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ニュース|2026.09.10

ファッション フロンティア プログラム2026が開幕。16名のセミファイナリストがMoN Takanawaに集結

ファッション フロンティア プログラム(FFP)の今年のプログラムがスタートし、8月にキックオフイベントが行われた。これまで最終審査でしか見ることができなかったFFPの”はじまりの日”を通し、デザイナーたちの熱い思いや、プログラムが大切にする「プロセス」に焦点を当てる。

原稿:鈴木友都

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「創造性」と「社会的責任」双方を高めるデザイナーが集う「FFP」とは?

ファッション フロンティア プログラム(以下、FFP)は、「ソーシャルレスポンシビリティ(社会的責任)」と「クリエイティビティ(創造性)」を併せ持つデザイナーを発掘・支援するプログラムで、ファッションデザイナー中里唯馬さんが発起人となり2021年に始まり今年で6回目の開催となる。
一次審査(書類)と中間審査(プレゼンテーション)を経て、最終審査会(作品製作とプレゼンテーション)にてグランプリと準グランプリを選出する。

上記の「アワード」の面だけでなく、「エデュケーション」と「インキュベーション」という面も併せ持っており、一次審査を通過したデザイナーは8月の1カ月間に多種多様な講師陣からファッションを越えた多角的な内容のレクチャーを受ける。

100年先の未来を考えて欲しい――中里唯馬氏からのメッセージ

8月1日、書類審査を通過したセミファイナリスト16名が、TAKANAWA GATEWAY CITY内の文化施設「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」に集まった。

「日々情報の渦に飲み込まれてしまわないように、100年くらい先の未来を想像してみて欲しい」

発起人・中里唯馬さんが、レクチャー1「クリエイションの考え方」の最後に投げかけた言葉だ。100年先を想像するためにはまず100年前を振り返り、どのような変化が起きたかを知る。決まった正解がないそれぞれの未来を想像することが重要だという。「人と人の間で衣服によって生まれる感動は未来も変わらないと信じている」と述べた。

講義では、クリエイションの原点として「自分の核にあるものを持続するために、初期の知的好奇心を大事にすること」が語られた。 そのうえでアイデアの種として「日々の心の抑揚に意識を向けてみると、自分が何に感動しているのかがわかり、インスピレーションが湧きやすくなる」と伝えた。さらに「直感的にいいかも!と思ったことを信じ続ける忍耐力が必要」とし、良質なインプットの蓄積が直感を研ぎ澄ませ、成功像を描きながら創作を継続する力になると強調した。

そして、従来の発表方法やビジネスの在り方に囚われず、自分に合った表現方法と場所を見つけて欲しいということも伝えた。現に中里さんはパリオートクチュールウィーク内でファッションショーの形式でコレクション発表をしているが、東京のファッションウィークで発表していたときより、評価の在り方やオーディエンスの反応、産業のシステムなど様々な点でしっくり来ている感覚があるという。

中里さんからは「当初の企画に捉われる必要はない」とのフィードバックもあった。参加者は、講義や素材・手法のリサーチなど、中間審査までの1カ月間に何を学んだのかも問われる。

「作る人が最終地点を考える」。鎌田安里紗さんが伝えるソーシャルレスポンシビリティ

レクチャー2ではunistepsの鎌田安里紗さんが「ソーシャルレスポンシビリティの考え方」について話をした。

ファッション産業が抱える課題を大まかに7つのポイントに(気候変動への影響、消費スピードの加速、不当な労働環境等)分け、「一つの取り組みで全てが解決するような”魔法の解決策”はない」とした上で、多様な事例を通して解決に向けたさまざまなアプローチを解説した。

この講義の中で、ものづくりの工程におけるデザイナーのパワーを持ってできることとして、「作る人が最終地点を考える」ことを挙げた。

「作るときから、服のエンド・オブ・ライフを考えて作ることがもっとできないだろうか? それはリサイクルがしやすい単一素材で作ることかもしれないし、解体しやすい構造にしておくことかもしれない。はたまた捨てられないように耐久性も高く長く愛されるものを作ることかもしれない。生み出す人が、作ってしまったものがどうなるかまで考える。それが後にすごく影響する」

答えがなくなかなか解決しない問題に対して、わかりやすい問題提起と”答えの提示”をすることなく、こういう現状がある中で一緒に考え悩み行動するための余白を与えてくれる内容で語るのは、最も核心を突いている気がする。ファッションを取り巻く問題や取り組み事例を聴いた参加者は、ここからどんなインスピレーションが湧き、何を考えるのか楽しみだ。

そして実際に現場に足を運び、見て対話してきた鎌田さんの視点から述べられたのは、サステナビリティはクリエイターにとって“制約”や“煩わしいもの”と感じるかもしれないが、自分自身が興味や疑問を覚えたことに正直になり、実際に足を運んで見て感じることが大切だということ。そこで感じた「こうした方がいいのでは?」がクリエイションを自由にすると伝えた。


レクチャーでは、みな真剣で前のめりな様子で熱意が伝わってきて、応援したい気持ちが膨らんだ。熱心にメモを取り、質疑の時間も「良い質問だ!」と言いたくなるような質問が飛び交っていた。

今年のセミファイナリストも粒揃い。パーソナルな経験から生まれるそれぞれの問い

2つのレクチャーの後は16人による自己紹介が行われ、それぞれが掲げた問いや、どのような製作をしていきたいのかを語った。

Barbara Perelmanさん
アルゼンチンの都会ブエノスアイレス出身のデザイナー。自然に囲まれたパタゴニア地方に移り住んだことが転機となり今回の企画テーマが生まれたという。
香りを嗅ぐことで記憶を呼び覚ますことがあるように、ファッションは、それを作った人をどれだけ伝えられるのかという問いの下、製作を行う。
筆者もこの問いに関して考える機会が多くあり、そのために自分がアクションをおこそうと意識をしているので、彼女がどのような表現をしてくれるのかが楽しみである。

