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ニュース|2026.02.04

私たちの身体に蓄積するマイクロプラスチック。その侵入経路と、いま私たちができること

EUや米国、フランスなどで規制が加速するマイクロプラスチック。5mm以下の微細な破片は、飲料水や衣服、タイヤの摩耗などを通じて、日常的に私たちの体内へ取り込まれている。
最新の研究では、プラスチック粒子が血液や心臓、さらには脳などの臓器から検出される例も報告されており、身体への蓄積が健康にどのような影響を及ぼすのか、把握しておこう。

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日本はプラスチックの「ホットスポット」。たったの1週間でクレジットカード1枚分のプラスチックを食べている?

世界自然保護基金(WWF)の報告書によれば、私たちは飲料水や食品を通じて、1週間で平均して「クレジットカード1枚分(約5g)」に相当するプラスチックを摂取しているという。*[1]近年の研究は、プラスチックがもはや排出される対象ではなく、私たちの身体を構成する「組織の一部」として蓄積している実態を浮き彫りにしている。

特に日本に住む私たちにとって、この問題は決して他人事ではない。環境省の調査では、日本周辺海域のマイクロプラスチック密度は北太平洋の16倍、世界の海の平均と比べるとなんと約27倍という極めて高い数値が報告されている。まさに世界的な「ホットスポット」の中に私たちは生きているのだ。*[2]

その影響はすでに食卓にも及んでいる。2016年の調査では、東京湾で獲れたカタクチイワシの約8割からプラスチック粒子が検出された。*[3]さらに、私たちが毎日着ているポリエステルやナイロンなどの合成繊維の衣服からも、動くたびに目に見えない繊維クズが舞い、ホコリと共に日常的に肺の奥深くへと吸い込まれている。プラスチックは今や、私たちが吸う空気、食べる魚、そして飲む水の中に、逃れられない密度で存在しているのだ。

体内の蓄積が多いと心筋梗塞のリスクも。認知症との関連性も

通常、大きなプラスチック片は体外に排出される。しかし、1μm以下の「ナノプラスチック」は話が別だ。あまりに小さいため、体の防御システムをすり抜け、組織に蓄積する実態が見えてきた。

血管への侵入と心血管リスク: 血液に入り込み、血管を通じて運ばれるナノプラスチック。血管内への蓄積が確認された場合、心筋梗塞や脳卒中のリスクが、蓄積がない場合と比較して約4.5倍高まる可能性が示唆されている。*[4]

「脳」への蓄積が神経系への影響の懸念: 近年の研究では、脳がマイクロプラスチックの主要な蓄積場所になりやすいことが判明している。これは鼻や口からの吸入が主な原因といわれ、驚くべきことに、肝臓や腎臓といった解毒を担う臓器と比較しても、脳からは10倍から20倍もの高濃度で粒子が検出されている [*5]。

一度脳に入り込んだ粒子は、他の臓器のように排出されにくく長期にわたって蓄積しやすい特性がある。実際、認知症患者の脳組織から健常者より高い濃度で検出された例もあり、人体の深部にまで及ぶプラスチックの蓄積がもたらす神経系への長期的な影響について、現在さらなる調査と慎重な議論が進められている。

ペットボトル水1Lあたり平均24万個ものプラスチック粒子が検出

2024年の最新研究によれば、市販のペットボトル水1Lあたり平均24万個ものプラスチック粒子が検出された。その9割が、細胞内まで到達しうるマイクロプラスチックよりも小さい「ナノプラスチック」だ。*[6]ボトルの製造工程や、開栓時のキャップの摩擦も混入の一因と考えられている。他にもマイクロプラスチックが体内に侵入する経路として以下のようなものが考えられる。

  • : 海水から塩を作る際、海に漂うマイクロプラスチックも一緒に結晶化される。世界の塩ブランドの9割から検出されたという報告がある。*[7]
  • 魚介類: 牡蠣やムール貝などは1日に数百リットルの海水をろ過してエサを食べるため、魚よりも体内にマイクロプラスチックを溜め込みやすい。2016年には東京湾で獲れたカタクチイワシの約8割からプラスチック粒子が検出されている。
  • 食品容器からの溶け出し: 電子レンジでプラスチック容器を加熱したり、熱いコーヒーをプラスチック蓋のカップで飲んだりする際、熱や摩擦によって粒子が激増し、食品に混入するリスクが指摘されている。*[8]
  • 衣服の繊維:ポリエステルやナイロンなどの合成繊維から抜け落ちた微細な「繊維クズ」がホコリとして舞い、日常的に吸い込んでいる。また、洗濯により排出される繊維クズは、日本の高い下水処理技術でもナノプラスチックなどの極小粒子まで完全に除去することは困難だ。処理しきれなかった粒子は最終的に川や海へ流れ出し、巡り巡って再び私たちの食卓や空気へと戻ってくるサイクルが懸念されている。 
  • スクラブ剤などに含まれる粒子:洗顔料や歯磨き粉に使われるスクラブ剤(マイクロビーズ)、化粧品のラメ、柔軟剤の香りカプセルなど、製品の機能や質感を高める目的でプラスチック粒子が使用されることがある。これらについて、日本では業界団体による自主規制が進んでいるものの、法律で一律に禁止されているわけではない。
  • タイヤの摩耗: 車の走行で削れたタイヤ粉塵は大気中に浮遊し、取り込まれる一因となる。


