Contents
7割の人がいらない服 をごみに出している
実際にどれだけの服が捨てられているかについて考えてみたことはあるだろうか。実は、服1枚を作るために消費される資源は膨大で、ペットボトル255本を製造する際に排出されるCO2量に相当し、お風呂11杯分の水を消費すると言われている。それだけの資源を使いながら、現代の人々の約7割が着なくなった服を可燃ごみや不燃ごみとして廃棄しているのが現状だ。しかし、もしその服を無駄にするのではなく、別の形で活用できたらどうだろうか。少しの工夫で、不要な服が誰かの役に立つ支援に変わるかもしれない。
環境省:「サステナブルファッション
いらない服 を「支援に回す」という選択肢
着ない服を捨てるのではなく、誰かの役に立つ方法を選ぶことができる。実際、不要な服が支援活動に活用されることで、資源の無駄を減らし、困っている人々の助けになる可能性がある。寄付先としては、国内外で衣料を必要とする人々に届ける団体が数多く存在している。例えば、子ども支援や環境保護活動を行っている団体では、古着をリユースして支援物資として活用したり、途上国の学校などに提供することで、地域の自立支援を行っている。
寄付を通じて、服が直接的な支援へと変わり、同時に環境にも優しい選択ができる。これから、実際に服を寄付できる場所をいくつか紹介しよう。自分の不要な服がどこで活用されるのか、ぜひチェックしてみてほしい。
開発途上国の子どもたちにポリオワクチンが届けられる「古着deワクチン(古着でワクチン)」
「古着でワクチン」を活用すると、不要になった服が命を救う力になる。「認定NPO法人 世界の子どもにワクチンを 日本委員会」を通じて、開発途上国の子どもたちにポリオワクチンを届ける仕組みだ。専用回収キット1点(スタンダードサイズ)につきポリオワクチン5本を寄付でき、レビューを投稿するとさらに1本追加で届けられる。
ポリオは予防可能な病気だが、ワクチンが行き届かない地域では命を脅かす深刻なリスクになる。このプロジェクトは、これまでに約5,800万着の衣類を再利用し、約800万人にワクチンを寄付する実績を持っている。
回収された服は主に海外へ輸出され、現地で雇用を生み出しながら再販売されている。カンボジアの首都プノンペンには2022年3月に直営センターがオープンし、日本で回収した衣類を販売・選別し、再輸出する拠点として機能している。このセンターは、障がいのある人やゴミ山で生活していたストリートチルドレンだった若者たちの働く場にもなっている。また、衣類が1点売れるごとに1本のワクチンが寄付される仕組みになっている。
専用の回収キットを購入し、その中に寄付する衣類を詰めて指定の配送業者に渡すだけで手続きが完了する。回収された衣類は国内外でリユースやリサイクルされ、その収益の一部が開発途上国の子どもたちへのワクチン支援に使われる仕組みになっている。
「古着deワクチン」寄付方法の詳細はこちら
ユニクロによる衣料支援「“届けよう、服のチカラ”プロジェクト」
ユニクロは、店舗で回収した衣類を再利用し、その一部を世界各地の難民キャンプや被災地に寄贈している。回収された服は、季節、性別、サイズ、年代、気候、文化、宗教など、さまざまなニーズに応じて18種類に分類され、NPOやNGOと連携して必要な量や種類、配送ルートを確認しながら支援が行われる。例えば、日本の少女・雫がリサイクルに出した服がウガンダの少女・エヴァに届き、服を通じて二人の想いがつながった過程を描いたドキュメンタリーでは、しずくの手元からエヴァに服が届くまでの工程が映し出され、服がどのように支援の手となっているのかが描かれている。
これまでに5,463万点以上の服が80カ国以上に届けられ、その活動はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)とのパートナーシップを通じて広がっている。ユニクロの店舗にはRE.UNIQLO回収ボックスが設置されており、ユニクロ・ジーユー・プラステで販売された全商品を無料で回収し、寄付することができる。
ユニクロの衣料支援寄付方法の詳細はこちら
着られなくなった子ども服を未来へ繋ぐ「こども服みらいファンド」
文部科学省やこども家庭庁がNPOと連携してスタートした「こどもの未来応援国民運動」の一環で、子ども服の寄付を通じて支援を行っている。送られた子ども服の査定額に応じて、「学びの機会」や「衣食住」に困る子どもたちを支援するNPOなどを応援できる。
着られなくなった子供服を提供する際は、事前のお申し込みが必要。不要になった指定ブランドの衣服を10点以上まとめて、ご自宅にあるリユース可能な箱や袋で1梱包にして発送する。送料は自己負担で、査定額に応じた金額が「こどもの未来応援基金」へ寄付される。記名のある衣服についても写真付きで対応方法が説明されている。
「こども服みらいファンド」寄付方法の詳細はこちら
NPOによる海外・国内での幅広い支援「セカンドライフ」
認定NPO法人「Good Life」は、2010年に始まった「セカンドライフ」プロジェクトを通じて、寄付とリユース活動を行っている団体だ。主な活動内容は、ワクチン募金、海外へのリユース品寄付、企業や団体とのコラボレーションを含む支援活動だ。
