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ニュース|2026.08.17

EUで売れ残り廃棄禁止規則が大手ブランドに適用開始。現地の反応と対応は?

EUの売れ残り廃棄禁止規則が2026年7月19日からついに適用開始となった。これは持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)に基づく、未販売消費財の廃棄を禁じる規定だ。改めて、その内容と現地の声をチェックしてみよう。

原稿:白石 綾

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2026年7月19日、EU(欧州連合)域内で、衣類・アクセサリー・フットウェアを対象とした未販売品の「売れ残り廃棄禁止」規則が本格的に適用開始となった。これまで業界の“実務”として暗黙のルーティンとして処理されてきた売れ残り品の焼却・埋め立てが、原則禁止されることになる。まずは、大手企業に対して適用が開始しており、中規模企業は2030年から適用が開始される。

欧州環境庁の発表によると、EU市場に流通する繊維製品のうち4〜9%が一度も使用されずに廃棄されているとされ、この廃棄によって生じるCO₂排出量は年間約560万トンにのぼる、この「売れ残り廃棄禁止」規則がこれらの課題への解決策の1つとなることが期待されている。

「EU売れ残り廃棄禁止規則」のポイント

概要: ESPR(持続可能な製品のためのエコデザイン規則)に基づき、衣類・フットウェア等の未販売品の破棄を禁じる規則。2026年7月19日より大手企業へ先行適用。

「廃棄」の定義: 単なる焼却・埋め立てだけでなく、「熱回収(サーマルリサイクル)」や「マテリアルリサイクル」も法律上「廃棄」とみなされる。

例外規定: 安全上の問題・模倣品・寄付先が見つからない(条件あり)等の限定的な場合のみ。年間の廃棄実績や理由の対外開示が義務化。

現場の課題: ブランドが小売業者へ卸売りをして所有権を移すことで責任追及を逃れたり、中古品と称した域外輸出などの「抜け穴」が懸念されている。

フランスが先行した衣類の「廃棄禁止」、EUが域内全体へ拡大

売れ残り衣類・靴の廃棄に関するルールとしては、2020年にフランスで先行施行された「AGEC法(循環経済法)」が記憶に新しい。AGEC法が単一国家の市場に適用される規制であるのに対し、今回のEU新規則は、EU全体の「エコデザイン規則(ESPR)」の枠組みの一部だ。ESPRは2024年7月に発効しており、EU市場に流通する製品にかかるルールのため、日本企業であってもEU域内で販売していれば対象となる。

適用は企業規模に応じて段階的に進む。

段階的な適応スケジュール

【大手企業】
2026年7月19日から適用
※従業員250人以上、または従業員250人未満でも売上高5,000万ユーロ超かつ総資産4,300万ユーロ超の両方に該当する企業

【中規模企業】
2030年7月から適用
※従業員50人以上250人未満で、売上高5,000万ユーロ以下 または 総資産4,300万ユーロ以下を満たす企業

【小規模企業・零細企業】
適用除外

対象企業は、売れ残り品について「販売(値下げ・代替市場を含む)」「慈善団体・社会的企業への寄付」「リユース(修理・再製造)」を優先することが求められる

リサイクルも「廃棄」扱いへ。売れなかったから廃棄するという理由はNGに

ESPRにおける「廃棄(destruction)」とは、製品を意図的に廃棄物として処理するあらゆる行為を指す。具体的には、埋め立てや焼却に加え、「リサイクル」もこの「廃棄」の定義に含まれる点に注意が必要だ

つまり、日本では、資源有効利用の一環とみなす意識が広く浸透している熱回収(通称:サーマルリサイクル)や、製品の原型やその機能を失うマテリアルリサイクルもESPRでは「廃棄物処理」の定義に含まれるのだ。(※1)

図:EU廃棄物枠組み指令(Directive 2008/98/EC)に基づく「廃棄物ヒエラルキー」。上が最も望ましい選択肢(優先度が最も高い)であり、下へ行くほど最終手段(原則として避けるべき処理)となる。

これを前提とした上で、例外と認められているのは、大きく分けて以下の3つだ。

廃棄が認められる「3つの例外」

1.製品そのものに安全性の欠陥や損傷がある場合

2.模倣品や知的財産権を侵害する製品である場合

3.寄付先の候補となった慈善団体側から受け取りを断られた場合(EU域内の少なくとも3つの非営利団体に寄付を申し出るか、自社サイトで8週間、寄付先・販売先を募っても受け入れ先が見つからなかったことが条件)

そして、これらの例外を適用する企業は、廃棄の根拠となる証拠(検査結果などの文書)を残し、毎年どれだけ廃棄したかを対外的に報告しなければならない。関連する記録の保管期間は5年間で、加盟国の当局が遵守状況を確認し、違反時には罰金が科される

さらに、売れ残り製品を廃棄する大手企業には、例外適用の有無にかかわらず、その数量・重量・廃棄理由などを毎年対外的に開示する義務が課されている(ESPR第24条)。この開示義務は衣類・靴に限らずすべての消費者製品が対象で、大手企業には既に適用が始まっている。

