※この記事は、Material Guide: Is Down Feather Ethical and Sustainable?を一部抜粋し、日本向けに加筆したものです。
Contents
ダウンジャケット・ダウンコートは何でできているのか?
その答えは、多くの場合、アヒルやガチョウの羽毛、つまりダウンフェザーだ。これらの羽毛はジャケットや冬用コートの中に詰め込まれ、目に見えないため、その存在や動物由来であること、そしてそれにまつわる倫理的な問題を忘れがちだ。では、なぜ人々はダウンフェザーを選ぶのか?それは、羽毛が非常に暖かく、軽量で重ね着に適しており、最近まで代替素材がほとんど存在しなかったからだ。
世界のダウンとフェザーの市場価値は増加の一途をたどっており、出所によって17億USドルから75億USドルの価値があると推定されている。
国際ダウン・フェザー協会の言葉を借りれば、「アパレルだけの目的でアヒルやガチョウを飼育している農場は存在しない」。つまり、ダウンは食肉の副産物として活用されている。
また動物福祉の「5つの自由」を保証し、生きたまま羽をむしり取る行為と強制給餌を禁止など、責任ある羽毛の調達を保証したResponsible Down Standard(レスポンシブル・ダウン・スタンダード 以下RDS認証)という認証もあり、買い物の際のひとつの大きな指標となっている。
しかし、このダウンフェザーは多くのファッション素材と同様に、サプライチェーンが複雑で、環境負荷や倫理的な問題と切り離せない。特に「ライブプラッキング」という行為は批判を浴びている。意識のある状態のアヒルやガチョウから羽毛を強制的に抜き取るこの過程は、大きな痛みを伴い、皮膚の裂傷や重傷、さらには死を招くことさえある。それでもなお、ダウンフェザーは多くの人々に選ばれ続けており、持続可能性と倫理をめぐる議論の対象となり続けている。
ダウン素材ができるまで。飼育の倫理的な問題点
アヒルやガチョウは、人間も含めた他の動物と同じように思考や感情のある生き物だ。アヒルは興奮すると頭を振り回し、非常に社交的だ。一方、ガチョウは人生のパートナーを選び、その死を悼むことさえある。生きたまま羽を取られた鳥の羽毛は、その苦しみを考えると、多くの人が避ける選択をする。しかし、責任ある羽毛の調達を保証するRDS認証を取得している業者や企業でさえも、農場で密かにアヒルやガチョウの羽根を生きたまま採取しているケースがあることが判明した。同様に、一部の農場やファッションブランドは、羽毛が毎年鳥の自然な換羽(羽が抜け変わること)で「採取」されると主張している。換羽の際に羽毛が自然に抜けるため、痛みはないと説明されているが、実際にはすべての鳥が同時に換羽するわけではなく、痛みを感じずに羽が採取されているかを確認することは難しい。
世界中で生産用に飼育されているほとんどの動物と同様、アヒルの大半は工場で飼育されている。アヒルやガチョウは水鳥であり、散歩中にこれらの鳥を見たことがある人なら、彼らがほとんどの時間を水中や水辺で過ごしていることをご存知だろう。にもかかわらず、工業型農場のアヒルたちは、何百羽、何千羽もの鳥でいっぱいの小屋に詰め込まれているため、ほとんど水面に浮くことができず、このことが足腰の問題を引き起こす可能性があるという指摘もある。そして毎年、33億羽のアヒルが世界中で屠殺されていると推定される。
地球環境にも影響を与えるダウンの生産過程
ダウンの生産は、地球環境にも深刻な影響を与えている。ダウン自体は生分解性があるが、羽毛はジャケットやコートの中で使われることが多く、外側の生地は生分解しにくい素材で作られていることが多い。リサイクルポリエステルで作られていても、この合成繊維がダウンの生分解を妨げ、最終的に200年もかかって分解される可能性がある。つまり、生分解性を語るときには衣服全体を考える必要がある。
また、羽毛や肉を生産するためには膨大な土地と資源が必要で、世界中で栽培される作物の36%が家畜に使われているという推計もある。畜産業からの依存を減らせば、より少ない土地で多くの生産が可能になり、自然を復元することで生物多様性を支えることができる。
さらに、養殖場からの排水には多くのリンが含まれており、これが水域の富栄養化を引き起こし、アオコの発生を促進する。富栄養化が進むと水生生物が生息できなくなるデッドゾーンが形成される可能性がある。水質汚染は工業型農場だけでなく、食肉処理場の問題でもあり、それらの廃水が近隣住民にも悪影響を与える。
![](https://shiftc.jp/contents/wp-content/uploads/2024/12/duck-4581608_1280-1-1024x682.jpg)
エシカルなダウンを購入するなら「リサイクルダウン」という選択を
良質なダウンは適切な手入れをすれば何十年と使用できる優れた素材だ。羽毛をきちんと洗浄・精製すれば、優れた機能を何年も果たしてくれる。リサイクルダウンは、既に私たちのクローゼットにある貴重な資源を有効活用し、これ以上動物を傷つける可能性が少ないという意味で、よりサステナブルな選択だ。
ユニクロ
Shift C評価:ここから
