• トップ
  • Learning
  • ラッシュ創立者ロウィーナ・バードが語る30年間変わらぬ「企業のあり方」

ビューティー|2026.09.07

ラッシュ創立者ロウィーナ・バードが語る30年間変わらぬ「企業のあり方」

新鮮な野菜や果物を使ったナチュラルハンドメイドコスメで人気の「ラッシュ(LUSH)」。地球・人・動物に寄り添うサステナブルな姿勢はShift Cで高評価「良い」を得ている。来日した創立者ロウィーナ・バード氏に、創業約30年の歴史と思いを伺った。

原稿:吉野ユリ子

Share :
  • URLをコピーしました

6人でビジネスを始めた創業時に掲げた「ありたい未来像」

1995年、6人の仲間とともに始めた小さなビジネス。当時とは環境問題や労働問題、ナチュラルコスメの意義なども今とは随分異なっていたはずだ。この30年の間にラッシュはどう変わってきたのだろうか。

「会社を立ち上げたとき、私たちは6人で“We Believe”というものを書きました。10年後、20年後に私たちがこうありたい、という想像を言葉にしたものです。この時書いたものは今も変わらず、世界中の店舗に掲げています」。大切にしているものは何一つ変わっていないという。「唯一の変化は10年前、人の移動が制限される難民問題を受けて、『移動の自由』を守る言葉を書き加えたことです」。

そして今、もうひとつ、書き加える必要があると考えているのが「ソーシャルメディアの安全性」にまつわる項目だと、ロウィーナさんは言う。「私たちは6年前に、YouTubeを除く一部のSNSからサインアウトしました。SNSは特に若者に対して有害で、自殺や自傷行為を増長しています。私たちの大切なお客様を、そうした危険の中に呼び込むようなことはしたくありませんから。それは暗く物騒な路地にお店を出すのと同じことだと思います」。

SNSに強い危機感を覚えるというロウィーナさん。SNSは“見た目”の捉え方も大きく変えたと語る。「SNSから四六時中流れてくるのは、若く、細く、加工された非現実的な“理想像”たち。そうしたものを美しいと感じさせられるうちに、人々は自分の見た目に不満をもち、“自分ではない何か”を追い求めてしまう。でも私たちが届けたいのは、一人ひとりのもつ美しさ。美しい原材料から作られた製品で肌そのものを健やかにし、自分の肌を愛し、大切に育てることができたら、あとはスマイルがあれば十分。コンプレックスも画像加工もいらないんです」。

どうやって作られたか、プロセスも含めた「美しい原材料」

ではラッシュの考える「美しい原材料」とは何なのだろうか。ラッシュは創業当初、全く資金がなかったが、パッケージや広告には一切お金を使わず、その全てを原材料に注ぎ込んだという。「お客様にとって本当に大事なのは、“その製品が何でできているか”ですから」。そしてまた、その原材料がどう作られ、どうやって調達されているかを含めて初めて“美しい原材料”と呼べる、とロウィーナさん。「私たちは創業以来、動物実験への反対を貫いています。取引先に対して毎年、動物実験をしていないこと、児童労働によって作られていないこと、自然環境を守りながら育てられていること、公正な賃金を支払っていることを宣誓するフォームの提出を求めています。それは面倒な作業かもしれませんが、大きな気づきを与えてくれます」。かつて動物実験を行っていた企業も、ラッシュとの取引をきっかけに実験を辞めたケースもあるという。「毎年宣言をすることで、取引先の意識が変わっていったのだと思います」。

お客様に努力を強いることなく、選択肢を提供する

またラッシュは商品を包装しない「ネイキッド」で販売することでも知られる。包装文化の根強い日本で受け入れられるのは難しかっただろうが、実は日本で販売された製品のおよそ47%*はネイキッドだという。「日本でのネイキッドの実現には当初、別の壁がありました。というのも日本の法律では“パッケージに何を記載するか”が厳密に決められており、そもそもパッケージがないという製品のあり方が理解されなかったのです。何度もやり取りを重ね、私たちも実現可能な方法を検討し、商品そのものにシールを貼る形で合意を得られました」。

