※この記事はGood「Fashion’s Carbon Footprint: The Ins and Outs of International 」を日本市場向けに翻訳し公開しています。
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地元で買うことが常に正解?現実はそんなに簡単ではない
国際輸送とサステナブルなショッピングの両立は、複雑です。地球の裏側からエシカルなファッションアイテムを購入した場合、CO2排出によるマイナスの影響によって、得られるプラスの影響が相殺されてしまうのでしょうか。そう簡単なものではありません。すべての行動には必ず何かしらの結果が伴うからです。では、どのような選択なら、環境への影響が少なく済むのでしょうか。
一着の服の旅路
私たち消費者が購入した商品の影響を理解するには、その商品が手元に届くまでにたどった全行程を考慮する必要があります。
どんなにサステナブルなファッションブランドであっても、その服はある時点で、何らかの形で世界中を旅している可能性があるためです。これを考えると少しがっかりですよね。
衣服の標準的なライフサイクルはこのように回っています
https://www.commonobjective.co/article/why-and-how-to-map-your-supply-chain をもとに和訳
この図が示すように、その道のりは複雑で長いものです。
原材料の栽培から加工、縫製、販売までが1カ所で完結することは極めて稀で、サプライチェーンの各段階で、何らかの形で環境に影響を与えています。
海運に限って言えば、環境への影響は相当なものです。船舶は世界貿易の約90%を担い、輸送物資量は年間100億トンにものぼります。また、世界全体のCO2排出量の2.5%を海運が占めていると推定されており、欧州議会が2015年に発表した報告書では、この数字は2050年までに17%まで上昇すると見積もられてしまいました。
このように炭素の影響は非常に大きいにもかかわらず、船による輸送は、私たちにある輸送の選択肢の中で最も安価で、最も炭素効率の良いものなのです。大型船は、1トンの貨物を1キロ輸送するのに約10グラムのCO2を排出します。これは電車の約半分、トラックの5分の1、そして飛行機の50分の1です。
最後の数字を見ると、オンラインショッピングでの国際輸送と暮らしている地域での購入のどちらが理想的かは一目瞭然ですね。
とはいえ実際のところ、地元で購入することが必ずしも良いとは限りません。
たとえ地元で買ったとしても、オンラインで買ったとしても、そのアイテムはすでに何らかの形で世界中を旅し、その旅路の途中で環境に大きな影響を及ぼしている可能性が高いからです。
時間とコストを削減するために生まれた「ファストファッション」アイテム。たとえエシカルなアイテムを手に取ったとしても、それが地球の裏側から来ているのであれば、エシカルさよりもカーボンフットプリントの爪痕が残されてしまいます。
ファストファッションは、ポリエステルなどの安価な合成繊維で作られていることが多く、そのベースには化石燃料が使用され、サステナブルな素材に比べて生産に大量の水とエネルギーを必要とします。
このような素材でできた衣類は合成染料で着色されている可能性が高く、化学物質が肌に触れてしまう恐れがあり、さらに染料を水源に流せば環境にもダメージを与えてしまいます。
ファストファッションブランドのサプライチェーンは、廃棄物に関しても効率性に欠けているのが現状です。全素材の35%が埋立地に送られる廃棄物になると推定されています。そして、生産段階ごとに最も安価な労働力を利用するために素材は世界中に送られていきます。
配送だけでなく生産段階の輸送から排出されるCO2も考慮すべき点なのです。
オンラインで購入するエシカルTシャツは、近所のチェーン店で購入するTシャツよりもカーボンフットプリントが小さいでしょう。それでもグリーンウォッシュの罠にかかっていないか、一度立ち止まってみることが大切です。小規模でローカルなブランドも含め、多くのブランドがインスタグラムのプロフィール欄やウェブサイトに「エシカル」や「サステナブル」と書いていますが、その主張を裏付ける確かな証拠はあるのでしょうか?
