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木村舞子
北海道出身。バンタンデザイン研究所を卒業後、スタイリスト百々千晴氏に師事。ファッションモード誌、カタログ等で活躍中。雑誌GINZAのウェブサイトでは、「スタイリスト・木村舞子さんと一緒に、サステイナブルライフへの道!」を連載中。
過去の連載記事はこちら
第1回目:エドウイン
第2回目:ユニオン ランチ
第3回目:ウメダ
第4回目:マルチョウ
第5回目:オーメ
第6回目:フィルメランジェ
第7回目:スハー
第8回目:森銀
第9回目:TALK NONSENSE
「循環」を誘発するプラットフォーム
Hender Scheme(エンダースキーマ)は東京・浅草を中心とした職人さんたちとともにクオリティの高い靴やバッグを中心に革小物全般の商品を展開しています。そのエンダースキーマが2年前から取り組んでいるのが、循環を促すためのプラットフォーム「circulation」。その実店舗となる「circulation」にお邪魔して、実際の取り組みなどを聞きました。
ーーこの店舗をオープンする前から、circulationに繋がる取り組みはされていたと聞きました
エンダースキーマPR・井上 恵さん(以下、井上) ブランドを始めた当初からリペアは受けていたのですが、そのことを知らないお客様も多くて。革靴を履き慣れていない方はリペアショップに足を運ぶことも少ないので、直せるかどうかわからなかったりしてそのままにしてしまう。加水分解するパーツの多いスニーカーなどはとくにリペアできないものも多く履き捨てることになってしまうイメージも強いですよね。そういった人が結構多いのでは、ということからリペアを受けられるようなプラットフォームを作りたいなという思いがありました。
なにより、永く使っていただけるレザーシューズや革小物などを作っているなかで、その受け皿がないと成立しないかなと。
そこでプロダクトを作って、販売して、その後のケアやリペア、さらにはリセールやカスタムもできるという環境を作ることでプロダクトを“循環“させていく、このプラットフォームが作られました。


ーーーブランドがリペアもやってくれるのはいいですよね。一般のリペアショップでもできるけれど、アイテムによってはちょっと託すのが不安な時もあります。ブランドがリペアもやってくれると、そのプロダクトのことを熟知しているから安心して任せられます。
circulationマネージャー・杉澤健人さん(以下、杉澤) そういったお客様は多いですね。ブランドが販売しているものをそのブランドがリペアするというのはとても信頼性が高く、それを理由にリピーターになってくれるお客様もいます。発送対応でも承っているのでインスタグラムでの発信を通じて、海外からのお問い合わせもあったりして、国内外からさまざまなリペア・カスタムを受けています。特に最近は、旅行で日本を訪れる方も多いので、日本に来てすぐのタイミングで持ってこられて、滞在が終わる頃に持って帰られることもあります。
ブランドがこういった対面で相談できる窓口を持っていることは少ないので、実際に会って物を見ながら相談できるというのが強みです。
4つのプログラムから構成されたショップ「circulation」
ーーcirculationのコンセプトを教えてください
杉澤 ここはエンダースキーマが運営しているリペアショップなんですが、リペアだけの文脈ではなく4つのプログラムで構成されています。
1: Repair
まず主軸となるRepair(リペア)。お客様にご購入いただくだけで終わりではなく、使用することで完成するプロダクトとして作っています。circulationを通じて、愛着を持ったものをブランドがリペアをすることで、より永く愛用いただける環境を提供したいという思いがあります。これは自社のみならず他社のものも同様です。


2: Custom
杉澤 次にCustom(カスタム)。アーカイブ・コレクションを含むシューズのデザインや機能に対し、新たな解釈を与え、 カスタムしたプロダクトを販売しています。手を加えることで新たな解釈が加わり新しい価値が生まれる。プロダクトをデザインして、店頭に置いて、でもそれで終わりじゃない。プロダクトのライフサイクルやデザインとして、一つの形で留まらないということがcirculationの根底にあります。