さらに、ネイキッド以外の選択肢も用意している。「全てのお客様がネイキッドを望むわけではありません。お客様に選択肢を提供することが私たちの仕事。その代わり、使い終えた対象の空容器を店舗へ返却すると、商品購入時に割引や特典が受けられる“ブリング・イット・バック(BRING IT BACK)”制度や、ギフト需要に応えるため、繰り返し使える布製ラッピング“ノットラップ(Knot Wrap)”などをご購入いただいた方へのラッピングサービスを行っています」。ブリング・イット・バックで回収した容器は新たな容器として再利用したり、再生プラスチック材料として再資源化したりしている。2018年〜2025年までの累計で、479万個・約118トンの容器が返却された。2025年は年間返却率が14.5%だったが、2030年までに40%を目指している。またノットラップは日本の風呂敷文化から着想を得ており、オーガニックコットンや100%リサイクル素材を使用して、またラッピングとして使用後もスカーフやバッグ、ヘアアクセサリーなどとして活用できる。「私たちが用意した選択肢がお客様にとっても環境にとっても魅力的なものであればいいのです。そのために私たちはもっとハードワークしていきます」。

商品を包むのに大人気なノットラップ(Knot Wrap)は100%リサイクルポリエステルでできている。ギフト需要の多い日本ではむしろ少し価格がプラスになってもノットラップで可愛く包みたい、というニーズが高い

日本でラッシュといえば、環境への優しさよりもカラフルな色合いやビビッドな香りの印象が強い。サステナビリティに関心がなく、可愛くポップなものを求めてラッシュに足を運ぶ層にどのようにアピールするのだろう。「確かにラッシュには、環境や社会への意識が高い人と、可愛くて香りがよくて楽しいブランドだから選んでくれる人、両方がいます。そして可愛いものを求めている方にもぜひ来てほしい。私たちの商品はとっても可愛いのですから。お客様自身が学び、理解し、選択することを強いるつもりはありません。お客様が環境問題や動物実験などの問題を知っていても知らなくても、私たちは企業としての責任をきちんと果たし、良い商品をお客様に届けることが重要なのです」。

しかしサステナビリティを追求することと、利益とのバランスに悩む場面もあるだろう。「私たちはエシカルであることを選び、同時に利益を出すことを選びます。そのどちらかを選ぶことはありません。エシカルをやめればもっと大きくなるかもしれない、だけど、一日を終えたとき、罪悪感のなかで眠るのでなく、安心して眠ることを大事にしています」。どちらかを悪とするのでなく、両方を大切にする。だから買う人も“環境や人へのやさしさ”も“楽しくて可愛いこと”もどちらも我慢することなくラッシュに求めることができるのだろう。「それに…」とロウィーナさんは続けた。「サステナブルなもの=高価というわけではありません。例えばラッシュで販売している固形のシャンプーバーは、プラスチック製のパッケージが要らず、製造・輸送・廃棄での環境負荷が非常に低くなります。その上1個で約60回の洗浄が可能で、これはシャンプーバーよりも高い価格設定の250gサイズの液体シャンプー3本分に相当します。さらに固形なら、例えば旅行のときには詰替えの手間やこぼしてしまうリスクを避けられます。サステナブルなものは価格や機能が低い、という思い込みは間違っているかもしれません」。

毎朝のビーチクリーンから生まれた、おしゃれなテーブル

久しぶりに来日し、日本にプラスチック製品があまりにも多いことに驚いた、と語るロウィーナさん。「ありとあらゆるものがプラスチックで包まれている。ここには多くの課題があります。またフィリピンやインドでは、海や川に流れ込む大量のゴミも目にしました。どうすればいいのか、いつも考えています」。こう語るロウィーナさんは、プライベートなサステナビリティライフについても聞かせてくれた。「私はビーチのすぐ近くに住んでいるのですが、毎朝散歩がてらビーチクリーンをしています。そしてそこで拾ったものを集めてテーブルやオブジェを作ったんです」。プラスチックのおもちゃや人形などを詰めた透明のテーブル。なんておしゃれでチャーミングな品だろう! ゴミも怒りや我慢ではなく、楽しいクリエイティブにしてしまう。ロウィーナさん自身のそんな軽やかさが、ラッシュという会社の魅力につながっているのだろう。

自分たちが「ありたい未来」を作るために、できることを続けていく。みんなで、笑顔で、楽しみながら。そんなエネルギーが、ロウィーナさんにも、ラッシュで働く人々にも満ち溢れていた。

ロウィーナさんが日課のビーチクリーンで拾ったものを集めたテーブル


*販売個数ベース

Share :
  • URLをコピーしました
ライフスタイルジャーナリスト
吉野ユリ子
1972年埼玉県生まれ。エディター、ライターとして女性誌やウェブを中心に、心豊かな生き方・暮らし方の提案を行うほか、ブランディングライターとして企業のサービスや商品の価値を言語化し届けることにも力を注ぐ。プライベートでは、2016年に娘を出産するまではトライアスロンが趣味で、アイアンマンを3度完走。現在の趣味は朗読とピアノ。

Ranking ウィークリーランキング (2026.10.02〜10.09)

Instagram Follow us