髙平ふみさん
私塾「ここのがっこう」に通い、生地の加工を通して人間の存在の構造を探求するデザイナー。一緒に生活をしているという母親の観察から見えた、他者からの視点や価値観を気にしてネガティブな装いを選択してしまう様をインスピレーションに「自己の沈着」というテーマを設定した。
加齢によって隠したり補正したりしたくなるのは他者からの目を気にしてしまうというのもある一方で、自分が他者へ向ける視線もそこに行ってしまっているが故に自分の装いにも表れるのだろうと感じる。そういった人間の曖昧な部分を生地の加工という手法で表現しようとする発想が面白い。

廣澤那音さん 服飾学生
“プラスサイズ”の身体を称賛し、痩せた身体のみが美しいわけではないことを伝える。
幼少期から習っていたというクラシックバレエの経験と大学で専攻していた舞台衣装デザインを通して、このテーマを踊りと結びつけて製作に取り組む。
彼女の掲げているテーマやそれを具現化するための構想にも魅力はあるのだが、第一にプログラムに参加するアティチュードの高さが個人的な注目ポイントだ。レクチャーを受けている際や、様々な人からの意見を吸収しようとする熱心さは目を見張るものがある。自分のリサーチや他者からの助言をどう活かし、取捨選択してクリエイションに反映するのか注目したい。

福山颯大さん 服飾学生
休学して学校では学べない事を自分で足を運んで勉強しているそう。
今回掲げた企画テーマは、「WHO ATE MY PUDDING ?(誰が私のプリンを食べたの?)」。日常で起きそうな小さなケンカやフラストレーションが、積み重って大きなケンカに発展してしまう様子を“争いの構図”と捉え、現在世界で勃発しているような戦争と重ね合わせた。
センシティブなテーマであるので、本人的にも、戦争が身近ではない自分が伝えるのには責任が伴うと自覚はしている様子だった。衣服を媒体とし、世界情勢に感じている違和感や危機感をユーモアを持って発信しようとするファッションデザイナーとしての姿勢に期待感が湧く。

その他にも国内外から多彩な12人が選ばれている。東アフリカのカルチャーを伝統的な技法での表現を試みるケニア出身でイギリスを拠点とするAngela Ouyaさん。日本の美意識「もののあはれ」をテーマに着物やたつけに見られる平面構造を参照し表現する成田英至さん(学生)。3Dプリンターを使用してドレス製作にトライする、衣服は初挑戦だという元シューズデザイナー片岡弘生さん。アルゼンチンでBIOTICOというサーキュラーデザイン×クリエイティブヘルスをテーマにした循環システムを実践しているJesica Noemi Pulloさん。ケニアにルーツを持ち昔から感じてきた外見だけで人を判断してしまう社会への問いを表現する礒元アリシア茉彩さん(学生)。家事や育児などの可視化されない労働をテーマにした植村美奈さん(学生)。オーストリア出身で昨年に引き続きの参加で今年は伝統的な漁業服を踏襲した製作を自然と共に行うNatalie Huttererさん。ファッションスクールの講師でリジェネラティブデザインを専門にするQuoi Alexanderさん。生の野菜から作るマテリアルと3Dプリンターから出力するデジタルファブリケーションを組み合わせた製作を行う室諭志さん。パートナー出身地であるパキスタンの “JUGAR”という考え方をファッションに変換する中尾詩夏さん。現代社会の情報過多と大量生産大量消費を、新聞紙を素材として使うことで表現する小薗輝久さん(学生)。自動車産業が間近にある故郷の情景から着想し、衣服を最も身体に近いモビリティとして捉え探求する佐野結翔さん(学生)。

このように参加デザイナーたちも多様だ。学生も先生も、国外からの参加も、さらには衣服を専門としていないデザイナーもいる。今年は5カ国のデザイナーがセミファイナリストとして参加しているそう。応募条件として年齢制限もなく、国籍もキャリアもデザイン領域すら問わないというFFPらしさが出ている。

16名の企画書を見て、自己紹介を聞いて、問いや企画テーマがパーソナルな体験や経験と結びついているのがわかった。ファッションブランドの展示会などでも言えるのだが、人の興味を引き応援したくなるのは、デザイナーの人となりや想いが見えたときだと改めて感じた。

9月12日には中間審査が行われ、この中から8名のファイナリストが選ばれる。
そこでは審査員の前でプレゼンテーションを行い、彼らに「この人の作品を見たい!」「期待したい!」と思わせなければならない。8月1日のキックオフ以降、1カ月間のレクチャーや、その期間にそれぞれが行うリサーチによって問いを探求していく。この短期間で自分の殻を破り、成長や変化を見せ、審査員を唸らせてくれるのはどのデザイナーなのか。

上記で紹介した16名のデザイナーたちの中で皆さんは気になる人がいただろうか? そのデザイナーがファイナリストに残るのか。また、筆者が取り上げた4名が中間審査を通過するのか。公式発表を楽しみにしてほしい。

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ライター
鈴木友都
サステナブルファッション分野で取材・執筆のほか、ブランドやイベントの伴走支援に従事。学生時代に『NAKED FASHION』を読み活動を開始した。趣味は商業施設・展示会巡り。最近は国内の服飾産地に関心があり、オープンファクトリー等に頻繁に参加している。ライフスタイル雑貨店での販売員としても従事。

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