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ファッション|2025.12.12

時代をリワインドする韓国・ソウル発ブランド「PLAYBACK(プレイバック)」

ソウルで人気上昇中のブランド「プレイバック」。日本をはじめ海外市場にも意欲的に進出するデザイナーのホン・ミリムが、カロスキルの店舗で取材に応えてくれた。日本のカルチャーに大きな影響を受け、サステナビリティも追及したいというブランドの人気の秘密とは?

原稿:髙岡英里子

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一昨年、ソウルで誕生したユニセックスブランド「PLAYBACK(プレイバック)」。ブランドの心臓部には、“すべてのデザインは再生(PLAYBACK)されている”という哲学が脈々と息づく。既に4シーズン目を迎え、海外市場にも意欲的に進出している。

 CEO兼デザイナーのホン・ミリムは、人気セレクトショップ「ecru」のオリジナルブランドStandAloneの立ち上げを経て、コロナ禍で自身のブランドを構想。3年の準備期間を経て、感度の高い人々が集うカロスキルに、アトリエ兼ショールームをオープンした。「ブランドの顔は服」と信じて、顔出しを極力控えてきた彼女が今回、日本のメディアで初めて特別に撮影に応じてくれた。

PLAYBACK CEO兼デザイナーのホン・ミリムさん

すべてに宿る“再生”の哲学 ― ブランド名の由来とモノ作りの信念

ブランド名の由来は、日本のカルチャー雑誌『EYESCREAM』の表紙にあった「PLAYBACK、 SKATEBOARDING FILM」というタイトルだ。たくさんのファッション雑誌が並ぶ本棚でこのタイトルに出合い、ブランドの核心にぴったりと重なる「再生=PLAYBACK」という言葉にインスパイアされ、即決したという。

「ブランドが掲げるメッセージは『PLAYBACK=再び見せること(再現・表現)』です。過去の記憶や時代、文化をPLAYBACKというレンズで現代に再生し、服の“当たり前”に新たな問いを投げかけたい。『記憶されて、再訪されて、記録される』服づくりを目指しています」(ミリムさん、以下同)

そんなPLAYBACKを特徴づけるのが、ジェンダーレスな服のシルエット、サイジングだろう。消費者のサイズという枠にとらわれることなく、一人ひとりが求める理想のシルエットに寄り添うため、パターンや素材、その形状に至るまで何度も研究とテストを重ね、洗練されたデザインを完成させている。
ジェンダーを超越したシルエットは「長く着られ、次世代に受け継がれる服こそラグジュアリー」という価値観とも通じる。常に刺激と発見のある提案を続けたいから、特にターゲット層やミューズを設定していないというのもユニークだ。 


「過去を再び、未来へと届ける」。今季は日本のバブル期がテーマ

さまざまな時代や場所を行き来して「再生」してみせるPLAYBACKが、今季フォーカスしたのが「日本のバブル期」だ。

「今回のコレクションでは日本のバブル経済に着目し、当時の音楽や空気感をデザインに落とし込んでいます。特に音楽は杏里が気に入りました。でも、バブル期の『華やかさ』そのものではなく、あの時代の都市が持っていたロマンティックな姿勢と自信を、現代のストリートウェアとして再構築しました」

コロナ以降の長い低迷のなかでPLAYBACKが向き合ったのは、「最も経済的に豊かだった時代とは何か」という問いだった。その先に見出したのが、1980〜90年代のバブル経済期。当時の日本を、数字ではなく「都市の温度」として捉え直している。
夜の長い街、ゆったりとしたリズム、きちんと装って街を歩く人々。ネオンの下に流れるシティポップや、夜遅い帰路ににじむ音楽――そこには、人々が未来を信じていた瞬間の風景があった。それを懐古的にそのまま再現するのではなく、「都市の余裕」「ロマン」「華やかなムード」をカラー、素材、シルエットへと抽出。パワースーツの構築的なフォルムや、ボディコンシャスな緊張感を、過剰な装飾に頼らず、パターン・素材・シルエットの密度へと翻訳し、ジェンダーやシーズンを越境するストリートウェアとして提示している。

