ストーリー|2023.12.13

食べ物を着る!? グルメファッションへのガイド

※この記事はGood On YouのFood You Can Wear: A Guide to Gourmet Fashionを日本市場向けに翻訳し公開しています。

レディ・ガガが生肉ドレスでレッドカーペットを歩き、物議を醸したのが2010年のこと。肉や野菜を纏うことは万人にとって魅力的なものではないかもしれませんが、昨今、食品廃棄物を活用したサステナブルな素材で普段着を作るデザイナーたちが登場しています。

今回の記事では食べ物由来の素材について解説していきます。

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1. レザーの代替品

おしゃれ上級者を感じさせるレザージャケット。しかし、その産業が与える負荷は懸念されています。例えば「レザーパンツ」と「熱帯雨林破壊」という2つの関連性について、ピンとこないかもしれません。

実は、アマゾンをはじめとする貴重な熱帯雨林が、牛肉や革製品の加工のために伐採されているのです。かの有名なハリウッドスター、レオナルド・ディカプリオが培養牛肉製造のスタートアップ企業に出資したことをご存知の方も多いのではないでしょうか。 

皮をなめす工程はリスクを伴うビジネスです。川辺で重金属を用いてなめすことで、中国、インド、バングラデシュといった国々の流域に深刻なダメージを与えています。

とはいえ、今ワードローブにあるレザージャケットやバッグ、ブーツを今すぐ違うものにシフトすべきだ!と言いたいわけではありません。

環境、気候、そして牛に配慮した「レザー」が登場していることを念頭に置いておくだけでも、今後のワードローブの選び方に良い影響をもたらすことができるでしょう。例えば、次のような天然素材が加工され、エシカルなヴィーガンレザーになっています。

ピニャテックス

ロンドンを拠点とするスタートアップ企業、Ananas Anamはパイナップルから牛革を再現することに成功しました。創業者であるカルメン・ヒホサ博士は、パイナップルの葉の繊維を使用したピニャテックスという素材を開発しました。

パイナップルの葉は、収穫の副産物として多くの場合廃棄されてしまいます。新しい技術によってパイナップルの葉には新たな命が吹き込まれ、農家には収入源が増えました。

コンブチャ

日本語では紅茶キノコとも呼ばれるコンブチャは、消化を促進する効果のある万能薬として飲まれてきました。コンブチャの原料であるゲル状の塊は、微生物や酵母からできたスコビーという菌株です。長い間、使い道のない副産物として認識されていましたが、科学者とデザイナーが才能を結集させ、菌株から生分解性のヴィーガンレザーを開発することに成功しました。

フルーツレザー

菌株レザーを纏うのに少し自信がない方は、オランダの学生チームによって開発された、フルーツレザーを試してみるのはいかがでしょうか。フルーツレザーを開発したFRUITLEATHERによると、ロッテルダム周辺で営業する市場からは、1日に約3500キロのフルーツや野菜が捨てられているそうです。 
オランダのウィレム・デ・クーニング・アカデミーを卒業したチームは、地元のファーマーズマーケットで売れ残った果物を集めることにしました。 果物から種を抜き、ピューレ状にし、茹でて乾燥させ、薄いシート状に加工します。すると、カボチャやイチゴはスタイリッシュなハンドバッグに、桃はランプシェードに生まれ変わるのです。

2. シルクの代替品

シルクの正体が、実は唾液であるということをご存知ですか?蚕は繭の中で身を守るために唾液を分泌します。 養蚕農家は生糸を巻き取って販売しますが、その過程で蚕は死んでしまいます。 繭の洗浄や脱脂のために、刺激の強い化学薬品が使われることもあります。
サステナブルかつクルーエルティフリーなシルク素材を見つけることも可能ですが、代替品を知っておいて損はありません。

オレンジファイバー

イタリアのスタートアップ企業をご紹介します。シチリア生まれのアドリアーナ・サンタノチート氏は、柑橘類の廃棄物から、柔らかくサステナブルなテキスタイルであるオレンジファイバーを開発しました。オレンジファイバーは、ジュース産業から出る70万トンの廃棄物を有効利用することを目指しています。UNECE(国連欧州経済委員会)から「Ideas for Change Award」を受賞しています。

Qmilk

ドイツでは毎年、人間が消費するのに適さない生乳が190万トンも廃棄されています。ドイツのQMilkは、廃棄の多い産業からポジティブなものを生み出す方法を見つけました。
Qmilkの創業者であるアンケ・ドマスケ氏は、牛乳廃棄物から生分解性のあるケミカルフリーの繊維を開発したのです。1キロの繊維はわずか5分で作ることができ、使用する水の量は最大でも2リットルのため、生産効率もとても優れています。

バナナの茎

バナナの繊維は、13世紀ごろから日本で着物や帯などの素材として使われてきました。アジア太平洋の熱帯地域では、バナナは天然繊維として使われ続けています。

毎年約10億トンのバナナの茎が廃棄されていると言われている中、日本の企業でも「バナナクロス」と呼ばれる生地が開発されています。バナナの茎1本(25㎏)あたりにつき500~700gの繊維が取れるため、天然繊維の選択肢として注目を集めています。

バナナの茎をはぎ、竹の繊維のようになるまで煮て紡ぎます。未開拓の資源がまたひとつ、有効活用され始めていることを知ると、私たち消費者も元気づけられるものです。

3. ナイロンの代替品

下着から歯ブラシ、傘、ニットウェア、スイムウェア、スポーツウェアまで、さまざまな製品に使用されることが多いナイロン。ラベル表示で「ナイロン」のパーセンテージが高いストッキングは、その分高い伸縮性を保ち、ヨガパンツなら肌にぴったりとフィットすることを意味します。

残念ながら、ナイロンは原油を原料とするプラスチックの一種で、高度なケミカルプロセスを経て生地になっています。どのナイロンも生分解性はなく、製造工程では大量のエネルギー消費を必要とします。そんなナイロンの代替品となる、食べ物を原料とした2つの素材をご紹介します。

コーヒーかす

コーヒーは単なる飲み物にとどまらず、多くの人にとってライフスタイルの一部になっています。そんな中、シングテックスはコーヒーから布を作る方法を開発しました。コーヒーかすと再生ペットボトルを組み合わせて、エコフレンドリーな素材を作り出したのです。S.Caféテクノロジーにより防水性と防臭性があるため、アウトドアウェアにも最適です。

ココナッツの殻

ココナッツは、まるで天からの贈り物です。ココナッツウォーターを飲んだり、ココナッツミルクにしたり、乾燥させ、絞り、アイスクリームだって作ることができます。さらに、この汎用性の高い果実は、私たちを雨風から守るための素材として使用されることもあるのです。

テキスタイル・テクノロジー企業の37.5(平均的な人の理想体温にちなんで名付けられました)は、Coconaと呼ばれる生地を開発しました。熟したココナッツの殻の繊維から生まれたCoconaは、柔軟で快適、そして温度変化にも強いです。暑いときは涼しく、寒いときは暖かく過ごせるため、スポーツウェアに最適です。

あなたも、食品廃棄物をサステナブルでクルーエルティフリーに活用した素材を選んでみてはいかがでしょうか。

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記事翻訳:スパロウ眞奈&UPDATER編集部

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