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ストーリー|2025.03.26

第1回「ケリング・ジェネレーション・アワード・ジャパン」栄光の受賞企業が決定!最優秀賞にファーメンステーション

日本初開催となったケリング・ジェネレーション・アワードの最優秀企業を含む上位3社がついに発表された。どの企業が1000万円の賞金とサステナビリティサミット「ChangeNOW」への出展のチャンスを掴んだのか? 授賞式冒頭に行われたアワードの審査員を務めるケリング会長兼CEOのフランソワ=アンリ・ピノー氏と、日本発バイオスタートアップのスパイバーの関山和秀社長による対談など、イベント全体の全容をレポート。

原稿:白石 綾

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ケリング・ジェネレーション・アワード・ジャパンとは?

「ケリング・ジェネレーション・アワード・ジャパン」は、グッチやボッテガ・ヴェネタを擁するケリングが、スタートアップの成長支援を行うCIC Instituteのサポートのもと、昨年から日本で初めて開催しているプログラムだ。日本のファッションおよびビューティ業界において、環境や社会にポジティブな影響をもたらす持続可能なイノベーションの創出を目的としている。

サステナブル・ファッション&ビューティ領域に関わる国内のスタートアップや研究者を対象に募集を行い、約130社が応募。その中から3月13日、ついに最優秀企業を含む上位3社が発表された。果たして、栄光に輝いたのはどの企業なのか?

日本発スタートアップ企業の頂点に輝いたのはファーメンステーション!

(左から)フランソワ=アンリ・ピノー(ケリング会長兼CEO)、ラファエラ・コルナッジャ(ケリング ボーテCEO)、酒井里奈(ファーメンステーション代表取締役)、北畠勝太(ファーメンステーション取締役COO)マリー=クレール・ダヴー(ケリング チーフ・サステナビリティ・オフィサー兼渉外担当責任者)、ティエリ・マルティ(ケリング ノース &サウスイースト・アジアパシフィック プレジデント)、梅澤高明(CIC Japan 会長)

栄えある第1位には、ファーメンステーションが輝いた。同社は、独自の発酵技術を活用し、未利用資源を機能性のある原料に変換する事業に取り組む、バイオテクノロジースタートアップだ。規格外の農産物や飲料・食品工場で排出される製造残さなどの未利用バイオマスを分解し、各種フレーバーや高機能化粧品素材に転換する共同開発や自社工場での製造事業を展開している。具体的には、コーヒーやバニラの香りがするアルコールや、化粧品用途として肌の保湿を高める成分などが製造可能だという。

最優秀企業としての選出理由として、発酵技術を用い、食品廃棄物のような未利用資源から天然由来の芳香エッセンスなどのバイオ原料を生産し、資源の有効活用と循環型社会の実現を目指す研究開発型のスタートアップとして新たな資源の負担を地球にかけることなく、植物由来の機能性成分を生み出している点や、生成プロセスのライセンス供与により地理的な制限なくビジネス展開できる将来性が高く評価された。

ファーメンステーションの酒井代表取締役は受賞に対し「ケリングという世界の最先端のサステナビリティのプログラムを行っている会社からこのようなチャンスをいただき、大変嬉しく思います。16 年間頑張ってきたチームを誇りに思います。今、世界でサステナビリティに対する逆風がある中、サステナビリティビューティという領域で、我が社も貢献していけたらと考えています」と受賞の喜びと今後の抱負を語った。

ケリング会長とスパイバー社長がサステナビリティの挑戦について対談

フランソワ=アンリ・ピノー ケリング会長兼CEOと関山和秀スパイバー社長。

授賞式にはケリング会長兼CEOのフランソワ=アンリ・ピノー氏も登壇し、日本発のスタートアップとして20年を迎え世界からも大きな注目を浴びているスパイバーの関山和秀氏とパネルディスカッションを行った。スパイバー社のブリュードプロテインは、ケリング傘下の「バレンシアガ」でも採用されており、二人がサステナビリティに関する原体験や情熱などについて率直に語り合った。

サステナビリティという領域でさまざまな困難を乗り越えてきた二人の情熱の源は何か?という問いに対して、関山氏は「高校生の時、このままでは地球資源が足りなくなってしまうのではないか、平和な世界を維持できるのかと疑問を抱いたことがきっかけです。その後、バイオテクノロジーとコンピュータ・サイエンスという新しい分野に出会い、平和維持活動として事業を展開することを決意しました」と初心を明かした。

ピノー氏は、自身の原体験も高校時代の母からの教育であることを明かしながら「私がプロフェッショナルなキャリアを始めた際、非常に早い段階で、父の影響も受けて『企業は財務目標を超えた使命を持っているべきだ』という考えに至りました。もちろん、価値を創造しビジネスを継続するためにお金を稼ぐことは必要ですが、それだけでは不十分です」と語った。

さらに、ピノー氏「ラグジュアリーブランドには二つの使命がある」と次のように続けた。
「一つは、ファッション業界に創造性をもたらすこと。この業界でリスクを取らなければ、創造性は生まれません。したがって、創造性を推進することはラグジュアリーブランドの使命であり責任です。
そしてもう一つは、持続可能性です。ケリングがサステナビリティに本格的に取り組み始めたのは2007年です。その際にグループ内では『サステナビリティは足枷になるのでは?』という声もありました。しかし、各ブランドのクリエイティブディレクターたちは非常に先進的で、積極的にプロダクトや世界観でサステナビリティを表現していったのです。『現代のラグジュアリー』にサステナビリティを埋め込まなければなりません。私たちラグジュアリーブランドは、業界全体のために解決策を見つける責任があると思います。そしてこれが私たちの事業に多くの意味を与えているのです。私はCEOとして話していますが、もしグループ全体の目標が単に財務目標に関することだけであれば、正直に言って非常に空虚だと思います。サステナビリティへの情熱が問われているのです」