PLAYBACK流エコへの取り組み

PLAYBACKのサステナブルな取り組みについて尋ねてみた。

「ファッション業界は環境負荷の問題が深刻ですよね。ただ生産量を減らすだけでは解決にならない。だからまずは、長く愛される良いものづくりに集中しています。

さらに製品の約30%にサステナブル素材を使っています。デザインの仕事を長く続けてきて、生産過程で多くの資源が無駄になっているのを見て、既存の資源をできるだけ有効活用したいと思ったんです」

サステナブル素材として最も活用しているのが、売れ残りの余剰生地だ。倉庫に眠っていた正規生地や少量在庫、すでに生産が終了した生地は、多くの場合廃棄されてしまう。PLAYBACKは、このような資源の無駄を減らすため、こうした種類の生地のみを扱う卸問屋で直接探し出し、積極的に活用している。
見つけ出した生地を使用する際も、品質を維持するために別途加工費をかけて丁寧に仕上げ、新しい素材と同等のクオリティを実現することに注力している。

左 アイコンのビッグサイズのロゴT。新色のピンクはデッドストック生地を活用し、スプレーカラーウォッシングという技法で、染色の肯定を省き必要な分だけ生産する。右 こちらも未使用在庫生地を使った数量限定のデリバリージャンパー。 

また、すべてのシーズンのアイテムが自然に組み合わせられるよう、最新シーズンと過去アイテムを組み合わせたスタイリングをコレクションを通じて提案している。継続的に着用できる“シーズンレス”な構造により、不必要な生産や廃棄を抑制している。

紙製ショッピングバッグは使わず、製作過程で生じる余り生地を再利用してショッピングバッグを作り、ブランドのものづくりの哲学を最後の工程まで一貫して反映している。
さらに、韓国のオンラインプラットフォーム「MUSINSA(ムシンサ)」「29CM」では、購入時にサステナブルパッケージングについての案内を提供し、オンラインとオフラインそれぞれの環境に適したパッケージ方法を採用することで、より効率的で持続可能な購買体験を提案している。

従来はトップスに用いられてきたメッシュ生地。この生地をアウターに採用するという、革新的なアプローチ。通気性や軽快さに優れるメッシュ生地は、季節の変わり目やレイヤードスタイルにもおすすめ。

境界のないクリエイション、変わり続けるブランド― 韓国ファッションと新しい時代の在り方


韓国発ブランドPLAYBACKは、コレクションからも感じられるようにボーダーレスなクリエイションと、時代の移ろいに柔軟に応える姿勢で注目を集めている。固定された価値観や美意識に縛られることなく、「今」を率直に表現するそのアプローチは、現代社会の多様性や個人の価値観の変化とも深く共鳴しているのだ。

ブランドが大切にするのは、単にトレンドを追うのではなく、アイテムが持つ普遍的な魅力と、新旧のアイテムの自由なミックス。それは自分らしさを大切にしながらも、常に新しいムードを取り込み、長く愛用できる商品提案へとつながっている。一度きりの「トレンド」ではなく、着る人それぞれの日常や個性に寄り添い、ファッションを通じて自分を自由に表現する喜び―この持続可能なクリエイションこそ、PLAYBACKの示す新しい時代のファッションの在り方だと言える。

ファッションの本質は、誰かに決められた「型」や瞬間的な流行の中にはなく、自分自身の価値観と直感、そして日常を豊かに彩る個人的なストーリーの中にある。PLAYBACKが提案するのは、まさにその「自由」と「持続性」。

時代がどんなに変わっても、自分たちの色を失うことなく、ブランドとして進化し続ける姿勢が、今後のファッションシーンをより自由で心地よいものへと導いてゆくだろう。

PLAYBACKの空間や什器、ロゴまでもがデザイナー自身の手によって生み出され、ロゴから空間まで、一貫した美意識が貫かれている。

PLAYBACK SHOWROOM
48, Nonhyeon-ro157-gil, Gangnam-gu, Seoul, Korea
@playback_official 

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パブリシスト/コラムニスト
髙岡英里子
幼少期をフランス・パリで過ごす。社会人を経て再び渡仏し、現地PR会社にてパリファッションウィークに携わる。帰国後、国内外のファッションブランドPRとして活動。2016年に独立し、ファッションに加えライフスタイル、ビューティー、音楽、アート、食と分野を広げ、パブリシスト/コラムニストとして活動中。

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