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ファッション|2025.11.12

サステナブルを押しつけない。THE GOODLAND MARKET ニュウマン高輪店が描く、都市型の循環する暮らし

アーバンリサーチが展開するライフスタイルブランド「THE GOODLAND MARKET(ザ グッドランド マーケット)」が、大阪・堀江の路面店に続き、初となる商業施設店舗をニュウマン高輪にオープンした。高輪ゲートウェイ駅直結という新たな環境で、ブランドがどのように“循環する暮らし”を提案しているのか。オープンから約1ヶ月を迎えた店頭で、(左から)店長の渡邊さんとスタッフの八松さん、中谷さんに話を聞いた。

原稿:藤井由香里 写真:猪原 悠

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都市の中に芽吹く、“循環する暮らし”の拠点

今年、アーバンリサーチが展開する「THE GOODLAND MARKET」がニュウマン高輪に新店舗をオープンした。JR高輪ゲートウェイ駅から直結という利便性の高い立地にあり、観光客や通勤客など、多様な人々が行き交う場所だ。

ニュウマン高輪は、「100年先のまだ見ぬ生活価値創造への挑戦」を掲げる循環型商業施設。その長期的なビジョンは、THE GOODLAND MARKETが大切にしてきた「循環する暮らし」という価値観と自然に重なり合う。日常の延長線上で、持続可能な選択肢を見つける場所として、この地で新しいチャレンジが始まった。

路面店から駅ビルへ。ブランドにとっての新しい挑戦

——もともと路面店から始まったTHE GOODLAND MARKETが、商業施設に出店することになった経緯を教えてください。

八松:もともと商業施設への出店は想定していませんでした。THE GOODLAND MARKETは2020年にオンラインからスタートし、翌年、アーバンリサーチ堀江1号店を改装して路面店としてオープンしたんです。だからこそ、「これからも路面店で展開していこう」という意識が強くありました。

ニュウマン高輪店は堀江店の約3分の1という限られたスペースながら、オリジナルブランドを中心にレディース・ユニセックスのウェアを厳選して取り揃えている

一方で、ニュウマン高輪の担当者さんが何度も堀江店に足を運んでくださり、実際に店舗運営やブランドの取り組みを見てくださいました。ニュウマン高輪が掲げるテーマや、施設全体でのサステナブルな取り組みに共感する部分も多く、「私たちの考え方と近い」と感じたんです。

そうしたやり取りを重ねる中で、「そこまで共感してくださるなら」と思い、出店を決めました。

「可愛い」から始まる循環の物語

——THE GOODLAND MARKETとして大切にしている理念や軸について教えてください。

渡邉:「サステナブルなブランド」と思われることも多いのですが、私たちはそれだけに限定しているわけではありません。時代の流れや社会課題を見つめながら、「今、自分たちが大切だと思うこと」を柔軟に取り入れて発信していく——そんな姿勢を大切にしています。

その結果として自然に浮かび上がってきたのが、「循環」というキーワードです。100%サステナブルであることを目指すというよりも、小さな規模でもその思想を持つブランドをきちんと紹介していく。そんな等身大の発信を心がけています。

——店内の構成や、商品セレクトで意識していることはありますか?

中谷:まずは、ニュウマン高輪の空気感に自然と溶け込むことを意識しています。「おしゃれなお洋服屋さん」として気軽に立ち寄ってもらい、「可愛い」「着てみたい」という気持ちから興味を持ってもらえたら嬉しいです。そこから会話の中で、「実はこんな背景があるんです」とさりげなくお伝えする。そんな自然な流れや距離感を大切にしています。

ブランド名にも、あえて「サステナブル」という言葉は入れていません。THE GOODLAND MARKETという柔らかな響きにしているのも、メッセージを押しつけず、心地よく感じてもらいたいからです。

渡邉:私たちは何よりも「ファッションを楽しむこと」を大切にしています。サステナブルな視点で服を探そうとすると、以前は「可愛い」と思えるものが少なかった時期もありました。

だからこそ、THE GOODLAND MARKETでは「おしゃれを楽しみながら環境にも配慮できる」という新しい選択肢を提案していきたい。まずはファッションを楽しんでもらい、その先にある背景を自然に知ってもらう——そんな順番を大切にしています。

——商品の中で、特に思い入れのあるブランドやアイテムはありますか?

