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※この記事は、Ethical Fashion Certifications and Standards: What Do the Labels Mean?を翻訳し日本市場向けに公開しています。
サステナブル度をパッと見分けたい!認証や基準は、どう役に立つの?
あなたも店頭やオンラインショッピングの際に目にする耳触りの良いメッセージに「本当に環境や人権に配慮している商品なのか?」と疑問に思ったことはないだろうか。
今やファッション界では、イメージ、ロゴ、一時的な流行や注目を集めるバズワード、グリーンウォッシングが溢れかえり、本当に意味のある取り組みをしているブランドを見分けるのはなかなか難しいのが現状だ。
そこで頼りになるのが、「認証」や「基準」、「認定」「自主的な基準」「行動規範モデル(スタンダード・システム)」といった仕組みだ。
これらは、ブランドが広告などで謳っている「サステナブル」や「エシカル」への取り組みが本当に実行されているかどうかを、第三者機関が確認・保証していることを示している。とはいえ、認証の種類があまりに多く「何を意味しているのか」「どれが信頼できるのか」が分かりにくいと感じたことがある人も多いのではないだろうか。
そこで今回は、ファッション業界でよく見かける主な認証や基準について、わかりやすく解説する。
認証や基準は、そもそもどんな仕組みなの?
よく見かける認証には、GOTSやOEKO-TEX(エコテックス)などがある。これらの認証が対象とするのは、生地の素材やトレーサビリティ、労働者の権利、化学物質の使用管理、水資源の扱いなど、多岐にわたる。
これらは、第三者機関による証拠の確認や監査(業務における法令や社内規定の遵守状況、またその有効性を評価・報告するプロセス)に基づいて実施される。認証や基準には、製品単位で適用されるもの、工場や施設に適用されるもの、あるいはブランド全体のサプライチェーンを対象とするものなどがあり、それぞれ仕組みが異なる。
開示される情報の範囲や監査体制、運用方法も多様だ。また、一度取得すれば終わりではなく、認証によって定められた期間ごとに更新が求められ、定期的な監査を受ける必要がある。
ただし、消費者として「完璧な認証制度」は存在しないという点も留意したい。認証制度の中には、環境団体や活動家、メディアなどから批判を受けたことのあるものも存在する。どの認証にも限界があり、その内容や評価方法は日々見直され、アップデートされているのだ。
こうした認証や基準を経営に取り入れることで、ブランドが掲げる公約が実際に守られているかどうかを、第三者が定めた基準に従って客観的に評価することが可能となる。
その結果、ブランドが発信する情報の信頼性が高まるだけでなく、認証が示す明確な指標に基づき、自社の課題や改善点を把握し、より健全な運営へとつなげるきっかけになるのだ。

ShiftCのレーティングガイドにおける認証と基準の活用方法
ShiftCのレーティングガイドの基となっている世界最大級のエシカル評価機関Good On Youでは、それぞれの認証や基準の対象範囲や保証方法を徹底的に精査したうえで、参照するものを選定、ブランドが特定の分野でどのように取り組んでいるかといった情報源を集計・査定・評価している。
なお、ファッションおよびビューティー分野でGood On Youが評価に用いている認証や基準の一覧は、こちらから確認することができる。
ここからは、代表的な認証や基準について詳しく見ていこう。
【フェアトレード・人権】
フェアトレード・テキスタイル・スタンダード
フェアトレード・テキスタイル基準は、サプライチェーン全体において、労働者や製造業者がより良い賃金を受け取り、適切な労働環境で働けるようにすることを目的としている。すべての生産段階における基準が含まれており、6年以内に生活賃金を実現することを保証するほか、労働者への被害を防ぐための化学物質管理や、一部の素材の使用禁止などが盛り込まれている。
なお、ここでいう「生活賃金」とは、労働者が暮らす地域の典型的な家族が、食事や住居、医療、教育などの基本的な生活ニーズを満たすのに必要な金額を指す。これは、多くの場合実際の生活費を反映していない「最低賃金」とは異なり、労働者が家族とともに人間らしい生活を送るための水準として設定されている。
