• トップ
  • Learning
  • カプセルワードローブで旅をする。白鳥麻衣さんが実践する、少ない服でおしゃれに暮らすエシカルなワードローブとは

ファッション|2025.08.01

カプセルワードローブで旅をする。白鳥麻衣さんが実践する、少ない服でおしゃれに暮らすエシカルなワードローブとは

「服はたくさんあるのに、着たい服が見つからない」——そんな悩みを解決するヒントとして、今改めて注目されているのが「カプセルワードローブ」。必要最小限の服で着回しを楽しみ、日々のスタイリングを軽やかに整えるという考え方だ。

今回は、トレンドリサーチャーや、日米をつなぐPRとして活動する白鳥麻衣さんにインタビュー。環境や社会に配慮したライフスタイルを大切にしながら、旅先でも実践しているカプセルワードローブの考え方や、その取り入れ方について伺った。

原稿:藤井由香里 

Share :
  • URLをコピーしました

白鳥麻衣/Mai Shiratori
2014年から2019年までニューヨークを拠点にトレンドリサーチャーとして活動。現在は日本を拠点に、トレンドリサーチに加えて、日本とアメリカを繋ぐPRやブランドコミュニケーションにも携わっている。ニューヨーク在住時にヨガインストラクターの資格を取得したことをきっかけに、ウェルネスやサステナビリティへの関心が高まり、イベントの企画や提案にも取り組む。

カプセルワードローブとは?ミニマルに暮らすための服の選び方

カプセルワードローブとは、厳選された少ないアイテムで最大限の着回しを楽しむ、シンプルで効率的なワードローブのこと。流行に左右されないベーシックな服を中心に、自分に必要なものだけを厳選することで、毎日のコーディネートがスムーズになる。それによって忙しい朝の支度が楽になり、無駄な買い物も減るなど、暮らし全体が整っていく。

近年では、環境への配慮やミニマリズムへの関心の高まりとともに、改めてその価値が見直されている。お気に入りだけに囲まれる心地よさ、選択のストレスから解放される自由——カプセルワードローブは、そんな現代のライフスタイルに寄り添う、新しいファッションのかたちだ。

服を減らすのではなく、意味を持って選ぶ——白鳥さんの選び方と手放し方

無理に減らすのではなく、今の自分にとって心地よい選択をする。そんな視点でワードローブと向き合う白鳥さんに、服選びの基準や日々のスタイルづくりについて話を伺った。

——服を選ぶ際に、白鳥さんが大切にしている基準はありますか?

一番大切にしているのは、「どこで、誰が、どんなふうに作っているのか」という背景です。素材や作り手のストーリーを知ることで、その服への愛着が全然違ってくるんですよね。特に旅先で出会った服には、思い出ごとまとっているような感覚があります。

それから、エシカルなものづくりをしていることや、自分が「応援したい」と思えるブランドがどうかも大切。あとは、長く着られるデザインであること。シーズン問わず着回せるシンプルなアイテムが多いですが、少しデザイン性のある、ひとクセあるアイテムを取り入れることで、スタイリングを楽しむようにしています。

——エシカルな視点を大切にするようになったきっかけを教えてください。

もともと「もったいない」と思う感覚は、子どもの頃から自然とありました。でも、本格的に意識するようになったのは、ヨガやウェルネスに出会ってから。心と身体の心地よさに向き合う中で、そうした価値観が暮らし全体に広がり、エシカルな選択が自分にとって自然で心地よいと感じるようになったんです。

もっと遡ると、会社員を辞めてニューヨークで暮らした経験も大きかったと思います。あの街で、自分の時間の使い方や生き方を見つめ直すきっかけをもらいました。

——ニューヨークでの暮らしを通して、どんな価値観の変化があったのでしょうか?

日本で会社員をしていた頃は、自分と向き合う余裕すらなくて、ただ日々をこなすことで精一杯でした。社会人3年目が終わったタイミングでアメリカに行ったんですが、ニューヨークでの生活を通して、自分の時間の使い方や生き方を見つめ直すきっかけをもらえたように思います。

ウェルネスに出会ったことで、自分にとって心地よいものを選ぶようになりました。その感覚が少しずつ広がって、今の物選びにもつながっている感覚です。何より、自分が心地よくいられるかどうかが、選ぶ際のいちばんの軸になっています。

——そうした心地よさを、普段の暮らしではどのように意識していますか?