セカンドライフに寄付された服や不要品は、まず仕分けされ、その後、国内外で再利用される。寄付された服の行先としては、例えば、アフリカやアジアの困窮地域や難民キャンプに送られたり、国内の支援活動で使用されることがある。
また、寄付金は所得税の税額控除の対象となるため、寄付者には税金面での優遇措置がある。寄付の申し込み方法は、ウェブサイトから申し込みが可能で、寄付金控除の申請方法についても案内されている。
「セカンドライフ」寄付方法の詳細はこちら
子どもたちの教育や就業をサポートする「古着バトン」
株式会社アーバンリサーチが実施する「古着バトン」は、「想い」をつないでいくバトンタッチを象徴するプロジェクト。不要になった服を回収し、その販売利益を全国の児童養護施設で暮らす子どもたちの心のケア、教育・就業支援、居場所作りなどを行う「一般財団法人みらいこども財団」へ全額寄付している。また、服の消毒や分別、タグ付けといった作業は、障がい者の雇用創出にもつながり、社会的な支援を広げる役割を果たしている。
このプロジェクトは、一般社団法人ミライバトン研究所の活動を通じて行われている。ミライバトン研究所は、持続可能な社会を目指して、古着の回収や再販を行い、その収益を支援活動に活用している団体だ。回収された洋服は再販され、そこで得た売上は寄付される仕組みだ。オンラインストアでは、商品の状態が写真や説明とともに詳しく紹介されており、購入者は自分の購入が寄付にもつながることを実感しながら、安心して買い物ができる。
古着の回収は「回収キット」を購入して送付する形式で、一部店舗またはオンラインストアでキットを取り扱っている。
「古着バトン」寄付方法の詳細はこちら
海外への輸送費用が寄付金控除の対象となる「日本救援衣料センター」
日本救援衣料センター(Japan Relief Clothing Center)は、1982年10月に設立され、貧困や自然災害、紛争から避難した人々が衣料を必要としているという現実に応えるために活動を始めた。日本の家庭で使われなくなった、まだ十分に着用可能な衣料を再利用し、必要とする人々に届けることを目的としている。
設立から間もなく、1983年3月にウガンダへ約2トンの衣料が初めて寄贈され、その後も多くの個人や団体の支援を受けて活動を拡大してきた。近年では、貧困や気候変動、紛争の影響で衣料支援の要請が増加している。現在までに92ヶ国に24,608トンの衣料を届け、921回の支援活動を行った(1982年10月1日設立〜2023年12月末日現在)。
日本救援衣料センターへの洋服の寄付は寄付金控除の対象にもなるので、引き続き支援をお願いしたい。
日本救援衣料センター寄付方法の詳細はこちら
パキスタンのコミュニティを支援できる「日本ファイバーリサイクル連帯協議会」
日本ファイバーリサイクル連帯協議会は、1995年に設立された団体で、衣類、毛布、バッグなどのリユース促進をはじめ、スラムに暮らす子どもたちの自立支援や、非営利活動としての自立を目指している。回収した衣類は、地域の団体やグループが行う選別作業を経て、種類や季節、状態に応じて約150種類に分けられる。その後、約8割が海外に輸出され、現在はタイへ、残りの約2割は国内でリユース販売されることになる。
特に注目すべきは、パキスタンのカラチ市のスラムで行われる支援だ。リユースされた衣類や毛布が、支援物資として活用され、年間90トン以上が輸出されている。しかし、2023年にはパキスタンの輸入関税引き上げなど、さまざまな要因が重なり、同国への輸出は困難となった。そこで、現在はタイへ輸出し販売しており、その収益はパキスタンの「アル・カイールアカデミー」の運営費に充てられ、地域社会の自立支援にも貢献している。
衣類の回収は、会員登録した人に限り年3回受付を行っており、宅配便での送付や直接持ち込みできる(事前予約必須)。
日本ファイバーリサイクル連帯協議会寄付方法の詳細はこちら
メルカリの売り上げを寄付できる「メルカリ寄付」
メルカリでは、出品者が売上金を寄付する「メルカリ寄付」機能を使って、社会貢献活動に参加できる。出品時に寄付先の団体を選ぶと、商品が売れた際に売上金をその団体に寄付できる仕組みだ。
メルカリの寄付金は、各寄付先団体でさまざまな使い道に活用されている。例えば、あしなが育英会では寄付金が奨学金として支給され、支援対象者の学費や生活費に充てられている。また、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは、寄付金が子どもの教育支援や医療支援、避難生活を支えるための物資提供に活用されている。能登半島地震支援では、寄付金が被災地の復興支援に使用され、避難所の整備や生活支援物資の提供などに役立てられている。さらに、パレスチナ・ガザ地区への支援では、寄付金がガザの子どもたちへの教育支援や医療支援、生活環境の改善に使用されている。
メルカリ寄付寄付方法の詳細はこちら
古着を寄付する前に確認すべき注意点
すべての衣類回収に共通することだが、寄付をする前には、受け入れ可能な服が何かを確認し、まだ着られるものをきれいに洗濯して寄付しよう。