当日の会場には、ケリング・グループのブランドによる展示も行われた。

また、スタートアップ企業に対するアドバイスとして、関山氏は「事業を展開していると想定外の危機があると思うが、それと同じくらい想定外の機会もある。スパイバーが本当に大変な時に、想定していないチャンスが訪れ、何とか乗り越えてきたという経験を何度もしてきた。気候変動や生物多様性などの社会の役に立つことであれば支援いただける可能性が上がる。自分たちのパッションを信じてほしい」とエールを送った。

ピノー氏は、「ルールを疑い、プリミティブな思考をもつこと」と力強く語り、持続可能性の分野では解決策がシンプルであることが多いため、常に現状に挑戦し、問題を新しい視点で考えることが重要だと続けた。さらに、成功を収めた際には過信せず、先回りして脅威を予測し、対策を講じるべきだと、長年の経験に基づくアドバイスを送った。

2位は材料系スタートアップ、3位は藻類を愛する大学発スタートアップが受賞

同アワードの第2位には、AMPHIBIO LTD(通称 アンフィコ)が輝いた。同社は英国と日本に拠点を持つ材料系スタートアップだ。アパレル産業に起因の環境問題解決のため様々な材料ソリューションを開発。特に、2000年頃から有害性を指摘されるようになったPFASのアメリカと欧州における規制を背景に、従来PFASが多用されていたアウトドアアパレル向けの機能性透湿防水テキスタイルをPFASフリーで実現する技術と、水汚染などの環境汚染を大幅に削減する無水着色技術を開発している。

受賞の決め手は、アメリカや欧州におけるPFAS規制を背景に、PFASフリーで機能性透湿防水テキスタイルを実現する技術に加え、6色の糸から独自染色アルゴリズムにより1000種以上もの色を表現するというコンセプト。産業用繊維染色の環境への影響を低減する可能性という点で、第2位に選ばれた。

第3位は、研究開発型バイオベンチャーのアルガルバイオが受賞。同社は、多種多様な藻類を保有し、その実用化を一気通貫で手がける研究開発型バイオベンチャーだ。藻類は森林・農地・食物生産に影響を及ぼさず培養でき、面積当たりのCO2固定能に優れているという。藻類は光合成でCO2を固定し、アンチエイジング、UV吸収、保湿などに役立つさまざまな機能性成分と天然色素を含有するため、エシカルで持続可能な代替原料として技術開発が進められている。

同社は、日本の海洋資源である藻類の研究を20年以上に渡って行ってきたバイオベンチャーであり、面積あたりのCO2固定能に優れた藻類は、アンチエンジング、UV吸収、保湿などに役立つ機能性成分と天然色素を含有するため、ヘルスケア領域に止まらず、ビューティ、ファッションへの活用にも期待が寄せられていることが選考のポイントとなった。

上位3社には、サステナビリティサミットへの出展など、グローバルへの挑戦機会が授与

今後の活躍が楽しみな上位3社には、特典としてパリのケリング本社での研修およびネットワーキングの機会と、2025 年 4 月にパリで開催されるサステナビリティサミット「ChangeNOW」での出展機会が提供され、さらに 1 位となった最優秀企業には賞金 1,000 万円が授与される。また、特別賞を受けたマイクロバイオファクトリーには、ヨーロッパにおける研修に参加する機会が与えられることとなる。

マリー=クレール・ダヴー ケリング チーフ・サステナビリティ・オフィサー兼渉外担当責任者。

今回の審査員を務めたケリング CSOのマリー=クレール・ダヴー氏は、日本のスタートアップ企業について「新しいテクノロジーと伝統的な職人技が同じ組織の中に共存している点が大変ユニークだと思いました。今まで250を超えるスタートアップと付き合ってきましたが、これは日本の特徴と言えるでしょう。また成熟したマーケットがある日本では、スタートアップも既に高い技術をもっています」と分析した。

ケリングは気候変動、生物多様性において業界をリードする目標を掲げているが、達成を加速する存在としてスタートアップの技術革新に期待を寄せる。
「ケリングには素材開発のラボがあり、8000以上の布地を開発してきました。こういったイノベーションはファッション&ビューティー業界にとどまらず、例えば自動車など他業界との協業も可能にし、世界規模でサステナビリティのゴールへ私たちを近づけてくれるのです」

今回のアワードを機に、持続可能な世界の実現に貢献する日本のスタートアップのさらなる成長が期待される。

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酒井代表取締役の過去インタビューはこちら
https://tadori.jp/note/fermenstation/


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Stories behind 代表/鎌倉サステナビリティ研究所 スタッフ
白石 綾
アパレルブランドで販売や商品企画に携わる中で業界の課題を実感。イタリア在住をきっかけに、特に環境問題との関係に強い関心を抱く。2020年にMilano Fashion Instituteでサステナブルファッションを学んで以来、強い当事者意識を持ち、業界の問題解決に向けた活動を続けている。

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