フェスやイベントなど人が集まる楽しい催しにどうしても付いて回るゴミ問題。特に飲食ブースが多ければ、食べ残しや食品残渣も増える。山になったゴミ箱に誰もいい気持ちはしないだろう。近年は参加者のゴミへの意識も高まり、分別や持ち帰りなど理解ある行動が多く見られるようになったが、ゴミをただ処分するだけではなく、資源として役立てることはできないか。そんなアイデアから生まれたのが「資源が“くるり”プロジェクト」だ。毎年10月に開催される、くるり主催の『京都音楽博覧会(以下、京都音博)』で実施されており、2025年には、会場内で集められた500㎏以上の食品残渣が約4カ月をかけて完熟たい肥へと生まれ変わり、再び梅小路公園へと還された。音楽が鳴り終わった後も続いていく、この循環プロジェクトを紹介しよう。

よりきれいな状態でお返ししたい、という切なる思い
今年で20周年を迎える『京都音博』。京都・梅小路公園を会場に、地元出身であるロックバンド・くるりが主催し、毎年10月に行われる野外の音楽イベントである。くるりと繋がりのある多様なミュージシャンが参加し、2日間にわたって開催されている。梅小路公園はJR京都駅からも近く、ステージを観るための客席チケットこそすぐソールドアウトしてしまうものの、公園を歩けば音楽はふわりと耳に入ってきて、地元の人にとっては身近で親しみやすい雰囲気があるようだ。このイベントでは音楽をきっかけに、人や地域、そして自然とのより良い繋がりを育んでいこうという思いが感じられる。その『京都音博』で、開催当初から特に大切にしているのが「環境」への取り組みである。
音楽フェスでは会場で飲食を楽しむ人も多い。するとどうしても食べ残しや食品残渣が出てしまう。くるりの岸田繁さんは以前よりコンポストなどの資源の循環に関心を寄せており、使わせていただいた公園を、よりきれいな状態でお返ししたいという思いが、この取り組みを始めるきっかけにもなっている。

そこで2022年より始まった「資源が“くるり”プロジェクト」。『京都音博』では、生ごみとして捨てられてしまう食べ残しや余った食材を「完熟たい肥」という資源に“くるり”と変えてしまおう、という試みが行われている。出来上がったたい肥は、梅小路公園の木々や花に与えることで循環させている。水分を多く含む生ごみを焼却せず、資源として活用することは、CO₂排出量の削減にもつながる。

フェスで出たごみは、どうやって地域の資源になるのか?
『京都音博』の開催中、会場内にはコンポストが設置される。集まった食べ残しや食品残渣は、その後ボランティアの皆さんの手を借りて、約4ヶ月かけてたい肥にする。コンポストに興味のある人々を集め、のちに実践もできるよう勉強会も開催。実際のところ、ただコンポストに投入するだけでたい肥が出来上がるわけではない。ぬか床のような「基材」を用意し、時々攪拌して、微生物が食品を分解しやすいよう環境を整える必要がある。この基材には、京都・大原の農家の方から譲り受けたもみがらや、京都の酒蔵の米ぬか、伏見区の瓦屋の瓦土、梅小路公園の落ち葉など、地元の素材を大いに活用している。4ヶ月経つと匂いもなくなり、ふかふかの土のような完熟たい肥ができあがる。完熟たい肥は生ごみを微生物によって分解・発酵させているため、すぐに作物の肥料として使えるというメリットもある。

2025年には約30名のボランティアが参加し、2日間で約562kgの食品残渣を回収。11月〜1月に計6回の切り返しを行い、約4ヶ月で完熟たい肥が出来上がった。このたい肥づくりには、梅小路公園花と緑のサポーターの会、京都みどりクラブ、京都水族館、滋賀県の高校生たち、そして他にも地元の小学生や大学生、地域の方々、環境の取り組みに関わる企業の方など、様々な人が関わっている。資源が“くるり”と変化する過程に携わる人が増えることで、参加する人たち同士の緩やかな交流が生まれ、環境についてよりリアルに考える良い学びの場にもなっているようだ。