いつも正解を求めすぎず、自分にとって無理なく、心地よく続けられることを大切にしています。すべてがオーガニックじゃなくても、アップサイクルじゃなくてもいい。自分なりに意味を感じられる選択をすることが、結果的にサステナブルな暮らしにつながっている気がします。

——アイテムを迎えたり、手放したりするときにも、その選択の視点は意識していますか?

Tシャツのように消耗が早いアイテムは、気に入ったものをリピート買いすることもあります。手放すときは、誰かに譲ったり、メルカリやPASSTO(パスト)のような回収サービスを利用したり。今はごみとして捨てない選択肢が増えていて、ありがたいですね。

だからこそ、新しく服を迎えるときは「買う=手放す」という意識で選ぶようにしています。衝動的に増やすのではなく、手持ちと合うか、似たものを持っていないかを見直してから決めています。クローゼットのスペースには限りがあるから、本当に必要なものだけを大切に持っていたいんです。

来年またパリに行っても、きっと同じ服を着ていると思います。笑 でもそれくらい、長く付き合える一着を選びたい。おばあちゃんになっても着られるような服を着ていたいというのが、ずっと根底にありますね。

——少ない服で豊かに暮らす今の生活を、どのように感じていますか?

今は、自分にとって心地よいものだけに囲まれて暮らせている安心感があります。いろんな服を着てきたからこそ、自分の心地よさの基準が見えてきたように思います。

数が少ないぶん、自分らしさが際立って、迷いも減る。昔は「今日のコーディネート、違ったかも」と思って着替えに帰ったこともありました。笑 でも今は、自信を持って着られる服しか持っていないから、そんなこともなくなりましたね。

旅の持ち物も同じで、厳選したアイテムだけでコーディネートすると、自分が本当に好きなスタイルが見えてくるんです。選択肢が多いほど迷ってしまうけれど、絞ることで気持ちが軽くなり、服との付き合い方もずいぶん楽になりました。

白鳥さんの日々の選択を軽やかにする、9のアイテム

旅先では、自分らしいスタイルがいっそう試されるもの。街歩きからディナーまで、さまざまなシーンを快適に過ごせる軽やかさと、心地よさ。そのどちらも叶えてくれるのが、白鳥さんのカプセルワードローブだ。

「Tシャツとデニムでカジュアルに過ごしたり、スラックスにジュエリーを合わせて少しきちんとした雰囲気にしたり。旅先でも、自分らしくいられる装いを工夫しながら楽しんでいます」(白鳥さん)

11日間滞在したパリでも、東京と変わらないスタイルで心地よく過ごしたそう。
選ぶ際の基準は、着心地のよさと汎用性。そこに靴やバッグ、ジュエリーなどの小物で変化をつけながら、シーンに合わせた装いを楽しんでいる。

ここでは、実際にその旅に持参した、旅にも日常にも寄り添う9つのアイテムをご紹介。機能性や快適さはもちろん、スタイリングの幅を広げてくれるアイテムの数々に、白鳥さんの軽やかな選択のヒントが詰まっている。

ジャケット / Tolight

作家の青山明生氏がデッドストックや古着のジャケットをキャンバスに、1点ずつ手描きで仕上げる「Tolight(トライト)」のジャケット。世界に一着しかない特別な存在感とアート性に惹かれ、白鳥さんが「一生ものにしたい」と語る一着。

「もともと作品が好きで気になっていたんですが、個展に合わせて少量だけ製作されるスタイルなので、なかなか手に取る機会がなくて。あるとき伊勢丹で個展があると知って、迎えに行きました。白髪のおばあちゃんになっても着ていたいと思えるジャケットです」(白鳥さん)

背中に施された大胆なペインティングは、後ろ姿まで印象的に仕上げてくれる。アートとファッションが自然に重なるこの一枚は、ワードローブに静かなインパクトをもたらしてくれる存在だ。

ヴィンテージバッグ / CHANEL

20代前半、会社員時代に訪れたNYで見つけ、思いきって手に入れたヴィンテージのシャネルバッグ。イベントやレストランに出かけるとき、自分を後押ししてくれるお守りのような存在だったという。