また注目すべき点は、この基準が適用されるのは、すべての雇用者と労働者が制限なく、かつ自主的に組織を設立し、自らの意思で加入するかどうかを決定できる「結社の自由」が認められている国に限られているということだ。
フェアトレード・コットン
フェアトレード・コットンマークが衣類に付いている場合、その衣類に使用されているコットンは、開発途上国にあるフェアトレード認証を受けた生産者団体によって生産されており、その生産者団体はコットンに対して公正で安定した価格を受け取ることを示す。また、その綿は生産の全段階において追跡可能であり、フェアトレードではない繊維と分けて厳密に管理される。
フェアトレード基準は、小規模農家の社会的、経済的、環境的な発展を支援することを目的とし、強制労働と児童労働を完全に禁止しており、生産者団体はこれらの基準を満たす必要がある。
日本で買える国際フェアトレード認証コットン製品はフェアトレード・ジャパンのウェブサイトでも紹介されているのでぜひチェックしてみてほしい。

世界フェアトレード連盟(WFTO)
世界フェアトレード連盟 (World Fair Trade Organization、以下WFTO)のラベルがある場合には、その衣料品を製造する企業がWFTOの基準を満たしていると認定されたことを意味する。
WFTOと国際労働機関(ILO)の基準に基づき、企業は10のフェアトレード原則によって評価される。このラベルは、企業全体の取り組みがWFTOのフェアトレード基準に基づいて審査されていることを示すものであり、サプライチェーンや製品の一部だけを対象にした審査ではない。
フェアウェア財団(FWF)
フェアウェア財団(Fair Wear Foundation、以下FWF)は、企業、ブランド、工場、労働組合、NGO、政府など、多様なステークホルダーが協力して活動する非営利団体だ。現在、Nudie Jeans、Acne Studiosをはじめとする108のブランド(2025年8月時点)が加盟しており、会員企業の原料調達や生産の大部分を占めるバングラデシュ、ブルガリア、インド、インドネシアといった優先国に重点を置いて活動している。
FWFの会員ブランドであることは、そのブランドが持続可能性の社会的側面を真剣に受け止め、サプライチェーンの条件の検証と改善にコミットしていることを示している。評価は、国際労働機関(ILO)の条約に基づく8つの労働基準と、国連の人権宣言に準拠した独自の基準に基づいて条件を検証している。
加盟ブランドを確認したい場合は、FWFの公式ウェブサイトをチェックしてみて。
Social Accountability 8000(SA8000)
SA8000は、アメリカの非営利団体SAI(Social Accountability International)が策定する従業員の基本的人権を保護・促進するための国際規格だ。
その基準は、国際人権宣言やILO(国際労働機関)条約、その他の国際的な人権・労働に関する法令を基盤としている。
1997年から20年以上に渡り信頼性の高い社会的認証制度として、アパレル業界にとどまらず、ウォルト・ディズニー・カンパニーやエスティーローダーなど、多様な業種・国の組織に採用されており、労働者にとって公正で人権が尊重された環境のもとで事業を行っていることを示す枠組みを提供している。

【化学物質・サプライチェーン管理】
ブルーサイン(bluesign)
bluesignとは、繊維・アパレル業界において、環境、労働、安全性の観点から持続可能なサプライチェーンを経た製品に付与される国際的な認証だ。
ブルーサインは、世界でも最も厳格な基準の一つとされており、5つの原則に基づいており、2つの認証基準と、達成度に応じた3段階の認証レベルが設けられている。
2つの認証基準は以下の通り
- ブルーサイン・アプルーブド・ファブリック(bluesign Approved Fabric)
製品に使用される生地の規格。生地の90%がブルーサインの規格に沿っている必要がある。
- ブルーサイン・プロダクト(bluesign Product)
製品をつくるすべての部品に関する規格。生地の90%はブルーサインの基準にしたがっており、またプリント、ワッペンなどの副資材においても、20%がブルーサインの基準を満たす必要がある。
Cradle to Cradle(C2C)
Cradle to Cradle認証とは、1987年にドイツで設立された環境保護促進機関(EPEA)が実施する国際的な環境認証だ。
