ストーリー|2025.01.29

2025年のサステナブルファッション予測

2024年を振り返り、サステナブルファッションの現状を踏まえた未来はどうなるのか。アパレルメーカーが動物福祉において本質的なスタンスをとるなど、期待できることが多い一方で、関係者たちがサステナビリティへの取り組みを後回しにする懸念もある。2025年に何が起こるかについての7つの予測を見てみよう。

翻訳:上杉沙樹

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What Will 2025 Bring for Fashion Sustainability?を日本市場向けに一部抜粋し、翻訳したものです。

ブランドではなくファッションウィークがサステナビリティをリードする時代に

2024年、コペンハーゲン・ファッション・ウィークは、業界の動向とEU政策を反映し、持続可能性要件を改訂した。これにより、参加ブランドには2025年以降のショーやプレゼンテーションに向けて、新たな持続可能性ガイドラインの遵守が求められる。

2023年からの変更点として、持続可能性基準の透明性が向上し、審査プロセスが明確化された。これにより、ブランドは具体的な指標に基づいて回答しやすくなり、参加基準はより厳格で体系的に進化した。また、環境や社会面での取り組みがより詳細に求められ、持続可能性戦略や労働条件への遵守が強調されている。このような背景の中で、フィンランド発のマリメッコ(ここから)やデンマーク発のガニー(ここから)などのブランドは、具体的な行動を起こすことが求められている。

仮にロンドン、パリ、ニューヨークなどのファッションウィークで、ブランドに廃棄物ゼロやサプライチェーンのデューデリジェンス証明*が義務付けられるとしたらどうだろうか。実際、Good On Youの評価では、収益性の高い40ブランドの中で環境面で優れていると評価されたブランドはなかったため、このような規制が導入されれば業界に大きな転換をもたらすだろう。

*デューデリジェンス証明とは、企業や投資家が取引前に行う調査活動の結果を示す証明書のこと。これにより、相手企業の財務状況、法的状態、リスクなどが適切に評価され、取引が健全であることが確認できる。

ヴィンテージブームは続き、2027年には中古市場がほぼ2倍に

アメリカ発のリセールECであるスレッドアップは、世界の中古市場が2022年の1,770億ドル(約27兆4,300億円)を基準として、2027年には約3,500億ドル(約54兆4,300億円)までほぼ倍増すると予想している。これは、材料や衣類を埋め立て地に送らずに環境への影響と消費を減らすという点で朗報である。

また2024年は、eBay、Vinted、Oxfamなどのアウトレットがファッションウィークで大規模な展示会を開催し、業界全体が注目していることが示された年でもあった。

ラグジュアリーブランドに対する内部告発は続く

2024年、アルマーニ(まだまだ)とディオール(まだまだ)のサプライチェーンにおける労働者の労働環境の基準違反が明らかになった。

イタリア・ミラノの「Chinese Workshop」と呼ばれる地区では、不法労働者が搾取的な環境で雇用されていた。この地域で製品を供給する小規模事業者に、両ブランドの関与が指摘されている。
4月、イタリアの裁判所により、アルマーニのサプライヤーが労働法に違反する下請け業者を利用していたことが発覚。ディオールでもサプライヤーの工場4カ所が捜査され、非正規労働者や不法滞在者が見つかった。
アルマーニは調査に全面協力し、不正防止の取り組みを強調。一方、ディオールはサプライヤーとの取引停止や監査基準の強化を表明した。

高級ブランドのサプライチェーンにおける労働者の権利侵害が指摘される中、これらの企業が透明性を欠いていることが問題視されている。また、消費者や投資家からの圧力を受け、ブランドは社会的責任を果たす必要性が一層高まっている。

Good On Youの分析によれば、世界で最も収益性の高いファッションブランドの86%が、生活賃金について何も開示しておらず、または支払っていないことが確認されている。

ファッションにおける動物福祉基準の改善進む

動物福祉基準の改善を目指す国際的な非営利団体「フォーパウズ」は2024年後半、「調査対象となった250の主要ブランドのうち82%がすでに毛皮の使用をやめている」と明らかにした。さらに、2030年までに「評価対象企業の67%が、残酷な過程により採取されたウールの使用をやめると主張している」。これは非常に大きなステップだ。

また、美容ブランドにおいては、Shift Cのデータ元であるGood On Youが300 を超えるブランドを分析した結果、22% が動物実験を行っていないことが認定されている。今後も進歩が続くことを期待している。

RenewcellがCirculoseとして復活。代替素材の普及が期待

2022年に世界初の工業規模の繊維から繊維へのリサイクル工場を開設したRenewcellは、2024年に買収される前に破産を申請した。これは業界にとって大きな打撃だったが、すべてが失われたわけではない。その後、プライベートエクイティファーム(未公開株式への投資管理会社)であるAltorに買収され、ブランド名をCirculoseに変更。ブランド名ともなったCirculoseは、同社の製品である繊維廃棄物から作られたパルプのことで、ビスコースやリヨセルなどのセルロースベースの繊維に変換することができる。

Circuloseの復活を支援した非営利団体キャノピーは、同社が破産後に得た教訓を生かし、規模を拡大し、既存のサプライチェーンと競争できるようになると述べている。

持続可能な素材の開発と普及を促進するマテリアル イノベーション イニシアチブによると、2023 年には世界中で144 社が次世代材料の研究開発に取り組んでおり、これは 2021 年の 95 社から増加したという喜ばしい結果も出ている。

ファッション分野の法律整備も進む

欧州委員会のエコデザイン規則からニューヨークファッション法グリーンウォッシング法デジタル製品パスポートまで、ファッション分野の法律は整備されつつあり、2025年には大きな進展が見られるかもしれない。

問題は、一部の動きで大手ブランドと中小ブランドに同じ基準が適用されていることだ。これにより、資金力のない小規模で安定性の低い企業に、より多くの負担がかかることになることが懸念される。

前向きなニュースもある一方で、環境保護や持続可能性に十分な関心を示さない指導者が増えているのも現状だ。

COPの取り組みが思うように進まない中、ファッションや美容業界に対して責任を求める声を上げる関係者は少なくなっている。2024年に記録的な暑さが観測されたにもかかわらず、この状況は続いている。

この現実を認識し、進歩への努力は決して終わらないこと、そして変化には絶え間ない努力と協力が必要であることを忘れてはならない。

私たちにできることーよりサステナブルな選択を続ける

変化を促すためには、誰もが参加する必要がある。政府は、ブランドにその影響力に対して責任を持たせ、行動を起こすべきだ。また、消費者としては、Shift CおよびGood On Youで「良い」や「素晴らしい」評価のブランドを選ぶことで、サステナブルなものづくりを支持しているというメッセージを送ることができる。


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