ストーリー|2025.04.11

ステラ マッカートニーが伝える、未来のある服づくりとは?

ラグジュアリーブランドのクリエイティブ ディレクターであるステラ マッカートニーが来日し、三越伊勢丹グループが主催するファッションスクールの学生たちのデザインアワード「三越伊勢丹ミライアワード」の審査に参加した。エシカルファッションのリーダーとして、学生たちに送ったステラからのメッセージには、地球への愛とファッションの可能性が感じられた。

原稿:横山佐知

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残布を使った服づくりが、未来を紡ぐ

「ピースde ミライ」という取り組みは、三越伊勢丹グループが掲げるサステナビリティ活動「think good」の一環として、2022年にスタートした。衣服を製造する過程で出た残布のピースを、新しい価値へとアップサイクルさせるものだ。

さらにそこから生まれたのが「三越伊勢丹ミライアワード」で、ファッションスクールの学生たちに残布などのピースを渡し、思い思いに服をデザインしてもらうコンテストで、2回目の2025年はデニムにフォーカス。東京都内の企業ヤマサワプレスがアメリカ西海岸の倉庫で出会い保有していた、リーバイス®︎501®︎のユーズドストックがピースとして選ばれた。21名の学生たちはそれぞれ30本のレッグパーツをピックアップし、制作に取り掛かった。

左から:トークショーのMC・ハリー杉山、伊勢丹新宿本店長・近藤詔太、環境大臣・浅尾慶一郎、ステラ マッカートニー

そして今回の目玉は、クリエイティブ ディレクターのステラ マッカートニーがその審査員に名を連ね、ミライアワード大賞を選んだことだ。3月半ばに文化服装学院の講堂で審査を実施し、同日トークショーが行われ、ステラと環境大臣・浅尾慶一郎、伊勢丹新宿本店長・近藤詔太の3名が登壇した。

サステナブル=我慢ではなく、明るくポジティブな可能性がある

この日のトークショーの観客のメインは、ファッションスクールの学生が中心。2001年に自身の名前を冠したブランド、ステラ マッカートニー(Shift C評価:良い)のスタート当初からエシカルな服作りに取り組んできたステラが、改めてこれまでの取り組みについて語った。

ステラ マッカートニー。1995年ロンドンのセントラル セント マーチンズ卒業。クロエのデザイナーを経て2001年に自身の名前を冠したステラ マッカートニーを立ち上げた。以来、動物を一切傷つけない服づくりを徹底させている。夫はハンターのクリエイティブ・ディレクター 、アラスデア・ウィリス

「私は2001年にブランドを立ち上げたその日から、母なる地球を守るために調和のとれた服作りをしようと努めてきました。動物由来の素材はいっさい使っていません。シューズを作る時も、ソールにぶどう由来のものを使うなどしてきました。

今日着ているパンツのスパンコールも海藻由来のものだし、ニットには海洋ゴミだった廃プラスチックを再利用するなどしています。また石油由来のものも使っていません。でも素材にこだわるだけではなく、ファッションが作り出す楽しさも忘れないようにしています」(ステラ マッカートニー)

エシカルファッションの先駆者であるステラの服作りからは、地球へのリスペクトが感じられるが、私たちをワクワクさせる美しさもある。

「サステナブル=我慢と考えられがちですが、ステラのクリエイションはファッションにおいてサステナビリティと明るくポジティブであることが両立できると証明してくれています」(伊勢丹新宿本店長・近藤詔太)

クリエイティビティと地球を守ることの両立

「クリエイティビティは美しく楽しくあるべきだと思います。でも目の前にある問題を解決していかないといけないので、今までと違うやり方をしないといけないでしょう。
このままの生産のサイクルを続けると地球を壊してしまうので、ファストファッションにはある程度規制をするべきだと考えます。今回のテーマのように、ヴィンテージのものを使うのはとてもヒントになると思います。皆さんは将来の希望です」(ステラ マッカートニー)

Shift Cの記事でも既報の通り、ファストファッションの台頭により、大量生産され破棄されたり売れ残った衣服がアフリカの海岸や南米の砂漠に溢れているのが現状だ。

「今、地球上にある衣類で十分足りていると言われています。それらを使ってデザインを変えたり貸し借りすればいいのではないかと思っています。どういった形で消費者に届けるかを考えながら、環境負荷の少ないワクワクするような服を作っていってほしいです」(環境大臣・浅尾慶一郎)

「私がブランドを立ち上げた頃に比べると、みなさんはずっとやりやすいと思います。例えば革の替わりになるサステナブルな素材を探しても、硬いものしか見つからなかったから。
まずは何かをスタートさせることが大事です。やらないよりはやることが大事です。私たちは完璧ではないし、完璧になるには(地球に対して良いことをするには)何も作らなければいいということになります。でも物づくりをする人間として何かできることがあるとしたら、動物由来のものを使わないこと。そうすればハッピーになれると思います」(ステラ マッカートニー)

日々好奇心を持って、戦いを続けていくことが大事

ファッション業界に携わる人間として、どんな姿勢を持っていくべきか学生から問われたステラの言葉からは、孤軍奮闘し続けてきた強い信念が感じられた。

ステラの話を聞くために、多くの学生たちが集まった

「ファッション業界はとても競争が激しいので、他の人たちと手に手を取って一緒に何かをするようなことはないかも知れません。日々戦わないといけないのです。毎日がサバイバルになると思う。私も毎日変化を起こすために戦っています。
でもそうしていると誰かが賛同してくれるかもしれないし、同じようなやり方をしている人が現れるかもしれない。同じ思いを持っている人が出てくるかもしれない。

毎日好奇心を持ち毎日戦って求め続けてください。その中からとても美しいインスピレーションを得られると思います。物をつくることができるのはデザイナーの特権だけど、責任が伴うものです。でも、探究心を持ち続けることは大事です」(ステラ マッカートニー)

ステラに選ばれた作品とは?

 4月9日に発表された各受賞作品は以下の通り。

・ミライアワード大賞(審査員:ステラ マッカートニー)
「Damage」
デザイナー:添田 恵愛(文化服装学院 ファッション高度専門士科3年)



・伊勢丹新宿店賞
「Naja naja」
デザイナー:下村 エレオノーラ(エスモード・東京校 インテンシブコース1年)


・メディア賞(審査員:「WWDJAPAN」編集長 村上要)
「鳥&花」
デザイナー:LI YUHAN(リ ユウカン/東京モード学園 ファッションテクノロジー学科 パターン専攻3年)


・リーバイス®︎賞(審査員:リーバイ・ストラウス ジャパン社マスターテーラー 田真行)
「Adaptive Urbanism」
デザイナー:長南 拓見(文化服装学院 ファッション高度専門士科3年)


・環境大臣賞(審査員:環境省地球環境局 デコ活応援隊((脱炭素ライフスタイル推進室))
「ファッションと環境」タスクフォース 金井塚彩乃)

「AMI AMI」
デザイナー:リンドゼイ そら(東京モード学園 ファッションデザイン学科 高度専門士コース3年)


今回の三越伊勢丹ミライアワードにノミネートした全作品は、4月22日まで伊勢丹新宿店のウインドウに展示されている。



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