サステナブルファッションをおすすめする身として、よく口にするのが「1着の服を長く着ましょう」そして「長く着られるようなものを、選びましょう」。
優しい皆さんは「そうだよね」と思ってくださるかもしれませんが、言っている本人も実は頭の片隅によぎっているのは・・・
「長く着られるかなんて、正直わからなくない?」
私は元来ケチなので、服を買う時には今これを買わなくてはいけない理由を探します。「前から欲しいと思っていたが今だったら安くなっているから」「ブランドの理念に共感していて応援したいから」などの理由を述べながら「買っちゃえ〜」と引っ張るミニ人格が頭の中に現れるのですが、そのミニ人格がよく口にする鉄板フレーズが「長く着られそうだし」です。
これはまさに販売スタッフさんの常套句です。長く着られる(質が高い、一般的に飽きのこないデザインであるなど)というポイントは、「だったら買おうかな」とその場で説得する販売促進ポイントでもあるのです。
そんなふうにしてお買い物をするのはとても楽しいことではあるのですが、結局思ったほど長く着用することなく、だんだんと飽きていってしまった服ってありませんか?私のクローゼットにももちろん、あります。あのとき手に入れたと思った「一生モノ」は、どこへいったのでしょう?
もちろん質、デザイン、価格、愛着形成の工夫などで、長く着られる可能性を高めることは可能です。しかし数年後、5年後、10年後まで着られるかなんて正直だれにもわかりません。仕事が変わった、子供ができた、パートナーが変わった、引っ越しした、体型が変わった、気分が変わった、髪型が変わった・・・生きていれば起こるあらゆる変化にあゆみを進める中、服だけは同じものを着ていられるのでしょうか?
答えは、Yesかもしれないし、Noかもしれません。
でもわたしは、こんなふうに不確実であるということを認めつつ、そして「長く着られる」が消費を後押しするマーケティングワードの可能性があるということも自覚しつつ、長く着られますように、という願いだけは持っておきたいと思います。
願うと願わないでは、たとえ意識しなくても、小さい行動が変わってきます。できれば長く着たいから、シミをつけたらすぐにとる。誰かにきれいな状態で渡したいから、のびないように保管する。
願うことで、現実が少しでも変わってくると信じて。
本記事は日本のユーザーの方のために、「多様で、健康的なファッション産業をつくる」ことをミッションに活動する一般社団法人unistepsが執筆しています。