出来上がった完熟たい肥のお引渡し会を開催

2026年春には、みんなが力を合わせてできあがった完熟たい肥を梅小路公園に返す「完熟たい肥お引渡し会」が開催された。このたい肥は梅小路公園の花壇などに使われる他、近隣の京都水族館の館内にある畑でも利用されるなど、地域に循環している。水族館の畑で育てた野菜は、以前よりも大きく元気に育ったそうだ。
今回はその後に、このプロジェクトのこれまでとこれからを語り合うトークセッションも開催された。梅小路エリアのまちづくりに携わり、「資源が“くるり”プロジェクト」発起人の足立毅さん、コンポストアドバイザーの鴨志田純さん、そして京都音博の主催者であるくるりの岸田繁さんが登壇し、それぞれの思いを語った。

「京都の魅力とは、3つの山、川が流れ、自然に囲まれて、生き物が身近に一緒にいるような、豊かな生活ができることです。そうした風景や感覚を守り、次の世代へ手渡していくために使っていただければありがたいです。このプロジェクトが、京都の神社仏閣のように、ずっと繋がる未来になっていって欲しい」と岸田さんは語る。
コンポストから広がる循環の輪が、さらに大きくなった2025年
「資源が“くるり”プロジェクト」は、このコンポストを起点に更なる広がりをみせている。ただ捨てて終わりにするのではなく、そこに価値を見つけ、地域の中で生かしていく。そのことを実感できる、多様な取り組みが加わっていった。
2022年以降、京都由来の酒かすや小豆の皮などの廃棄食材を使ったアイスクリームの出店や、古着を回収し必要な人へとつなぐ「RELEASE ⇔ CATCH 衣服の回収/¥0 Market」、完熟たい肥を持ち帰りできるブースの設置など、京都でサステナブルな取り組みを行う事業者の参加が増え、来場者がさまざまな環境活動に触れられる場がつくられた。

2025年はさらに増えていき、完熟たい肥のお持ち帰りコーナー、コンポストに取り組む学生たちによる展示、衣服の回収コーナー、自家発電式のジューススタンド、京都芸術大学による廃材などを使ったワークショップ、循環型社会を体験するツアーの紹介など、さまざまなブースを展開。来場者には、音楽を楽しむ合間に、衣服の循環や食品ロス、地域資源の活用など、サステナブルな活動に身近に触れ合える機会が増えて、環境について自然に考えるきっかけを与えている。このような活動は京都市からも認められ、「第22回京都市環境賞 特別賞」を受賞している。

2026年はUPDATERも参画。コンポストで発電し会場を照らす明かりに
2026年は、さらに新しい取り組みが予定されている。「みんな電力」などの事業を展開し、社会課題解決のビジネスを行うUPDATERが「資源が“くるり”プロジェクト」を主催し、コンポストで発電する仕組みが導入される。コンポスト発電を開発しているSOIL MATEをパートナーに迎え、会場で実際に小さな明かりを灯すプランがある。SOIL MATEは「EXPO2025 大阪・関西万博」にて、「Earth Table〜未来食堂」のレストラン「f.fields」でコンポスト発電によるシンボルツリーを点灯するなど、ユニークな試みを行っており、たい肥だけではない、コンポストの新たな活用に期待が高まっている。

“環境・文化・音楽”をコンセプトに、ただ音楽を楽しむだけでなく、自然環境や社会との関わりについて考えながら、持続可能な未来を目指して活動する『京都音博』の「資源が“くるり”プロジェクト」。この実現のために毎年行っているクラウドファンディングが、今年は20周年の節目を記念して、リターン品も充実しているとのこと。こちらも要注目だ。着実に“くるり”と循環の輪を広げながら、今年も10月10日(土)、11日(日)に開催される。
京都音楽博覧会2026
2026年10月10日(土)、11日(日)開催
京都梅小路公園
https://kyotoonpaku.net/2026/