ブランドの服がどこで作られているのかを聞くことを恐れず、このサイトで提供しているレーティングを参考にどのブランドを積極的に応援していくか、ぜひ考えてみてください。
完璧な解決策はすぐには見つかりません。
しかし、ファストファッションを避け、より厳選して、質の良い、セカンドハンドアイテムを購入することで、すべての人間、地球、動物にとってより良い未来を形作る一歩になるでしょう。
ファッションのCO2排出量を削減する方法
すでにエシカルでサステナブルなブランドを購入している中で、ファッションが与える影響を減らす工夫をするにはどうしたらいいのでしょうか。いくつかおすすめをご紹介します
1.循環型やゼロウェイストを実践するブランドを応援しよう
新品のファッションアイテムを購入する際、CO2を削減する方法として最もおすすめなのは、循環型またはゼロウェイストサプライチェーン(サプライチェーン全体から排出されるすべての排出物と廃棄物を相殺する)を実現しているブランドを応援することです。そのようなブランドは他のどのファッションブランドよりも低いカーボンフットプリントで活動しているはずです。完全な循環型サプライチェーンを実現するのは難しいことですが、この分野で素晴らしい実践をしているブランドも多数あります。Cradle2Cradle認証に注目してみましょう。もし認証などがわからない場合はShift Cのレーティングをチェックするのもおすすめです。
GOTS認証コットンなどの素材を高い比率で使用し、高品質で長持ちする製品を製造しています。また、カーボンオフセットプログラムを通じてCO2排出量を相殺しています。環境に負荷をかけにくい素材を使用することで、生産に使用する化学薬品、水、廃水の量を抑制しています。
- Théla (素晴らしい)
ギリシャのブランドThéla は、プラスチックゴミを使ってバッグなどのアクセサリーや服を作っています。創設者のディティ・コテカは、増える一方の使い捨てプラスチックが、海洋汚染、野生生物への危機、埋め立てゴミなどさまざまな問題の原因にならないよう、変化を起こしています。
- Neem(良い)
リサイクル素材からメンズウェアをデザイン・製造しています。Wear Well Bagを購入すると、不要になったシャツを新しいシャツにリサイクルするためのコンポスト可能なリターンバッグと、初回注文時に使える30ポンドのクーポンがもらえます。シャツ1枚が、地球を守る手助けをしてくれるのです。
2.環境保護団体を支援するブランドを応援しよう
もう一つの方法は、気候変動対策の活動をしている団体に寄付をしているブランドを応援することです。環境保護をミッションに据えているブランドを探し、1% for the planetのような組織を支援したり、B Corp認証を受けたブランドから買い物してみませんか。
- TAMGA Designs (素晴らしい)
森林破壊に立ち向かうことを使命としています。1% for the planetを通じて、売上の1%がスマトラの熱帯雨林の再植林に積極的に取り組む、スマトラ・オランウータン協会(S.O.S)とオランウータン・インフォメーション・センター(OIC)に寄付されます。また、このブランドはすべてのアイテムが森林に負担をかけにくく、責任を持って製造・流通された繊維を使っています。
- Patagonia(良い)
パタゴニアはサステナブルアパレル連合と1% for the planetの両方に加盟しています。高品質で長持ちする製品を作ることでファストファッションという潮流に抗い、修理やリユースのサービスも提供しています。
3.速達便を避けよう
高速輸送オプションを選択すると、商品は貨物船ではなく飛行機で届けられます。先述したように、航空機による輸送は船舶による輸送よりもCO2排出量が大幅に多くなってしまいます。
4.店舗または営業所受け取りオプションを利用しよう
もしオプションがあるのなら、店舗での受け取りや営業所での荷物の受け取りを利用すれば、宅急便の陸送を減らすことができ、個人あたりのCO2排出量削減に貢献することができます。公共交通機関、自転車、徒歩で引き取りに行くのであれば、そのお買い物には花丸をあげましょう!
5.消費自体を減らすように努力しよう
カプセルワードローブを意識し、本当に必要なもの、高品質で長く使えるものだけを購入してみませんか?あるいは、近所のヴィンテージショップで、セカンドハンド(中古)アイテムを探してみるのもおすすめです。私たちが地球のため尽くせるベストは、今あるものを長く使い続け、消費を抑えることなのです。
国際輸送のその他のデメリット
国際輸送に関するデメリットは、環境への影響だけではありません。輸入税がかかる国も多いため、海外のブランドへの注文をする前に、その追加費用についても留意することが大切です。また、国際輸送は返品も煩雑です。サイズ違いや注文した商品に問題があった場合のリスクも念頭に置いておきたいところです。
Shift Cが日本語版を提供するオーストラリア発のエシカルファッション評価機関Good On Youは、ファッションブランドが人間や地球、動物に与える影響について、世界で最も包括的な評価を公表しています。ブランドの評価を検索するには、ShiftCをぜひ活用してみてください。なお、オファーコードやアフィリエイトリンクを使用し、売上に応じてGood On Youがコミッションを得ている場合があります。記事翻訳:スパロウ眞奈&UPDATER編集部 Photo:Shutterstock, Unsplash