数字で見る廃棄の実態ーフランスでは毎年約1,000億円相当の未販売製品が廃棄に

欧州委員会は2026年2月の公式発表の中で、廃棄の規模を示す具体的な数字も明らかにしている。

【フランス】
毎年約1,000億円超(6億3,000万ユーロ)相当の未販売製品が廃棄されている。


【ドイツ】
オンライン注文の返品のうち年間約2,000万点が処分されている。

また、欧州環境庁の発表によれば、オンラインで購入された衣料品の返品率はEU平均で約20%、つまり5点に1点が返品されているという。

この返品率は、実店舗で購入された商品の返品率と比べて最大3倍にのぼると欧州環境庁は指摘しており、オンラインシフトが廃棄問題を悪化させている一因であることがうかがえる

なお、欧州環境庁は返品されたもののうちおよそ3分の1が最終的に廃棄処分に回っていると推計している。

「例外規定が曖昧」という批判 も。 ブランドや業界の反応は?

Business of Fashionでは、今回のEU規制について主要ラグジュアリーブランド各社の対応状況を取材を通して明らかにしている。

バーバリー:2018年に約42億円相当の売れ残り品を焼却していたことが発覚し国際的な批判を受けた事件を受けて、すでに廃棄を停止。

シャネル:売れなくなった商品については、2019年に設立した循環プラットフォーム「L’Atelier des Matières」を通じてリユースに回す仕組みを既に持っている。(※3)

また、FashionUnitedでは、LVMHが2021年に立ち上げたプラットフォーム「Nona Source」が紹介された。こちらはヨーロッパの若手デザイナーやブランド限定で「アーカイブ生地」やレザーを、手頃な価格で入手できる仕組みだ。

このように、今回の規則適用が今後もこうしたブランドのリユース事業をさらに後押しする可能性があると期待の声が高まる。

一方で、規則の適用企業には、単純に割り切れないグレーゾーンもある。法的な責任の所在は、①製品の所有者が誰か、②その製品がEU市場に「投入」された状態とみなされるか、③最終的に廃棄を決定するのは誰か、という複数の要素で判断されるためだ。(※4)

つまり、ブランドが在庫を卸で小売業者に売り切ってしまえば、その時点で所有権も廃棄の意思決定権も小売業者側に移るため、ブランド自身は廃棄の責任を問われにくくなる、という構造が生まれる。

また、広範な例外規定が「法の抜け穴」になりかねないという警告も出ている。寄付先が見つからない場合や、修理・加工のコストが廃棄コストを上回ると判断された場合には廃棄が可能だという規定が、その根拠として挙げられている。

さらに、EU域外に一度出てしまえば、EUの規制が及ばなくなるという構造的な限界も指摘されている。近年、課題として浮き彫りになっているアフリカやラテンアメリカへの中古衣類の輸出は、書類上「リユース」として扱われるため合法となるが、実際には現地で処理能力を超えた廃棄物として積み上がっているケースが少なくない。

もっとも、この点については2026年5月に適用が始まった改正廃棄物船積規則で中古品を装った廃棄物輸出への規則が強化され、2027年5月以降は古着を含む繊維廃棄物の非OECD国向け輸出が原則禁止となるなど、別の枠組みでの手当てが進んでいる。(※5)

この規則はファッションの廃棄物問題を変えられるか

この規則単体で業界の廃棄物問題がすべて解決するわけではない、という見方も強い。エコデザイン要件、拡大生産者責任(EPR)、デジタルプロダクトパスポートなど、ESPRの他の仕組みと一体となって機能してこそ、今回の規則も本来の効果を発揮するというのが実情に近いだろう。


対象企業の多くはグローバルにサプライチェーンを運用しており、結果として、法的な強制力はなくても、この規則に合わせた在庫戦略の見直しが、他の地域の事業にも自然と波及していくことに期待したい。

この規制が今後どのように運用され、どこまで実効性を持つのか、しばらくは注視が必要になりそうだ。

出典:
※1:ESPR Unsold Consumer Products/ Generation Impact Global
ESPR: The Ban on Destruction of Unsold Goods/ Anthesis
※2:The destruction of returned and unsold textiles in Europe’s circular economyy/欧州環境庁
※3: Can the EU Ban on Destroying Unsold Goods Actually Work?/ Business of Fashion
※4: European ‘destruction ban’ is officially in effect: a historic day for fashion? / FashionUnited
※5:Regulation (EU) 2024/1157 of the European Parliament and of the Council of 11 April 2024 on shipments of waste, amending Regulations (EU) No 1257/2013 and (EU) 2020/1056 and repealing Regulation (EC) No 1013/2006 (Text with EEA relevance) / 欧州連合

参考:
Ban on destruction of unsold clothes and shoes enters into application / European Commission
The Prohibition on Destruction of Clothing and Footwear under the ESPR/ produktkanzlei

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Stories behind 代表/鎌倉サステナビリティ研究所 スタッフ
白石 綾
アパレルブランドで販売や商品企画に携わる中で業界の課題を実感。イタリア在住をきっかけに、特に環境問題との関係に強い関心を抱く。2020年にMilano Fashion Instituteでサステナブルファッションを学んで以来、強い当事者意識を持ち、業界の問題解決に向けた活動を続けている。

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