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1.デザイン盗用が繰り返し問題に
シーインは過去に何度も繰り返しデザインの盗用で問題になっている。小さなブランドを持つデザイナーやSNSに作品を載せているクリエイターたちが「デザインを勝手に使われた」と訴えることが非常に多い。また、服のデザインだけではなく、自分が撮った写真をそのまま使われたという人もいる。2023年にデザインを盗まれたというKrista Perry、Larrisa Martinez、とJay Baronが裁判を起こした。
さらに、シーインは小さなブランドだけでなく、大手ファストファッションメーカーのデザインを無断で使用しているケースもあった。Perryらと同時期に、アパレルブランドH&Mがシーインをデザイン盗用で訴えたことも明らかになった。
しかし、シーインも訴えられてばかりではない。2022年には、同じくウルトラファストファッションサイトのTemuをデザイン盗用や偽造、詐欺的な商売方法で訴えた。その翌年、Temuは反訴し、シーインを「マフィア風の脅迫や拘束の脅迫戦術」と訴える事態に発展した。
2.児童労働や長時間労働
2023年に公開された持続可能性報告書の中で、シーインはサプライチェーンに児童労働があったと発表した。報告書の中では、すべて解決したと記載されている。未成年の労働者とは契約を打ち切り、それまで不足していた分の賃金を全て支払うなどの対応をとったとシーインは述べている。「シーインは強制労働に対するゼロ寛容方針を掲げており、人権の尊重に努めている」という。
しかし、この主張をするたった数週間前に、シーインの服を作っている工場では過剰な残業・労働時間が強いられているという証拠が出ている。また、同時に多くの労働者が週75時間まで働いているということも発覚。この事実に対してシーインは、労働条件の改善にむけて「懸命に取り組んでいる」と答えている。
3.体に有害な物質を使用していたことが発覚
シーインや他のウルトラファストファッションブランドの洋服、特に驚くことに、子供服にまで大量の鉛、PFAS、フタル酸エステル等の有害物質が入っていることが発覚した。鉛の量は、カナダ政府が危険と定める基準の約20倍もの量だった。5着に1着の中にこのような物質が発見された。
このような有害物質はその服を着ている人だけではなく、同じ空間にいる人にも空気や水を通して影響を与えてしまう。中でも、フタル酸エステルは合成繊維の素材を柔らかく、伸びやすくしたりより丈夫にするために使われているが、人間の体に入ると不妊症や子供の発達障害の原因になることが指摘されている。
4.宗教や異文化に侮辱的なシンボルやデザイン
文化や宗教に対して侮辱的なデザインのものを販売したケースも多いシーイン。2020年に、第2次世界大戦でナチスのシンボルとして使われていたハーケンクロイツ(鉤十字)のデザインのネックレスがシーインのサイトにアップされた時、すぐにネットで大炎上した。
また、イスラム教で使われている礼拝マットにとても似ている絨毯がインテリアとして販売されたケースもあり、宗教に対してリスペクトに欠けると話題になった。
また、シーインのサイトに載っていたAIにより生成されたモデルの写真が、過去にネットで話題になった犯罪者の顔に似ている、というニュースも問題となった。
5.短い生産期間、ウルトラファストファッションのビジネスモデル
シーインのような「ウルトラファストファッション」は、今までのファストファッションと言われてきたブランドよりも何倍も速く、何倍もの量の服を生産している。このようなスピード重視のシステムによって、自然資源の減少、強制労働やCO2排出の増加などの問題が発生してしまう。
シーインは、人気調査を行うためにそれぞれの商品を少量生産しているからサステナブルだと主張している。だが、いくら一種類が少量であっても、毎日何百種類もの商品を追加している時点で全くサステナブルとは言えない。2025年7月の時点で、シーインのサイトにはレディースだけで約700種類もの商品が展開されていた。
6.製品の75%がポリエステル
シーインで販売されている服の約75%はポリエステルで作られている。安くて機能性があるポリエステルは、今業界全体で生産されている素材の半分以上に使われている。だが、プラスチックが主な原料となるポリエステルは、非常に問題が多い素材でもある。使用時・洗濯時にマイクロプラスチックが出ることに加え、石油を原料とし、生産時には大量の水とエネルギーを使用する。
アパレル・インパクト・インスティチュートの最新報告書によると、ファッション業界の炭素排出量は2023年に7.5%増加し、同研究所が2019年にデータ収集を開始して以来、初めての増加となったという。報告書では、この増加の主な原因として、バージンポリエステル繊維の使用拡大とその生産量の増加が挙げられ、背景にはウルトラファストファッションの拡大があると指摘されている。
今年の1月、シーインはポリエステルのリサイクル技術を開発し、2030年までに使用するポリエステルのうち、31%をリサイクルポリエステルにするという目標を発表した。合成繊維のリサイクル技術の進歩は待ち望まれているが、それを背景に安価な服を大量生産し、大量廃棄に繋がっては意味がない。
