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ファッション|2025.12.23

サステナ戦士が、ウルトラファストファッションでお買い物?

同じ服を1カ月着るなど、常に人と服の新しい関係を探っているunistepsの有加さん。
今回、長年サステナビリティを追求してきた彼女が挑んだのは「ウルトラファストファッションでの買い物」という意外な実験!その行方とは?

原稿:マルティン メンド 有加

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筆者の長年のテーマは、「服と人との関係性」です。このテーマの解像度を高めるために、いままで、「一ヶ月同じ服を着つづけたら?」などいくつかの「実験」をしてきました。

サステナブルファッションを推進する団体であるunistepsの仲間もいつも興味を持って私の実験話を聞いてくれるのですが、今回の新しい実験の計画を話した時、あるメンバーは絵に描いたように息をのみました。・・・ゆかさん、ほんとうに、やるんですね・・・と。

その実験の内容は、「ウルトラファストファッションで、買い物をしてみること」。

そのくらい、と思う方もいるかもしれません。でも、長年にわたり、服の消費をどうしたらスローダウンできるんだろうと、ファストファッションがもたらしたあらゆる変化とその緩和策を考えてきた多くの活動家にとって、スピードと量においてファストファッションを軽々と凌駕し、行き着く先を考えずハンドル手放しでアクセルをベタ踏みしたようなウルトラファストファッションはなかなか受け入れられない存在です。

それでも人気であることは揺るぎない事実。

昨今、サステナビリティに関するメッセージにかったるさやつまらなさを感じる「サステナ疲れ」もよく聞くワードになってきていますが、それはサステナ界隈のメッセージの発信の仕方にも問題がある気がしています。もう、正論はおなかいっぱいなのです。そんな中、安いだけでなくお買い物体験自体が新しく楽しいと聞くウルトラファストファッションから、あわよくばヒントを得るために飛び込んでみることにしたのです。さて、どんな世界が待っているのでしょうか。

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まず、Shift Cで「他の選択を」評価となっている某ウルトラファストファッションのウェブサイトを訪れてみます。ブラウザにブランド名を途中までタイプしただけで出てくるタイトルに「95%OFF」の表示。んなことあるかい、とツッコミをいれつつ、問題のホームページに到着した瞬間、リボンのかかったギフトボックスの絵が表示され「今だけ使える60%OFFクーポンをゲット」のポップアップ表示。アプリのダウンロードもしてみましたが、こちらでもゲーム感覚でクーポンを集めていくことができるようです。

まず圧倒されるのはその品数です。服に限らず、家電やインテリアや工具にいたるまで、あらゆるものが数百円から数千円で販売されています。毎日数千点(!)新商品が追加されるハイボリュームモデルの奥行き。同じようなスタイルーたとえば「前にリボンがついている黒いタイトなカットソー」だけでも多くの選択肢が表示されます。そして各商品アイコンに表示されているのが、すでに5000枚販売済、10000枚販売済などのメッセージ。多くのレビューが写真と、投稿者の身長体重付きで投稿されています。同カテゴリ内でのランキングも表示されており、その目的は「意思決定のコスト削減」「ショッピングにおける選択を簡単に」すること、との記載。商品写真は誰かがトイレで自撮りした?というものも多く中年の筆者の不安はつきませんが、これがファッションへの憧れというよりも親近感を生み出しているのかもしれません。

無限の選択肢、今ここで買うことで得られる割引、みんなが買っているから「間違えない」安心感、そして手の届かなさで憧れを作るのではなく、親近感を演出してみんながおしゃれになれる世界観。単純な安さ以外に、お買い物の体験としても新感覚であることを、垣間見ることができた気がします。

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実験としては実際にお買い物をして商品を受け取るところまで進むつもりでしたが、やはりオンラインショップをみているとすぐに目に飛び込んでくる有名ブランドのロゴに酷似したプリントのアイテムからいろいろなことが気になってしまいました。ウルトラファストファッションを巡っては小規模デザイナーからデザイン盗用の訴えが起こっているブランドや、基準を超えた有害物質が付着した商品の販売があったブランドがあります。

結局、小さな女の子の母であり、身近にクリエイターも多い環境にいる筆者はどうしても支払いまで進めずに、そっとウェブサイトを閉じました。

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それでも、今回の経験で、得られたものは大きかったと思っています。この世界はウルトラファストファッションVSサステナブルファッションという単純な二項対立ではありませんし、服の生産や販売についての価値観は異なっているとしても、お互いが学べることはあるはずです。安全、クリエイターの著作権や子どもの人権が贅沢品であっては決してなりませんが、願わくば、このような楽しいお買い物体験が、いつか美しい未来に繋がりますように。

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マルティン メンド 有加
「多様で、健康的なファッション産業をつくる」をミッションに掲げる一般社団法人unisteps理事。元INHEELS代表。サステナブルファッションをライフワークに、ファッション・自然・社会の交差点で気になる問いを言葉にしている。いちジャズファンとして、グルーヴとスウィング感のある文章を目指す。

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