3: Resale
杉澤 そしてResale(リセール)は人が使い、その人なりの完成品になったプロダクトを新しい人のもとへ繋ぐ二次流通プログラム。 自社のUsedのアイテムを状態によってはリペアを施して再販売しています。元の所有者から次の方へと繋ぐ取り組みです。(現在はまだお客様からの買取は行っていませんが、今後、買取も行う予定)。
新品に近いものから(革が)育ったものまで色々ありますが、永く大切に使っていた元の所有者の味がでることでより魅力的になるものもある、ということをお客様にも感じていただきたいと思っています。
革の経年変化がとても綺麗に出ているものに関しては、製品の元の価格よりも価値が出ているものもあります。
特にMIP(manual industrial products)ラインのシューズは、新品だとヌメ革の質感も硬い無垢の状態。お客様自身が育てていくものなのですが、このリセールではすでに育っている状態のものがあったりするので、それが欲しいというお客様もいます。



4: Workshop
杉澤 最後にWorkshop(ワークショップ)。これは自分の手を動かして作るという体験をしてもらうことで、アイテムにさらに愛着を感じてもらおうというものです。circulationのプログラムの一環として不定期に開催しています。過去にはフライターグとのコラボレーションでのハンドルの取り付けワークショップや、自社製品のカードケースを作るワークショップを開催しました。フライターグとの取り組みも続いていて、昨年はフライターグとのコラボレーションアイテム第2弾の販売時には、海を超えて、上海のフライターグの店舗で、お客様に自分でハンドルをつけてもらうワークショップも開催しました。

井上 そのほか、購入したもののサイズが少し合わないなと思った時にフィット感の相談が可能な場合もあります。もちろん全てが対応可能なわけではないのですが、インソールを剥がしてその中に中敷を入れることで足にフィットするように調整することなども可能です。
杉澤 具体的には左右差がある方もいるので、そういった調整もご来店いただいて実際にフィットを見ながら調整させていただいてます。

靴を作る過程で出てしまう端材を利用するために小物を作り始めた
井上 エンダースキーマでは、サステナブルということは大きくは謳ってないんです。サステナブルの解釈は状況や人によって様々です。エンダースキーマはもちろんですが、レザーを扱うブランドとのコラボレーションや交流も多いなかで感じているのは、どのブランドや職人さんも共通して、レザーを扱っていると自然と無駄にしたくないという思いを持ってプロダクトを製作していますし、そういった思いは当たり前のようにものづくりの様々な工程に根付いています。普段の生活にも根付く、何事も無駄にしないという意識と近いですし、あえて発信はしてこなかったのですが、どういうものづくりがされているか、どういった素材が使われているかということをお客様も知りたいという意見が増えてきて。少しずつ、お客様に知っていただいた際に参考になりそうな点なども発信するようになりました。
ブランド自体はレザーシューズから始まっているんですが、靴のパターンを革から切り取っていく過程の中でなるべく無駄なく、上手にやっていてもどうしても端材が出てしまう。そうしたらその端材でペンカバーを作ってみようとか、お財布を作ってみようとか、そういった形で小物が増えていきました。

井上 こちらはLeft to Rightというシリーズで、残った素材を正しく使うということを意味しています。長年継続してきたシリーズですが、2021年にシリーズ名をつけて、お客さまに向けてその旨がよりきちんと伝わるようになりました。
杉澤 牛の革はもともとかなり厚みがあるのですが、例えば、お財布など小さいアイテムを作る際、厚みがあると作れないので表革を薄く剥ぐ必要があります。その際にまだ厚みのある繊維のしっかりした革が残っているのですが、業界的にもそういった余りの素材を残してあってそれを“床革“と言います。革屋さんもその床革を二次利用できるように仕上げてくださっているんです。


取材を終えて
私自身も以前からcirculationのリペアを利用していましたが、作って売るだけではなくお客様の手に渡ったその先を考えた取り組みに、ブランドとしての信頼を得ているということを改めて確信しました。
ただ永く使うためにリペアするだけではなく、もともとの製品と異なる素材を用いたり、カスタムできることでよりクリエイティブなアイディアを生み出せるプラットフォームになっていて、まさにファッション好きから求められる存在ではないでしょうか。
是非読者の皆さんも足を運んでみてください!

circulation
東京都渋谷区恵比寿2-14-3 B1
営業日時に関してはinstgramで確認を
恵比寿にあるエンダースキーマの実店舗「スキマ」のすぐそばにある