加速する世界の規制と、日本の現在地

マイクロプラスチック自体の規制強化: EUでは2023年より、洗顔料のマイクロビーズやグリッターなど、製品に意図的に添加されたマイクロプラスチックの販売を段階的に禁止。さらにフランスでは2025年1月より、世界に先駆けて新品の家庭用洗濯機への「マイクロプラスチック回収フィルター」の搭載が義務化された。現在、欧州を中心にタイヤや衣類から発生する二次的な流出についても、新たな排出基準の策定が加速している。

国際プラスチック条約交渉の現状: プラスチック汚染を包括的に規制する初の国際条約策定に向けた政府間交渉(INC)が進んでいる。当初、2024年11月の第5回会合(INC-5・韓国 釜山)での最終合意が期待されていたが、各国の意見の隔たりが大きく合意は引き延ばされた。2025年8月にスイス・ジュネーブで開催された再開会合(INC-5.2)においても、製品設計の規制に進展は見られたものの、「一次プラスチックの生産量制限」や「途上国への資金援助の仕組み」を巡り、規制推進派(野心連合)と産油国との間で深い溝が埋まらず、全会一致の合意を得られないまま閉幕した。2026年2月の再々開会合(INC-5.3)に向けて、依然として交渉が継続されている。*17

日本は企業の自主努力に留まる:日本国内においては法的な禁止措置ではなく、主に業界団体や企業の「自主的な取り組み」に委ねられているのが現状だ。

  • マイクロビーズの削減: 日本化粧品工業連合会が、洗い流し製品へのマイクロビーズ使用自粛を会員企業に要請したことで、主要メーカーの代替素材への切り替えは進んでいる。

日常生活で取り込みを抑えるためのヒント

環境中のプラスチックをゼロにすることは困難だが、日々の選択を少し変えるだけで、体内への蓄積や環境への流出を大きく抑えることができる。

  • 「脱ペットボトル」を意識する: ペットボトル飲料は、開け閉めする際のキャップの摩擦によっても微細な粒子が発生する。外出時はマイボトルを活用したり、プラスチックの使用量を抑えた紙パックやガラス瓶の製品を意識的に選ぶことが有効だ。
  • レンジ加熱は「器」を替えてから: プラスチック容器に入ったお弁当や惣菜を温める際は、ガラスや陶器の器に移し替えよう。高温での加熱によるプラスチックの劣化や粒子の溶け出しを、物理的に遮断できる最もシンプルな対策である。
  • 食材の「育ち方」にも注目する: 魚介類を選ぶ際、閉鎖型循環式陸上養殖(RAS)などで管理された環境で育てられた魚は、海洋汚染(プラスチック摂取)のリスクを構造的に遮断しているため、比較的リスクが低いとされる。
  • 洗濯ネットの使用: 洗濯をする際、「GUPPYFRIEND(グッピーフレンド)」のような微細なメッシュバッグに入れることで、排水への流出を抑えられる。また、洗濯機の排水ホースに設置する「PlanetCare」等の後付けフィルターは、約90%のマイクロプラスチックをキャッチ可能だ。

室内のホコリ対策: 吸入リスクを減らすには、合成繊維の服を避けるだけでなく、こまめな換気と掃除が有効だ。室内のホコリには衣類やカーペットから剥がれ落ちた微細なプラスチック繊維が含まれているため、これを除去することも対策になる。

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信頼できる認証マーク(Look for the Zero / Blue Angel)

製品選びの際は、第三者認証を参考にしてよう。

  • Look for the Zero: オランダのNGOが運営する認証。化粧品や洗剤において、研磨剤や香りカプセルなどの目的で「意図的に添加されたマイクロプラスチック」が不使用であることを証明する。日本で買えるブランドには、WELEDA(ヴェレダ)NEAL’S YARD REMEDIES(ニールズヤード レメディーズ)などがある。

  • Blue Angel(ブルーエンジェル):  ドイツ政府が運用する歴史あるエコラベル。洗剤やクリーナーのカテゴリーにおいて、マイクロプラスチックを配合しないことが認定条件の一つとなっている。また、プラスチック製品全般において、添加剤に関する独自の環境基準を設けている。

2050年、海は「魚よりもゴミ」が多くなる?

このままのペースで増え続ければ、2050年には海にあるプラスチックの重量が、魚の総重量を超えるという予測もある。*[9]この問題は、単なるマナーや環境保護の枠を超え、私たちの「健康と命」に直結する課題となった。 自分の身体、そして地球の未来をクリーンに保つための確かな一歩になる。

【参考文献】

  • *[1] WWF (2019) “No Plastic in Nature: Assessing Plastic Ingestion from Nature to People”
  • *[2] 環境省「令和6年度 沿岸海域におけるマイクロプラスチックを含む漂流ごみ実態把握調査業務 報告書」
  • *[3] Tanaka, K. & Takada, H. (2016) “Microplastic fragments and beads in digestive tracts of planktivorous fish from Tokyo Bay”
  • *[4] Marfella, R. et al. (2024) “Microplastics and Nanoplastics in Atheromatous Plaque” New England Journal of Medicine.
  • *[5] National Geographic (2025) “Microplastics are home in the brain” / Campen, M. J. et al. (2024) “Bioaccumulation of Microplastics in Decedent Human Brains”
  • *[6] Qian, N. et al. (2024) “Rapid single-particle chemical imaging of nanoplastics by SRS microscopy” PNAS.
  • *[7] Kim, J. S. et al. (2018) “Global Pattern of Microplastics (MPs) in Commercial Food-Grade Salts” Environmental Science & Technology.
  • *[8] Hussain, K. A. et al. (2023) “Assessing the Release of Microplastics and Nanoplastics from Plastic Containers” Environmental Science & Technology.
  • *[9] World Economic Forum (2016) “The New Plastics Economy”
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