7.一部の動物由来素材は使用をやめるも、透明性はまだ不十分
シーインは今までウール、レザー、ダウンや装飾用の羽毛等の動物由来の素材を使ってきた。
しかし、2025年5月、シーインは動物愛護団体PETA(People for the Ethical Treatment of Animals)との協議により、正式に動物の毛皮や野生動物の皮革の使用をやめたと発表した。
これら外部団体からの働きかけをうけて動物福祉の方針を示したが、ダウンやウールについてはその素材をどこからどう仕入れているかに関する情報が開示されておらず、圧倒的な量を生産しているだけに、責任ある調達が望まれる。
8.課税に、インフルエンサーの宣伝も禁止。しかしフランスに店舗オープンの動き
フランスは、シーインやテムなどのウルトラファストファッションブランドに対する規制の強化を目的とする法案を制定した。フランスに輸入されるウルトラファストファッション商品に対して課税。2030年までに衣料品1点あたり最低10ユーロ、あるいは税抜価格の最大50%が課されることとなった。また、超ファストファッションの企業や製品の広告を全面的に禁止。これらを宣伝するインフルエンサーに対しても最大10万ユーロの罰金が科される可能性があるという。一方で、フランス国内のサステナブルブランドは、政府から優先的に補助金を受けることが可能になる。
加えて、ファストファッション企業はCO2排出量や素材、循環性などの「エコスコア」の表示義務を負い、定められた環境基準を満たさない場合は課徴金が課される仕組みとなっている。この法案はまだEU内の欧州委員会の承認が必要だが、承認されればフランスのファッション業界にとって大きな進歩となる。
実際、今年7月にはフランス政府がシーインに対し、グリーンウォッシングや誤解を招く商法に対して4,000万ユーロ(約69億円)の罰金を要求している。
それにもかかわらず、シーインは2025年11月に初の常設店舗をパリにオープンするという衝撃的な決定を下した。店舗はパリの老舗百貨店「BHVマレ」に構え、その後フランス国内の地方5都市にも展開予定である。一方、その出店候補となっているギャラリー・ラファイエットは、この計画に反対しており、シーインのウルトラファストファッションのビジネスモデルは自社の価値観にそぐわないと主張している。
他国でもシーインの席巻に対して同様の動きが見られる。オーストラリアでは環境税の導入や、衣料廃棄物の輸出などを禁じる法律などの案があげられている。また、サーキュラーテキスタイルの業界の支援を強化しようとしている。イタリアではシーインのグリーンウォッシング調査が行われ、シーインのヨーロッパ市場管理を行っている Infinite Styles Services Co. Ltd に100万ユーロの罰金が科された。
規制強化の真っただ中にあるフランスで、シーインが常設店舗を開くという決定は、世界中のファッション業界にとっても大きな注目点となっている。
参考文献:
https://shiftc.jp/?s=shein&post_type=post
https://www.npr.org/2023/07/15/1187852963/shein-rico-racketeering-lawsuit
https://www.theguardian.com/business/2023/sep/02/details-i-made-they-made-designers-hit-back-at-sheins-imitation-game
https://www.bbc.com/japanese/articles/cn49w18kydeo
https://www.bbc.com/news/articles/cg67w73nxqxo
https://www.cbc.ca/news/business/marketplace-fast-fashion-chemicals-1.6193385
https://www.cbsnews.com/news/shein-nazi-symbol-swastika-necklace
https://www.bbc.com/news/articles/c4g5vr4vzpzo
https://www.thecommons.earth/blog/fast-fashion-vs-ultra-fast-fashion-whats-the-difference
https://www.fashiondive.com/news/shein-recycled-polyester/738897
https://www.peta.org/news/shein-bans-fur-wild-animal-skin-feathers
https://www.corporateknights.com/category-circular-economy/here-is-how-france-is-trying-to-fix-fast-fashion
https://goodonyou.eco/how-ethical-is-shein/