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母体であるネキスト社は、100年続く企業を目指す
多くのアパレル企業やブランドが注目しているUpcycleLino(アップサイクルリノ)を語るには、まずは母体であるネキスト社の説明が必要だろう。
ネキスト社は75年前に創業し、もともとは縫製工場だったのだが、OEMとしてフレキシブルにデザイン提案やニーズに対応していくようになり、長年の経験によって技術やノウハウが蓄積され、のちに自社ブランドを持つアパレル事業を立ち上げるようになった。国内の産地を守りながら“100年続く企業“を目指すために、現社長がファクトリーブランドを始めるように舵を切ったのである。
いくつかのブランドを抱えつつ時は流れて20数年前、日本の多くのアパレル企業が、より安価で製造ができる中国の工場に製造ラインを移した頃、ネキスト社の社長はあえて日本のものづくりを大切にしたいと考え、スタートさせたのがネストローブ、2005年のことだ。
自社工場で製造しているからこそできる、裁断くずの細かい回収と再生
「弊社は、国内でのものづくり、産地との協業を大事にしながら、ファクトリーブランドとしてネストローブを立ち上げました。ネストローブはもともと“土に還るものづくり”をテーマにしていて、その中で世の中の社会課題や環境問題に積極的に取り組みたいと考えて、いままで廃棄されていたものを有効活用できないかと始めたのがアップサイクルリノなのです。
アップサイクルリノでは製造工程で出る裁断くずを使っています。生地を裁断すると3割は破棄されてしまいますが、弊社は自社工場で作っているので裁断くずを分別することが可能です。白い生地や色や柄ものなどの生地を再利用して糸に戻す、そこから生まれているのがアップサイクルリノのプロダクトです」(アップサイクルリノ・チーム チーフ・加藤和恵氏、以下・加藤氏)

「いちばんのポイントは裁断場でカットされる生地の95%が弊社の製品で、自社内で循環できること。通常は自社のものだけを集めるアップサイクルはほぼ不可能なのですが、弊社ではそれが可能です。
ネストローブはリネンのブランドなのですが、そのリネンの裁断くずだけを集めることができます。リネンのアップサイクルというのは他のブランドからは出てこないと思いますね。
このアップサイクルしたリネンにバージンコットンと混ぜて糸にするのですが、色がついている綿(ワタ)を混ぜるとだんだんグレーになっていきます。
麻の原料の比率・混率は毎回違うので、仕上がりにも違いがあります。麻の繊維の長さも糸の再生に影響するので、シーズンによっては麻が6%です、4%ですとニュアンスが変わってきます」(加藤氏)



日本のものづくりを大切にしていたからこそ、アップサイクルリノが誕生した
日本のものづくりを大切にしてきた企業が、さらにファッションロスに注目して生まれたのが、自社の裁断くずを原料とし、商品をつくり循環させていくプロジェクトがアップサイクルリノというわけだ。
「アップサイクルリノは自社ブランドとしてベーシックなラインを作っています。アイテムはデニム、無地のチノベースのツイル、カットソーなど。あとは同じく自社ブランドであるネストローブとメンズのコンフェクトに生地を提供して、それぞれでアイテムを作っています。 アップサイクルリノ・プロジェクトの一環として糸を再生して生地を作って、ブランドで使ってもらっているということです」(ネストローブ 企画経営室)

先述のとおり、商品のほぼすべてを日本の工場で製造をしているのだという。
「縫製は100 %日本の工場でやっていて、生地織布の90%は日本、残りは中国です。中国では2000年〜2010年に国が設備投資をして織機が新しくなっているんです。日本ではそういったことがないのが残念ですが、日本でしか出来ないことも多いのでその特性を活かしてものづくりをしています。
紡績は岐阜・愛知、縫製は香川というように、各地にある良い工場を繋いでいる感じですね。究極は地域で一つの地域で完結させたいのですが、なかなか一長一短です」(ネストローブ 経営企画室)

SLOW MADE IN JAPANというキャッチフレーズが表す、丁寧なものづくり
ブランドのキャッチフレーズにSLOW MADE IN JAPANとあるが、これはまさに会社のものづくりの姿勢を表している印象だ。
「以前、NYのノリータ地区に出店していたのですが(コロナ禍を期に現在は休店)、現地のお客さまが、弊社のやり方――あえてシャトル織機を使って時間を他社よりもかけて製造していること、時代と逆行したものづくりをしていること――を聞いてSLOW MADEだねとおっしゃったんです。私たちは日本の大事な部分を残しながら服づくりを続けているので、ネストローブとコンフェクトにこのフレーズを使うことにしました」(加藤氏)
「日本の良さは何かを追求できる会社でありたい、という社長の思いも含めて、いまちょうどブランディング中で、100年続く企業を目指すためにどうするかを考えているところです。
そういった意味ではアップサイクルリノはブランドとして可能性を感じていて、認証を取りたいねと話しています。今後の日本のものづくりのハブとなれるかなと思っていて、他社のいろんなアパレルさんとコラボレーションしていこうと考えています」(ネストローブ 経営企画室)

住所:東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 4F
電話:03-6416-3771
*営業時間は渋谷PARCOに準ずる
ネストローブ、コンフェクトの他に、アップサイクルリノのフルラインが揃う関東で唯一のショップ。2025年11月21日より、渋谷PARCOリニューアル6周年を記念したアップサイクルリノ・ベーシックの定番アイテムのスペシャルカラーを発売する予定