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ビューティー|2026.06.18

なぜ今「競わないアワード」なのか。齋藤薫と新井ミホが語る、サステナブルビューティーと新しい美容の価値基準

ウェルネス&サステナビューティーの「ラキャルプフェス」を主催する新井ミホさんと、そのアワードにて特別思想監修を担う齋藤薫さん。長年美容業界を見続ける2人に、「これからの美しさはどこへ向かうのか?」聞いた。

 

原稿:吉野ユリ子

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齋藤薫
美容ジャーナリスト。エッセイスト。女性誌編集者を経て独立。多数の女性誌やウェブメディアに連載を持つ。Yahoo!ニュース エキスパート。朝日新聞「ボンマルシェ」では2010年の創刊年から現在に至るまで連載エッセイ「美しい歳の重ね方」を継続中。『“一生美人”力』シリーズ(朝日新聞出版)、『大人の女よ!清潔感を纏いなさい』(集英社文庫)、『年齢革命 閉経からが人生だ!』(文藝春秋)など著書多数。

新井ミホ
ラキャルプ代表/植物療法士、ビューティディレクター。IT関連企業の広報や化粧品メーカーPRを経て、ウェルネス・オーガニック美容専門のPR会社ラキャルプを2012年に設立。植物療法や薬膳、ウェルネスライフにも精通。日本最大規模サステナブル美容展示会「ラキャルプフェス」を主催、2024年より地方自治体によるウェルネスツーリズムワーキング委員に就任。ウェルネス美容を通じサステナブルな未来構築を目指し、環境課題や女性の社会課題のサポート活動にも積極的に取り組む。

ラキャルプフェスが挑戦した「競争しないアワード」

5月22〜24日に開催された、ウェルネスやサステナブルビューティの最前線の情報を体験し学べるイベント、ラキャルプフェス。9年目を迎えた今年、新たな試みとしてスタートしたのが、誠実な取り組みや思想を持つブランドや製品に光を当てる「ラキャルプアワード」だ。

今回、このラキャルプアワードに特別思想監修「Special Philosopher」という役割を担ったのが、美容ジャーナリストの齋藤薫氏。このアワードのもつ意味、そして美容やサステナビリティを取り巻く価値観の変化について、ラキャルプ代表の新井ミホ氏とともに齋藤氏に話を聞いた。

ラキャルプフェスを主宰する新井氏は、9年目を迎えた今年、新たな挑戦としてアワードを創設した。しかし目指したのは、優秀な商品を選び出す従来型のアワードとは一味違っていた。それは「競争しない」「優劣をつけない」アワード。新井氏がその思いを語る。

「自然界には本来、優劣がありません。みんなが平等で、小さな虫も大きな動物も、それぞれの役割を持ちながら生態系を支えています。ラキャルプフェスも、みんなで協力しながら、社会を豊かにするサステナブルなビューティという、一つの世界を作る場でありたいと思っていました。その審査員になっていただく方は、美容だけでなく、環境問題に取り組んでいらっしゃったり、ファッションにも精通されていたり、美容の世界の既存の価値観を脱ぎ捨てて見てくださる方にお願いしたい、と思ったんです。そして頭に浮かんだのが齋藤薫さん。ちょうどそんなとき、齋藤さんの事務所から、“今後美容誌などのベスコス審査員は辞退させていただく”という旨のメールが届いたんです。ただ、その中に“メノポーズ関連だけは続けていきたい”といったワードもあり、美容だけではなく、女性のライフステージや社会課題に視点をおかれていることに、心動かされるものがありました。齋藤さんが私達に気づきや勇気を与えてくれることは変わらないのだと感じ、審査員とは別の形で力をもらえないかと直談判したんです」。(新井氏)

こうして“特別思想監修”の役割を依頼したという。このタイミングで齋藤氏が選んだ「アワードの審査員を降りる」という判断は、少し別の軸ながら、新井氏の思いとちょうど重なるものだった。

「今の化粧品って、粗悪品がないんです。プチプラもデパコスも、水準がすごく上がっていて、それぞれに全部いい。だからこそ、何を基準に価値を見出すのかが、より重要になってきたと感じていました」。(齋藤氏)

そんなタイミングで出会ったのが、ラキャルプアワードだった。

「ラキャルプフェスに集まるブランドや人たちには、もともと同じ方向を向いている空気があります。競争ではなく共創、価値観を共有している。だからこそ、このアワードの形が成立するんだと思いました。互いに光を当て合い、それぞれの魅力をことばで発信して応援していけばいいんじゃないか、と」。(齋藤氏)

