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ストーリー|2024.08.28

【データでわかるサステナブルファッション②】アパレルと気候変動

「地球」「人間」「動物」の3軸でブランドを評価するShift Cと並んでファッション産業の透明性向上を目指す「FASHION REVOLUTION」。このグローバルな運動から今のファッション業界が抱える課題を紐解いていこう。第2回目は、しっかり理解しておきたいファッションと気候変動の関係について。

原稿:有川真理子 協力:unisteps 写真:O-DAN

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焦げるような暑さが続いている。2024年6月の世界平均気温も観測史上最高を記録し、これで13か月連続で最高記録を更新し続けたことになる*1。

世界中で頻発する高温や大洪水、大寒波。気候変動はファッション業界も無関係ではない。繊維生産から排出されるCO2は国際航空業界と海運​​業界の排出量を足したものよりも多いとされている*2。

何かを燃やしたりしているわけでもないのに一体どこでCO2が発生するのだろう?と疑問に思うかもしれない。しかし、服はさまざまな工程を経て私たちの手元に届く。たとえば、繊維の元となる綿花を育てる際には大量の水や肥料が必要になる。化学繊維であれば原材料として石油や天然ガスが使われ、染色の段階では多くの水やエネルギーが使われる。服が作られる工程には多くの資源が投入され、その結果CO2が排出されるのだ。

環境省の調査でも、原材料の調達から製造段階に至るまで服1着あたり約25.5kgのCO2が排出がされると試算されている。これは500mlペットボトル約255本を製造する量に匹敵する*3。

生産段階のCO2排出量が9割

原材料の生産から廃棄を含めたライフサイクル全体でみた場合にCO2の排出量が最も多い工程はどこなのだろうか。

答えは生産段階。原材料の調達や糸をつくる紡績、染色など生産段階で全体の9割を占めている。

出典:経済産業省 “ファッションの未来に関する報告書”、Fashion Transparency Index 2022

サプライチェーンを含めた脱炭素化の情報開示は3分の1以下

地球の平均気温上昇を1.5度、少なくとも2度未満に抑えるためには、2015年に採択されたパリ協定を遵守すべく、2050年までにネット・ゼロ、つまりCO2排出量と吸収量が差し引きゼロの状態を実現する必要がある。しかし、原材料の生産から流通・小売までサプライチェーン全体の脱炭素化を開示している大手ブランドは29%と3分の1に満たない。

ネット・ゼロを実現する上で要となるのがエネルギーの脱炭素化だ。つまり、再生可能エネルギーへのシフトが必要となる。しかし、大手ブランドの約半数(45%)は自社設備における再生可能エネルギーの使用についてデータを公開しているが、サプライチェーンにおける再生可能エネルギーの使用データを公開しているブランドはわずか7%にとどまる。

服をつくる上でCO2排出量の9割が生産段階であることからもサプライチェーンにおける再生可能エネルギーへのシフトは必要不可欠だ。

出典:Fashion Transparency Index 2022

情報の公開=脱炭素化ができているというわけではないが、情報が公開されなければ脱炭素化の進捗を把握することはできない。

再生可能エネルギーへのシフトをはじめとする脱炭素化の取り組みと共に、サプライチェーンも含めた情報公開を期待したい。

世界の繊維生産の半分以上がポリエステル

服をつくる素材にも目を向けてみよう。世界で生産される繊維の半分以上はポリエステルが占めている。ポリエステルの原料は化石燃料である石油。製造工程でも天然繊維である綿花よりもCO2排出量が多く*4、焼却処分した場合も、綿花の場合は植物なのでカーボンニュートラル(原則排出量はゼロ)とされるが、ポリエステルの場合は化石燃料を使用しているのでCO2が排出される。

出典:Textile Exchange “Preferred Fiber & Materials Market Report” 2022年

CO2排出量が多い=ポリエステルが悪いというわけではないが、気候変動の観点からみた場合に課題があることを知っておく必要はあるだろう。

ポリエステルの生産量が伸び続ける一方、再生ポリエステルの割合は14.8%にとどまっている*5。服の回収システムの不十分さやポリエステル以外のさまざまな繊維を合成した布が増えており、再生しにくいといった問題が低迷要因になっている。しかし、ポリエステル素材は埋め立てや焼却処分した場合、化石燃料を無駄にし、CO2を排出することになってしまう。ポリエステルの再生率の向上は気候変動緩和の上でも重要だ。

どんなブランド、服を選ぶか

ファッションと気候変動問題の関係をみていくと、問題解決のために私たちがどう行動すればいいのかが少しだけ見えてくる。

気候変動に取り組むブランド、気候変動の取り組みに関する情報開示を行っているブランドを選ぶこと。服の素材にも関心を持って選ぶこと。そして何より、大量の資源、エネルギーを使ってつくられた服をできる限り長く着ることも大切だ。

次回は人権とファッションについてお伝えする。

*1 EUの気象情報機関、コペルニクス気候変動サービス​​の発表による
*2 The Ellen McArther Foundation(2017) “A New Textile Economy:Redesigning fashion’s future”,20p
*3 環境省Webサイトより(2024年7月確認)
2019年時点における服の国内供給量と2020年の調査に基づいて算出。国内供給数量約35.3億着をもとに試算
https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion
*4 経済産業省の繊維製品(衣料品)のLCA調査報告書(2004年版及び2009年更新版)を基に、ポリエステル 100%のブラウスと綿 100%のワンピースの製造から流通までのCO2 発生量を比較した場合、原料素材の製造におけるCO2の発生量は,ポリエステルで 2.47kg、綿で 1.68kg​​。
大井 龍,「衣料と環境問題― 合成繊維(プラスチック繊維)と天然繊維,どちらが環境に優しいのだろうか? 学生に聞いてみた ―​​」, 2021年
*5 Textile Exchange “Preferred Fiber & Materials Market Report” 2022年

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