ユニクロのリサイクルハイブリッドダウンジャケットは、ユニクロダウンリサイクルテクノロジーで再生したダウンとフェザーを100%使用している。部位ごとにリサイクルダウンとリサイクルシート中綿を使い分けたハイブリッド仕様で、立体的な3Dカッティングにより動きやすく、耐久撥水素材で小雨でも着用可能。デザインはグラデーションダイヤキルト、収納力のあるポケットも特徴だ。
![](https://shiftc.jp/contents/wp-content/uploads/2024/12/sub6-1-1024x1024.jpg)
パタゴニア
Shift C評価:良い
2024年秋シーズンでは、約86トンのリサイクル・ダウンを使用。 2014年秋からは、すべてのダウン製品にトレーサブル・ダウン(追跡可能なダウン)を100%使用している。
Yahoo!ショッピングでパタゴニア商品を見る
ユナイテッドアローズ
Shift C評価:まだまだ
ユナイテッドアローズはサステナビリティ活動「SARROWS」の取り組みとして展開するブランド「グリーンレーベル リラクシング」(以下GLR)にてリサイクルダウンウェアを販売している。これらの商品には、不要になったダウン製品を回収・再利用する「グリーンダウンプロジェクト」のリサイクルダウンを使用している。
エシカルな代替ダウンを取り扱うブランド
動物性の素材を避けたい、という人には”ヴィーガンダウン”と呼ばれるような代替素材を使ったアイテムも多く登場している。保温性など素材の進歩は目覚ましい。
ザノースフェイス
Shift C評価:良い
ザノースフェイスは、ダウンの代替素材として「THERMOBALL PRO(サーモボールプロ)」を採用している。この素材は化学繊維で、保温性が高く、コンパクトに収納できる特長がある。そのため、アウトドアシーンでの使用に適している。
カポックノット
Shift C評価:良い
カポックノットのダウンジャケットは、植物カポックの繊維を中綿素材に使用。カポックは軽量で吸湿発熱性があり、リサイクルポリエステルと混ぜた「エシカルダウンカポック™」を採用することで、羽毛を使わず高い保温性を実現している。
Yahoo!ショッピングでカポックノット商品を見る
フディーニ
Shift C評価:良い
フディーニのダウンジャケットとして知られる「Dunfri(ダンフリ)」は、「ダウンフリー」を意味し、その名の通りダウンを使用せず、100%リサイクルポリエステル素材の中綿「PrimaLoft® Gold Insulation Eco」を採用。
ZOZOTOWNでフディーニ商品を見る
Yahoo!ショッピングでフディーニ商品を見る
アウターノウン
Shift C評価:良い
アウターノウンのダウンジャケットは、動物性ダウンの代わりにリサイクルポリエステルを使用した中綿「RENU®」を採用。これにより、高い保温性と環境への配慮を両立している。
Dedicated
Shift C評価:素晴らしい
Dedicatedは、リサイクルポリエステル素材の中綿「Thermolite® EcoMade」を採用している。これにより、動物福祉に配慮しながら保温性を確保している。
セイブザダック
Shift C評価:ここから
セイブザダックのダウンジャケットは、ペットボトル由来のリサイクル素材「PLUMTECH®」を採用している。軽量で保温性に優れ、環境にも配慮した素材が特徴。
エコアルフ
Shift C評価:良い
ペットボトル由来のものを含むリサイクルポリエステル素材を使用。
パンガイア
Shift C評価:良い
花びら、バイオポリマー、エアロゲルを組み合わせた新素材であるFLWRDWN™を開発。ダウンと同等の暖かさと軽さを提供し、アニマルフリーで生分解性がある。
羽毛の代替となり、ダウンと似た機能を持つ素材はこのようなものがある。
カポックダウン
カポックダウンとは、カポックの木の実から得られる繊維を使用したダウンの代替素材のこと。カポック繊維は非常に軽量で保温性が高く、環境負荷が低いことで注目されている。さらに、カポックの栽培は農薬や大量の水を必要としないため、サステナブルな素材とされている。この素材を用いた製品を最初に商品化したブランドの一つが、日本のカポックノット。
FLWRDWN™
パンガイアにより開発されたこの革新的な素材は、野草とエアロジェルとバイオポリマーを組み合わせたもので、生分解性を維持しながら撥水性と断熱性を併せ持つ。
プリマロフトP.U.R.E
プリマロフトP.U.R.E.はダウンよりも暖かく、耐水性があることが証明されている。この素材は消費者から回収された廃プラスチックで作られているため、製造時の排出量を48%削減することができる。
プリマロフト・バイオ
他のプリマロフト素材と同様の利点を持つこの素材は、100%リサイクルされ、2年以内に完全に生分解される。
サーモア
100%リサイクルされたPETプラスチックから作られたこの素材は、耐久性に優れ、長持ちする。また、ダウンフェザーのように湿ったままでカビが生えたり、重くなったりもしない。
上記3つの素材は、ダウンに代わる最も持続可能で効果的なリサイクル素材として知られている一方で、マイクロファイバーの流出は避けられないことも覚えておこう。