八松:どのブランドも素敵ですが、特に思い入れがあるのは「KWD」というダウンブランドです。もともとは「河田フェザー株式会社」という、羽毛の精製・加工から羽毛ふとんの製造・販売までを手がける羽毛専業メーカーで、長年さまざまなブランドの製品を支えてこられました。その技術を生かして自社ブランドとして立ち上げたのが、KWDです。

リサイクルダウンを使用した「KWD」のジャケット

工場の立地を決める際には、水質や湿度など、ダウンの特性を最大限に活かせる環境を徹底的に研究し、最終的に三重県に拠点を構えたと伺いました。その職人としての探究心に、とても感銘を受けたんです。

しかも、使用しているダウンは国内の食肉用水鳥の副産物を活用したもの。動物を服のために犠牲にしないという姿勢にも強く共感しています。この時期になるとKWDのダウンが店頭に並ぶのですが、その背景をお伝えすると、お客様も服ができるまでの物語に自然と想いを寄せてくださいます。

スタッフのイチオシアイテム

タテヨコともにGOTS認証のオーガニックコットン糸を使用した、cwtch(クチュ)のトルコ製デニム。「シンプルだけど、細部のデザインに遊び心があって。長く着るほどに自分らしさが出る一枚です」(中谷さん)
使い込まれたデニムを再構築し、異なる表情をパッチワークで表現した、古着×リメイクの一点もののデニムパンツ。一点ごとに風合いが異なり、作り手の個性が感じられるアイテム。「デザイナーさんの人柄が思い浮かぶような温かみがあって、大切に販売したいと思える一着です」(渡邉さん)

——お客様からの反応はいかがですか?

渡邉:アップサイクルやリサイクルといった言葉自体は浸透してきていて、「なるほど」と共感してくださる方は多いです。ただ、堀江店と比べると、まだ前のめりに関心を持つという感じではないかもしれません。

一部商品のタグには、リサイクル素材の使用やごみの削減、動物福祉など、環境や社会への配慮を示すマークが記されている。

とはいえ、すべての商品に背景があるので、手に取っていただいたタイミングでしっかりお伝えしています。 一つひとつの会話の積み重ねが、この街での循環を育てていくきっかけになれば嬉しいですね。

作り手の顔が見える関係性

——取引先のブランドとの関係性は、どのように築かれていますか?

渡邉:販売スタッフの中には、ものづくりや作り手の活動に関心を持つ人が多いんです。休みの日に外部のイベントへ足を運び、そこでブランドの方とつながることもよくあります。今後ポップアップを予定しているブランドも、もともとスタッフがイベントで出会い、交流が生まれたことがきっかけでした。

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「LOVE TO SEE YOU」昨年開催の様子

中谷:年に一度、堀江で「LOVE TO SEE YOU」というイベントを開催しています。「あなたに会えて嬉しい」という意味を込めていて、作り手さんとお客様が直接出会い、言葉を交わしながらお買い物を楽しめる場です。

同時に、私たちスタッフにとっても大切な機会なんです。実際にお会いすることで、販売の際に作り手の顔を思い浮かべながら、その方の想いやこだわりをお客様に伝えられるようになる。やっぱり、人に惹かれてお取り扱いするブランドは多いですね。

ペットボトルを再生した糸を3Dニッティングで編み上げる、国内生産のサステナブルニットブランド「KNT365」のバッグ。ニット素材にもかかわらず洗濯が可能で、70kgの荷物にも耐える丈夫さも兼ね備えている。
TONY×STARTERのキャップ。

中谷:たとえば「LOVE TO SEE YOU」を通して私が初めてデザイナーさんにお会いした「masterkey」という大阪のブランドは、自社工場を構え、生産の背景にも強いこだわりを持たれています。デザイナーさんの人柄にも惹かれ、それ以来、販売のたびにその方の顔が自然と浮かぶようになりました。だからこそ、より一層大切に販売したいという気持ちになります。

ニュウマン高輪から始まる、循環の輪

——ニュウマン高輪店ならではの循環型の取り組みはありますか?