「Cradle」は日本語の「ゆりかご」を意味する。これまでの経済活動が「Cradle to Grave(ゆりかごから墓場まで)」の生産・消費・廃棄という一方向的な流れであるのに対し、「Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごへ)」は資源を永続的に循環させ、有効活用する製品のサイクルを指す。Cradle to Cradle認証では単に環境負荷を削減するだけでなく、環境に対してプラスの影響を与えることが重視されている。認証は、ベーシック、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの5段階のレベルとなっており、アパレル繊維業界ではSANKO社が手がける消費者の使用済みコットン素材から製造された再生コットンのRE&UP Next-Gen Recycled Cottonなどがプラチナを取得している。
レザー・ワーキング・グループ (Leather Working Group)
Leather Working Group(LWG)は、革製品のサプライチェーンにおける環境パフォーマンスの向上を目的とした国際的な業界団体だ。原皮から仕上げ済み皮革まで、あらゆるサプライチェーンの関係者を対象とした基準に対して監査を行い、排水処理、エネルギー使用、化学物質管理などの17の項目について評価を実施する。それぞれの項目は、環境・社会・労働の各面での責任ある製造を評価するために設計されており、LWGの認証取得には全体的な持続可能性の取り組みが求められる。監査結果に基づき、優れた環境パフォーマンスを示す工場には「LWG認証」が付与される。また、ウェブサイトで認証を受けたサプライヤーが確認できるため、ブランドは環境配慮された革素材を調達することが可能だ。

OEKO-TEX(エコテックス)
OEKO-TEX(エコテックス)国際テキスタイル・レザー生態学研究・試験協会は、ヨーロッパと日本にある17の試験機関を結びつけ、テキスタイルおよびレザー産業におけるトレーサビリティ、透明性、安全性の推進を目的としている。
同協会にはさまざまな認証基準があるが、中でもGood On Youがデータソースとして使用しているのは、「OEKO-TEX MADE IN GREEN」と「OEKO-TEX STeP」の2つだ。
OEKO-TEX MADE IN GREEN
この基準は、持続可能な生産と職場におけるより大きな社会的責任に焦点を当てている。これは、製品のすべての構成要素において以下の5つの項目で確認される。
- 有害物質と品質について検査し安全性を確保すること
- 化学物質管理と排水の品質確認
- 労働者の公正な賃金
- 労働時間、ワーカーの安全の確保
- サプライチェーンの透明性
OEKO-TEX STeP
STePは業界内で特定の基準が満たされていることを保証するために用いられる認証。消費者向けの認証ではないため、衣料品のラベルには表示されない。STePは、繊維・皮革製品の生産サプライチェーン全体における施設および産業用洗い加工施設に適用される。
基準は以下の通り
- 環境管理と化学物質管理
- 社会的責任と公正な労働条件
- 労働者の安全と保護
- 生産プロセスの継続的な改善と資源の効率的な利用

GOTS(オーガニックテキスタイル世界基準)
オーガニックテキスタイル世界基準(Global Organic Textile Standard、以下GOTS)は、 オーガニック繊維製品に関する国際的な基準です。この基準は、オーガニック繊維製品の編み・織り・染色・縫製その他加工から最終製品までの段階をカバーしている。
GOTSのラベルグレードには2種あり、「Organic」と書かれたものは製品の95〜100%オーガニック繊維、「Made with Organic」とあるものは70〜95%が認証されたオーガニック繊維を使用していることを示す。
この認証を取得するためには、企業は環境への影響を管理し、高い労働基準を遵守し、エネルギー消費を削減し、水の使用状況を点検する必要がある。適合性は、独立した監査機関によって検証される。
【アニマル・ウェルフェア】
レスポンシブル・ウール・スタンダード(RWS)
世界規模でファッション・テキスタイル業界の持続可能性を推進する非営利団体テキスタイル・エクスチェンジによって策定されたレスポンシブル・ウール・スタンダード(RWS)は、動物福祉や環境保全に配慮して生産された羊毛のトレーサビリティを担保する国際的な認証基準だ。
RWS認証を取得するには、以下の4つの基本原則をすべての製造工程で満たす必要がある:
