となり、転換の障壁となることがあります。この問題に対処するため、GOTSでは、認証された有機農業への転換を1年以上行った農場からの繊維を使用する場合、「オーガニック・イン・コンバージョン」というラベリングを許可しています。

製品につけられた認証マークを説明する松本さん。

環境や社会に配慮したい生活者一人ひとりの選択肢になるように

松本さん自身は将来ファッションビジネスに携わりたいと考え、オランダのファッション大学でマネジメントを学んでいたが、授業を通してファッション業界の抱えるサステナビリティの課題に直面した。「ファッションビジネスに携わっていいのか、と葛藤しました。けれどファッション自体が悪ではなく、装うことは着る人を元気づけ、生産者さんたちを応援することもできるはず、と」。ファッションの知識とサステナビリティの知識をもった自分にできることはなにか?と考え、GOTSの門を叩いたという。
けれど今も、何をどう選択するかは一人ひとりが決めること、と考えている。「GOTSは素材から糸、生地、製品になるまで一貫して基準を満たす必要があるため、複数の企業や個人で分業している場合は、GOTS認証が取りにくいなどの難しさもあります。GOTS認証以外のファッションでも別の視点でサステナブルに作られたものはありますし、すでに持っている服を大切にすることも、古着を活かすことも十分サステナブルな選択。ただ、情報が氾濫する中で、信頼のおける判断基準を求めているなら、選択肢としてぜひGOTSを知っていただければと思います」

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ライフスタイルジャーナリスト
吉野ユリ子
1972年埼玉県生まれ。エディター、ライターとして女性誌やウェブを中心に、心豊かな生き方・暮らし方の提案を行うほか、ブランディングライターとして企業のサービスや商品の価値を言語化し届けることにも力を注ぐ。プライベートでは、2016年に娘を出産するまではトライアスロンが趣味で、アイアンマンを3度完走。現在の趣味は朗読。

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