渡邉:​​THE GOODLAND MARKETとしては、これまで店舗単位で衣類回収を行っていませんでした。それぞれのブランドが個別に回収を進めている状況を見て、「一つのブランドが独自で行うよりも、既にある仕組みに参加する方が、よりサステナブルなのでは」と考えていたんです。

ニュウマン高輪には、ルミネが手掛ける循環型ファッションビジネス 「anewloopp(アニューループ)」の衣類回収ボックスが設けられています。ここで回収された衣類は繊維に戻され、糸として再生されます。私たちは、その再生糸を使って新たな商品をつくり、再びこの店舗で販売するという形で、この循環の輪に参加させていただいています。

購入品を包む際に使用している、端切れをアップサイクルした布

八松:ショッパーやハンガーといった備品も、すべてリサイクル由来の素材に切り替えました。ニュウマン高輪店のオープンを機に、まずは自分たちが使うものから見直したんです。以前はアーバンリサーチのショッパーを再利用していましたが、今回はTHE GOODLAND MARKETのオリジナルとして、リサイクル素材を使った新しいデザインを採用しています。

——堀江店とニュウマン高輪店では、環境や客層が大きく違うと思います。実際に働いていて感じることはありますか?

八松:違いは大きいですね。堀江にいた頃は、「東京の方がサステナブルへの意識が高いのでは」と思っていたんです。でも実際に店頭に立ってみると、ニュウマン高輪ではまだそうした意識を持つお客様が多いわけではないと感じています。

とはいえ、意識の高い人だけに発信しても広がっていかない。だからこそ、そうでない人たちにも自然に気づきを届けていけるようにすることが、私たちの役割だと思っています。

渡邉:堀江店は地域とのつながりが強く、日々のコミュニケーションの積み重ねがありました。地元の方が散歩の途中に立ち寄ったり、洋服以外にもフードなどのコンテンツを楽しんでくださったり。そうした関係性が「堀江らしさ」だったと思います。ニュウマン高輪はまだオープンしたばかりなので、ここでも地域の方々との関係を少しずつ育てていきたいですね。

——今後、ニュウマン高輪店で挑戦していきたいことはありますか?

渡邉:ニュウマン高輪のある「TAKANAWA GATEWAY CITY」の中には学校や住居機能も備わっており、「暮らしが循環する街」という考え方が根底にあります。その環境を活かして、たとえば地域の学校と連携したワークショップなど、地元に根ざした活動にもチャレンジしてみたいです。ここから、施設の理念ともつながるような取り組みを広げていけたらと思っています。

八松:堀江では、地域とのコミュニケーションの積み重ねがブランドを育ててきました。ニュウマン高輪でも、ここに関わる人たちと丁寧に関係を築きながら、この街にあるお店として成長していけたらと思っています。まだオープンして1ヶ月ですが、少しずつ高輪らしい循環の形を見つけていきたいですね。

サステナブルは、日々の延長線にある

THE GOODLAND MARKETが目指すのは、サステナブルを特別なものではなく、日常の中で自然に選ばれるものにすること。「可愛い」「着てみたい」という直感の先に、作り手の想いや素材が巡るストーリーがある。

買うことは、誰かの想いを受け取り、未来へつなぐ行為になる。サステナブルとは大きな理想ではなく、日々の延長線上にある小さな選択から始まっていくのだ。

THE GOODLAND MARKET ニュウマン高輪店
東京都港区高輪2丁目21番1号 ニュウマン高輪 South 4F
TEL:03-6409-6221
営業時間:11:00〜20:00
定休日:不定休

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ライター/エディター
藤井由香里
ファッションメディアのライター/エディター、アパレル業界での経験を経て、2022年に独立。現在は、ファッション、美容、カルチャー、サステナビリティを中心に執筆・編集を手がける。Webや紙媒体のコンテンツ制作に加え、広告制作、コピーライティング、翻訳編集など、多岐にわたるプロジェクトに携わる。

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