こうして、二人の思いが重なった。

境界線が消え始めた美容業界

齋藤氏は、現在の美容業界を「ボーダレスな時代」と表現する。かつてはオーガニック・ナチュラル系とサイエンス系コスメの間には明確な境界線があった。しかし今、その境界は急速に薄れつつある。

「今はナチュラルブランドも科学的な裏づけや効果感、使用感を重視していますし、既存の大手ブランドも環境への配慮をあたりまえに行っています。お互いの良さを取り入れ合っていますね」。(齋藤氏)

その結果、消費者の選び方も変わった。以前は価格や機能が選択基準だったが、今はブランドが何を目指しているのか、どんな思想をもっているのかに目を向ける人が増えている。個人の価値観によって、選び方もガラリと変わる。

「店頭に並んでいると同じように見える商品でも、背景にある哲学は全く違います。どれだけ本気で未来を考え、どれだけ真摯にものづくりをしているか。そういう部分がこれからますます重要になると思います」と齋藤氏は言う。

サステナビリティは「我慢」ではなく「選択」するもの

クリーンビューティに対する人々の見方も急激に変化している、と齋藤氏。

「少し前までは企業側も消費者もどこか無理をしてサステナビリティを取り入れていた気がします。でも、我慢するサステナビリティの時代は終わりました。信念をもったブランドが真摯に製品開発に取り組み、消費者はその価値観に共感できるものを選ぶ。嘘や偽善のない関係性がようやくでき始めたのではないでしょうか」(齋藤氏)

それはオーガニックブランドだけの話ではない。

「例えば資生堂は、創業間もない頃から、怪我や病気などにより痣などの悩みを抱える人々のためのカバーメイク商品を黙々と作り続けています。こうした取り組みもまた、社会に対する大切な貢献でしょう。サステナビリティの形はひとつではありません。だからこそ、その背景にある姿勢が問われる時代になっていると思います」(齋藤氏)

「一人称の美」から「周りを幸せにする美しさ」へ

では、これからの美しさはどこへ向かうのだろうか。齋藤氏が語ったのは、「一人称の美」からの変化。

「今までは、自分がきれいならそれでいいという美しさが中心でした。けれどこれからは、周りも幸せにする美しさが求められていると思います。例えば近年美肌の条件として必ず上げられる“透明感”というワード。それは単なる自己満足ではなく、透明感のある人を見ると、こちらまで気持ちが清々しくなるような感覚があるからこそでしょう。エイジングケアに注目が集まるのも、若々しく見える人は見る人にイキイキとした活力を届けるから。新しい時代の美は、見る相手に心地よさを与えるという視点が重視されていくと思います」(齋藤氏)

さらに齋藤氏は、オーガニック・ナチュラルの世界が美容にもたらした最大の変化として、「生活との接続」を挙げる。

「昔の化粧品は化粧台や洗面台など、鏡の前に置いてあるものでした。でもオーガニック・ナチュラルが登場したことで、バスルーム、キッチン、リビング、寝室とあらゆるところに登場するようになりました。美容が顔だけでなく、睡眠や食事、暮らし方にまで広がりをみせたのです。コロナ以降この傾向は高まっていると思います。今の若い世代は、鏡の前で取り繕う肖像画のような美しさではなく、もっと動的な美しさを目指しています。生活そのものを整え、自分らしい生き方を育むことが、美しさにつながると感じている。美容は肌だけの話ではなく、暮らし方、生き方、社会との関わり方にまで広がっていると言えるでしょう」(齋藤氏)

ラキャルプフェスが提案する価値観もまた、その延長線上にある、と新井氏。

「競争ではなく共創へ。自分だけではなく周囲へ。そして消費だけではなく、未来へ。こうした価値観をもつ人が集まるのがラキャルプフェス。未来への一歩一歩を刻んでいきたいと思います」(新井氏)

自分はどんな価値観に共感し、何をするのかーー。化粧品を選ぶとき、私達もまた自らの価値観を問い、応援のメッセージを届けているとも言えるのだろう。

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ライフスタイルジャーナリスト
吉野ユリ子
1972年埼玉県生まれ。エディター、ライターとして女性誌やウェブを中心に、心豊かな生き方・暮らし方の提案を行うほか、ブランディングライターとして企業のサービスや商品の価値を言語化し届けることにも力を注ぐ。プライベートでは、2016年に娘を出産するまではトライアスロンが趣味で、アイアンマンを3度完走。現在の趣味は朗読とピアノ。

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