「当時は全体にチュールが施されていたんですが、今の自分には少し華美に感じられて、ダメージもあって長らく使えずにいました。でも昨年、NY在住のテイラー・Tae Yoshidaさんが一時帰国中に開催したリメイクイベントに持ち込んで、新たに自分に似合うかたちに仕立て直してもらったんです。美しいものだからこそ、眠らせず、今の自分のスタイルに合うかたちで長く使い続けていきたいです」(白鳥さん)

バンブーコットンTシャツ / takes.
ヴィンテージデニムパンツ /  Levi’s

(左)リーバイスのデニム(右)takes. Men’s Tee ¥11,550(税込)

takes.(テイクス)」は、糸の開発から手がけた竹100%の「TAKEFU」素材を用いるサステナブルブランド。このTシャツは竹と綿を50:50でブレンドし、肌ざわりのやさしさに加え、吸湿性・保温性・抗菌性など機能性も備えている。

「白Tって消耗品と思われがちですが、着心地や素材へのこだわりがあると、自然と丁寧に扱いたくなります。少し高価でも長く着られる1枚を大切にするほうが、結局自分にとって心地いいんです。私はあえてメンズのMサイズを選んで、ゆとりあるシルエットを楽しんでいます」(白鳥さん)

Levi’sのデニムは、代々木八幡の古着店「FRONT GENERAL STORE」で見つけた一本。やや長めの丈感で裾が余るシルエットが好みで、季節を問わず愛用しているそう。

「気分によって丈やシルエットを変えたい時もありますが、このデニムはずっと変わらず履き続けている1本です。FRONT GENERALはサイズ感やセレクトのバランスがとても良くて、自分に合うヴィンテージデニムに出会えるお気に入りのショップです」(白鳥さん)

リング / Adlin Hue

インドの工場でリサイクルされたシルバーや、長年眠っていたデッドストックのストーンを使用するなど、すでにある美しさを活かすサステナブルなジュエリーブランド「Adlin Hue(アドリンヒュー)」。

「ジュエリーってまだまだ新しくつくることが主流だと感じていたんですが、アドリンヒューは、既存資源を美しく再構築しているところに惹かれました。2年前、デザイナーの安部さんに直接アポイントを取り、石やブランドの背景を丁寧に説明してもらって迎えた、大切な一点です」(白鳥さん)

シャツ / ORRS

STANDARD SHIRT / NATURAL ¥26,400 (税込)

沖縄にあるショップ兼宿泊施設「ORRS(オルズ)」のオリジナルシャツ。パナマハットで知られる同ブランドが展開するアイテムは、卸販売を行わないからこそ実現できる、上質な素材と手頃な価格が魅力。すべてメイドインジャパンにこだわってつくられている。

「白シャツって無敵だと思っていて、どんなシーンにもなじむ万能アイテム。ボタンを深く開けてパリっぽく着たり、羽織としても使えるので旅先では本当に重宝します。去年のパリ旅にも持っていきましたし、今回も迷わずこれを選びました」(白鳥さん)

この投稿をInstagramで見る

Mai Shiratori(@tomboy_mai)がシェアした投稿

ニットタンクトップ / RYE TENDER 

EAMES TANK ¥9,900(税込)

残糸・残布をアップサイクルしたものづくりを行う「Rye Tender(ライテンダー) 」のタンクトップ。ニット素材で編まれていることにより、ほどよいきちんと感があり、上品な印象に。

「リサイクル素材を活用したものづくりにとても共感しているブランドです。今年、新たに白と黒の2色を買い足しました。Tシャツに比べて黄ばみなども出にくく、真夏も毎日のように愛用しています。長く使えるという点でも、選んでよかった一着です」(白鳥さん)

リング&ブレスレット / PRIMAL

(中指につけたリング)Wave Ring ¥124,300 (税込)(人差し指につけたリング)Peek Diamond Ring ¥96,800 (税込)(ブレスレット)Letter Diamond Bracelet ¥71,500 (税込)

日本の熟練職人の技術と、テクノロジーの進化によって生まれたラボグロウンダイヤモンドを融合させた、次世代のサステナブルジュエリーブランド「PRMAL(プライマル)」。

「初めて自分で購入したダイヤモンドが、プライマルのものでした。美しさとサステナビリティを両立させようとする、ブランドの姿勢に強く共感しました。ジュエリーを買い始めた当初は、環境に配慮した選択肢でありながらも、ここまでデザイン性に優れたブランドはまだ少なくて。今では4点ほど愛用していて、出会った時の気持ちを今も大切にしています」(白鳥さん)