- ミュールジングの禁止
- 土壌の健康を守る農場管理
- 5つの動物の自由の尊重
- サプライチェーンの透明性と管理
RWS認証ウールを5%以上含む製品には、RWSラベルをつけることが可能だ。認証は2つの段階で構成されており、まず農牧場認証では、羊の飼育方法や土地の管理に関する審査が行われる。次に、サプライチェーン認証では、紡績、織布、縫製など、すべての加工・流通の工程における管理体制が評価される。

レスポンシブル・ダウン・スタンダード(RDS)
同じくテキスタイルエクスチェンジが策定するレスポンシブル・ダウン・スタンダード(RDS)認証は、羽毛製品における動物福祉とトレーサビリティを保証する認証だ。
この規格では、生きた鳥からの羽毛採取や強制給餌といった非人道的な扱いを排除し、倫理的に管理された環境下で飼育されたアヒルやガチョウから採取された羽毛・フェザーであることを証明する。
RDS認証は、RDSダウンまたはフェザーを5%以上含む製品を対象としている。
認証は、ダウンの生産農場から最終製品の製造元、トレーダーを含むサプライチェーン全体を通じて実施され、すべての関連拠点における管理体制とトレーサビリティの確保が求められる。
PETA認定ヴィーガン
PETA*のヴィーガン認証は、個々の製品、特定のコレクション、またはブランド全体が動物由来の素材を使用せずに製造されていることを確認するために使用できる。ブランドは、認定を受けるためにサプライヤーおよび製造業者からの質問票と保証書を提出する必要がある。
※PETAは世界最大規模のアニマルライツ団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会(People for the Ethical Treatment of Animals)」 の略称。
【リサイクル】
グローバル・リサイクル・スタンダード(GRS)
グローバル・リサイクルド・スタンダード(通称:GRS)は、リサイクル素材の第三者認証基準であり、製品がサプライチェーンを通じてどのように移動し、加工されてきたかを追跡・記録する国際的な自主規格だ。
GRS規格は、ISOの「リサイクル」の定義に準拠しているリサイクル材料を20%以上含む製品を対象として監査が行われているが、GRSラベルが付けられ販売されている商品には、リサイクル材料が50%以上含まれている。
【企業に対する包括的な認証】
B Corp(B Corporation)
B Corpは、環境や社会への配慮、透明性、説明責任など、企業の“あり方”そのものを評価する国際的な認証制度だ。運営するのはアメリカの非営利団体B Lab。「B」は“Benefit(恩恵)”の意味で、株主だけでなく、従業員、地域、顧客、地球環境など、すべての関係者に利益をもたらす企業が対象となる。
これまで挙げてきたオーガニックコットンやウール・ダウンのように商品を認証するのではなく、企業の行動や仕組み全体に対する認証であることが特徴だ。
2024年にB Lab日本支部が設立され、日本でもB Corp認証を取得する企業が増えてきている。現在、世界では約9,800社、日本でも約60社(2025年8月時点)が取得している。
認証取得の裏側にある努力とコスト、認証を意識した買い物の方法とは?
気になる認証はあっただろうか?
これから買い物をするときには、ぜひ商品タグや説明文に、こうした認証に関する情報があるかチェックしてみてほしい。
実は、これらの認証を取得するには、ブランドだけでなく、その取引先やサプライチェーン全体にとっても、書類作成や現地調査など、多くの手間とコストがかかっている。時間もお金も人手も必要で、簡単なことではない。
だからこそ、そうした取り組みを続けているブランドの姿勢を理解し、価格だけでは見えない価値にも目を向けてみてはどうだろうか。
サステナブルな選択を後押しする、一つの視点になるはずだ。
また、Good On Youの評価では、上記で紹介したような認証や基準に関する情報も評価に組み込みながら、1つ1つのブランドに対して、100以上の主要な社会・環境・動物福祉に関する問題や指標を軸に、最大1,000項目にわたるデータをもとに評価している。
ShiftCのレーティングでは、その結果が5段階のわかりやすいスコアで表示され、ブランドのエシカル度を直感的に把握できる仕組みになっている。
商品タグには載せきれないさまざまな情報も、ブランドのスコアとして反映しているのでぜひ参考にしてほしい。