シンプルに一本で着ける日もあれば、写真のように重ねて楽しむことも。

「ジュエリーは節目で買うというよりは、『今これだ』と思ったタイミングで迎えることが多くて。あとで理由をつけるんです(笑)。日常でふと心が動いた瞬間に出会ったものだからこそ、大切にしたくなるのかもしれません」(白鳥さん)

カプセルワードローブでつくる、今の自分にちょうどいいスタイル

「どれを選んでも、自分らしくいられる」
そんな安心感があれば、朝の支度も、外に出る一歩も、少しだけ軽やかになる。

旅先でも、日常でも、「これさえあれば大丈夫」と思える服と暮らす白鳥さん。
ここでは、そんな彼女がカプセルワードローブでつくるコーディネートをご紹介。

引き算で引き立つ、主役ジャケットの装い

「Tolight(トライト)」のジャケットは、ハンドペイントの存在感が際立つ主役アイテム。あえてTシャツとデニムという定番のアイテムを合わせることで、ジャケットの華やかさが一層際立つスタイリングに。

「ジャケットがオーバーサイズなので、なるべくストレートやスリムフィットのパンツを合わせて、すっきりと見せるようにしています。Tシャツ×デニムでラフに着たり、スラックスやジュエリーで少しきちんと感を出したり。合わせ方次第でいろんな表情を見せてくれるのもこのジャケットの魅力です。色んなスタイリングを楽しんでいます」(白鳥さん)

トーンで魅せる、都会的なストリートスタイル

ボーダーのタンクトップにネイビーのスラックスを合わせたスタイリングは、一見シンプルながらも色合わせの妙が光る。トップスにあしらわれたグリーンやブルーの色味が足元のスニーカーとリンクし、全体を軽やかにまとめている。

「コーディネートを考えるときは、洋服に入っている色をベースに、全体を2~3色にまとめるよう意識しています。色数を絞った方が、まとまりが出て洗練された印象になるんです。特にネイビーはバランスが取りやすい色なので、カジュアルな印象にしたい時に出番が多いですね」(白鳥さん)

スラックス sawa takai

デザイナー・高井佐和により設立されたウィメンズブランド「sawa takai(サワ タカイ)」。受注生産を基本に、ものづくりを通じた社会貢献にも取り組んでいる。

「背が高いので、特に日本ブランドで丈感がぴったり合うスラックスを見つけるのが難しいんですが、これはまさにシンデレラフィット。今年はこればかり履いているくらい、頼りになる一本です」(白鳥さん)

“なんとなく”をやめたら、ワードローブはもっと心地よくなる

カプセルワードローブは、ただ服を減らすための手段ではない。「今の自分にとって、本当に必要なものは何か?」を見つめ直すための、小さなきっかけでもある。

「ベーシックな白を手に取ることが多いのは、何にでも合わせられる便利さだけじゃなくて、気づけば自分らしさの象徴になっていたから。遊び心は大事にしたいけれど、なんとなく選んだものよりも、『なぜこれを選んだのか』という理由がちゃんとあるものを、これからも大切にしていきたいですね」(白鳥さん)

ものづくりの背景や、サステナブルな姿勢に共感して選んだアイテムには、それぞれに物語があり、語れる理由がある。服と丁寧に向き合うことは、自分の価値観や心地よさを見つめ直すことにもつながっていく。

自分で選び抜いた服に囲まれる毎日は、想像以上に軽やかで、自分らしい。
そんな日々を始める第一歩として、「自分にとって本当に必要な一着」を考えることから、ワードローブを見直してみてはいかがだろうか。

Share :
  • URLをコピーしました
ライター/エディター
藤井由香里
ファッションメディアのライター/エディター、アパレル業界での経験を経て、2022年に独立。現在は、ファッション、美容、カルチャー、サステナビリティを中心に執筆・編集を手がける。Webや紙媒体のコンテンツ制作に加え、広告制作、コピーライティング、翻訳編集など、多岐にわたるプロジェクトに携わる。

Ranking ウィークリーランキング (2025.07.26〜08.02)

Instagram Follow us
デザインもエシカルも叶える、サステナブルなバッグブランド15選

デザインもエシカルも叶える、サステナブルなバッグブランド15選